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ダメな姉(わたし)は妹を愛でる  作者: 御園海音
大学生の妹も可愛い
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ダメ姉は、○○をキメる

 元々おバカなダメ人間なだけあって勉強嫌いなこの私。それでもただ、コマと一緒の大学に通いたい。コマと一緒の夢のようなキャンパスライフを楽しみたい。……その思いだけで辛く苦しい受験戦争を乗り切った。

 高校最後の一年は本当に地獄だったと思う。コマの学力に合わせた学校を狙うという無謀としか思えない挑戦……地頭が足りないから他の受験生以上に寝る間も惜しんで勉強し。コマとの婦~婦の営み(スキンシップ)も断腸の思いで減らし。受験前一ヶ月は料理すら手抜きしたりコマに任せるという暴挙を犯してまで……死に物狂いで勉強した。

 幾度となく挫けた。もうダメだと諦めかけた。それでも愛するコマや親友のカナカナたちのお陰で……奇跡を起こした。あらゆる人々に不可能と言われた地獄の受験を乗り切って、見事桜咲いたのである。

 そんなわけで受験が終わった私は、そんな辛く苦しい日々から解放され。コマと一緒の夢のキャンパスライフを——


「…………ねえヒメっち。大学入学してしばらく経ったけどさ。ちょいと言ってもいいかね?」

「……ほいほい。何かなマコ」

「私ね。大学入学する前はこう思ってたの。中学高校とはまた違う難しいけどワクワクする講義を受けて。講義が終わったら興味のあるサークルに入ったり、アルバイトにいそしんだり、資格取得の勉強したり。ゼミや飲み会で新しい人間関係を広げたりお休みの日はお出かけしたり思い切って旅行したり……そんな自由な大学生活を想像してたの」

「……うんうん。わかる。私も似たような想像してた」

「でもさヒメっち。私思うんだけどさ」

「……うん」

「…………大学生活って……滅茶苦茶忙しくない……?」


 夢のキャンパスライフを……送れてはいなかった……


「ぶっちゃけ全然自由がなくない!?あの辛く苦しい受験生活を乗り切ったと思ったら……勉強、勉強……また勉強の日々じゃんか!専門科目はどいつもこいつもワケわからんレベルだし、そういうのに限って大体落とせない必修科目!一週間に一回は小テストが必ずあって、そのテストの結果も本試験に反映されるとか地獄でしょ!?それ以外にもラットの解剖やら謎の実験やらも隔週あって実験が終わらないと家に帰れないし……酷い授業は100枚レポートとかザラだし!グループディスカッションやら第二外国語の授業やらもわけわからんし……単位のために必要な必修以外の選択授業もどれもこれも癖が強すぎるし……ッ!忙しさで言えば受験生活の方がまだマシだったレベルじゃないの……ッ!」

「……そんなに」


 久しぶりに会ったヒメっちに、近況報告も兼ねて日々の辛さを涙ながらに吐露する私。私……こんな苦しい毎日の為に受験を乗り越えたわけじゃないのに……


「……お疲れ。理系はマジで死ねるレベルらしいからね。文系で良かったわ」

「いや、文系は文系でまた違った大変さがあると思うけどね……」


 さめざめ泣く私にヒメっちは優しく慰めてくれる。


「……そんなに忙しいなら、流石のコマやカナーも音を上げたりしてないの?」

「う、うーん……あの二人に関しては要領良いからね……忙しいのは間違いないけど……私よりかは上手くやってるよ。二人とも大抵成績評価は『秀』か『優』だし。授業の合間に資格の勉強までやってるし。よく知らないけど何かのサークル入ってるらしいし、バイトとかもやる余裕があるみたいだからさ」

「……相変わらず二人とも優秀」


 お陰でこういう大学生活大変って愚痴は……二人よりも学校が違うヒメっちの方が理解してくれるんだよね……


「……でもそういうマコも何だかんだで成績悪いわけじゃないってコマやカナーから聞いてるよ。今のところ単位一つも落としてないらしいし、栄養学の授業とかなんか成績トップだったらしいじゃん。おまけに通常授業に加えて、和味先生の料理教室に強制参加させられたり。後輩の柊木を散歩してやったり。こうして私とも会ってくれたりで……あのマコがよく多忙な大学生活を乗り切ってるなって本気で感心してるよ」

「あのマコがってどういう意味かねとツッコんでも良いかねヒメっちや……まあ、言われて当然ではあるけどさ……」

「……そういう辛い講義とか乗り越えるためのなんか秘訣とかあるの?良かったら参考にしたい」


 ヒメっちにそう問われて考える。うーむ、秘訣……秘訣ねぇ?


「それこそ私の場合はホラ、優秀なコマやカナカナが側に居るからね。試験勉強とかレポートの作成方法とかはいつもアドバイスを貰ってるからそれで乗り切ってるよ」

「……けど結局は勉強もレポートも自分の力でやらなきゃいけないでしょ?」

「まあね。あとは……やっぱり毎日飲む栄養剤が効いてるんじゃないかな」

「……栄養剤?エナドリみたいなやつ?」

「エナドリなんて目じゃないくらい効くやつ。当然市販もされてないよ」

「……え?なにそれ、大丈夫なやつ?マコ、まさか変な薬に頼ってたりするの?」


 私のその一言に心底心配そうな顔でそんな事を聞いてくるヒメっち。


「失礼だなぁ。……まあ、確かに依存性があるのは認める。一日一回は摂取しないと体と心が保たなくて恐らく一生手放せないけど……でもちゃんと合法だよ。キメる度に多幸感が溢れてきて日々の疲れが吹っ飛び3徹くらいは余裕でイケルようになるし」

「……明らかに違法なブツにしか聞こえない。マコ、悪い事言わないから今からでも警察に行って自首を……」

「だからそういう違法な感じのアレじゃないってば」


 まずい、何かヒメっちに激しく誤解されてるっぽい。私の言い方が悪かったのか?……仕方ない、ちゃんと説明してあげるとしますか。



 ◇ ◇ ◇



「…………つ、つかれた……今日の講義もハード過ぎでしょ……」

「ふふふ……お疲れ様ですマコ姉さま。明日一日頑張ればお休みですよ」


 本日の全ての講義が終了し、我が家に帰り着いた瞬間。教科書やルーズリーフ入りの鞄を投げ捨てて。ついでに自分のくたくたの身体も投げ捨てるようにソファへとダイブし横になる私。


 そんな私を労りながら、投げ捨てた鞄をそっと拾ってわざわざ机に置いてくれるコマ。


「明日は明日で毎週恒例の小テストが待ち構えてるけどねー……やってらんないわホント。結果が悪かったら単位評価に反映するとか教授も鬼でしょ鬼……いっそ留年してやろうかっての……」

「そう言いながらちゃんと小テストも結果を残すのがマコ姉さまですよね。大丈夫。姉さまなら絶対に乗り越えられますよ。妹である私が保証します」

「うぅ……ありがと……コマの期待に応えられるようにがんばるよ……」


 いっそ『なら一緒に留年しましょうか姉さま』とでも言ってくれたら楽だろうけど。コマにそう言われたら頑張らざるを得ない。妹の期待に応えてこそ理想の姉ってものだからね……勉強しとかなきゃ……

 さて。それじゃあ頑張るためにも……いつものをコマにお願いしますかね。


「……ね、コマ」

「はい?どうなさいましたか姉さま?」

「……私、頑張るよ。頑張るからさ……」

「はい」

「だから……その。頑張れるように、いつものやつ……欲しいなぁって……」

「…………喜んで♡」


 寝そべったまま手を広げてコマを誘う私。コマはくすりと笑って私の頬を両手で優しく包み込み、私の唇の形を確かめるように繊細な動きで濡れた舌先をなぞっていく。濡れた舌でなぞられるだけで、唇がコマの唾液で濡らされるだけで。甘美な痺れが全身にじわりと伝わっていくのが分かる。


「姉さま、お口を」

「ん……」


 言われるがままに口を半開きしてコマを招き入れると。許可された舌が私の口内へとお邪魔する。瞬く間にコマの舌は私のそれを捉えて、離さないと言わんばかりに熱く絡んでくる。柔らかく、熱を帯びた舌と舌が重なるのは……何千、何万……数え切れないほどやっているのにいつもいつまでも気持ちが良い。


「ん、む……はぁ、ん……」

「……♪」


 舌を入れたまま、ゆっくりと唇で唇を塞ぐコマ。逃げ場を失った舌は……コマの舌に蹂躙される。舌で押し合いなぞりあい突き合い。舐めて舐められ吸っては吸われ啄み合って……絡み合って。そうすることで段々と水音が大きくなっていく。カクテルのように混ざり合った二人の唾液が口の中いっぱいになり今にもあふれかえりそうになる。


(姉さま、飲んでいいですよ)


 許容量ギリギリのところで、トントンと私の肩を叩くコマ。言葉を発する必要もなく目がそう語っていた。コマに許可を貰った私は、ゆっくりとお口の中いっぱいのそれをこくんっと嚥下する。

 途端に幸せな気持ちであふれかえり、さっきまでの疲労が嘘のように引いていた。


「姉さま、知っていますか?大好きな人とキスするとですね……幸せホルモンと呼ばれる物質が脳内から豊富に分泌されるそうです。その物質は幸福感を高めると同時にストレスを軽減し、且つストレス耐性も出来るんだとか」

「うん……わかるよ……凄いもん。疲れ……吹っ飛んだよ。どんなエナドリよりもどんな栄養剤よりも……やっぱりコマとのキスが1番疲れに効くと思う」

「私もです姉さま。姉さまとのキスさえあれば……どんな辛い事も乗り越えられそうですよ」


 二人息を整えながら、クスクスと笑い合う。


「それで……どうですか?明日の小テスト頑張れそうですか?」

「うん、いける。これなら大丈夫そう。いつもありがとうコマ」

「それは良かった。……それではそろそろ明日に備えてご飯とお風呂、そして小テストの勉強を——」

「あ……」


 そう言ってソファから降りてキッチンへと向かおうとするコマ。そんなコマを見て、思わず名残惜しむ声を微かに上げてしまう私。

 当然、そんな双子の姉の情けない声を聞き逃すコマではなく……にっこりと素敵な、そして妖艶な笑みを浮かべて。


「——勉強をする前に。もう少しだけ疲れを取りましょうね姉さま。実を言うと私も……物足りなかったので」

「う、うん……おねがいします……コマ♡」

「はい、姉さま♡」


 もう一度唇を合わせて、互いに頭を掻き抱いて第二ラウンドを開始したのであった。



 ◇ ◇ ◇



「——と、まあこんな感じで。コマとキスをキメる事により疲れを全て葬り去っているってワケよ。敢えて言うならこれが辛い大学生活を乗り越える秘訣って事になるかな」

「……栄養剤ってそういう事ね。相変わらずお熱い事で」

「ちなみにコマとキスすることで思考も活性化させられるっぽくてさ。翌日の小テストは見事満点を取ったよ褒めて!」

「……いつでもキス出来る相手がいることも。キスするだけで疲労を吹っ飛ばせるその不思議体質も……色々羨ましいぞマコ。何だかんだ言いながら大学生活満喫してるじゃないの」

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[気になる点] 柊木を散歩してやったり?え?ぺっと?(笑) とんでもなく羨ましい栄養ドリンク、羨ましいですわ
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