第62話 ダメ姉は、掃除する
陸上部の一人の部員が捻挫したことにより、急遽マイエンジェルであるコマが助っ人として陸上競技大会に出場する事になった。出場競技はリレーと100m走で、個人100mの方はともかくリレーはバトンパスなどを他の出場選手と共に練習しなければいけない。
その為助っ人をすると決めたその日から、コマは放課後も早朝も毎日欠かさず猛特訓を行っている。
「―――それでは姉さま。行ってきます」
「うん。今日も大変だと思うけど、頑張ってねコマ」
「はいっ!頑張りますね!」
「昨日も言った通り、お姉ちゃんもお昼頃に陸上部に顔を出すよ。お弁当とかお菓子の差し入れを持ってきてあげるから楽しみにしててねーコマ♪」
今日は日曜日。一応学校自体はお休みの日なんだけど、陸上部の練習は今日も当然に行われるらしい。てなわけでまだ外が薄暗い早朝から張り切って練習へ向かうコマを、玄関先で見送ってあげる私。
……どうでも良いけど、なんか新婚さんたちのラブラブな朝の会話みたいで良いねコレ……!『行ってきますマイハニー♡』『行ってらっしゃいア・ナ・タ♡あとでお弁当後で持ってきますからねー』―――的な!
「……本当にすみません姉さま。お休みの日なのにわざわざご足労をかけてしまう事になって……」
「あはは!いーのいーの謝らないで」
そんな相も変わらぬ気持ち悪い想像をしている私に対して、申し訳なさそうにコマはペコリと頭を下げる。
どうしてコマが謝っているのかって?あと何で私がわざわざ差し入れなんか持っていくのかって?うん、まあそれは色々と理由があってだね……
もうご存知だと思うけれど、コマには他の人には言えないちょっぴり特異な体質がある。そう、この私と口づけを交わさなければ味覚が戻らないという体質が。
最近随分と改善されつつあるのだけれど、それでもやっぱり持続時間が過ぎてしまえば必ず一回は口づけしなきゃ味覚が戻らない。
当然昼食の時もコマと口づけを交わさなきゃいけないから、お昼前に一度コマと接触しなければならないのだけれど……もし仮に部外者の私が手ぶらで陸上部に顔を出したら、
『そこのダメ姉!コマちゃんの練習の邪魔になるからさっさと出ていきなさい!』
と、陸上部の連中から怒られて追い出される恐れもあるわけで。
そこで私が考えたのが、お昼ご飯やお菓子を作って陸上部に差し入れをするという作戦。差し入れって名目があれば、この私も陸上部に顔を出しても早々に追い払われる事は無いだろう。後は私の作ったご飯を陸上部の連中に食べて貰っている隙に、
『ゴメーン!生助会の部室に忘れ物してたからコマと一緒にちょっと取りに行ってくるねー!』
とかなんとか適当な口実を作り席を離れて、後はいつも通り部室でコマと口づけすれば良いだけだもんね。うむ、私にしては結構ナイスな考えだ。
「これは私が好きでやってる事だからさ、コマは気にしちゃダメだよ」
「ですが……私が大会に出たいと言い出したせいで、姉さまの貴重なお休みを使わせてしまう事になってしまいましたし……」
「だから謝んないでよコマ。私、コマの事を応援するって言ったじゃない。これくらいはお姉ちゃんとして私にやらせてよ。ね?」
「……ありがとうございます姉さま。差し入れも……それから私のこの体質の事も気にかけてくれて……」
「ハッハッハ!どういたしましてコマ!」
コマの頭をポンポンと優しく撫でてあげると、コマはちょっとはにかみながらも嬉しそうに感謝する。いやいや、これくらいお安い御用だよ。
「……さて。それでは名残惜しいですがそろそろ時間なので行きますね。姉さま、また後で」
「おお……もうそんな時間か。うん、了解。それじゃまた後で―――っと、そうだそうだ。ごめんコマ、ちょっと聞いても良いかな?」
「……?どうなさいましたか姉さま?」
と、朝練に向かおうとしたコマを引き留める私。いかんいかん……コマとのお喋りにかまけて大事な事聞くの忘れてたわ……
「いやさ、お昼まで時間あるし……今日は折角の日曜日だから時間を潰す意味でもさ、毎月恒例の家の大掃除をしようかなーってお姉ちゃん思ってるんだけど……」
「お家のお掃除、ですか?」
……意外だと思われるかもしれないけれど、私は結構綺麗好き。部屋の整理整頓とか掃除とかが大好きなのである。だからこういう休日になると、楽しく掃除させて貰っているんだけれど……
「うん、そうお掃除。それでその……家中掃除するつもりなんだけど……今日はコマ一日中陸上の練習があるから自分のお部屋の掃除は出来ないでしょ?だからってわけじゃないけど……ついでにコマの部屋も私がお掃除しちゃっても良いかな?」
「……ふむ」
流石に本人の許可なく勝手に部屋に入って掃除をするのはコマに嫌われてしまう恐れがあるだろう。そう思ってコマに恐る恐る許可を取ってみる私。やっぱプライバシー的な意味でも嫌がられるかな……?
「………勿論コマが部屋に入って欲しくないなら無理に入って掃除なんてしないんだけど……どうしよっかコマ?私に掃除されるの嫌かな?」
「いいえ。私は構いませんよ。姉さまなら別に勝手に部屋に入って貰ってもなにも問題ありません。もし姉さまさえ良ければ、私の部屋の掃除もお願いしたいです」
姉妹とはいえ流石に自分の部屋を勝手に掃除させられるのはちょっと困るかな?と思ったけれど……コマは嫌な顔一つせず爽やかに了承してくれる。
まあ、清楚で可憐なコマが私に見られて困るような物なんて『…………(ボソッ)なにせ姉さまに見られたらマズい物は、予め全て金庫の中に入れて鍵をかけてますので……なにも問題ありませんもの』持ってるはずもないか。余計な心配だったね。
「ん、オッケーわかった。それじゃあありがたく掃除をやらせて貰うからね。お部屋、ピカピカにしといてあげる!ホコリ一つ残さないからね!」
「ふふっ……それは帰ってからがとても楽しみですね。それでは姉さま、重ね重ねよろしくお願いします。私は練習に行ってきますね」
「行ってらっしゃーい!」
手を振ってコマは元気に玄関を出る。私もコマに負けないように全力で手を振って、扉が閉まると同時に扉越しにこっそり投げキッスをしてから行動開始する。
手始めに掃除用具入れから掃除機や雑巾などを取り出して、コマの部屋へと向かう事に。
「…………コホン。そんじゃ、失礼するねーコマ」
部屋の主であるコマは居ないけれど、礼儀として咳払いをして一言そう呟いてからコマの部屋へと足を踏み入れる。部屋に入るのは期末試験の時以来かな?
「ふむふむ……なるほど。偉いなぁコマ。ちゃんと整理整頓出来てるじゃない」
中にお邪魔して軽く周囲を見回す私。やはりというべきか、私と同様に綺麗好きなコマは私に言われなくても部屋はきっちりと片付けているようだ。
ありがたい。これなら改めて部屋を片付ける必要が無いし、後は普段は掃除しにくい本棚の裏や額縁の裏……それから窓ふきとかだけに集中出来るね。しっかり者の妹を持ってお姉ちゃん嬉しいよ。
「さてと。早速掃除に取り掛かる―――のも良いんだけれど。その前にだ……」
掃除の前に折角コマのお部屋にお邪魔させて貰っているんだ。コマが居ない間に……やっておきたいことがある。
とりあえず持ってきた掃除機やバケツをそっと床に置いた私は、ちょっぴりドキドキしながらコマのベッドへと歩みを進ませ……
ポスッ
半ば倒れ込むように、ベッドの上に横になる。そう……コマがいつも眠っているであろうベッドの上に。
「…………ふぉ……ふぉおおおお!コマのベッド!コマのシーツ!コマの枕!コマのお布団!ふぉおおおおおおおお!」
コマの愛用しているお布団をギュっと抱きしめつつ、奇声を発し身をよじりながらゴロゴロとベッドの端から端まで転げ回る私。時折コマの枕に顔を埋めては……思いっきりスーハースーハーとその甘い香りを吸い込む。
…………お前は一体何をしてるのかって?ヤダ……そんなの私に言わせないでよ。恥ずかしいじゃないの。
「おぉ……なんてグッドスメル。グッドスメル……ッ!」
コマが居ない事を良い事に、好き勝手大暴れする私。つい数分前までコマが眠っていたベッドに残る……コマのぬくもりが、コマの残り香が、私を優しく包み込む。
何という……何という至福の時だろうか。このままこの恍惚感に永遠に浸っていたいくらいだ。
「…………ハッ!?こ、これ……こ、こここ……コマの髪の毛!?」
転がり回って悶えていると、シーツに残っていた真っすぐ伸びた長くて綺麗なコマの髪の毛を発見する。ありがたく頂戴して、私の宝物として大切に保管する事にしようじゃないか。
そんな事を考えながら懐からジッパー付きのビニール袋を取り出して、いそいそとコマの髪の毛を回収―――しようとした次の瞬間。
ガチャ
「…………ね、姉さま……?何を……なさっているのですか……?」
「ぶふぅッ!?」
突然私の背後の扉が開かれて、そう私に問いかける震えるような声が聞こえてきた。
ね、姉さま……だと……!?ば、バカな!?こ、コマが戻ってきたとでも言うのか!?い、今は朝練の時間じゃないの……!?ま、まさか忘れ物したとかか……!?
「ち、ちちち違うのコマ!?こ、これは違うくて!?そういうアレじゃなくてだね!?」
何にせよこの状況はひじょーにマズい。大慌てでベッドから抜け出して、何とか言い訳をすべく振り返る私。そんな私の目に映ったのは、
「ハッハッハ!やーい、騙されてやんのー。どーだマコ?コマの声に似てたかー?」
「…………びっ……くりしたぁ……ッ!お、叔母さんかよ!?」
扉に寄りかかって立つ、意地の悪そうなニヤケ顔のめい子叔母さんの姿だった。…………今の……声真似かい……
とりあえずコマにさっきまでの私の行為を見られてなかった事を安堵した私は、へなへなとその場に崩れ落ちる。じゅ、寿命が縮まったわコレ……
「お、叔母さん!?質の悪すぎる冗談は止めてくれないかな!?心臓止まるかと思ったじゃないのさ!?私からかって楽しいの!?」
「ええ、とっても楽しいですよ姉さま♡」
「だから止めろって言ってんでしょうがぁああああああああ!!?」
思わず叔母さんに掴みかかって抗議する私だけれど、叔母さんはしれっとした顔で再びコマの声真似をしながら私をいなす。
……なまじ叔母なだけに微妙にコマの声に似てるから余計に腹が立つわ……
「そう怒るなっての。小粋なジョークだろ。……大体よぉ、コマに見られて困るような事をしてたお前の方こそ悪いじゃんか」
「ぐ……そ、それは……」
全面的に私に非があるだけに全く言い返せない……
ま、まあ軽い冗談だもんね。私は寛容な女だし叔母さんの子どもっぽい冗談なら大目に見てあげようじゃないか。
「わ、わかったよ。今の叔母さんの悪戯は不問にしといてあげる。…………い、一応言っておくけど今見た事はコマに言わないでよね叔母さん……頼むから……」
「えー?どうしよっかなー?マコが土下座して、『お願いします叔母さま……!今日は美味しいおつまみいっぱい作りますし、お酒もどれだけ呑んで良いので黙っていてください!』って言ってくれるなら考えてもいいけどなー」
「……」
ヤロウ……こっちが下手に出ればいい気になりおって……
「…………ふーん。そういう事言うんだ。言っちゃうんだ。……別にいいよ。話したいなら話しても」
「へ……?良いのか?お前、話されたら困るんじゃねーの?」
「うん良いよ。その代わり…………コマにこの事を話した時点で、叔母さんの部屋の掃除をさせて貰うから覚悟しておくことだね」
「冗談だぞマコちゃんや。叔母ちゃんが大切なマコちゃんを困らせるような事を言うハズ無いじゃないかい。……だから、アタシの部屋の掃除するとかシャレにならないから止めてくださいお願いします……!」
冷や汗をダラダラとかきながら、叔母さんは土下座して頼み込む。バカめ、家事的な意味でこの家のヒエラルキーを見れば私が叔母さんよりも立場が上だって事をすっかり忘れていたな?
「てか、私に掃除されるのってそんなに嫌なの?あんな汚部屋正直見るに堪えないし、散らかってるの見るの我慢ならないし……出来れば私、冗談抜きで叔母さんの部屋掃除したいんだけど……」
「や、止めろよな!?お前掃除と称してアタシの私物とか容赦なく捨てるじゃんか!?」
「そりゃゴミが部屋中に散らばってたら遠慮なく捨てるに決まってんじゃん……」
私やコマと真逆で叔母さんは片付けが苦手。いくら注意しても自分の部屋は掃除しないし、誰がどう見てもゴミな物であっても捨てられないとか。
私からしてみれば、消費期限切れのお菓子とかいつ買ったのかわからない飲みかけのペットボトルとか……何故捨てられないのか全く理解できんわ。私とはベクトル違いの立派な(?)ダメ人間だよなぁこの人……
「私に片付けられるのが嫌なら自分の部屋くらい自分で掃除しなさいな。部屋の乱れは心の乱れだよ叔母さん。お部屋をきちんと片付ければ、それだけで仕事もきっと捗ると思うんだけど?」
「い、今小説書くので忙しいし……掃除する余裕が無いんだよ……」
「……じゃあ仕事が落ち着いたらちゃんと自分で片付けてよね」
「へーい」
まるでやる気の無い返事を返す叔母さん。多分この様子じゃ仕事が落ち着いても掃除なんてしないだろうなぁ……まあいいか。あんまり口うるさく言っても効果ないだろうし。
さて……十分コマの残り香とぬくもりは味わった事だし、これ以上続けるとまた叔母さんにからかわれる事だろう。そろそろ本格的に本来の目的だったコマのお部屋の掃除を始めるとしますかね。まずははたきを片手にホコリを落とす事からやりますか。
「はたきの基本は上から下に~♪っと」
「……マコって見た目によらず掃除上手いよな。ちょっとだけ感心するわ」
「見た目によらず、とは失礼だね叔母さん。てか何で叔母さんここに残ってるのさ。仕事しなくていいの?」
「ん?ああ、大丈夫。ちょうど一段落ついたところだよ。暇だしマコを弄るついでに次の小説のネタでも考えようかと思ってな」
本棚やカーテンレールなどをはたき掃除している間も、叔母さんはコマの勉強机の椅子に座って興味深そうに掃除中の私を観察している。
ぶっちゃけ邪魔だし暇なら掃除手伝ってくれればいいのに……
「ふーん……あ、小説ってもしかして例の私とコマをモデルにしてるアレ?」
「おうさ。夏休みに十分ネタが集まったし……我ながら今回も良い出来だぞ!BA☆KA☆U☆RE☆間違いなしさね!」
「……それは自分で言う事かね?」
自慢げに胸を張ってそうほざく叔母さん。……まあ、私はともかくコマをモデルにしているだけあって確かに出来は良いけどね……毎巻楽しみに読ませて貰っているわけだし……
「それはともかく……ねぇ叔母さん。あの小説読んでて気になってたことがあるんだけど聞いても良い?」
「あー?なんだ?良い感想なら大歓迎、酷評ならお断りだぞー」
一通りはたき掃除は終え、今度は掃除機をかけながら叔母さんに話しかける。
「別に大した質問じゃないんだけど……あれってやっぱり私とコマをモデルにしているんだよね?」
「あ、ああ。そうだけど……まさかモデル代をもっと寄こせって言うんじゃねーだろうな?」
「ううん、そうじゃなくてね……ホラ、あの小説ってさ―――姉の方は実は根っこは純粋で、妹の方は実はかなりのムッツリスケベで姉の事をいつでも性的に狙ってるって設定でしょ?あれって何でそんな設定にしたの?逆じゃない?」
「…………」
ずっと気になっていたことを尋ねてみる私。モデル的にはその設定、どう考えても私とコマの立ち位置が逆だと思うんだけどなぁ……
私がそう尋ねてみると、叔母さんは気まずそうに目を伏せて何かブツブツと呟き始める。
「…………(ボソッ)知らぬは本人ばかりなり、か。……アイツもあれ程まで分かりやすくマコにアプローチしてんのになぁ……」
「は?」
「……いいや、何でもないよ。設定の差異の件は……ホレ、そのまんまの設定だと面白くないだろ?だから多少アレンジして書いてるからそうなったんだよ」
「ああ、そう言う事ね」
なるほどアレンジね……確かにまんま私とコマの日常を描いてもつまんないか。そっかそっか。前から気になっていた疑問が一つ解消されてちょっとすっきりしたよ。
「…………なあマコ。アタシもお前に聞きたいことがあるんだが……少し良いかい?」
「んー?なぁに?」
掃除機もかけ終えて後は窓ふきでもしようかなと思っていた矢先、今度は叔母さんの方から私に質問してくる。おや?わざわざ改まって聞きたいこととは何だろう?
「……ちょっと今後の……小説の結末で悩んでいるんだけどよ」
「小説って……今言ってた私とコマをモデルにしてるやつの事?」
「おうそれだ。参考までに小説のモデルになってるお前に聞きたい。……万に一つ……いや、億に……いいや兆に一つの可能性だが、コマがお前の事をLikeじゃなくLoveの意味で好きになったとしてだ」
「それってほぼ可能性はゼロだって言ってるようなものじゃないかな……!?」
ちょっと悲しくなった。ま、まあ確かにそれくらい可能性が無いことだって私もわかってはいるけどさ……ちょっとくらい希望を持たせてくれても良いと思うの……
も、もしかしたら何かの気の迷いでコマが私の事を好きになってくれるかも……しれないじゃないの……
「いいからアタシの話を聞けっての。もしコマがお前の事を好きになったとしてだな、コマに『好きです姉さま、付き合ってください』と告られたとする。その場合…………お前はどうする?」
「……ええっと」
珍しくめちゃくちゃ真剣そうな表情で私に問いかける叔母さん。いきなり何なんだよ全く……
どうするって言われても……何というか……変な質問するよなぁ叔母さんも。
そんなの……わかりきった事だろうに。
「叔母さんがどういう小説の結末を考えてんのかは知らないけどさ……もしもそんな素敵な事になったら……」
「なったら?」
「…………絶対に、コマを幸せにする……かな」
「……ほほぅ」
当たり前の事をごくごく自然にそう答えると、叔母さんは満足したようにニカッと笑う。
「……うん。それでこそマコだな。鈍感娘の癖に良い答えだ」
「ど、鈍感……?ちょい待ち叔母さん、それ何の話さ?」
「ハハッ!何でもないよ。サンキュー、参考になったぞ。……それよか時間は大丈夫かマコ?そろそろ掃除終わらせてコマの昼飯を作り始めたほうがよくないかい?お前さん、差し入れ持って陸上部に顔を出すって言ってただろ」
「へ……?―――あ、ああ嘘!?もうこんな時間!?」
時計を見ると、いつの間にやら9時を回っている。ま、マズい……叔母さんと話し込み過ぎた……
今日はコマの分は勿論、陸上部全員分のお弁当&お菓子を作らなきゃならないってのに……!
「ご、ゴメン叔母さん!話はここまで!私もう料理始めないと……!」
「おー、ワリィな無駄話に付き合わせちまって」
叔母さんの質問の意図はイマイチわからなかったけれど……とりあえず掃除を一時中断し急いで料理を始める事に。
さてと……すべては頑張っているコマの為。気合を入れて美味しくて力が出るお弁当&お菓子を作るとしましょうかね。