番外編 ダメ姉は、見られる
お久しぶりです。ひっさしぶりにダメ姉更新です。ダメ姉自体は完結していますが、時間が取れたら大学生編とかも書けたらと思いつつ。リハビリついでで書いてみました。
「——あの、コマ……ほ、本当に……やるの?」
「え、ええ勿論。や、やること自体はいつもと変わりない……ハズですし」
「で、でもさぁ……」
寝室に入りベッドに腰掛け早30分。私……立花マコとその最愛にして最可愛な妹の立花コマは、まるで初夜を迎えるカップルのようにぎこちない雰囲気になっていた。
普段なら部屋に入れば5秒も経たぬうちにキスして服を脱いで(というかコマに即脱がされて)いるところなんだけど。どう言うわけか今日に限って言えば、キスすらせずに……服すら脱がずに。いつもやってる愛を確かめる行為を躊躇ってしまっている私たち。
……お前ら中学時代から散々チューして肌と肌を重ねて来たくせに、今更どうしたんだ?らしくないじゃないかって?……それは私もそう思うけど……こうならざるを得ない理由が本日はあってだね……
「正直死ぬほど恥ずかしいんだけど……何これ?もしかして罰ゲームなわけ?私とコマが一体何をしたと?」
「あ、あはは……マコ姉さま、まあそう言わずに力になってあげましょうよ。普段からお世話になっているわけですし……」
「それはそうだけどさぁ……」
そう言って、私とコマは悩みの種とも言える張本人に視線を送る。視線を送ったその先には……
「……だいじょーぶ。お二人さん気にしないで。私はいないもの、壁だと思って存分にえっちしてくれて構わないから」
「気にするなって言われても君の存在がめっちゃ気になるわヒメっち!?」
——何故か私たち双子の親友。ご存じ究極のマザコン生命体である麻生姫香……通称ヒメっちがいた。……なんでこんなところに、私たちと一緒にヒメっちがいるのかって?それは……
◇ ◇ ◇
『……マコ、コマ。ごめん急に押しかけて。今日は二人に一つ……お願いがあって来たんだ』
ある日の休日。突然深刻そうな顔で私たちのお家にやって来たヒメっち。彼女は挨拶をすっ飛ばし、開口一番そう切り出した。
『おやヒメっち。どうしたんだいそんなに改まってさ。頭まで下げるだなんて水くさいじゃないか』
『マコ姉さまの言うとおりですよヒメさま。私たちとヒメさまの仲です。いつも助けられているわけですし、私たちで良ければ何でもヒメさまの力になりますよ』
『……ありがとう二人とも。やはり、持つべきものは頼れる親友たち』
コマの言うとおり、ヒメっちには何かとお世話になっている私たち。友人として大親友が困っているなら何か力になりたい。そう思い相談の内容を聞かずに私とコマは快く了承しちゃったんだけど……
『……それじゃあお願いなんだけど』
『ほいほい何かねヒメっち?』
『……あのさ。その……』
『遠慮しないで言ってみてくださいヒメさま』
次の瞬間。安易に了承してしまったことを、私もコマも後悔することになる。
『……わ、私に……二人が愛し合ってるところ……見せて欲しいの……!』
『『…………はい?』』
◇ ◇ ◇
それがヒメっちのお願いだった。あまりにあまりなお願いにフリーズする私たちを引き連れて、『……今日は母さんがいないから大丈夫』とヒメっちのご自宅に連れ込まれ。そのヒメっちはと言うと……
「……それじゃあ、早速。心置きなくやってほしい。あ、大丈夫。私はただ邪魔しないで見てるから」
とかなんとか、キラキラした目を向けてきやがって。いや、うん……そりゃ友人として力になりたいとは言ったさ。私たちに出来ることならしてやりたいさ。でも……でもさぁ……内容がちょっとアウトすぎやしないかい……?
「改めて聞くけどヒメっち。何故にそんな事私たちに頼むのかね?私バカだから意味がよくわかんないんだけど……」
「……だって。前にも言ったけど私の母さんと将来結ばれたらさ、ゆくゆくは私……母さんと身体を重ねる事になるわけじゃない?……そうなる前に女の子同士で愛を育む方法を予めちゃんと知っておきたいの。どういう風に始めるのか、とか。痛くないようにするにはどうすれば良いのかとか。どうやれば気持ちよくしてあげられるのかとか」
筋金入りのマザコンは、迷い無き表情で私にそう言ってくる。凄いよねヒメっちは……自分のお母さんと身体重ねるのは確定事項だって思ってるあたりがもうホントにね。ヒメっちママ、もう逃げられないところまで来てるっぽいなこりゃ……
「って言うか。それならそういうビデオ見たり本を読んだりすれば良いだけの話じゃね……?何でわざわざ私とコマの本番を見たがるのかなぁ……」
「……マコとコマはその道のプロだから」
「いえ、あのヒメさま。別に私たちプロでも何でも無いんですが」
「ヒメっちが私とコマの事をどんな風に認識してるのか、私かなり不安になってきたわ」
と言うか。ありとあらゆるプレイを堪能してきた(※コマに堪能させられてきた)私とコマなんだけど、流石に誰かに見られながらの行為は初めてだ。他の誰かに……それが例え親友のヒメっちでも。コマとの営みを見られるのはちょっと……いやかなり抵抗があるんだけど……
「……お願い、マコ……コマ……!やっぱり初めては素敵な思い出を作りたいし、ちょっとでも参考にしておきたいの……!自分でもわかってる、こんな最低なお願いを……親友たちにするなんて間違ってるって。でも……でも!こんなこと、マコたちにしか頼めないし……!」
色んな意味でレベルが高いお願いに尻込みする私だけれど。ヒメっちは相当に追い込まれているのか、必死の形相で懇願する。
そんなヒメっちを見てコマは、ふぅ……っとため息を一つ吐き。
「姉さま。これは……やるしか無いと思いますよ。これだけ必死に頼まれたら断るに断れませんし……」
「ぅ……そ、そりゃあ私だってヒメっちの力にはなりたいし、こんなに必死に頼み込まれたら断れないけどさぁ……で、でもコマ?こ、コマは……いいの?私たちのアレコレを、見られても平気なの……?」
意外と乗り気そうなコマに問いかける。意外だ……いくら親友の為とはいえ、こういうプライベートなヒミツのいちゃラブを他人に見せつけるのは……てっきり私、コマは嫌がると思ってたのに。
「私だって正直に言うと他の誰かに姉さまとの愛の時間を見せたくはないですよ。それは私だけの時間だって思っていましたから。でも……他ならぬヒメさまの頼みですし。ヒメさまなら……姉さまに手を出す事なんて100パーセントあり得ませんから」
「それはうん、私も信用してる。マザコンのヒメっちがコマに手を出すなんて万が一にもあり得ないよね」
「……いやぁ、そんなに褒められると照れちゃうよ」
ヒメっちよ……なんか勝手に照れてけど。悪いが私もコマも全然褒めてないからね?
「本気でヒメさまもお悩みみたいですし。……ね?姉さま。人助けだと思ってやってみましょうよ」
「うーん……」
「ヒメさまも邪魔はしないと仰っていますし」
「うーん……」
「それに……ほら。もしかしたら見られながらのプレイで……新しい世界が開けるかもですし……」
「うーん…………うん?」
……あれ?なんか今、コマったらヒメっち以上におかしな事言わなかったかね?
「……いやあのコマ?もしやコマがヒメっちに協力したい理由ってさ……そっちがメインだったりはしないよね……?」
「…………ふ、ふふふ。いやですね姉さま。そんなはずないじゃないですか」
「その割にちょっと目を逸らして可愛らしく笑って誤魔化そうとしてるっぽく見えるのは私の気のせいかねコマちゃんや」
全く……やれやれしゃーないな。最愛のコマまでやる気になってるなら、私も覚悟決めるしかないじゃないか。
「……ヒメっち」
「……うん」
「コマに手を出さない、写真や動画を撮らない、行為を茶化したりしない。これをちゃんと守るって約束できる?」
「……!する、約束する。と言うか、約束するまでもなくそんな事しない!」
「あと……お風呂とか更衣室での着替えとかで私たちの裸くらいヒメっちだって見たことはあるだろうけど……それでもこういう愛の営みの時のコマの裸を見せるのは……やっぱり嫌だ。だからあくまでも見せるのはキスと、それからちょっとしたふれあいだけ。それでもいい?」
「……問題無い!雰囲気だけでも良いから知りたいの!だから——」
「…………わかったよ。やってやろうじゃないの」
「……ま、マコ……ありがと!」
そんなこんなで。結局ヒメっちの熱意に負けた私は、コマと一緒に……未知の体験。見られながらプレイする事になったのであった。
◇ ◇ ◇
「……マコ。それにコマ。私はここから先……一言も喋らない。さっきも言った通り、居ないものとして扱って。二人はただ……自然体で。いつも通りに愛し合ってくれればいい」
そう言った後ヒメっちは部屋の隅っこのソファに座り、ただジッと私たちを見つめてくる。そんなヒメっちの視線を浴びながら、お互いに深呼吸をして。
「コマ……キス、いい……?」
「……はい、姉さま。私は……姉さまが望むのであればいつでも……」
そうして私とコマは……いつものように。いつもとは違う闖入者のいる空間で……キスを交わす。
何をするにしても、私とコマの愛の行為はキスからはじまる。コマが味覚障害を煩ってから始まり、恋人になった後もずっとずっと続けてきた愛を確かめ合うキス。
肩に手を置き、お互い静かに唇と唇をゆっくり近づけて。閉じた唇同士でご挨拶。最初は軽く、突っつきあい。しばらくそれを続けると……段々と接触時間が増えてゆく。
「……ン、ふ……」
「……ねえさま」
閉じていた唇が、唇で割られてゆく。主導権はコマに取られた。口内にねっとりと舌が侵入され。ゆっくりと、丁寧に口腔内を舌が這いずり浸食する。
「…………ッ!」
ディープキスへと移行した途端。息を呑む気配がする。私でもない、コマでもない。……ヒメっちが発した気配だ。
キスされながら横目で気配のした先を見てみると。顔を真っ赤にしながらもまばたきも、呼吸すら忘れたように私たちのキスシーンを見ていた。……何だかんだでヒメっちとは付き合い長いし。私とコマのちょっとしたチューくらいは、ヒメっちも見たことくらいあるはずだ。けれど……ここまで本気のキスを見るのは初めてだった様子。
普段はあまり感情を表に出さないヒメっちにしては珍しく。かなりうろたえているのがわかる。ウブな乙女のように顔を真っ赤にして目を逸らしながらも……それでも恥ずかしそうにチラチラと私たちのキスを見ている。
そうしているヒメっちと、はたと視線が合った。熱の灯った潤んだ瞳で……親友の一人に、見られている。最愛の人と愛し合う行為を曝け出してる。今更ながらどうしてこんな事を了承しちゃったんだろう。恥ずかしいやら気まずいやら……後悔と緊張と興奮とその他諸々。いろんな感情がミックスされて頭がおかしくなりそうになる。
「——姉さま」
「ンンッ!?は、ぅん……っ!?」
そんな私の混乱しかけた頭は。世界で一番大好きな人に一瞬でクリアにされた。ヒメっちに向けていた私の視線を自分自身へと向けさせて。少し怒ったように私の舌を唇で食み、音を立てて吸い付いてくる。
じゅるる、と舌が引っこ抜かれそうになるくらい強く吸い付かれると、もう私はコマになすがままだ。
「……ダメですよ姉さま。状況がどうであれ……今は私と愛し合っているんです。誰に見られようと……私を見て。私だけを見てください」
「は、い……」
耳元でそう囁かれると、私はコクコクと首振り人形のように頷くほかない。そんな私ににっこり笑みを浮かべ。コマはキスを再開する。今度はさっきとうってかわって優しく、愛でるように私の舌と自分の舌を合わせて絡ませ重ね合わせる。
コマの舌はとても柔らかくて、とてもうっとりする……舌を合わせるだけで、とってもきもちいい。
「マコ姉さま、横になりましょうか」
「う、うん……」
コマにそっと肩を押され、そのままふかふかのベッドの海に沈む。そして馬乗りになったコマは、ゆっくりと私のシャツのボタンに手をかけて……
「あ……あの、コマ……こ、これ以上は……」
「……ふふ。大丈夫。わかっていますよ。キス以上の事はしない。あくまでもふれあうだけって話ですものね」
そう言ってシャツの第一、第二ボタンを外して。ほんの少しだけはだけさせるコマ。
「私も……むやみやたらに姉さまの肌を他の人に晒したくはありませんから……だから、ちょっとだけ。キスするだけです」
「あ、うん……それわかってるなら……いいよ」
「ありがとうございます。では……続けますね姉さま」
「……ッ、ふぅ……ぁ、く……」
約束したとおり。今日のコマは直接的にいやらしい事はしなかった。大事なところには一切触れず、やることといったら唇や舌でキスしたりソフトタッチするだけ。
……そう、ただそれだけだと言うのに。
「(……なん、か……いつも以上に……私の身体、敏感に……)」
大事なところに触れられないもどかしさから来るものか。はたまた大事な親友のひりつくような情熱的な視線をコマ共々全身に浴びているからなのか。いつもよりもソフトに愛でられているというのに、いつも以上に自分の身体が敏感になっているのがわかる。
そんな私の状態を、知ってか知らずかコマはねちっこく私を攻め立てる。密着しシャツの上から私の体臭を思い切り嗅ぎ。溢れた玉の汗を一つも逃さぬように舌で掬い。蛇のように四肢を動かして私の全身を絡め取り。露わになってる素肌に吸い付き、自分の所有物という証を付けるようにキスマークを念入りに付けて……
「こ、コマ……ちょ、タイム……」
「あらら?どうしましたか姉さま?」
「がっつきすぎ……も、もう少しゆっくり……」
「おやおや、ゆっくりと言われましても……いつもよりも優しいでしょう?」
「そう、だけど……なんか、なんか変なの……お、おかしく……なりそうで……」
エロい事してるわけじゃないのに、身体の異様な昂ぶりを感じる。このままじゃなんか来ちゃいそうでヤバい。……コマだけなら散々見せてきたけれど、今日に限っていえばヒメっちが見ているんだ……醜態を晒したくなんてない。
慌ててこっそりコマにタイムを申し出る私なんだけど……
「……ふ、ふふふ……蕩けたお顔。素敵です姉さま。……ねえ、良いじゃないですか。おかしくなったって」
……けれど、コマはそんな私を許してくれるはずもなく。
「見て貰いましょうよ。私たちの親友のヒメさまに」
「な、なに……を……?」
「姉さまが気持ちよくなるところ、見て貰いましょう。姉さまの可愛いところ、私にも……ヒメさまにも。見せてください……ほら、ほらほら……ほら……!気持ちよく、なって……!」
「~~~~~~~ッ!?」
その一言と一緒に、不意打ち気味にふーっ……と弱点の耳に息を吹きかけられて。そのまま私は——
◇ ◇ ◇
結局。直接的な事なんて一切されていないのに。私の身体を熟知したコマに盛大に気持ちよくさせられた私。
……あー、もう。コマは今更だけど……ヒメっちに変なとこがっつり見られちゃったよ……やっぱこれ、罰ゲームか何かなんじゃないのかね?
「……どう、ヒメっち。少しは参考になった?」
「…………(コクコクコク)」
息を整えながらも一応ヒメっちにどうだったか聞いてみると。それなりに参考にはなったのか、しきりにコクコク頷いてくる。
「……あ、あの……えと。あ、ありがと二人とも……その。とっても、勉強になりました……」
「……そりゃ良かった。まあ、私とコマの場合はちょっと特殊だし……今日のが全部ヒメっちのお母さんとする時に役に立つかわかんないけどさ。雰囲気だけならこんな感じでやれば……いいんじゃないかなーって」
「……が、がんばる……」
……まあ、割と散々な目に遭ったけど。ヒメっちが少しでも納得してくれたならそれでいいか。素敵なお母さんとの初夜の思い出作れるように頑張れよヒメっち。応援してるぞ。
「ただ……こういう事は今日限りにしてよね。もうヒメっちにこういうこと頼まれたとしても、絶対にやんないぞ私」
「……え?今日だけ?こ、この後の応用編とかも……別の機会に教えてくれたりは……?」
「しません!……大体ね。今更説教かますのもなんだけど……こういうのはだね、大好きな人と試行錯誤するのが大事なのであって……そもそも誰かと誰かの行為を参考にするってのが間違いなわけで。……ね?コマもそう思うよね?」
ちゃっかり次の講習をお願いしようとするヒメっちを諭しながら。私はコマにも同意を求める。そう私にふられたコマはと言うと……
「……あの、マコ姉さま」
「ん?なぁにコマ?どっかした?」
「ごめんなさい、私ちょっと……スイッチ……入っちゃったかも……」
「「…………え?」」
ギラギラした目で私を見つめ、一言だけ謝って。
「え、何かなコマ……?この手は……どうして私押し倒してるの?どうして服脱がせようと…………あ、ちょ……ま、ままま……待って!?それ以上はいけない!?ヒメっち見てる!見てるから!?ひ、ヒメっち!ヒメっち頼む!コマを止めて——」
「……私にお構いなく。私は再び壁になるから。……大丈夫だよマコ。マコの犠牲は無駄にはしない。ちゃんと参考にするから安心して気持ちよくなるといい」
「ヒメっちぃいいいいいいいいい!!??」
そうして私は、鑑賞に徹するヒメっちに視姦されながら。発情したコマに……時間いっぱいまでいつも通りのえっちい事をさせられるのであった。
読んでいただきありがとうございます。久しぶりすぎましたが三人が書けたの楽しかった……需要があれば今回のお話のノクタ版もいずれ書く……かも?
大学生編に関しては、まだ先の事ですのでいつ書けるか未定ですが。いつかまたダメ姉も再開出来たらと思っています。その時はよろしくです。ではでは。




