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アカツキエイト  作者: 小沢 健三
第2章 孤児
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第2章 孤児 -13 出発

羽田空港。

楠木くすのきとスージー、ゼンタ、石場、そしてラフィの姿がある。

見送り組として、こずえとパトリシア。


暴漢におそわれて以来、こずえとゼンタ、ラフィの3人は、最初の数日を過ごした皇居のそばのホテルに移った。

護衛も、石場ともう3人が常にホテルの周りを巡回して警備をしている。


石場から楠木くすのきへの報告によると、あの後は“襲撃しゅうげき”はないそうだ。

石場の強さに恐れをなした、とは思えないが、諦めてくれたのなら良かった。

ふと、ゼンタの頭を暴漢に襲われた後にやって来たスーツ姿の、如何いかにも切れ者と言う感じの男がよぎる。

何故かは分からないが、きっとあの男が何かをしたのだろう、と確信に近い思いがあった。

そう思わせるだけの迫力が、あのスーツ姿の男にはあった様に思う。



いずれにしても、遂にこの日が来た。

あと1時間もすれば、ゼンタを含むあかつき商事チームは機上の人となり、トヴァンへ向かう。


まずジャカルタへ飛び、そこからは楠木くすのきとスージー組、ゼンタと石場、ラフィ組に分かれて別々にトヴァンへ入国する予定だ。

これはもちろん、ラフィが空港のイミグレーションを抜ける際のリスクを考えてのことだ。

ゼンタ達はジャカルタからインドに渡り、そこからセスナ機をチャーターしてトヴァンの郊外の空港から入国することになっている。


「ゼンタ、しっかりね。」


こずえが声を掛ける。


「大丈夫だよ。母さんこそ、久しぶりに1人になるから寂しいだろうけど、羽を伸ばしてね。」


「えぇ。そのつもりよ。」


そう言うと、こずえがハグをして来る。続いて、スージーともハグを交わした。

何やら耳元でささやいた様で、2人で笑い合っている。


そして、膝を曲げてラフィと向き合う。


「ラフィ。寂しくなったらいつでも帰ってらっしゃい。日本を、あなたのもう1つの故郷だと思ってくれたら嬉しいわ。」


そう言ってラフィともハグを交わす。


ラフィは、あのインタビューのあと見違える様に表情が変わった。

決意を持った“男の顔”へと。


それまでにあった、こずえに甘える様な素振りはすっかり影をひそめてしまった。

こずえは嬉しそうな反面、寂しそうにもしていた。


昨晩、何がラフィを変えたのか、とゼンタが独り言の様に呟くと、こずえは、変わったのではなく戻っただけなのではないか、と言った。

きっと8歳までのラフィは、芯が強く困難に立ち向かえるメンタリティを備えた男の子だったのだろう、と。

きっと、ご両親も凄く強い方だったのだろう、と。

ゼンタもその意見に同意した。



「石場さん、ゼンタを宜しくお願いします。」


こずえが石場に頭を下げる。


「はい。お任せ下さい。蕪木かぶらぎさんとラフィは、私が責任を持ってお守りします。」


「ふふ。石場さんにそう言って頂けると心強いわ。」


そう言うと、こずえ楠木くすのきの方へ向き直る。


楠木くすのき社長、息子を宜しくお願い致します。」


こずえは最後に、楠木くすのきに向かって深々と頭を下げた。


「はい…。戻る頃にはきっと見違える様に男を上げていますよ。な!ゼンタ!」


そう言って楠木くすのきがゼンタの背中を叩く。


「あ、はい…。」


「何よゼンタ、頼りない返事ね!」


こずえがそう言うと、スージーとパトリシア、ラフィから笑いが起きる。


「さて、そろそろだな、行こうか。」


楠木くすのきが口を開く。


「待ってボス。そう言えば、今回のミッションの名前ってまだ決めてなかったんじゃない?」


スージーが楠木くすのきに問う。


「そうだった。ゼンタに決めて貰おうと思って忘れてたよ。」


「え⁉︎僕が…ですか?」


「あぁ。今回のミッションは、トヴァンにとっての夜明けに繋がるミッションだ。少なくとも、俺はそう思ってる。だから…そうだな、トヴァン語で日の出のことはなんて言うんだ?」


「日の出…サンライズと言うと、カフィカダですね。カフィが太陽、カダが登る、と言う意味です。」


「そうか。では、オペレーション•カフィカダでいこう。うん、なかなか良い響きじゃないか。」


「オペレーション•カフィカダ…。うん、なかなか良いわね。ゼンタ、ナイスネーミングよ。」


スージーも賛同する。


そう言われても、サンライズを現地語にしただけなので自分で付けたと言う感覚は全くかない。


「ではこれより、オペレーション•カフィカダの遂行のためにトヴァンへ向かう。パトリシア、後は頼んだぞ。」


パトリシアが目でうなずく。


こずえさん、ご協力ありがとうございました。行ってきます。」


「はい。…ゼンタを宜しくお願いします。」


こずえの言葉に楠木くすのきが力強くうなずく。


「さてそれじゃ…」


楠木くすのきが全員の顔を見て、うなずきをわす。


「行くぞ!アカツキ!」

これで、第2章は終了です。

ここまでが、広い意味でのプロローグ的な感じかも知れません。


次回からは第3章、いよいよゼンタ達がトヴァンに渡ります。

オペレーション•カフィカダのスタートです。


ここまではどちらかと言うとゆっくりまったりとした展開でしたが、第3章からはちょっとスピードアップする予定です。


是非ご期待下さい。


第3章のスタートにあたり、毎朝の更新はしばらくストップさせて頂きます。

恐らく2〜3週間かな?


ある程度の書きだめが出来てから、また毎朝更新を再開する予定です。


しばしお待ち下さい。

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