いつまでも続きますように
火星 アルダ鉱山 第128坑道
もうすでに使われなくなってしまった坑道を一機のLIVが大きな音を立てながら通り過ぎて行く。
LIVとは「labor implement vehicle」の略称で、簡単に説明すれば、二足歩行を可能とし人のように二本の腕による繊細な作業が出来るようになったまったく新しい重機だと思ってくれればいい。
「あのクソオヤジーー!」
パイロットは荒れていた。
ヒイラギ カズキはこのまるで迷宮のような廃坑を一人で進んでた。
あかりはLIVに付いている灯りのみで、坑道のマップがなければ多分迷っていただろう。
今日の労働時間が終了し、やっと帰れると思った矢先父親が現場から帰ってないと報告が来た。
現場監督から父親の機体の位置情報から現在地を割り出すと、驚いたことに何年も前に使わなくなった廃坑にいる事がわかった。
「なんでこんなとこにいるのんだよ」
数分進んだころで、目標地点であること示すアラームが大音量でなった。
「この辺か。」
機体のブーストを弱めつつ歩行モードに切り替える。
少し歩いた先に目標を発見した。
背面を向けているが、父親の機体である事がわかった。
「もしもーし、聞こてますかー?」
無線で呼びかける。
どうせいつも通り渋いこえで、軽めの謝罪が返ってくるだろうと思っていた。
しかし応答はまったく返って来なかった。それどころか返って来る気配さえなかった。
おかしいと思い、近づいてみるとコックピットハッチが開いていた。
さらにハッチ上部に付いている巻き取り式のケーブルが垂れていた。
「どこいったんだよ。」
周りを見渡すと、 坑道の壁に人がギリギリ通れそうな穴があった。
「まさかそこに入っていったのか?」
行こうかとても迷ってしまった。
二分ほど迷ってから仕方ないと思い、非常用の携行ライトを持ってコックピットを降りた。
コックピットから見た時よりも意外にも大きくこれなら大人でも余裕で入れる程度の穴だった。
歩いていると途中から足から伝わる地面の感触がかわった。
「え?」
最初は泥のようにネチャネチャしたような感触が突然
硬くしっかりとした石畳に変わっていた。
一体どうゆことだ・・・
下ばかり気が付かなかったがいつの間にか穴は抜けていた。
カズキが出たのは先が見えないほどに大きな空間だった。
ここは、なんなんだ・・・
さらに横に目をやるとそこには明らかに人口物らしき
壁が少しの隙間をおいて綺麗に並んでいた。しかも両側に。
壁は大小様々で四角や丸なのどの穴が開いていたり様々だった。
それはまるで家のようだった。
カズキはやっと理解したのだ。理解しざるおえなかった。
これが街であるとゆうことに。正確には街であった建築物群なのだと。
理解ができなかった。火星の地下に巨大な街が存在していることに。そもそも火星に人類が移住して来たのがいつだっけ?
おかしいだろ。
明らかに今の時代の建物じゃないし、そもそも地下に埋まってる理由が分かんない。
そもそもどうしてここに来たんだっけ?
・・・父さんか。
「父さーーん!」
叫ぶように、ここにいるであろう父親を呼んだ。
やはり返事は返ってこなかった。
これだけ呼んでも返事が返ってこないと変なイメージが自然と湧いてきてしまう。
まじで、それだけはやめてくれよ。
少し不安になってきた。
一回変なイメージが湧くとそれが頭から離れなくなってしまう。
自然と、親父を捜す足も速くなってしまう。
もしいるとしたらオヤジは中心に向かって歩くとはずと思った。
確信ないけどなぜかそう思った。
街の中心には大きな塔が建っていた
塔は円柱状になっていて、入り口は一つだけだった。
「よし。」
と決意を決めて一歩を踏み出そうとした時、背後から
肩を掴まれた。
火星第1衛星 フォボス
この衛星にはドーム状のコロニーがいくつも建造されている。
その全てが地球連合の施設で軍事基地、研究施設、ここで働く者たちの居住区など様々な物がある。
研究員のスズキはいつものように仕事を終え、ロッカールームに向かっていた。
反対から三人の人が無重力の中をこちらに進んできた。ここの制服を着ているが顔を見るととても若く高校生ぐらいの少年のようだった。
この時間に珍しいと思いならがスズキは挨拶の代わりに会釈をした。
そして顔を上げると、赤い液体が散った。
三人の先頭の一人がナイフで首を切り裂いた。動脈を切られ血が吹き出したのだ。
スズキは理解できなかった。一体何が起きたのか、この液体は何か理解した時には、すでに遅く意識を失ってしまった。
「研究員は殺すなと言っただろ!」
先ほどの三人の一人が言った。格好は三人ともここで働く職員の制服だった。
しかし一人は血で汚れてしまっていた。
「研究員達は俺たちが制圧した後もここで働かせることになっている。」
ボブカットの少年が赤毛の血で汚れてた少年に向かって少しイラついた口調で言った。
「・・・っ!別にいいじゃないですか。一人ぐらい死人が出たぐらいで。」
赤毛の少年はそう言って先ほどまで人間だったものを一瞥した。
「まぁまぁ、その辺にしときなよ。隊長ももう少し抑えようぜ。」
最後の一人、バンダナの少年が二人を諌める。
二人は睨み合いをやめ、落ち着きを取り戻した。
「っ!つまんねぇな。なんで軍事施設襲撃部隊に志願しなかったんだよ。」
赤毛の少年は不満そうに隊長と呼ばれた少年に向かって問いかける。
「俺たちの任務は総帥から直々に頂いたものだ。文句があるなら、本部にでも伝えろ。」
淡々と答える。
「・・・っ!総帥直々なら仕方ねぇな。」
赤毛の少年は不満そうに呟く。
「もう文句は無いな。行くぞ。」
「りょうかいでーす。」
軽薄そうに答えるバンダナの少年は二人のやり取りをみてニヤニヤしていた。
「了解。」
赤毛の少年はまだ不満そうに答えた。
三人の少年はこれからこの作戦で最重要目標の確保に向かって無重力の廊下を進んで行った。
火星 アルダ鉱山都市
「いい加減にしてくれよ。」
「ハハハ、すまんすまん許してくれ。」
日が沈み町の街灯がポツポツと灯りをともし始めたころ、やっと鉱山から帰ってこれた。
いつもなら日が沈む前には帰れるのに今日はだいぶ遅くなってしまった。
あいつ、怒ってるだろな〜
「いやぁ、すまんなカズキ。」
反省の色が全くかんじられない謝罪。
何度目だよ。
「もう、わかったからいいよ。」
とても疲れた。
今日のことはまじで疲れた。
2時間ほど前
「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
肩をいきなり掴まれたことに驚きを叫び声を上げてしまった。慌ててその場を走って逃げ出した。
するとその肩を掴んだであろう謎の存在に追いかけられてる気配を感じた。
「ひいぃぃぃぃぃぃ!」
まじかよ、何でこんなところに生き物がいるんだよ!
そのあと約10分ほど追いかけ回された。
走っているとどこからか俺の名前を呼ぶ声が聞こえ聞こえたのだ。
父さん!父さんの声だ!
とても安心感が湧いてきた。
しかしいまだ謎の存在に追いかけられている状況なので、気を緩めることはできなかった。
「父さん!どこだー。」
思いっきり叫ぶ。おやじとなら謎の生命体でも相手にできるだろうと思った。するとどこから「ここにいるよー」と返事が聞こえてきた。
走っているせいで声は小さくしか聞こえてこないがおやじが近くにいることがわかった。
「まってくれー」と声が聞こえてきた。さっきよりも声は近くなっていた。
ん?まってくれ?
「あ。」
思わず声が漏れてしまった。
全てがわかった。
走っていた足を急停止させる。
すると後ろからも速度を落とすような足音が聞こえてきた。
荒い息遣いと共に図体のでかい人間が現れる。
見た目は完全にボディビルダーのように筋骨隆々、顔もヒゲが伸びた、まさに鉱山で働くおっさんの格好だった。
まじかよ・・・
ここにいるおっさんは完全に俺が探しにきた人と身体的特徴が一致していた。
おやじだ。
「何で逃げるんだよ・・・ゼェ・・・ゼェ。」
まだ息も整ってないのにおやじが口を開いた。
「それは、ほら・・・父さんが脅かすから。」
「いや・・・それは悪かった・・・な。」
父さんは普通に謝った。
おれが思ってることは口にしなかった。
恥ずい。
あれを言われたらまじで死ぬな。
「いや〜カズキって意外とビビりなんだな。ハハハ。」
一瞬だけ間ができた。
顔が熱くなってきた、多分人にみられたら真っ赤な顔をしているだろ。
「忘れろぉぉぉぉぉぉ!!」
また俺の声が地下に響いた。
そして現在
「にしても、カズキがあそこまで驚くとは思ってもなかったな。」
鉱山での出来事を思い出してクスクスと笑いだす。
「その話を蒸し返すな。」
「まぁいいじゃないか、息子の新しい一面を見れてお父さんは嬉しいぞ〜。」
腕を大きく広げて抱きつく様な仕草で迫って来る父さんの頬に一発ビンタを入れる。
「まじで、やめろ!あんたに抱きつかれたら全身骨折になるわ!」
「ひどい、本当の親に手をあげるなんて。お父さんそんな風に育てた覚えはありません。」
わざとらしいセリフをわざとらしく乙女のポーズをとりながら目をウルウルさせて見てくる。
「気持ち悪いわ・・・。」
自分の父親の変なポーズを見せられてまじで萎える。
「なんだよ、全くノリの悪い息子だな〜。」
「こっちの身にもなれよ。」
はぁとため息をつきながら父親の方をみる。
そろそろいいかな。
最寄りの駅から自宅までの時間は約20分。
まだ家までは少し時間がかかる。
本当に聞きたいことを話そうとおもった。
「なぁ、父さん。何であんなところにいたんだ?」
父さんを探し始めてからずっと疑問だったことをやっと質問できた。これまではなぜかそれを聞いてはダメな気がして聞くことができなかった。
出来るだけ、自然に聞いた。
父さんからの返事は直ぐには返ってこなかったが、何を考えてるのだろと思ったが、少ししたら返って来た。
「あれなー。俺もよくわからんのだわ。」
ある意味期待してたセリフが返ってきた。
何とゆうか、父さんらしい言葉だった。
少し安心した。
ここで変な事を言われたらどうなる事かたら思っていた。
「よくわからないのに、あんな場所にいたのかよ。だってあれ、大発見だぜ。」
あの地下都市は人類が火星に移り住む前から存在してるはずだ。だからあれはこの火星に人類以外の何かが住んでいたことを証明する大きな証拠なのだから。
「そうなんだよなー。あれは大発見なんだけど、俺はあれを探さなきゃならない様な、使命感とゆうか義務感を感じたんだよ。」
「何だそれ、なら父さんはあれを探すのは当然だと思ったの?」
「見つけるまではそう思ってたんだけど、見つけたとたんに何してるんだろうと思ってな。」
よくわからなかった。父さんは本当に自分が何してるだろうと言った感じだった。
本当にただ偶然見つけただけなのか他に理由があるのか全くわからなかった。
「なぁカズキ、あの遺跡のことなんだけどな。少しの間あれのことは誰にも言わないでくれるか。」
「え・・・、どうして?」
父さんの提案は本当に理解できないものだった。
あの遺跡のことを報告すればおそらく大金がもらえるはずなのに、それにうちは決して裕福なわけではない。もらえるお金が多いにしろ、少ないにしろ生活の足しにできるならそうするべきだと思った。
「なんとなくな、少しの間でいいから。」
父さんが少しその時だけ怖く思えた。
「わ、わかったよ。」
そのあと何も話さなかった。
「おい、カズキ。家、通り過ぎてるぞ。」
気がつくと、いつの間にか自分の家の前だった。
父さんの声がなかった気づかないでそのまま歩いてただろう。
「あぁ、ごめん。考えごとしてた。」
家は4階建ての建物の二階にある。一階は花屋さんで二階から上はマンションになっている。
花屋さんは既に店を閉めていて、横の階段を登り自分の家のドアの前に立つ。
ドアを開けて中に入った。
「ただい・・ぐっふ!」
中に入り家に返ってきたことを伝えようとすると、お腹に鈍痛が走った。
「この、バカ兄ちゃん!」
玄関に立つのは5才年下の妹、ナツキ。
そうだった。
今日はこいつの誕生日だった。
こんな生活がいつまでも続くと思ってた。