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ダメな姉(わたし)は妹を愛でる  作者: 御園海音
大学生の妹も可愛い
239/269

ダメ姉は、仕切り直しする

 私との……その。大学入学祝い兼素敵なラブホ初体験の為に準備万端だったコマ。一年以上も前からホテルを吟味し、受験勉強と並行してこの日のための軍資金をアルバイトで稼ぎ、そして初めてでも私をしっかりリードすべくホテルのルールからシステム、部屋の間取りなどを完璧にリサーチしてくれていた。

 その計画をカナカナ・レンちゃん・和味先生に悉く破綻させられて……普段は菩薩のような慈愛と優しさの権化のコマも、怒髪天を衝くとはまさにこのことだと言わんばかりに大激怒。


「さあ、たのしい祭の始まりです……私と姉さまの大学入学を祝う祭です……盛大に盛り上げていきましょうね…………かなえさま、レンさま、先生。貴女方三人、今から全員血祭りです……!」


 阿修羅を思わせる殺気と怒気を身に纏い、端正なそのお顔を般若のように変え、呪詛と共に末恐ろしい事を口走り。

 私とヒメっちが止めるよりも早く、瞬きするよりも早く。カナカナたちに一瞬で詰め寄って、コマは文字通り当たれば必殺の一撃を躊躇無く繰り出してゆく。


「うぉ!?ちょ、コマちゃん……今のわたしじゃなかったら躱せなかったわよ!?確実に悶絶コースだったわよ!?」

「はは……おかしな事を仰いますねかなえさま……悶絶なんてしませんよ……私は○す気でやっているんですからね……」

「ぎゃー!?コマ先輩ご乱心ー!?だ、ダメですよマコ先輩の前で暴力は!?」

「なるほどそれに関しては同感で……純粋無垢な姉さまに、凄惨な光景を見せるのは私としても不本意です……ですので……一緒に裏山まで行きましょうレンさま……そこで丁重に埋葬してあげますから……」

「ひぇ……こ、コマさん……そんなに暴れないで……!?マコさんに食べて貰うお料理がひっくり返っちゃいます……!?」

「ご安心下さい先生……姉さまのご飯は以後全て味覚障害を克服したこの私が作って差しあげます……これから先は先生のお手を煩わせる事はもう二度とありません……ですので先生、安心してミンチになってくださいませ……」


 今までも喧嘩する事は偶に(偶にか……?)あったけど。それでもいつもは私に嫌われたくないからと、ある程度の加減は出来ていた。けれど……我慢の不満と憤怒の限界をゆうに超えてしまった今日のコマにはそんな余裕などあるはずも無く。目に光が灯っていない状態で三人に(特にカナカナに)本気で襲いかかる。

 幸い運動神経の良いカナカナたちは紙一重で躱しているけれど、双方いつ怪我をしてもおかしくない状況だ。


「こ、コマ!コマ落ち着いて……!?」

「……どーどー、コマ。気持ちはわかるが冷静になりな」


 これ以上暴れると折角の高級ラブホのこの部屋を破壊しかねない。つーかそれ以上に、このまま放置したらカナカナたちの肉体的な死とコマの社会的な死がセットになってついてきちゃう。そんなわけで意を決してヒメっちと共にコマに抱きつき引き止めることに。

 いくら怒りに我を忘れかけていても私とヒメっちを傷つけるような真似だけはしないコマ。私たち二人の身体を張った引き止めに、渋々だけど動きを止めてくれる。


「姉さま、ヒメさま……止めないでください……今日という今日こそ、この三人に引導を……」

「……まあ聞きたまえコマ。ハッキリ言って今のコマ、怖いよ。そんな形相じゃマコに嫌われちゃうかもよ。ほれ、鏡見てみ」

「…………嫌われる」


 流石コマの親友なだけあってコマの扱いは下手すると私以上に上手いヒメっち。私に嫌われるかもよという一言で、コマは殺気を内に抑えてくれた。


「…………姉さま……そう、なんですか……?」

「そ、そうだね!お姉ちゃん的には喧嘩はダメ!流血沙汰NG!へ、平和的解決方法を考えようコマ!」

「…………姉さまに、嫌われるのは……いやです……」


 この私がコマを嫌いになるとか死んでもあり得ないけれど。でもこの場を収めるためにもここは心を鬼にしてヒメっちに便乗しておく。


「……提案。コマ、ちょうど都合が良いことに。ここにはVRゲームとかカラオケとか色々あるじゃない」

「…………はい」

「……それ使ってその三人に誰が1番マコに相応しいか白黒ハッキリさせてやんなよ」

「…………誰が1番姉さまに相応しいか……」

「……正式な勝負事で決着つけるならマコも嫌わないでくれるし。かっこいいところ見せたらマコも惚れ直してくれるかもだし。なにより三人に上下関係をハッキリさせられるでしょ。一石三鳥」

「…………ほう」


 巧みなヒメっちの誘導に、狂気に捕らわれていたコマも少しずつ正気に戻っていく。


「……そこの三人もよく聞いて。三人にはルールに則ってコマと勝負して貰う。コマが勝ったら貴女方三人……とりあえず一週間はマコとの接触を禁ず」

「えー?勝負ぅ?嫌よ、どうせコマちゃん有利の勝負で挑んでくるんでしょ?わたしたちにメリットないじゃない。そんな勝負をバカ正直にわざわざ受ける必要なんてなくない?」

「一週間マコ先輩と会えない可能性あるとかお断りです!」

「一週間もマコさんと接触出来ないなんて……料理のレッスンする時間を私から奪おうというのですか……?」


 カナカナたち三人にもコマと同じくそんな提案をするヒメっちだけど、その三人は全く乗り気では無い様子。そりゃそうだ。私の可愛いパーフェクト妹コマと真っ向勝負とか無謀すぎる。誰だって勝負を避けるに決まってる。

 けれどヒメっちは動じることも無く、三人が勝負を受けるのを確信しているような態度でこう続けるのであった。


「……その代わりコマに勝ったら…………マコと一日デートする権利を与えるって言ったら?」

「えっ……?」

「乗ったわおヒメ!」

「マコ先輩にいいところ見せます!」

「りょ、料理勝負なら誰にも負けません……!」


 一瞬で手のひらを返して勝負を受ける三人。そして自然な流れで景品と化した私。あの……盛り上がっているところ悪いんだけど……私に拒否権とかはないのでしょうか……?


「良いでしょう、心優しいマコ姉さまとヒメさまに免じて。純粋な勝負で白黒つけてあげましょう。ああ、ご安心下さい。貴女方の得意分野で勝負してやりますよ。その方が圧倒的な力の差を感じて貰えますからね」

「言ってくれるじゃない……売られた喧嘩は買うわよコマちゃん、返り討ちにしてあげるわ」

「マコ先輩とのデート権……マコ先輩とのデート権……マコ先輩とのデート権……ッ!先輩、あたしやりますから!」

「しばらく直接指導出来なかった分……マコさんとみっちり個別指導しちゃいますからね……」


 ともあれヒメっちの機転のお陰で先ほどまでの文字通りの殺伐とした空気から、いつもの空気にシフトチェンジした模様。


「……よし。とりあえず当面の危機は去った」

「ナイスだヒメっち、よくコマを抑え込んでくれた褒めてつかわす。……それはそれとしてだ。よくも友人を何の躊躇いも無く景品にしてくれやがったな……」

「……あの場を収めるためには必要な犠牲だった。許せマコ」


 事実、あれ以上ないくらいファインプレーだから困る……


「……まあでも。大丈夫だと思うよマコ」

「何が大丈夫なのさヒメっち……」

「……考えてもみなよ。マコが景品になったって事はさ」

「なったって事は?」


 そこまで言ってヒメっちは、ただただ無言で指を指す。その方向に視線を向けると……


「ご安心くださいマコ姉さま……私、必ずや完全勝利いたします。姉さまをあの三人には渡しません……どうか見守っていてくださいませマコ姉さま……私の勇姿を」


 溜まりに溜まった怒りと欲求不満を決意に変えて。メラメラと燃えるコマがそこにいた。



 ◇ ◇ ◇



 リミッターが解放されたコマ。今日の我が愛しの妹は向かうところ敵なしだった。


 ~カラオケ~


 《採点発表……100点!》


「きゃぁあああああ♡コマ!コマぁッ!100点!凄い!お歌上手!お姉ちゃん思わず涙が溢れ出ちゃったわ!!!」

「うふふ……♪ありがとうございます姉さま。溜まったストレスの発散にもなりますし、たまにはカラオケも良いものですね」

「……相変わらず歌上手いよねコマ。コツ、後で教えて」

「くっ……これで何連続100点よコマちゃん……歌唱力半端なさ過ぎでしょ……」

「うぅ……コマ先輩ちょっとくらい手加減してくれてもよくないですか……?」

「わ、私料理以外はてんで……」


 ~VRゲーム~


 《WINNER!コマ!》


「コマ……ゲームでも強くて凜々しくて美しくてかっこいいとかさぁ……しゅきぃ……」

「あら嬉しい♪惚れ直していただけましたか姉さま。もっと惚れてくれて良いんですよ」

「……つえーコマ。さっきの反射神経とかどーなってんの」

「ぐ、ぬぬ……まさか柊木とのタッグでもコマちゃんに勝てないなんて……」

「あ、あたしが身体動かす競技で一勝も出来ないとかあり得ないです……」

「りょ、料理なら……料理でなら私だって……」


 ~料理~


「ラブホテルってお料理も持ち込みOKなんですね。また一つ勉強になりました。さて……それはそれとしてマコ姉さま。こちらが私の手料理です」

「こ、こここここ……コマ……!?なん、なんっで……なんで脱ぐ!?なんで下着一枚で……ハニートーストを全身に……ぶっかけちゃってる……!?あ、ああ……そんな……生クリームもチョコソースも……蜂蜜もトロトロで……コマの純白のキャンバスに芸術的にぶっかけられて…………こ、こんなこと許されるの……!?た、食べて良いの……!?」

「マコ姉さまだけが口にすることを許される特別メニューですよ♡さあ、姉さま……召し上がれ♡」

「……ふむふむ。これが文字通り私を食べてか。私もいつか母さんとヤるか……」

「きっ、汚い!マナー的にも衛生的にも……あと恋愛勝負的にも汚いぞコマくん!?ここは正々堂々料理で勝負したまえ!?ズルいではないか!?」

「あら。ズルいと思われるのであれば同じ事をしてみては如何ですか先生。それなら公平でしょう?」

「なりふり構わなさすぎでしょコマちゃん……シスコンのマコ相手にあんな隠し球を用意するなんて……料理勝負だけど流石の先生ですら勝てないわよあんなの……」

「と言いますか……あ、あああ……あれって料理なんですかね……!?え、えっち過ぎでは……!?」


 ——と、まあこんな感じで。悉く三人を退けていくコマ。カナカナたちも必死に食らいつくけれど、自重も手加減も遊び心も一切忘れた今日のコマは圧倒的過ぎて三対一でも勝負にならなかった。


「フッ……どうしました?この程度ですか皆さま?私はまだまだいけますが?」

「うぅぅ……せ、せめて一勝!一勝はコマ先輩からもぎ取ります……!負けっぱなしじゃマコ先輩の名誉後輩(自称)の名が廃れますから……!」

「料理人にとって1番の屈辱は……食べて貰えないこと……!何が何でもマコさんに私の手料理を食べて貰いますから……!」

「……みんな頑張れー」


 連勝に続く連勝で、コマのご機嫌もすっかり元に戻りつつあるらしい。三人への報復兼牽制が今回の勝負の目的だったはずだけど……コマも純粋にカラオケやゲームを楽しんでいるように見える。良かった……これなら危機的状況は脱したと言っていいだろう。


「あっ……と。ごめん皆。私ちょっとお手洗い行ってくる。皆はゲーム続けてて」

「はい、ごゆっくり姉さま。姉さまが席を外されている間に、この三人にトドメを刺しておきますからね」

「そ、そうはいきません!次は絶対勝ちます……!」

「み、右に同じくです……!」


 ずっと緊張しっぱなしだったせいで、安心した途端にトイレに行きたくなった私。皆に断りを入れてから一人トイレへと向かうことに。

 用を済ませてトイレから出てみる。コマやレンちゃんたちはまた別のゲームに夢中になっている様子だった。


「…………良かった。コマも楽しんでるっぽい」

「マコ、お疲れさん。ほい飲み物」

「んぁ?カナカナ?」


 コマの様子にほっと胸を撫で下ろしているところで、いつの間にか側に来ていたカナカナに飲み物を渡される私。


「カナカナはゲーム、もうしないの?」

「休憩よ休憩。しばらく泳がせてコマちゃんの体力をちょっとでも減らしてから挑んでやろうと思ってね。そうでもしないとあの才能お化けのコマちゃんに一泡吹かせてやるのも至難の業だし」

「……無尽蔵の体力を持つコマにはその戦術は意味ないかもよ?」

「……意味ないかぁ」


 寝溜めして栄養ドリンクでブーストしてから徹夜明けのコマに夜のお誘いをした結果、一週間ベッドから動けずにコマの介抱を受ける羽目になった私が言うんだから間違いない。


「にしてもマコ。随分とお疲れみたいね。まあ、あれだけ荒れてたコマちゃんを宥めてたんだし疲れるのも無理ないか」

「誰のせいで疲れる事になったと……」


 いけしゃあしゃあとよく言うよこの親友は……


「そう思うんならコマにフォローして頂戴よカナカナ……この日のためにコマ相当準備してたんだしそれを台無しにされたなら怒るのも当然なんだからね?」


 私が受験勉強に集中出来るようにって……中学高校時代はあれだけヤりまくってたのに、受験の年である高校三年ではピタリとえっちいことするのやめてたんだ。日課のキスだけじゃ逆にコマも悶々しちゃってた事だろう。やっとそれから解禁されると思った矢先にカナカナたちの襲来で、そりゃコマもマジギレしちゃうわな……


「仕方ないでしょ。人が折角大学入学祝いをしようって誘ってやったのに。嘘ついてまで二人っきりでラブホに行くなんて酷いじゃないのマコ」

「ぅ……そ、それはごめん。…………でもさカナカナ。キミ、正直に私とコマがラブホ行くって言ったら納得してくれた?」

「納得せずに絶対二人の邪魔そしに行ってたわね」

「オイこら」


 じゃあ嘘ついて行くしかないじゃないか……


「とは言え。わたしも同じ立場だったらキレ散らかしてたと思うし。悪かったって思う気持ちも多少なりともあるのよ。だからフォローもちゃんと入れてあげるわ。ってなわけで……はいマコ。これあげる。わたしからのマコと……ついでにコマちゃんの大学入学祝いよ。受け取りなさい」

「……え?」


 そう言って、カナカナは私にとあるモノを手に握らせる。一体何だと手を開いて確かめてみると……そこには——



 ◇ ◇ ◇



「——今日は久しぶりにマコ先輩と遊べて楽しかったです!大学生になっても、今日みたいに一緒に遊んでくださいね先輩!」

「うん、私も楽しかったよ。レンちゃん、また遊ぼうね」

「マコさん……大学生活は大変で忙しいとは思いますが……たまにはお料理教室に顔を出してくださいね……私、待ってますから……」

「はいです先生。まだまだ先生に学ばなきゃいけない事いっぱいありますから」

「……マコ、コマ。大学は違うけど、結構近いし……暇になったら連絡頂戴。お互いに近況報告し合おう」

「勿論ですともヒメさま。何かあったらお気軽にご連絡くださいませ。ヒメさまでしたらいつでも大歓迎ですから」


 遊びに遊んで気がつけば。あっという間にチェックアウトの時間になっていた。料金を支払い、ラブホ前で解散する私たち。


「マコ、それからコマちゃん。それじゃわたしもこの辺で失礼するわ。明日から早速オリエンテーションあるんだし、あんたら遅刻するんじゃないわよ」

「あ、あのさ……カナカナ……」

「んー?何かしらマコ?そんなモジモジしちゃって。…………ハッ!?もしやマコ、愛の告白をわたしに——」

「それだけはあり得ませんのでさっさとお帰り下さいかなえさま」

「はいはい。帰りますよ。んじゃまた明日ねー」

「う、うん……か、カナカナ!ありがと……!」


 最後にカナカナにお礼を言って別れる。カナカナは振り返らずに手を振って、タクシーに乗ってそのまま帰っていった。


「……?姉さま、何故かなえさまにお礼なんかを?」

「あ、いや……き、気にしないでコマ。それよりさ……ど、どうだった初ラブホは……?」

「んー……そうですね。最初はあの三人のお陰で私の計画ぶち壊されて……どうしたものかと腸が煮えくりかえっていましたが。何だかんだで姉さまとヒメさま、あの三人とも久々に思い切り遊べて……まあ、悪くはなかったですね。本音を言うなら折角のラブホでしたし……マコ姉さまと丸々一年我慢した分を発散したかった気持ちはありますが。それはまた次の機会に——」


 皆と遊んで楽しかった気持ちはあるけど、それでもやっぱり心残りはあるらしいコマ。そうか……それなら……


「えと……その……コマ。コマは……今日はもう……帰っちゃう?」

「え?え、ええ……かなえさまに言われた通り明日から大学生活が本格的に始まりますし、そろそろ帰らないと終電に間に合わなく……」

「……あ、あのね……コマ。今日は私、帰りたくないって言ったら……どうする?」

「…………えっ?」


 滅茶苦茶恥ずかしい気持ちをどうにか振り切り。コマにある物を見せてみる私。


「実は……その。ここのホテルの部屋……もう一つ取って貰ってる……の」

「…………」

「つ、疲れてるなら断っても良いよ!?か、カナカナもコマも言ったとおり……明日に響いちゃうとマズいもんね!?」

「…………」

「で、でも……でもさコマ。もしも……コマが私と同じ気持ちなら……」

「…………」

「……し、仕切り直しって事で……今から……その。もう一度一緒にホテルに——」


 こうして。私が最後まで言い切る前に。コマは無言で私の手を力強く引き……そのままホテルへ再突入するのであった。

 …………ちなみに言うまでもないことだけど。しっかり抱き潰されて。足腰が立たなくなった私は……大学生活初日をコマのお姫様抱っこでデビューすることになった事をここに記しておく。



 ◇ ◇ ◇



「——かなえさま。詫びのつもりなのか何なのかは知りませんが一応は感謝しておきます。まさか私たちのためにわざわざ別の部屋を予約してくれていたとは。…………それはそれとして。そんな回りくどい事をするくらいなら、最初から邪魔しなきゃ良かったんじゃないですかね……!?」

「仕方ないでしょう?どーせあんたら遅かれ早かれ二人で行く事になってたのは見え見えだったからね。あれはわたしからのせめてもの嫌がらせよ」

「そんな堂々と言い切るとか性格ほんっとに悪いですねかなえさまは……ッ!お陰で私がどれだけあの時絶望したか……!」

「ハァー?寧ろわたしに感謝して貰いたいんですけどー?もしも当初のコマちゃんの目論見通りマコと二人でラブホに行ってたらさ」

「……行ってたら、何だって言うんですか?」

「絶対止め時を見失って、マコを今日の比じゃないくらい干からびさせてたでしょコマちゃんは。考えてみなさい。一年分の溜まりに溜まったコマちゃんの性欲をマコにぶつけたらどうなってたか……断言するけどマコを大学初日から欠席させるところだったわよ」

「…………そ、そんなことありませんよ……?」

「疑問形じゃないの。おまけに目を逸らすなっての。わたしはマコを思って心を鬼にして二人の初ラブホを邪魔したのよ」

「それは嘘!嘘です!どう見てもノリノリで邪魔してたじゃないですか……!?」

「(コヒュー……コヒュー……)ふ、ふたりとも……なんでそんなにげんきいっぱいなの……?」←虫の息

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[一言] カナカナに救われたな! なんだかんだ落ち着いて良かったじゃないの!
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