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全裸少女の社会危機一髪

 俺はアパートを目指してペダルをゆっくりと回していた。

 この時期のツーリングはとても心地よい。太陽の光が肌寒い風を温風にし、暗い気分を払ってくれるからだ。

 しかし今日は例外だ。


 まさかアテナさんを前にあんな痴態を晒ししまうとは。思い出すだけで死にたくなる。

 いや、アテナさんもアテナさんだ。ちゃんと前もって『握手しますよ』と言ってくれれば、俺もあんなに拒絶反応を出すことは無かったのに。大体急に手なんか握られたら誰だってこうなるに決まっている。

 うん、俺は悪くない。


「いや、悪いだろ」


 とりあえず、俺は我に返ってからは物凄く謝った。とにかく謝った。押し倒す勢いで謝った。そしたらアテナさんも跳ね返す勢いで謝った。とにかく店員が止めに入るまで謝り続けた。。

 そして店を追い出されるように出ると俺は有無を言わせない速さで自転車の下に走り、風のように逃げ去った。去ってしまった。去ってしまったのだ。

 そうなるとこちらからもあちらからも連絡し辛い。というより俺には連絡をする勇気もなければする気もない。

 きっとアテナさんも同じだろう。いくらリアルで友達になりたいほど好感度があったとしても、先程の一件で全てチャラだ。ギャルゲーだったら既にバッドエンドでスタート画面である。


 しかし、これはアテナさんだけについての話なのだ。

 たった一人の人間関係の構築を失敗した如きで俺の人生は終わらない。というかもう既に俺は何百人との人間関係を失敗している。構築する前から失敗している。だからこの程度のこと屁でもない。

 第一、所詮アテナさんなど三次元だ。いくら二次元を感じさせる能力を持っているとしても、そんなものまやかしに過ぎない。というより、そんな程度の低いもので二次元を味わおうとしていた事自体が恥ずかしい。憤死する。


「よし!」

 俺は清々しい気分で、軽快にペダルを漕ごうとする! 信号機のレッドサインがそれを阻んだ!


「…………」

 何か世界の陰謀的なのを感じ取ってしまった。

 俺の第六感が得体の知れない何かを受信しようしたその時、ズボンのポケットにある携帯も何かを受信し振動する。

「……まさかな」

 それはメールだったようですぐに振動は収まった。

 ……信号はまだ赤く、俺に動くなと命じている。

 なので俺は携帯をポケットから取り出し、開いた。


『三/十六 日曜 一四時七分 

FROM  アテナ   』


 …………俺は震える手を気力で押さえつけながら、本文を開いた。


『聞いていなかったと思いますので、もう一回言います。

 よろしくお願いします。ニジゲンさん! 今度本名も教えてください!!』


 思わず俺は携帯片手にガッツポーズをした。

 俺は今とても白い目で見られているだろう。だが構うものか。この喜びを体現せずにいるのは、のアテナさんへの愛が許さない。


 そんな恥ずかしい感慨に浸っていると、ついに信号が美しい碧色に変化した。

 俺は一先ずガッツポーズを収めて、勢いよくペダルを漕ぐ。

 なんて返信しよう。

 俺の頭の中はそれ一色だった。

 一色すぎて自動車に轢かれそうになったり、衝突しそうになったり、結局衝突したがなんとか生き延びてアパートに着くことが出来た。

 無事ではないが、大事には至っていない。精々右手を打撲しているかしていないか程度だ。俺は左利きだから支障なし。  


 …………だが痛い。俺の痛覚は思ったよりも敏感らしい。

 打撲に唾を塗っても意味はなさそうなのでしばらく安静にするしか方法がないようだ。だから部屋に戻ったらそのまま寝ることにしよう。それにさすがに疲れた。

 まぁ、行き帰り合計二時間自転車に乗っていたことになるから仕方ない。明日は多分筋肉痛で、動く度に足が悲鳴を上げるのだろう。

 電車で行けばよかったのだがお金もないし、人混みで気持ち悪くなるから使うことが出来ない。全く、この病気は俺の足を引っ張りまくる。そろそろ足がもげるぞ。

 せめてこのアパートがもう少し近ければな。


 このアパート――『深海魚』は、ゴミ屋敷やお化け屋敷と比喩する程ではないが、しかしオンボロである。大きな地震などがあったら、『深海魚』は効果抜群四倍並の勢いで崩れてしまうだろう。あと雨漏りがこれまた酷い。どんなに弱い雨でも屋根の下に侵入してアパートの全ての部屋を潤してしまう。

 まぁその分家賃が安いのでそこは大目に見るところだろう。

 しかし俺の場合は家賃を払っているのは猫村さんなので俺は正々堂々と文句を言っている。

 そのせいで俺の部屋だけ家賃が高くなっているらしいのだが、やはり払うのは猫村さんなので俺には関係ない。三ヶ月ぐらい家賃を滞納しているらしいが、俺には関係ない、はず。


 ……とりあえず俺はアパートの駐輪場に自転車を留め、きちんと鍵を閉めてから自分の部屋へ向かった。

 俺の部屋はアパートの二階の一番奥に位置している。

 なので三ヶ所ほど踏む場所が欠け、バリアフリーに喧嘩を売っているような恐れ多い階段を慎重に登らなければならない。

 ちなみに、俺が知る限りではこの階段で転んで怪我をした人間は一人――俺の滞納した家賃を取立てに来た八手奥(はちでおく)だけだ。

 踏む度に発生する軋む音が俺の気持ちを不安にさせるが何もアクシデントは起きず、無事に階段を登り終え部屋の前に辿りついた。


 なぜだが少し遠出して帰ってくると、自分の部屋がとても愛おしく感じてしまう。こんなにボロボロなアパートでも住めば都という奴か。まぁ俺は三次元に都があるなんて認める気はないが。絶対に。


 俺がポケットから家の鍵を出したその時、突如携帯を鍛え上げた例の猫が足元に現れた。

 真っ黒な毛に覆われた肥満猫で野生じゃない証の赤い首輪を着けている。そして、三次元だ。

 これは隣の部屋に住んでいる初始(しょし)先輩が先月拾い、ペット禁止の『深海魚』のルールを変えてまで飼っている猫である。まだ名前はないが、猫というジョブのおかげで『深海魚』の住民達から愛され、空腹には縁がない生活を送っている羨ましい奴だ。あと、初始先輩があまり部屋にいないからか俺の部屋を根城としている。今も俺が扉を開けるのを待っているようだ。


「……驚かすなよ」


 猫は『早く開けろ、この三次元』と言わんばかりに俺の顔をじっと見つめる。

 相変わらずこの猫は音もなく忍び寄って俺を驚かせる。それも少し体重移動をするだけでも音が発生する打楽器ような廊下であるにも関わらず。

 いつもそのせいで存在に気づかず扉を開けてしまい、そのまま部屋への侵入を許してしまっている。最初の方は一生懸命対策を練ったりしていたが全て失敗に終わってしまい、今ではもう諦めて自分から部屋に入れている。人類は猫に負けた。待て。俺が人類を代表していいのか。……いいよな。

 まぁ猫は嫌いではなく、むしろ食べたくなるぐらいに好きなので許容範囲である。勿論人間(三次元)は範囲外だ。


 とりあえず、俺はその好意をこの猫に示すべく扉を開けた。外向きに開くので、猫に当たらないように気を付けなればならない。

 しかし、そんな俺の配慮を他所に、猫は自分が入れる程度の隙間が出来ると、我先にとすぐに入って行った。


「ったく、少しは家主である俺に対して敬意をはら……」

 ……家賃を払っているのは猫村さんなので、家主は住んでもない猫村さんになるのではないか!? いや、やはり住んでいるのは俺なので俺が家主だ!

「敬意を払え! 家賃払ってないけど!!」

 俺は猫に続くように部屋に入りながら、大きな声で言った。

 しかし猫の『うるせー、咬み殺すぞ』とばかりの眼光以外、返事はない。


 一人暮らしなので当然と言えば当然だが、やはり寂しいものである。こんなとき初始先輩が帰宅していれば、うるせぇぞと怒って朝まで説教してくれるのだが…………いなくてよかった。それに自分よ、俺以外の三次元がこの部屋に住んでいたら安堵の時間は益々なくなっていくぞ。一人暮らし万歳。万歳……万歳……………。

 俺はその寂しさを締め出すように、身体を屋内に向けたまま慣れた手つきで扉を閉めようとした。


 すると俺の上着の裾が、突然何かに引っ張られた。


「…………」

 俺は思わず固まった。

 こんなことは初めてだったからだ。今まで五年間ここに暮らしてきて服が玄関で引っ掛かった事など一度もない。となるとこのアパートの嫌な所がまた増えたことになる! ……人為的に引っ張られていなければ。 


 俺は一週間前に起こったとある事件を思い出さざるを得なかった。

 それは大学の教授が殺害された事件である。

 俺は三次元の物事に対してはあまり記憶力がよくないが、この事件についてはよく覚えている。


 まず第一に現場が『深海魚』から遠くないという事だ。

 これは犯人が近くに潜んでいる可能性を示唆している。

 そして第二に、その犯人の異常性だ。

 これは猫村さんがうっかり口を滑らして言った情報だが、とにかく死体が無惨らしい。腹が切り開かれた上に目玉と右手と臓物の一部が現場から持ち去られているらしいのだ。

 全く、想像するだけでも吐き気がする。一回吐いた。ただでさえ醜い三次元の人間をこれ以上醜くするなんて俺には考えられない。

 それで犯人はとても大柄で顔に傷のある日本刀を持った男だと目撃者が証言しているが、未だに犯人は捕まっていない。


 最後の第三、その目撃者であり被害者の息子でもある男が俺のクラスメイトだという事だ。

 確か、そいつの名前は秋井だったはずだ。下の名前は知らない。いつも気怠そうな雰囲気を身に纏っている三次元の男だったような覚えがある。

 まぁこれについては正直どうでもいいが、しかし印象的だったことには違いない。


 とにかく俺は上着を掴んでいる人物がいたとしたら、それはその事件の犯人ではないかと疑ってしまったのだ。

 それはさすがにないと思うが、しかし絶対にないとは限らない。

 もしもそうだとしたら背中を見せているのは非常にまずいので、俺は恐る恐る後ろを振り返った。


 そこにいたのは、全裸の少女だった。


 ライオンのような長い金髪に美しい藍色の瞳。小さい唇からは肉食動物のような八重歯が覗いている。肌は雪にように白く、肢体は小枝のように細い。小学校高学年ぐらいの小さな身体で当然胸もなく、なんとその上には何も着ていなかった。そして、三次元だ。

 少女は不思議そうな顔で、俺を観察している。


「――ッ」


 全裸の少女。こんなと一緒にいる所を見られたら、社会的に殺されてしまう。結局相手は殺人鬼であった!

 俺は事態を把握するや否や瞬時に上着を脱ぐ。すると俺の期待通りに上着だけが少女の方へ向かっていき、少女は突然上着が軽くなったため尻餅をついた。

 そして、俺はそれを確認しすぐに扉を閉める。

 しかし上着が挟まって完全に閉める事は出来なかった。


 早くどこかへ行ってしまえ!

 だが、俺の祈りは通じず扉に引っ張られる力が加わる。

 俺も急いで扉を引っ張り返す。やはり性別以前に年齢的な関係で、力勝負なら俺の方がずっと有利なようだ。現に左手だけで十分進撃を防いでいる。


「ニャニャー」


 少女のだと思われる奮闘の声が扉越しに聞こえてきた。

 なぜ猫の鳴き真似なのかはこの際気にせず、俺は助けを求めるために自由な右手で携帯を取り出す。打撲モドキで右手は痛いがそのぐらいは我慢だ。

 それと同時に扉を開けようとする力がなくなって今度は俺が尻餅を付いてしまった。

 俺は少女が諦めたのだと思い、安堵のため息を吐く。

 しかし、安心も束の間。


 今度は、扉が太鼓のような打撃音を発するようになったのだ。

 俺は思わず、扉から三歩下がった。

 ストーカーかよお前は! これが二次元だったら大歓迎だったのに……ロリだし!

 俺は心の中で叫びながら携帯を操作し、あの人へ電話を発信した。

 一〇秒もしないうちに電話は繋がり、『もしもし?』という確認の声が聞こえて来た。


「助けてください!」

『……機関がついに動き始めましたか?』

「え……ええ、奴等恐ろしい刺客を送ってきましたよ」

『一体どんな刺客ですか?』

「金髪で全裸のロリ娘です」

『……ニジゲンさんのタイプはそれなんですか……』

「違いますよ。俺のタイプは二次元だけです。アテナさん」

 そう、電話を掛けた相手はアテナさんである。


 彼女を選んだ理由は俺の電話帳に載っている人の中で、一番常識をもっている御方だと判断したからだ。あと俺に他の知り合いに相談したら多分相手にしてくれないし、してくれたとしても暴走する恐れがあった。むしろこっちのほうが大きい。


「その刺客が今玄関の前に居座っているんです。しかも扉を凄く叩いてきます。どうしたらいいのでしょうか? 教えてください。ペンネーム、ニジゲンより。追伸、こちらこそよろしくお願いします」

『そうですね。とりあえず、お天気のコーナーです』

「見捨てないでくださいよ!」


 よしっ、さらっとメールの返事が出来たぞ。これで警察に捕まっても心残りはない……なんてことは勿論ないが。しかし、電話でといえどもチャットでしているような会話が現実で出来るとは、本当に二次元と喋っているような気分だ。

 だが、今はアテナさんについて熱心に考察出来る状況ではない。今も扉が奏でる破壊的な音楽が俺の耳を痛めている。それにこの状況が長く続くと扉が壊れるのではないか? 今年の三月は寒いぞ。


『名古屋、晴れ。世界、晴れ。宇宙、晴れ』

「アテナさん、あの……宇宙はずっと晴れだと思います。って、そうじゃないそうじゃない」

『宇宙に晴れるっていう概念はあるんですかね?』

「うるせえ! 黙って聞けよマイハニー!!」

『今のプロポーズですか!? それともするんですか! 黙って聞きますマイ夫!』


 俺はこの状況と、これに至った経緯を説明した。

 アテナさんは途中、『式は海上がいいです!』とか意味不明で無駄にハイテンションな合いの手を入れるが、最後の方になるとやや冷め気味な調子で『乙女に恥をかかせるなんて、火に焼かれるのがいいですね』などとぼやき始めてしまっていた。いくら少女の全裸を見てしまったからって、葬儀の話をするほど怒らなくていいのではないかと思うのだが、それを口に出すと貞操観念とか青少年健全計画とかずれた話になりそうなのでここは黙っているのが吉のようだ。


『幼女じゃないんですよね?』

「はい。幼すぎない少女です」

『でも、アウトなんですよね?』

「バッターチェンジどころか、ゲームセットしそうな勢いでアウトです」

『んー』

 アテナさんは考えるように唸り、すぐに解決案を出した。


『服を着せれば大丈夫なんじゃないですか?』

「大丈夫なんですか?」

『…………』

「黙らないでくださいよ!」

 まぁ、確かに服を着せれば少しは罪が軽くなるだろう。しかし服を着せるにしても、一体何を着せればいいんだ? ……やはりここは定番のワイシャツ!

『ワイシャツはアウトです』

「……」

『アウトです』

「そもそもワイシャツっていうのは、大きい胸の女の子に着せるためのもの。なんでこんな年端の行かない三次元娘に俺のワイシャツを着せなきゃならんのですかい。いいですか。俺のワイシャツはいつか二次元になったアテナさんに着てもらうためにあるのです。分かりました? もう一度言いますよ。二次元になって、俺のワイシャツ着てエッチしてください」

『……………』

「……………」

『……………』

「今のなしで」

『分かりました』


 ……しかし他の服もブカブカなのでアウトと変わらないのではないか。こんなとき初始先輩が帰宅していれば服を借りられるのに。いやあの人がいたら面白半分で真っ先に通報する。あの人の行動原理の半分以上は面白半分だからな。

 俺は携帯を顔から離しため息をついた。

 全く初始先輩のことを思い出すだけで、軽い鬱症状が現れてしまう。あの人の『オリジナリティー追求』と称して起こす事件には、今まで散々な迷惑をかけられてきた。具体的に言うと、探偵ごっこ狩りや宇宙生物召喚の儀式。そして一番嫌な思い出はオリジナリティーが明らかに無いのにも関わらず、無理矢理やらされた女装だ……。

 俺は再びため息をついて携帯の位置を元に戻し、アテナさんへ向けて言った。


「少女用の服、部屋にありました」

『……………』

「俺のじゃないですよ」

『じゃあ、誰のですか?』

「変態の物です」

『じゃあ、ニジゲンさんのじゃないですか』

「二次元しか愛せないのは特殊な性癖だ、とでも言いたのですか?」

『二次元しか愛せないのは特殊な性癖だ』

「俺のです」

 俺のものになってしまった。

 アテナさんは、クスクスと笑いながら言った。


『それでは少女を中へ入れて、服を着せましょう』

「え?」

 間抜けな声が出てしまった。

「中へ入れろと、おっしゃりやがっておりますのですよね?」

『おっしゃりやがっておりますのですね』

「……………」

 俺にとってこの部屋は城である。三次元から身を守れる大切な場所だ。今までこの部屋に上がったことのある者は俺の保護者である猫村さんと無理矢理入った初始先輩の二人だけで、家賃の取立てに来た大家やそれに雇われた八手衆の人相の悪い大人ですら入るのを阻止してきた。

 それほどまでに大切にしているこの城に見知らぬ全裸の少女を入れるというのは抵抗がある。


 そもそも少女が勝手にここへ来て勝手に騒いでいるのだ。なぜ俺の方から折れなければならぬ。確かに警察は怖いが俺には何の非もないのだ。変な誤解をされなければいいだけで、しかも警察には我らが保護者の猫村さんがいる。彼女が根回しをしてくれれば俺の三次元恐怖症を警察は本当の事だと知り、俺が少女に手を出すことは出来ないと分かるはずだ。

 ふう。どうやら俺は、意外に結構テンパっていたらしい。こんな簡単な事が考えられないとは。自分は冷静な奴だと思っていたが、その認識は改めなければならないようだ。

 俺は出来る限りの強気な声で言った。


「アテナさん、俺、通報します」

数秒だけ静寂がこの部屋を支配したあと、アテナさんは残念そうに言った。

『自首ですか……』

「言うと思ったぜ。オリジナリティーねえなぁ、オイ」

 俺は初始先輩の口癖で返した。

 アテナさんは呆れたようにため息をつき、言った。

『最後に一言だけ言います。よろしいですか?』

「よろよろです」


『静かですね』

 アテナさんがそう言うと同時に、通話は切られた。

 そして、さらにそれと同時に、

 扉が開かれた。


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