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ダメな姉(わたし)は妹を愛でる  作者: 御園海音
高校生の妹も可愛い
221/269

ダメ姉は、修学旅行へ出発する(その5)

ダメ姉修学旅行編更新しました。二日目の夜のお話。修学旅行と言えば……みんなで温泉回は外せませんよね!温泉って言っても残念ながら今回はエロいお話じゃないですけどね!

「―――マコ姉さま。本当に平気ですか?辛かったり痛い思いをされてはいませんか?」

「うん、へーきへーき。問題なし。何度も言うけどいろいろ未遂だったし、怪我らしい怪我も特にはないもの」


 修学旅行の校外学習中にナンパ野郎共と遭遇し、そこで一戦交えた私。旅館に帰ってきてからも、コマは心配そうに私に繰り返し聞いてくれる。


「問題大ありですよ……もう少し、私が来るのが遅かったらどうなっていた事か……打った背中は大丈夫ですか?痛くはありませんか?」

「んー、まあ正直に言えば打ったところちょいとジンジンするけど。そこまで大した事は―――」

「…………やっぱり痛むのですね……尊い姉さまの身体を痛めつけるなど……何という蛮行。今からでもあの連中に、死の制裁を……!」

「だ、大丈夫だからね?ホントに大丈夫……だから、そんな怖い事言わないでちょうだいなコマさんや……」


 今にも旅館から飛び出して、連中を滅しにいきかねないコマを全力で止める私。ああ、ちなみにコマが文字通り蹴散らしたナンパたちはちゃんと警察に通報して突き出しておいた。まあコマや……あとから話を聞いたカナカナたちはその対応には不服だったみたいだけどね……


「ったく……マコは甘いわよね。警察通報しただけで許すだなんて。ああいう輩はそんな甘い対応じゃつけ上がるわよ」

「あの、カナカナ?警察に通報する以上の事って……?」

「怨恨を断つためにも、心を鬼にして始末しておくべきだったって事よ。息の根を止めておけば良かったのに……」

「だからカナカナも落ち着けっての……」


 私の隣でため息を吐く親友もコマと同じ事を言う。私の周囲の女の子たちはこんなにも可愛いのに、どうしてこんなにも物騒なんだろうか……


「そ、それにしても!一日目は残念ながら間に合わなかったけど。ようやく大浴場が使えて良かったよね!やっぱ旅行と言えば温泉だもんね!いやぁ、私ずっと楽しみにしてたんだよねー!」


 これ以上物騒な話は危険な気がする。話題を変えるべくそう言ってみる私。初日はヒメっちを京都へ連行するのに手間取って温泉に入る時間がなくなっちゃったから、本日が京都初の温泉タイムとなっている。気持ちの良いお風呂に入れば、きっとみんなも機嫌を直してくれるだろう。


「そうですね。あの連中を始末するのは、この修学旅行中いつでもチャンスはありますでしょうし」

「確かに。そんな事よりも……今はマコと一緒に温泉を堪能することの方が大事よね」


 話を逸らす私の目論見は上手くいったらしい。二人は私のその話題に揃って同調してくれる。


「姉さま。こちらの温泉……なんでも打ち身や打撲にも効能があるそうですよ。しっかりと痛めた場所をケアしましょう。私もお手伝いしますので」

「マコ。背中痛むんでしょ?そういう事ならわたしに任せなさい。自慢のテクで、マッサージして楽にしてあげるからね」

「……はい?」

「……おう?」

「ああもう……この子たちすーぐ喧嘩する……」


 ……と思った矢先にコレですよ。ほんっと……二人とも仲が良いのか悪いのか……


「はいはい、二人とも。喧嘩はあとでしなさいな。お風呂入る時間がまたなくなっちゃうよ?」

「う……ごめんなさい姉さま」

「むぅ……確かに。こんなとこで言い争っても時間の無駄よね」


 喧嘩しそうになる二人の間に入り、二人の腕を組んで温泉へと連れて行く。各班ごとにお風呂に入る時間は決められているわけだし……これでまた温泉に入られなかったらバカらしいもんね。

 二人も温泉の魅力には勝てなかった様子で即切り替え。私の腕をぎゅっと抱き返しておとなしく温泉へと向かう。


「そういえばマコ……どうでも良いけどさ。おヒメとか後輩の姿が見えないんだけどあいつら何してるの?」

「あら……言われてみれば確かに。こういう時にいつも現れる姉さまの料理の先生―――清野先生も見かけませんね。ヒメさまはともかくあのお二人がいないのは珍しい。折角の姉さまと温泉に入るチャンスでしょうに……どういう風の吹き回しなのでしょうか?」

「ああ、あの三人なら……」


 いつもならこの場に現れるであろう3人の姿が見かけないことに首を傾げる二人。まずヒメっちはと言うと……温泉に入る時間が勿体ないからと断って、部屋のシャワーを使い烏の行水で素早く身体を洗って上がり、そのままヒメっちマザーと楽しくテレビ電話をお部屋でお楽しみ中である。邪魔しないから今は存分に楽しんできなさいヒメっちや……

 そしてレンちゃんと和味先生は……レンちゃんは電話越しに私の昔の担任の先生から勝手に私に付いてきた事に関してお説教中。和味先生も同じく昨日私を夜這いした罪を問われて他の先生方にただいま絶賛説教中である。二人とも私と一緒にお風呂入れないって血の涙を流して残念がっていたなぁ……


「なるほど……それは好都合。ライバルが減るのは良いことね」

「残念ながら一番の邪魔者が残っていますけどね。……お風呂なんて私と姉さまだけで良いのに」

「おう、誰が邪魔者ってコマちゃん?」

「え……?まさか自覚、ないんです?」

「「っ……!」」

「だーかーらー!喧嘩しないの二人とも!喧嘩するようなら、二人と一緒に入ってあげないよもうっ!」

「「ごめんなさい」」」


 魔法の言葉『一緒に入ってあげないよ』。この必殺の一言を述べると素直に土下座して私に謝るお二人さん。そうそう、素直が一番だよね。


「全く……どうして二人とももっと仲良く出来ないのかね……絶対仲良くなれそうだって思うんだけどなぁ……」


 脱衣所で制服を脱ぎながら、つい愚痴を言ってしまう私。コマもカナカナも本質的には似たもの同士だと思うし……一度腹を割って話をしたら存外仲良しになれそうな雰囲気はあるんだけどね……


「(パシャパシャパシャ!)この人が姉さまの事を諦めてくれるのであれば、いくらでも仲良くしてあげられますよ」

「(パシャパシャパシャ!)なるほど、つまりコマちゃんとは永遠に仲良く出来ないって事ね」


 なんてことを言いながら。二人息ぴったりにお着替え中の私を凝視しつつ、どこから取り出したのかカメラを使ってその私を激写する。

 …………君たち、やっぱ仲良いんじゃないの?あとカメラは当然没収ね。


「よーし。準備オッケー。そんじゃ、まあ早速入りましょうかねー」

「……あの、姉さま?どうしたんですか?」

「ん?なぁにコマ?」


 二人分の熱く突き刺さる視線を感じながらも急いで着替え終わって。素肌にタオルを巻いていざ浴場へと向かおうとすると。コマが不思議そうな顔でそう尋ねてきた。どうしたって……何が?


「マコ姉さまは……今からお風呂に入るのですよね?」

「え?まあうん……そりゃあその為にここに来ているわけだし……」

「だったらおかしくありませんか?」

「そうね。マコ、あんた風呂に入るのにどうしてそんなおかしなことしてるのよ」

「カナカナまで……だから何がおかしいのかな?」


 二人が何を言ってるのかよくわかんない。なにかなんかマズいことでもやらかしたのか私?


「「どうしてマコ(姉さま)は、タオルで隠しているの(ですか)?」」

「…………」


 口をそろえ、これまた息ぴったりにそんな疑問を口にする二人。まあ、多分そんなこと言われるだろうなーとは思ってたよ……


「温泉に入るのに、それはちょっと邪魔ですよ姉さま」

「タオル巻いたまま温泉に入るのはマナー違反よね。だから……ほら、ね?わかるでしょ?」

「大丈夫です、周りはみんな女の子だけ。女の子同士ですから……何も怖くはありませんよ」

「早く脱ぎなさいマコ。もっと開放的に……何もかも曝け出しましょうよ……」

「お二人さん?ちょいと目が怖いんだけど?」


 血走った目でコマとカナカナは私に迫る。どうしてタオル巻いたままなのかって……そりゃ決まってる。タオル巻いておかないと、君たちが襲いかかってきそうだからだね。


「私の事はいいから、さっさとお風呂行くよ二人とも。ほら、早く着替えて。置いてくからねー」

「あ、ああ!姉さまお待ちになって……!置いていかないでくださいませ!」

「ま、マコ待ちなさい!す、すぐわたしも行くからさ!」


 私の着替えに夢中になってまだ着替えずじまいだった二人を置いて、私はとっとと先に行くことに。


「おぉー……ひろーい!」


 思わず感嘆の声を上げる私。中はそれはもう大層広い温泉が私を待ち構えていた。なんか……こんな大きなお風呂って無性にわくわくしちゃう。

 まずはかけ湯して、それから恐る恐る足を湯船に入れる。熱すぎず、かといってぬるいわけでもないまさに適温。そのままザブンと肩まで浸かってみる。


「ふぁああ……♡」


 暖かな湯に身を沈めて手足を伸ばしてみると、昨日今日で歩き回ったり走り回って身体に溜まってしまっていた疲れがほぐれていくのが感じられる。お家のお風呂だと少し足を伸ばすだけでいっぱいいっぱいだけど、温泉ならお湯の中で身体を思い切り伸ばせていいね。変な声が漏れちゃうくらい心地良いわ。


「んー、気持ちいい♪なるほど、これなら確かにコマたちが言ってた通り打ち身とかにも効きそうだねぇ」


 よく見ると温泉の効能が立て看板に書いてある。疲労回復にストレス解消。打ち身、筋肉痛肩こりにも効くとかなんとか。

 ……コマたちには心配かけないように過小報告してたけど。実を言うと例のナンパ共と一戦交えた時に打った背中がまだ結構痛むし、ここでしっかり回復させておくとしようか。


「……あれ?そういや二人とも来るの遅いな?」


 しばらく待っていたけれど。一向に脱衣所から出てこないコマとカナカナ。もう着替え終わってもいい時間だと思うんだけど……

 心配になって耳を澄ましてみると。脱衣所からこんな声が聞こえてきた。


『どきなさいかなえさま!私が……私が姉さまの背中を流すんですから!』

『やらせないわよ!そもそもコマちゃん、あんたはいつでもそういうことは家で出来るでしょうが!?こちとらこういう機会じゃないと出来ないのよ!たまには遠慮して代わりなさいよね!』

『そんなの当然です、何せ私は姉さまの嫁ですから!嫁が家内のお背中を流すのは当然の権利であり義務です。誰にも譲りませんよ!』

『こんの……強突張り女め……!いいわ、あんたを倒してマコの背中はわたしが奪う!』

『やらせるわけないでしょうが……!姉さまのお背中は私の物です!返り討ちにして差し上げますよ!』

「…………」


 磨りガラスの扉の奥で、二人の女の子のシルエットがアクション映画さながらの激しい動きで格闘しているのが見えてくる。……あの二人はホントに……温泉くらい楽しく入ろうよ……ある意味楽しそうだけどさぁ……


「……これ以上喧嘩にならないように、今のうちに自分で背中流しておこうかな」


 争う理由がなくなれば、二人もおとなしくお風呂に入ってくれるだろう。さっさと背中流しておくとしようかね。

 そう思って湯船からいったん上がり、タオルを再び巻いてから洗い場へと向かう。椅子に腰掛け洗面器にお湯を張り。タオルでボディソープを泡立てていざ身体を洗おうとした……そのときだった。


「―――あ、あの……立花さん……」

「んぁ?」


 私の後ろから、誰か私に声をかけてくる。何だろうと振り向くと、そこには数人の女の子が並んで立っていた。

 ……あれ?この子たちって確か―――今日の校外学習中にコマたちとはぐれた私を心配して一緒に行動してくれた班の子たちじゃないか。


「ああ、その節はどうもどうも。みんなの班もお風呂この時間だったんだね」

「う、うん……そ、そうなの……」

「……?」


 あれ?どしたの?折角素敵な温泉に来てるって言うのに、全員なんだか表情暗くない?


「……どうかしたのかな?私に何か用事とかあるの?」

「え、ええっと……その、ね。立花さん……私たち……立花さんに言わなきゃいけないことがあって……」

「ほほう?言わなきゃいけないことね。はいはい、なんでも聞いちゃうよ。遠慮しないで言ってほしいな」

「「「ご、ごめんなさい!」」」

「……はい?」


 いきなり私に頭を下げる彼女たち。心当たりがない私は面食らう。え?なに?なんで私謝られてるの……?


「えっと、ごめんねみんな。私、別に謝られるような理由がないと思うんだけど……?」

「だ、だって。……あのナンパたちを前にして……立花さんは勇敢にも私たちをかばってくれたのに……」

「そ、それなのに……私たちは何も出来なくて。それどころか……立花さんを置いて逃げるしか出来なくて……」

「ごめんなさい……!聞けば立花さん、あの後怪我をして……悪い人たちにひどい目に遭わされたっんでしょう?……なんてお詫びをしたら良いのか……」


 泣きそうな顔で必死に謝ってくるみんな。何だろうと身構えた私は拍子抜けしてしまう。なーんだ、そんなことで謝ってたのか。びっくりさせないでよね。


「こらこらみんな?そんなの謝る必要なんてないでしょ?見ての通り私ピンピンしているじゃないの」

「で、でも……逃げちゃって……怒って……ないの……?」

「何言ってんのさ。逃げたんじゃなくて、助けを呼びに行ってくれたんだよ君たちは。そもそも先生たちにこのことを伝えてって指示出したのは他でもないこの私だったでしょ?」


 この子たちが気に病まないようにそう言ってみる。実際この子たちは何も悪くない。悪いのはあのナンパ共だし、あの場で逃げずに私と残ってナンパ連中に人質になっちゃったりした方が困った事になってただろうし。


「つーかむしろさ、私の方がみんなにお礼を言わなきゃいけないんだよ」

「お礼……?」

「うん。君たちが助けを呼びに行ってくれて……その甲斐あってコマにそのことが伝わってコマがあの連中を蹴散らしてくれたわけだしさ。みんなのおかげで私はこの通り、怪我らしい怪我もなくこうして元気でいられるんだよ。楽しい修学旅行も続けられるんだよ。だから……みんな、ありがとね」

「「「立花さん……」」」

「マコ、って呼んでよ。立花さん呼びだと双子のコマとどっちを呼ばれてるのかわかんなくなっちゃうからね」

「「「う、うん……!それじゃあ……ありがとうマコちゃん……!」」」


 泣きそうだった彼女たちも、そう言ってあげるとみんな花が咲いたような笑顔が浮かぶ。よしよし。やっぱり、女の子は笑顔が一番だよね。


「……ぶえっくしゅん!」

「あ……ご、ごめんなさいマコちゃん。身体洗う途中だったんだよね」

「あはは、まあね。……ちなみに話はそれで終わりかな?ならちょっと洗わせて貰うねー」


 と、気が緩んだ途端に女の子らしくないおっさんみたいなくしゃみをしてしまう私。いかんいかん。このままだと湯冷めもしちゃいそうだし、なによりも早く洗わないとコマたちが来て『私が洗います』『いいやわたしよ』とまた喧嘩の種になりかねない。話もついたならちょっと身体洗わせて貰おうかな。


「……あ、あのマコちゃん」

「んー?どったの?もしかして、まだ何か用事があったりする?」

「その、ね。……迷惑じゃなかったら……私たちがマコちゃんの身体、洗おうか……?」

「え?」


 と、身体を洗おうとした矢先だった。彼女たちがそんなことを言ってきたのは。


「え、ええっと……それは何でかな?」

「だって……どうしても私たち……マコちゃんにお礼がしたいの……!」

「こんなんじゃ助けて貰ったお礼にはならないだろうけど……でも、何かマコちゃんの為にしたくて……」

「誠心誠意、心を込めて一生懸命洗うよ!……だ、ダメかな……?」


 別に大したことしたわけじゃないし、お礼なんて良いんだけど……そう言おうと思ったけれど。彼女たちは必死だ。何か私にお礼をしたくてたまらないって顔をしている。

 私的には感謝の一言だけでもお釣りが来るのになとは思うけど……どうやら彼女たちはそれだけじゃ気が済まないらしい。う、うーむ……ここまで言わせておいて無碍にするのも流石に悪いかな……?


「わ、わかった。みんながそこまで言うなら……お願いしようか―――」







「ダメです」

「ダメよ」

「「「えっ?」」」

「……な?」


 その厚意に甘えようと彼女たちにボディソープとタオルを手渡そうとした途端。さっきまで脱衣所でガチ喧嘩していたとは思えないほど息ぴったりに、突如現れたコマとカナカナがそのボディソープとタオルを奪い私と彼女たちの間に割り込む。


「ちょ、ちょっと!急になんなんなの貴女たち!」

「それはこちらの台詞です。なんなのですか貴女方は?」

「危ない危ない……ホント、油断禁物よね……どこでライバルが増えるのかわかったもんじゃないわ」

「い、意味わかんないこと言わないでマコちゃんを返してよ!今から私たちがマコちゃんを洗うんだから!」

「「「そうよそうよ!」」」


 つい数秒前までの和やかな空気はどこへやら。私を挟んでコマたちと彼女たちの間に流れる緊迫した空気。


「申し訳ございませんが、姉さまのお背中は私がすでに予約済みですのでお引き取りを」

「よ、予約なら私たちも今したわ!マコちゃんはいいよって言ってくれたもん!」

「どうせいつも通り、マコったら押しに負けてそう言っただけよ。まったく……あれほど隙を見せるなって言ってるのにマコはホントに押しに弱いんだから」

「誰よりも押しが強い、かなえさまが言いますかそれ?……とにかくです!姉さまのことは、双子の妹であり生涯の僧侶たるこの私が面倒見ますから!」

「「「何ですって……!?」」」


 そこからはいつもとまた違ったメンバーで繰り広げられる争奪戦の始まり始まり。女の子たちから手足をしがみつかれあらゆる方向に引っ張られる。


「ちょ……い、いだだ……!?い、痛い痛い!?みんな落ち着いてって!?もげるから!私の手足、もげちゃうから!」


 四方八方から引っ張られ。手足は軋み、関節は曲がってはまずそうなあらぬ方向へと曲げられる。大岡裁きもびっくりだ。マジ痛い……


「全員、マコ姉さまから離れなさい……!姉さま痛がっているじゃありませんか……!」

「だったらコマちゃんが最初に離しなさいよね……!」

「み、みんな!ぜったい負けちゃダメよ!どんな手を使ってでも、マコちゃんにお礼するんだから!」

「「「おーっ!」」」

「やめてー!?」


 もはや私VS皆による一対多数の取っ組み合いと化す。いかん、このままだと私の手足がホントにポロリともげてしまう……せ、せめて右腕だけでも死守しないと今後コマのために料理できなくなっちゃう……

 そうならないためにも流石の私も必死になる。ジタバタジタバタ抵抗してどうにか振りほどこうと強引に暴れて―――



 ズルッ!



「……あれ?」


 突然、何の前触れもなく私の手足を引っ張る皆の力が抜けてゆく。同時に胸元がやけに涼しくなったではないか。これはどうしたことかと見下ろすと……


「ありゃ……タオルが脱げちゃったのか」


 胸元が急に涼しくなったと思ったら、どうやら今の激しい攻防で巻いていたタオルが脱げてしまったらしい。皆の目の前で露わになる私のすっぽんぽんの身体。手足がポロリする前にこっちがポロリしちゃった模様。うー……流石に女の子同士とはいえ、自分の駄肉を同級生たちに見せるのは恥ずかしいなぁ……笑われたりしないだろうか。

 なんてことを思いながら手で大事なところを隠しつつ、皆に視線を送ってみると。


「「「…………(ドクドクドク)」」」

「って……ぎゃぁあああああああああ!?し、死屍累々!?」


 コマも、カナカナも。それからどうしてか私にお礼がしたいと言ってきた彼女たちも。皆仲良く鼻から大量の血を滝のように流して。どうしてか恍惚の表情でその場で倒れ込んでいた。絵的にはどこぞのサスペンスドラマのスプラッターなワンシーン。


「み、みんなどうしたの!?何!?何なの急に!?」

「ぐ……いつも、見ているはずですが……温泉で磨かれたマコ姉さまのその肢体……曲線美……美しすぎです……」

「油断、してたわ……マコの肉感……やばすぎでしょ……でも、最期に見た光景が……マコの裸なら、悪くは……な……い……」

「「「マコちゃん……きれい……」」」

「し、しっかり!しっかりしてよみんなぁ!?」


 のぼせたのか、それとも喧嘩の最中にぶつけたのか。全員鼻血を垂れ流して血の海に沈む。あふれる血は止めどなく流れ出て、洗い場から温泉へと流れゆき―――


「―――マコ先輩お待たせしました!柊木レン、ただいま参上です!」

「ご、ごめんなさいマコさん……お待たせです。先生も来ましたよ―――って、あら?」

「わぁ!すごいですね!この温泉の色、真っ赤じゃないですか!こういうの赤湯って言うんですっけ?あたし初めて見ました!」

「……?こんな温泉、昨日はなかったと思うんですけど……」

「あ、ああちょうど良かった!?レンちゃん!和味先生!すみません、みんなを助けてくださ―――」

「「…………(ドクドクドク)」」

「って、こっちもかい!?」


 素敵なこちらの温泉は、皆の鼻血で鮮血に染まる。文字通りの血の池地獄と化してしまったのであった……

読んでいただきありがとうございました。鼻血芸はマコの専売特許だったはずなのに……


……さて、ようやく2日目が終わりましたが……おかしいな、修学旅行編そこまで長くなるはずないと書き始めたときは思ってたのにまだまだ続きそうな気がしてきたぞ……?自由行動できる3日目からがまた長くなる予感……終わる終わる詐欺……

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― 新着の感想 ―
[良い点] マコは、コマに毎晩可愛がられてるから、恋する女の子と経験済みの女の子特有の色気がヤバそう。 コマも同じはずなんだが、まぁ、隣に女タラシのマコ居るしね。
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