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魔法講座  作者: segakiyui


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2.初日、ニ時限

 はい……はい、ごくろうさまでした。

 結構みなさん粘りましたね。もっと早く戻ってくるかと思っていたんですが。

 では………そこのあなたと、そこのあなた、それにあなた。

 起立。

 もう一度校庭を全力疾走してきて下さい。

 理由?

 ちゃんとしっかり椅子に座っていられるから。

 他のみなさんを見てごらんなさい、へとへとでべったり机に伏している人もいるでしょう? 中にはさっき廊下へ口を押さえて走り出てったのが……ああ、おかえりなさい。しんどかったら、保健室へ行っていいですよ。講議内容はまた補習しますから。

 ……そう。ならそこで居て下さい。………バケツを置いておいたほうがいいと思います。

 ………あなたはなぜ走りに行かないんですか?

 納得?

 なるほど、自分は本当は机に伏したいほど苦しいのだが、私に不敬にあたってはと頑張っているというのですね。

 では、今日はもう帰宅してよろしい。

 は?

 いえ、あなたは講座を受ける準備以前の問題です。

 なぜ?

 理由を説明しろ、ですか。困りましたね、そういう初歩的なところで時間を取るのは好きじゃないんですが。

 …………わかりました。

 他のみなさんも興味があるのですね?

 では、申し訳ないですが、さっきのバケツの彼以外は、この話の後に再び校庭全力疾走してもらいますが、それでもいいですか?

 ぶーぶーぶー。

 あなた達が豚の一種だとは思いませんでした。あんまり唸るとソーセージにしますよ。

 ……………冗談です。

 さて、なぜ私に礼儀を尽くそうとしたあなたが帰宅させられ講座を受ける資格なしと判断されてしまうのか、でしたね。

 その前にまず尋ねたいのですが、あなたはここへ学びに来たんですね?

 ………なるほど、当たり前です、と。

 では、学びに来たということは、講座の内容について理解していないということですね?

 ………当たり前です。

 当たり前が好きなんですね、覚えておきましょう。これから『当たり前』くん、と呼びましょうか? いや? ふふふ。

 ところで、私はここの教師ですね?

 ……当たり前、はなしですか。当然? ………なかなか可愛いことを。

 では、『当然』くん、私はあなたより講座内容について理解しているはずですね?

 だからこそ、不敬にあたらないようにと、ですか。ふむ。

 では、改めて尋ねますが、その『不敬』とは何を指しているのですか?

 授業に対する真摯な姿勢を損なうこと?

 よくできました。そうですね。

 これから学ぼうとすることに対する前向きで情熱溢れる態度を示すことで、講座への意欲と教師への尊敬を示す、そういうことですね。

 けれどしかし、私は先ほど「前提が違えば準備が違う」と説明したはずです。

 私が今からみなさんに教えようとすることへの準備は、へとへとになって机に張りついてしまうような状態でないと教えられないものなんです。

 その準備ができていない人に、ちゃんと準備させるように務めるのは、講座内容を理解している教師の『当たり前』の勤めです。

 なのに、あなたは講座内容を理解していないのに、その準備が必要であるとかないとか、私の指示が適切であるとかないとか判断して異義を申し立てているのです。

 それこそ「あなたの前提」から判断しているわけです。

 私が促しているのは、「前提が違う」ということの体験です。

 もっと簡単に言えば、「あなたがたの前提を捨てなさい」ということです。

 それを受け入れられないというのなら、あなたに受講の資格はないと考えるしかありません。あなたの『真摯であるはずの態度』は、今この状況においては私への『不敬』そのものです。

 納得しましたか?

 ………では駆け足っ!

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