第38話 ダメ姉は、勉強する(in コマの部屋)
期末試験対策の為、これから一週間愛しき妹のコマが家庭教師役として私の勉強を見てくれることになった。
「ね、姉さま……どうぞ。私の部屋です」
「う、うん。お、お邪魔しまーす……」
「好きなところに座っていてくださいね姉様。今、二人で勉強できるようにすぐ準備しますので」
そんなわけで晩ご飯を食べ終え、後片付けを済ませると早速コマのお部屋にお呼ばれされた私。
密かに(?)想いを寄せている妹の部屋にお邪魔するってシチュエーション、ちょっとだけ……いや、正直に告白するとめちゃくちゃドキドキするなぁ……
「ありがとうコマ。……ふーん、ここがコマの部屋かぁ。なんか……コマのお部屋に来たのって、かなり久しぶりな気がするや」
「あー……確かに。姉さまと部屋は隣ですけど、姉さまをこの部屋で出迎えたことって言われてみればあまりありませんでしたっけ」
「まあ二人で集まるなら、普通にリビングにでも行けばいいだけだからねー」
昔はコマと一緒の部屋だったけど、中学に上がり二人別々の部屋を与えられて以来、コマの部屋にお邪魔したことなんてほとんど無かった。
そう思うと同じ屋根の下で暮らしていると言うのに何だか新鮮な気分だ。思わずコマの部屋を舐めまわすようにじっくりと眺めてしまう私。
「……あ、あの姉さま……あまり見ないでくださいまし。……飾り気も無ければ面白味など一つもない、殺風景な部屋ですし……おまけに女の子の部屋なのにトレーニング用品がいっぱいある部屋なんて、女っ気がなくてちょっと恥ずかしいです……」
その私の視線に気づいたのだろう。丸テーブルをクローゼットから取り出しながら、コマは顔を赤くしてそんな可愛いことを言ってくる。確かに変に飾らないシンプルで無駄がないコマの部屋。部屋の片隅にはダンベルをはじめとした筋トレグッズがちらりと見えてしまう。
花も恥じらう乙女としては、恥ずかしがる気持ちはわからんでもない……けれども。もー、そんなこと言わなくていいのに。
「いやいやいや、何を仰るコマさんや。コマらしさが出ているとても素敵なお部屋だよ。何というか…大人の女性の部屋みたいで、私はコマの部屋カッコよくて好きだよ。筋トレグッズとかもいつも頑張って身体を鍛えているんだなってわかるし良いじゃないの」
「ほ、ホントですか?」
「うむす。それに…きちんと部屋が整理整頓されてるとことか特に良いね。掃除とか片付けとかしっかりしてて、お姉ちゃん感心するよ」
「そ、そう言って頂けると嬉しいです。ありがとうございます姉さま。…………(ボソッ)良かった、こういう事もあろうかと毎日しっかり掃除しておいて……」
どうにもオカン体質な私としては、部屋が片付いていないと落ち着かない。その点叔母さんの汚部屋と違い、コマのお部屋はコマ本人の清楚で清潔なイメージ通り実によく整理され掃除もいきわたっていて、清涼感がありとても良い。
「良い……ホントに……イイ……ッ!」
……その清涼感がこの部屋いっぱいに漂うフローラルなコマ特有の素敵な香りを心なしか一層引き立てている気がする。
深呼吸をしてみると胸に広がり満ちてゆくコマの香り。ああもう、私これだけでご飯食べられそうだわ。
「…………なんというグッドスメル……おぉ、グッドスメル……ッ!」
「……?姉さま、どうして深呼吸なさっているのですか?」
「へぅ!?あっ……い、いやその…………せ、精神集中のために……深呼吸しとかなきゃって思ってね……」
「ああ、なるほどです。……ふふっ♪素晴らしい。とても気合が入っているのですね姉さま。さて……それでは姉さまの気合も十分みたいですし、そろそろ勉強を始めましょうか。準備は宜しいでしょうか姉さま?」
この部屋の空気を全て吸い尽くす勢いで深呼吸しているうちに、コマは部屋の中央に丸テーブルや二人分のクッション、各種勉強道具や筆記用具、ルーズリーフ等を用意して準備を整えてくれた。
「はーい、大丈夫でーす。それじゃあコマ先生、厄介な生徒という事は重々承知しておりますが、今日からどうぞよろしくお願いしまーす!」
「はい、こちらこそ未熟な新米家庭教師ですが……よろしくお願いします姉さま」
これより家庭教師コマ先生による、期末試験勉強会の始まり始まりだ。
「では姉さま。まず、勉強を始める前にいくつか確認をしておきたいことがあるのですが、良いですか?」
「ん?確認しておきたいこと?」
てっきり早速演習問題とかをじゃんじゃん解かせるとばかり思っていた私に、コマがそんなことを告げる。確認……?今更改まって一体なんの確認だろうか?
「はい、確認です。まず姉さまは今回の期末試験を―――『赤点を回避したい』のですか?それとも『高得点を取りたい』のですか?」
「……うん?」
『赤点回避』か『高得点狙い』か……?う、うーむ。コマの質問の意図がよくわからない。それを聞いたところで何になるのだろうか……?
「え、えっと……そうだね。そりゃ確かに良い点数取って成績を上げたい気持ちは勿論あるけど、やっぱり今のところは何としても『赤点を回避したい』……かな」
「……そうですか。良かった」
とりあえず素直な今の私の気持ちを口に出してみると、コマはホッとした表情で良かったと言ってくれる。今の質問、どういう事だろうか?
「妙な質問をしてしまい申し訳ありません姉さま。最初に今後の方針を決めたかったので」
「今後の方針……?」
「はい。……正直に申し上げると、試験一週間前の状態で『高得点を狙いたい』と姉さまに言われたらどうしようかと思っていました。流石に今から高得点狙うのは、時間的にも姉さまの負担的にもかなり厳しいですからね」
苦笑交じりにコマはそんなことを言う。デスヨネー……まあ、私も短期間で成績上位者になれるとは思っていない。
今はとにかく赤点&留年を回避し、コマからがっかりされないように……そして絶縁されない程度に点数を取れればそれでいいと思っているわけだし。
「ですが良かったです。姉さまがあくまで『赤点回避』が目的であるなら、今からでも対策は十分可能ですからね」
「ほ、ホント?私でも何とかなりそう?」
「勿論ですとも」
そう言って手元にあるルーズリーフに『学習計画表』と綺麗な字で書き込みながら、私と会話を続けるコマ。
「では次に。具体的にどの科目をどのように勉強するか。……姉さま。参考までに、今まで姉さまは試験前はどのように勉強なさっていましたか?」
「今までの私の勉強方法?んーと……そうだね、とにかく試験範囲の教科書と参考書をひたすら眺めながら全部を丸暗記―――かな」
「なるほど……」
これまでの私の試験勉強といえば、試験前日に教科書と睨めっこしてとにかく頭に詰め込んで試験に挑むというやり方である。
……勿論、それで良い点数がとれた試しなど一度もない。
「姉さま。もしその今までの姉さまの勉強法にこだわりがあるならば申し訳ありません。ハッキリ言いますが、その勉強法では赤点を回避するのは…………難しいです」
「あ、あはは。だよねー……」
「ですから今回姉さまには、私の教える通りに勉強してもらいます。……妹に指図されるのは姉さまもお嫌でしょうが、どうか私を信じてください」
「うんっ!それは勿論だよ!」
コマのその一言に力強く返事をする私。どうせ私如きが考えた勉強法なんて役に立ちはしないわけだし、何よりコマの言ってくれることなら、問答無用で、何でも信じられるもんね。
「ありがとうございます。さて、それを踏まえたうえでどの科目をどのように勉強するかの話に戻りますね。期末試験は姉さまもご存知の通り主要教科の国語・数学・理科・社会・英語に加え、副教科の美術・音楽・保健体育・そして技術家庭の計9科目による試験が実施されることになっています」
「うへぇ……わかっちゃいたけどやっぱ多いね…」
ルーズリーフに書かれた9科目。こう文字に出されると改めて気が滅入る。なーんでこんなに勉強しなきゃならんのか。やれやれ、早く大人になりたいものだね。
「ただし……この9科目のうち、技術家庭に関しては私が姉さまに教えることは何もありません」
「えっ?お、教えること無いってどういう……?」
「だってそうでしょう?姉さまは何も勉強せずとも、毎回技術家庭は100点を取っていますもの」
「あー……うん。まあ、これだけが私の唯一の得点源だからね」
そう言ってルーズリーフに書かれた技術家庭に×印を付けるコマ。確かにこの科目に関してはコマの言う通り私にとっては日常的に勉強しているようなものだし、今更改めて勉強する必要はないだろう。
「ですので今回姉さまが勉強しなければならないのは8科目。……そしてこの8科目のうち、とある教科を除けば……今回の期末試験は、全て暗記科目と考えてもらって構いません。これから私が科目ごとに指示する箇所さえきちんと暗記すれば、赤点になる事態はまず無いでしょう」
「へっ!?」
そう断言するコマに思わず驚いて声を出してしまう私。コマの話を鵜呑みすると……つまり7科目が全て暗記科目ということになるってこと……?
それに指示する部分さえ暗記すれば赤点回避出来るなんて……どうしてコマは断言できるんだろうか……?
「随分と不思議そうですね姉さま」
「う、うん。なんでコマがそう断言できるのか、私ちょっとわかんない……」
そんな感じで困惑している私に対して、くすっと笑いながらコマは話を続けてくれる。
「実はですね。中間試験・期末試験問わず、定期試験にはとある前提条件が存在するのですよ姉さま。まず、当然ですが試験範囲内でしか問題を出さないこと。そしてその試験範囲の中で、先生方がどうしても出さねばならない問題があること。この前提で試験は成り立っています」
「うん……?待ってコマ。試験範囲内でしか問題出さないってことは分かるけど……どうしても出さねばならない問題って何の話なの?」
「はい、これはですね。先生方には……単元ごとに生徒に必ず理解しておいて欲しい箇所があるのです」
コマ曰く。義務教育を教えている中学教師には生徒たちに授業を通して必ず身につけて欲しい知識があり、生徒たちがその知識をちゃんと身についていなければ偉い人に怒られるそうだ。だから日々先生たちは私たち生徒に一生懸命勉強させてその知識を植え付けているとか。
そして授業の内容をきちんと理解できているかを計るために試験を行うとのこと。なるほど……試験をすれば一発で、誰がその知識を身につけていて誰が身についていないかを簡単に発見できるもんね。
「そういったところは何としても生徒たちに確実に解いて正解して欲しいと先生方も考えています。その為先生方は試験前になれば、授業中に『ここは大事だぞ』と何度も強調されることがありますでしょう?あれは要するに『ここは必ず身につけてほしいし、試験に出題するかもしれませんよ』と、それとなく教えてくれているようなものなのです」
「…………あっ!よ、よく聞くあれってそういう事なの!?」
確かに授業中に先生ったら何か妙に口煩く強調してるし、変だなーとは思ってたけど……まさかそういう意図があったとは……全然知らんかった……
「他にも板書中に色違いのチョークを使って大事なところを強調してみたり、配布資料の中の単語にラインを引かせたり。……先生方はあの手この手を使って『ここはしっかり理解しておこう、試験にも出すよ』と、私たち生徒へ向け伝えているというわけです」
「へぇ……」
先生たちってそういうこと考えて授業やってたんだ。やれやれ。直接言ってくれればいいのに回りくどいなぁ……
…………あれ?けどちょっと待てよ……?
「じゃ、じゃあもしかして……授業中にあまりノートとか取れてなかったり、大事なところをほぼ聞き逃してたり、あまつさえ配布プリントとかなくしちゃってる私って……今回の試験、かなりヤバいのでは……?」
「あ、そちらに関しては安心してください姉さま。姉さまが在籍されているA組と、私が在籍しているB組は試験範囲も試験問題も全く同じです。どの部分が大事なのかは私が把握してますし、後で私のノートや資料をコピーして試験に出るであろう箇所をピックアップしておきますからご心配なさらず」
「ありがとう……本当にありがとうコマ……!」
改めてうちの妹は天使で神じゃないのかと思ってしまう。ホント頼りがいのある優秀な妹を持って、お姉ちゃん感謝感激雨あられよ。
「そういうわけですので。必ず出るであろう箇所を重点的に暗記し、あとは科目ごとの傾向を抑えることが出来れば……良くて60~70点代・悪くても40~50点代には落ち着けるかと。うちの学校では30点以下が赤点判定ですから……赤点回避は今からでも十分に可能と言えます。……まあ本来ならば成績評価される試験ですし、これにプラスアルファで勉強して更に高得点を狙うべきでしょうが……」
そう言いつつ一旦区切り、少し申し訳なさそうな表情をして『期末試験は範囲も広く科目も多く、そして時間もありません。ですから最低限必ず出題されるであろう箇所しか教えられません』とコマは続ける。
なるほどね。だからコマはさっき方針を決めるために『高得点取りたい』か『赤点回避したい』かって私に聞いてきたのか。
高得点を狙うのであればコマの言うプラスアルファまで頑張らなきゃいけないけど……その気持ちを切り捨てて、最低限の勉強をきっちりやれば……今からでも赤点は回避できる、と。うーむ、コマはよく考えてるなぁ……
「OKだよコマ。私としては欲張らず赤点回避できる点数さえ取れればそれでいいと思っているし、コマの方針に全く異論はないよ」
「……それなら良かった。ありがとうございます姉さま」
勿論いずれはしっかりと勉強を続けて、コマに誇れる勉強が出来る優秀な姉になりたいけれど……今は贅沢言わずにやれることをやるだけだ。
そして私にやれることと言えば、コマを信じて勉強を頑張るだけだよね。
「それでは最後に。暗記だけではどうにもならない科目の対策についてです」
「暗記だけじゃどうにもならないある科目……?あ、ああそういえばある教科を除けば残りは全部暗記科目って言ってたね。もしかしてそれの事?」
「ええ。今回の期末試験において、恐らく姉さまにとって一番の鬼門ともいえる科目です。この科目だけは暗記をするだけでは試験を乗り越えられないでしょう」
「それって一体なんの科目?」
「えっと……数学、です」
「…………なるほどね」
…………数学かぁ。ヤバい、私の大の苦手の科目じゃないか……
「この科目に関してはただ公式を覚えただけでは問題を解けませんからね。公式の意味を理解したうえでそれを使えるようにならないと太刀打ちできません。加えてこの科目……姉さまは確か……」
「うん、自分でもよーくわかってる。一番苦手な科目だよ。数学ってさ、公式とその使い方がわかんないと話にならなくて困っちゃうんだよね……教科書読むだけじゃ全く点が取れないし」
「ですよね。そのためにも今回姉さまには、数学の勉強に力を入れていきたいと思います。他の科目よりも勉強時間を多めに取るつもりですし、毎日必ず数学を勉強する時間を入れます。……姉さまの為と思って心を鬼にして、数学は特に厳しめに指導するかもしれませんので、どうかお覚悟ください」
「うー……」
コマのその言葉に思わず身震いしてしまう。勿論他の科目にも言えることだけど、特に数学はかなり苦手意識がある私。だからこそコマの指導に付いて行けるか心配だ。
もしこれでコマの指導に付いて行けず、コマの期待に応えられなかった場合……コマに失望されやしないだろうか……?
「……大丈夫ですよ姉さま」
「へ……?だ、大丈夫って……な、何が?」
と、そんな考えが顔に出ていたのだろうか。コマが慈愛に満ちた表情で私に声をかけてくれる。
「厳しく指導すると言いましたが、それは姉さまなら必ず指導に付いて行けると判断しているからですよ。私は姉さまには、姉さまが出来る事しか教えません。姉さまが絶対に出来ると判断したことしか要求しませんから」
「コマ……」
「ですから心配しないでください。私、姉さまなら必ず乗り越えられるって思っています。期末試験くらい、姉さまなら簡単にやっつけられるって信じてますから♪」
花丸満点の笑顔でコマはそう私を励ましてくれる。これは……コマに期待されると思っても良いんだよね?
「そっか……うん。ありがとねコマ。何かお姉ちゃん、コマのお陰で自信沸いてきたよ!私頑張るね!」
「ええ、私も指導を全力で頑張りますね」
二人で笑い合いながら一緒に頑張る宣言を行う。よーし……気合入ってきたぞ!
「……それでは本日は手始めに、最初の1時間で英語を。30分間で保健体育を。そして最後に数学を1時間半やってみるスケジュールで勉強を始めてみましょうか。今後の学習スケジュールは後日表にして姉さまにお渡します。勿論進行具合によっては随時勉強時間の調整を行う形で。……そういう感じで宜しいですか?」
「了解っ!お願いしますコマ先生っ!」
「では早速、英語の勉強を始めましょうか」
丁寧な学習計画を立ててから、いよいよ勉強会が本格スタート。苦手な科目の勉強、覚えなきゃいけない多くの事……たくさんありすぎて正直自信なんてないけれど……私にはコマが付いている。どんな困難も二人でなら乗り越えてみせるさ……!
そんな意気込みを胸に抱き、教科書とノートを開く私であった
―――のだけれども。
~5分後~
「わぁ……!ねえねぇコマ!これって四月のお花見の時の写真?いやぁ、よく撮れてるねー」
「ええそうです♪この姉さまの写真とか特に綺麗に撮れていますでしょう?……これって、私のお気に入りなんですよ♡」
「いやいや。こっちのコマの写真とか芸術的過ぎると思うよ。……ねぇコマ。この写真、もし良かったら貰ってもいいかな……?」
~10分後~
「はーいコマ♡お待たせー♪息抜きにデザート持ってきたよー!昨日作っておいた冷たくて美味しいゼリーだよー!」
「わぁ……!美味しそうですね。で、では……折角ですし少しだけ頂いても良いでしょうか?」
「うんうん!遠慮せずに食べちゃって!たくさん作っておいたから、おかわりもいっぱいあるよー!」
「ええ頂きます。……それで、その。……姉さま。食べる前はいつものように……アレを、お願いしても……いいですか?」
「アレ?アレって…………あ。……う、うん。そっか……そうだよね。食べるなら味覚戻さなきゃなんないよね。な、ならコマ……おいで」
「は、はい……失礼します姉さま……」
~30分後~
「姉さま、どうですか?気持ちいいですか?」
「うん……あ、っ…………ぅん……気持ち、いいよぉ……あぁ、もっと奥を、おねがいコマぁ……」
「任せてください。ではゆっくり入れますから……痛かったら言ってくださいね」
「あーい。……ぅん…っ!そ、そこ……!そこ、いい……ッ」
「…………ふふっ♪姉さまったら蕩けた顔になっちゃって……可愛いです」
「こ、こま……お、おわったら……次、お姉ちゃんが……コマに……してあげるね―――耳かき」
「は、はいですっ!楽しみにしてま―――」
バンッ!
「いい加減、イチャついてないでちゃんと勉強しろやこのバカップル共が……っ!」
「「あっ……」」
最初の意気込みは何処へやら。気が付けばコマと一緒に仲良く遊んでいた私。お陰で一部始終を見ていた叔母さんに部屋に乗り込まれ、コマ共々拳骨を貰う羽目に。
……二人っきりで勉強すると全く勉強にならないという事が、この日一番勉強になった事であった。
【試験まで残り7日】