4.二日目、一時限
おはようございます、みなさん。
本日は………どうしました?
え? 『バケツ』くんが腹痛? それなのに、来たんですか。
…………馬鹿なことを。
おや、みなさん不満そうですね。とすると、まだわかっていないということですか。
全く困りましたね。
『バケツ』くん、部屋に戻って休みなさい。あなたは寮でしたね。
え? …………ええ、授業は進みますが、それが何か?
休んだ間の補習は申請すれば受けられます。帰りに事務へ寄って………帰らない? バケツを置いておきたい、と……。
……………。
私には理解しかねる発想ですし、先日の『不敬』にもあたるとは思いませんか?
……………ええ、確かにあなたの権利を奪うつもりはありません。
授業の邪魔をせず、大人しく学習していれば問題ではないと、そういうのですか?
……………。
はい?
…………なるほど、『当然』くん、あなたも同意見だと言うのですね。
……ああ、はい、わかりました。名前を変えたのですね。
出席簿を訂正しますから…………ええ、そうですよ、『当然』くん、と書いてあります。
わかりました、では新しい名前をどうぞ?
……………ほう。
面白い。
いや、とても面白いですよ。
かなり無謀ですが、まあいいでしょう。
では訂正します。
『当然』『無限大』くん、あなたは…………何ですか。
『当然』は要らない? では『頑固』でいきましょうか。
『頑固』『無限大』くん。うん、こっちのほうがいい響きで…………嫌?
なかなか気合いが入っていい雰囲気ですが。
『無限大』だけ?
……………まあいいでしょう。
ちょうどいい、授業内容を少し変更しましょう。
『バケツ』くん? ちゃんと座って下さい。
は? 苦しくて体を起こせない?
先日の授業で、肉体の優位性について学んだので、その通りにしている、と?
…………なるほど。
では、本日も十分に学んで下さい。
私はもう少しマイルドに学ぶ方が楽しいし、身になると思うのですが、あなたがたの嗜好をあれこれ問題にするつもりはありません。マゾでもサドでも、要するに学べるのならよろしい。
では、みなさん、本日は名前について考えましょう。
全てのものには、名前があります。
名前はその本質について説明するものです。
たとえば『バケツ』くん。
あなたは『バケツ』が表現するものを体現しています。
『バケツ』は大きな口を開いて何でも受け入れます。澄んだ水を入れて美しい花を生けることもできますが、雑巾を突っ込んで汚れた水をかき回し続けることもできます。
清濁合わせ呑む許容量と言えば聞こえはいいですが、蓋がないので何でも受け入れ拒めないという意味でもあります。
また把手を掴まれ持ち運ばれます。重みに耐えてどこへでも持ち運ばれ、自分の居場所を選ぶことができません。
ひっくり返せば中身をとどめておくことができません。何もかも吐き出し空っぽになって、しかも本人は受け入れたものに影響されることなく、次のものを受け入れます。
永遠に自らを保つとも言えますが、何も身にならないということでもあります。
……………顔色が青くなりましたね。
あなたとどこか違っていますか?




