ダメ姉は、お世話される(後編)
ダメ姉更新です。お世話回後編行くよー。
【注意】今回の話…苦手な方は苦手な要素がほんのちょっとですがあるかもです。お食事中の方や……お●っこネタが苦手な方。お気をつけくださいませ。……ちゃんと警告はしましたからね!?
この日私は、生まれて初めて妹のコマを本気で拒絶する事になる。
「だ、ダメ……来ないでコマ……だ、ダメだよそんな……」
痛む足を、手を。必死にばたつかせ。じりじりと迫るコマから懸命に逃れようとする私。
「かかか……勘弁して……わ、私……こういう事は……コマには望んでない……大好きなコマに、させたくない……」
「何を今更。私たちは家族であり、生涯のパートナーです。愛し合っているならばこそ。寄り添い生きる二人ならばこそ。何を恥ずかしがる必要がありましょうか」
涙を流し、懇願する私に対してコマは情け容赦なく切り捨てる。
「観念してくださいマコ姉さま。さあ……さあ!」
「嫌、やだぁ……ダメ……許してこないで…………いやぁああああああああああ!!?」
そのままコマは私を押し倒し、スカートと下着に手にかけて……そして―――
~この惨劇が引き起る1時間前~
「コマ、美味しいご飯本当にありがとう」
「いえいえ。お口に合ったのであれば良かったですよ」
非常に阿呆な理由で足と手を捻挫してしまった私。そんな私を甲斐甲斐しくコマはお世話をしてくれる。移動するときはお姫様抱っこ。夕食を作ってくれただけでなく、『あーんです姉さま♡』と食べさせてくれたりと至れり尽くせり。
……え?それで肝心のコマの料理はどうだったのかって?言うまでも無く、最高だったに決まってるじゃんか……!コマの手料理に加えて『あーん♡』だよ?これ以上の贅沢を私は知らないわ。
「それにしても私の知らない間に、またコマも料理の腕を上げてたね。これは私も負けていられないわ」
「ふふ。料理の本職と言ってもいい姉さまには流石に負けますよ。ですが……姉さまの舌を巻くくらい上達出来ていたなら良かったです♪」
はにかむコマを見ながら感慨深く思う。料理が上手くなっているって事は……それはつまるところあれほど苦労したコマの味覚障害がしっかり完治しているって証明。お姉ちゃんとしてはその事実だけでも涙が出るくらい嬉しいよ。
「さて……お腹も膨れたところで。いつもでしたら楽しいお風呂タイムと言いたいところなのですが……申し訳ございません姉さま」
「ん?どしたのコマ」
「捻挫というものはですね。炎症を起こしている状態の事を言うんです。入浴などで体温が上がってしまうと悪化してしまう恐れがあるので、捻挫をした直後ですと入浴は控えるべきと言われています」
「ありゃ、そうなの?」
「はい。ですから……残念でしょうが、今日明日はお風呂に入るのは……我慢して頂けませんか?」
ふむ。お風呂に入れないのは確かに残念だ。けどまあ、早く治すために必要な事なら仕方ないね。
「いいよいいよそれくらい。ニ、三日お風呂入れなくったって死ぬわけでもなんでもないわけだしさ」
「ありがとうございます。……お風呂に入れない代わりと言っては何ですが、この私が清拭しますから本日はそれで我慢してくださいね」
「ん?せいしき?」
「あ、ごめんなさい分かりにくかったですね。―――私が姉さまのお身体をタオルで拭かせて頂きますからそれで我慢してくださいね」
「えっ」
お風呂の代わりに、コマが私の身体をタオルで……拭く?
「い、いいよそんな事しなくったって!?身体くらい自分で拭けるから!」
「嘘。その捻挫を舌手では着替える事すらままならないでしょうに」
「さ、最悪入らなくっても別に問題ないし……」
流石にそんなことまで愛する妹にはさせられない。めい子叔母さんとかカナカナにバレたらお前は一体どこの貴族かお姫様かとからかわれそうだ。
そう断る私を前に、コマは不敵な笑みを浮かべてこう返す。
「あら……本当に清拭しなくていいんですか?今日一日デートで歩き回ったり盗撮犯を捕まえるため走り回って、相当に全身蒸れて汗もかかれたでしょうに……本当にいいのです?」
「う……」
それを言われるとちょっと痛い。変態でドシスコンなダメ人間ではあるけれど。これでも一応私だって一人の女の子。大好きな人の前ではいつでも綺麗でいたい気持ちは持っている。
他でもないコマに体臭を嗅がれ『姉さま、臭いです』とか言われたら恥ずかしくてしぬかもしれないし……
「もしや姉さまは自分の妹に、自分の匂いを嗅がせる趣味をお持ちだったのですか?だったらもっと早く教えてくれれば良かったのに。私的にはそれでも問題ありませんよ。寧ろ姉さまの素敵なかぐわしい匂いを嗅がせていただけるなら、喜んで嗅がせて頂きたいと思っていますので」
「是非とも、わたくしめの汚れた身体を拭いていただけませんでしょうかコマ様……!」
首筋に鼻を近づけて私の匂いを嗅ごうとするコマに土下座する勢いで頼み込む。
「……チッ」
「あの、コマさん?小さく舌打ちが聞こえたけど今のは身体拭かせる為にやったただのフリだよ……ね?冗談だよね?本気で私の体臭を嗅ごうとはしてなかったよね?」
「うふふ。ええ、冗談ですよ冗談。本気で嗅ごうとはしていませんから」
その割に目が本気に見えるのは私の気のせいだろうか。
「とにかく清拭したいという事ですよね?では、私の部屋でやりましょう」
コマはそう言ってひょいっと私を抱えお姫様抱っこ。そのまま二階の自分の部屋へ向かう。
「ねえコマ……お、重いでしょ……?お外を移動するならともかく、家の中ならどうにか動けそうだし……無理しなくてもいいんだよ?」
「羽根みたいに軽いです。……寧ろ、姉さまの場合はもっとお肉をつけても良いと思っています。ちゃんと体重かけてますか?遠慮しないでいいんですよ」
普段から鍛えているだけあって駄肉を抱えた私を全く苦にせず運ぶコマ。やだうちの妹ったら超イケメン。本日15回目の惚れ直ししちゃったわ……
そうこうしているうちにコマの部屋までたどり着く。優しく私をコマのベッドに横たえると、コマは踵を返しながらこう言ってきた。
「それでは姉さま。私は清拭の準備をしてきます」
「う、うん。お手数かけます……」
「いえいえ。では少しだけ待っていてください。すぐに戻りますからね」
にこりと笑顔を見せながら、部屋を出て準備へ向かうコマ。
「妹に介抱……というか最早介護される姉の図。なんというか……情けない……」
コマ(の尊厳)を守るためとはいえ。無茶した結果余計にコマの手を煩わせてしまったなんて。私……まだまだダメなお姉ちゃんだよなぁ……
「……コマ、やっぱし怒ってるのかな」
雰囲気や態度はパッと見た感じは変わっていないようにも見えるけど。それでも今日のコマは少しだけいつもと違う気がする。お姫様抱っこもお料理も。それから私の身体を拭くことだってそうだ。私の意見を求めずに、半ば強引に押し進めている感じだ。
……折角の休みを姉の世話する時間に変えられちゃって、コマも内心不服なのかもしれない。何せ貴重なちゆり先生と沙百合さんと遊ぶ予定もキャンセルになったわけだし……
「……身体拭いて貰ったら、ちゃんともう一度謝んないと」
「姉さま、お待たせしました。早速始めましょ―――あら?どうかなさいました?」
「あ、いや何でもないよ」
「そうですか?なら良いのですが。……とにかく。準備も出来ましたしそろそろ始めましょうねー♪」
いつの間にか準備を終えたコマに促されるまま、とりあえず身体拭きに集中する私。
「暖房も付けますが、寒かったら言ってください」
「了解。それじゃ、よろしくお願いねコマ」
「お任せください姉さま!では、まずはお顔から失礼します」
言われるがまま、コマに温めて貰ったタオルで身体を拭いてもらう。はじめに顔を、それから手先から腕へとタオルが走る。
「いかがですか?痒かったりくすぐったかったり、痛かったりしたら教えてくださいね」
「ん、大丈夫。気持ちいいよ。コマは上手だね」
「そ、そうですか?え、えへへ……褒められちゃった♪あ、姉さま。次は脇を上げていただけますか?……はい、ありがとうございます」
手慣れた動作で一瞬で私の服を脱がし。絶妙な力加減でテキパキと身体を拭いて汚れを落としてくれるコマ。お世辞抜きに気持ちいい。タオルの温かさも程よくて、油断したら眠くなっちゃいそう。
「脇の下やお胸の下は特に汗をかきやすいですからね。ここ、しっかり拭かせて頂きますね」
「うん……ごめんね、何から何までして貰って」
「いーえ。役得です。こちらが感謝しないといけないくらいですよ」
「と言うと?」
「なにせ姉さまのお胸に触っても誰にも咎められないんです。合法的に姉さまのお胸をモミモミ出来ちゃいますから―――こーんな風に、ねっ!」
「やーん、一体どこ触ってるのー?コマちゃんのえっちー♪」
「ふふふ♪何を仰いますか、これは事故ですよー♡」
時折冗談を飛ばしながらもコマはせっせと拭き上げていく。脇、胸、お腹をマッサージするように拭いたら、今度は振り向いて背中に差し掛かる。
どうやら今のコマは随分と機嫌が良さそうだ。これは……またとないコマに捻挫した事を謝るチャンスかもしれない。
「ね、ねえコマ……」
「?はい、いかがしましたかマコ姉さま?」
「その……さ。もしかして……コマ、怒ってる?」
「…………いいえ?怒っていませんよ。どうして私が怒っていると、姉さまは思われたのですか?」
恐る恐るそう切り出すと。コマはほんの少しだけ声のトーンを落として聞き返してきた。背中を拭いてくれているからコマがどんな表情をしているのか分からないけど……こ、これは下手な回答をしたらよくない気がする……
「いや、あの……だ、だってコマ……一生懸命私のお世話してくれているけど……ちょっとだけ強引なところがあった気がして……もしかしなくても、私がなんかまたやらかして……それが原因でコマを怒らせちゃってしまってたんじゃないかなって……だったら……申し訳ないなって思って……」
「…………」
慎重に答えると。コマはふぅっとため息を吐きながら一旦身体を拭くことを止める。
「……怒ってなんかいませんよ」
「ほ、ホントに?」
「ええ、怒っていません。…………まあ、盗撮犯を追いかけるなどという危険な事をしたり、私の制止を悉く無視したり、自分の身体を顧みずな行動を起こした挙句に軽くない怪我をした事とかは……思うところがないわけではありませんが」
「(…………怒ってるじゃないですかやだー)」
「……ですが。本当に怒ってはいません。より正確に言うと、怒るに怒れないって気持ちです」
「はい?」
怒るに怒れない……?
「相も変わらず自分のことを大事にしない姉さまを怒りたいところではありますが。それはすべて姉さまが私を守るためにやった行為だと分かっているから。だから私……怒るよりも先に、嬉しいって思っちゃうんです」
「嬉しいの?」
「我ながら、難儀な性格してますよね。姉さまのその捻挫した手や足は、私を守ってくれた証だって思うと……嬉しくて。頭では怒らなきゃって思っても……どうしても、嬉しくて嬉しくて仕方なくて……怒れなくなっちゃうんです。」
「わ、わわ……!?」
背中越しにコマは私をギュッと抱く。ドギマギしている私の耳元で、コマはうっとりとした声で囁く。
「もっと早く言うべきでしたね。姉さま……私を、守ってくれてありがとう。姉さまはやっぱり……私の最高のヒーローですよ」
「あ、あはは……そ、そうかな?」
まあ、結局怪我してコマに迷惑をかけてる時点で最高のヒーローとは言えないけどね。
「ただ……今一度約束してください。どれだけ私の為になる事であろうと。ちゃんと自分の事を大事にするって。……何度も言っていますよね?姉さまが私の事を大切に想っているのと同じくらい……私も姉さまの事が大切に想っていると。姉さまは大切な存在だと。替えなんてきかない、私の大切で大好きな、たった一人のお姉ちゃんであり私の愛する人だって」
「ぁ……」
「逆の立場になったら、姉さまはどう思いますか?私が姉さまを守るために怪我をして……良い気分になりますか?それを、どうかよくよく考えてくださいませ」
「……はい」
コマの心からの悲痛な言葉にへこむ私。ああ、またやっちゃった……また出てきた私の悪癖。分かってるつもりだけど、やっぱしこういうところ治んないよなぁ……
「……さて。お説教モドキはこの辺にして清拭を再開しましょうか。裸同然の姉さまを放置させては風邪を引かせてしまいますからね!」
私が反省したのを分かってか。コマはちょっぴりセンチメンタルな雰囲気を払拭するように明るい声でそう言ってきた。
「……ん。それは困るね。捻挫をした挙句、今度は風邪なんか引いちゃったらますますコマの手を煩わせる事になっちゃうよね」
「んー、まあ私としては姉さまに風邪を引かせて、捻挫とは別に姉さまのお世話をさせていただけるチャンスが増えますので姉さまに風邪を引いて貰っても全く問題はないのですけどね。風邪を引いたせいで弱気になって……私を頼らざるを得ない姉さまとか……想像しただけで私どうにかなっちゃいそうです♪姉さま、今からでも風邪引きませんか?」
「ハハハ。安心してほしいコマ。そういや私バカだから風邪なんか引かないわ」
コマに負けじと私も軽口で返すけど……心の中では深くコマに謝る。ゴメンねコマ。何度言われても悪い癖を治せない、不出来な姉でごめんなさい。……いつか、この性格……治せるように頑張るからね。
「これで清拭も終わりですね。お疲れ様でした姉さま」
「コマこそお疲れ様、すっきりしたよありがとう」
「それは良かった。では姉さま、お洋服を着せますね」
そうこうしているうちに身体を全部綺麗に拭いて貰って、服もちゃんと着せて貰えた。ホント今日は何から何まで至れり尽くせりで申し訳ないやら嬉しいやら。……捻挫が完治したら、今日の分のお礼にコマの言う事なんでも聞こう。
「さて。ご飯も食べましたし、清拭も終わりました。後は……特にやる事がないなら捻挫を早く治すためにも休みましょうか姉さま。……何かしたい事、やってほしい事などあれば遠慮せずに仰ってください。眠れないなら絵本でも読んで差し上げますよ」
「んー、そうだねぇ……」
絵本はともかく……やりたい事、やってほしい事ねぇ?強いて言うならコマと一緒に寝る事と……あとは―――
「(うっ……!?)」
と、ふとある事に意識を向けると途端に身体が震えた。
「……姉さま?」
身体を拭いて貰った時に冷えてしまったのか。はたまた飲み物やスープを飲み過ぎたのか。怪訝そうなコマの前でもじもじと膝を……内股をすり合わせ挙動不審になる私。
「どうなさいましたか?震えているようですが、まさか……本当に風邪を引いているのではありませんか?」
「い、いやあの……違、う……」
「嘘。具合が悪いのは見ていれば分かります。自分を大事にしてくださいと言ったばかりですよ。……身体がおかしいのであれば、すぐに救急車を―――」
すぐにでも救急車召喚魔法を使おうとするコマを前に、慌てて私は恥を忍んで仕方なく大声で応える。
「ち、違うのホントに!?そうじゃなくてさ……!?…………あ、あの……コマ。ひ、一つお願いが……」
「はい!何でしょうか姉さま!?」
「お…………」
「お?」
「…………おしっこ、行きたいの……連れてってくれない……かな」
「あら……」
多分耳まで真っ赤になりながらもコマにどうにか自分の気持ちを伝える私。くぅ……この年になって妹に排尿の訴えをせざるを得ないとか……何たる屈辱よ……
「……良かった、体調不良ではなかったのですね。ホッとしましたよ」
「よくは無いけどね……と、とりあえずコマ……ちょっと急いで連れてって欲しい……幸い小さいほうだけど、ちょっと我慢できそうにないっぽい……」
ここコマの部屋だし、ここで漏らしでもしたら大変だ。……いや自分の部屋で漏らしても大変だけど。捻挫で動けない私は必死のお願いすると、
「わかりました。では姉さま」
「うん、悪いけどトイレに連れてって……」
「遠慮せず、こちらで存分になさってください」
待ってましたと言わんばかりに、ベッドの下から半透明なプラスチックでできた容器を取り出してそんな事をのたまった。…………うん?
「あの……コマ?それは……一体?それに、今何と……?」
「ああ、こちらですか?尿瓶といいます。尿をとるのに使う容器です」
「……は、はは……面白いジョークだねコマ。で、でもゴメン。ちょっとお姉ちゃんかなりギリギリだから。だからお願い、冗談言っていないでトイレに連れて行ってくれるとありがたいと……」
「遠慮せず、こちらで存分になさってください」
ニッコリ笑顔で再度そう告げるコマ。え、え?あ、あはは…………本気か?
「何を恥ずかしがる必要がありますか?ただの生理現象ですよ。……ああ、姉さまは捻挫していますし、尿瓶は使い慣れていない分使うのが難しいでしょうが……ご安心くださいませ。私が上手にとってあげますから。姉さまのおしっこを」
何一つ安心できる要素がない件について。
「どっから持ってきたのかとか、どうしてそんな嬉々として尿瓶を推してるのか知らないけどコマさんや?ふ、普通にトイレに連れて行ってくれればそんなもの使わなくても後は一人でおしっこくらいできるよ私!?だ、だからお願い今すぐ連れてってよ!?も、漏れる……もれちゃうよぉ……!?」
「トイレでするのとここでするの。別に変わらないと思いますが?」
「人前でするなんて無理だってば!?恥ずかしいにも程があるってば!?」
何故だ!?心優しいコマはいつもならこんなイジワルしな―――あ、いや。ドSモードのコマはともかく―――平常時のコマなら絶対にこんなイジワルはしないハズ。何故こんな、私を追い込むような事を……!?
「……姉さま。私思うんです」
「な、何を!?」
「姉さまって多分、一度痛い目を見ないと本気で反省しないって。自分を大事にしないという悪癖は、痛い目を見ないと身体で覚えてくれないと。……まあ、物理的に痛い目は見ていますが。それでは心から反省はしないでしょう。現に今日一日も、捻挫などお構いなしに私の為に私の為にと動き回っていましたし」
切羽詰まっている私をよそに。しみじみと何やら言い出すコマ。な、何!?何の話をして……
「ですから私、思ったんですよ。物理的に痛い目を見るのがダメなら―――精神的に痛い目を見て身体で覚えて貰おうと。具体的には―――妹にお姫様抱っこで移動させられたり。大好きなお料理する機会を奪ったり。妹に清拭させたり。あとは……妹に、おしっこを尿瓶でとらされるといった精神的苦痛を負わされたら―――少しはその姉さまの悪いところも治るのではと思った次第です♡」
「~~~~~~ッ!!?」
…………いかん。コマの目が笑ってない。本気だ、本気でコマ……私の尿を……取る気だ……!
「と言うわけで。さあ姉さま、どうぞ存分になさってください。漏らしたくはないでしょう?……ああ、もし漏らしてもそれはそれで私は良いのですけどね。尿瓶でおしっこしようが、私のベッドを姉さまのおしっこで濡らそうが。姉さまが恥ずかしがる姿を見られればどっちでもいいんですから」
どうあっても私をトイレへ連れて行く気はないコマ。究極の、そして最悪の二択だよこれ!?
「も、ももも……漏らすとか論外!?コマのベッドを私の汚いもので汚すなんて……この私に出来るわけないでしょうが!?」
「別に汚くはありませんが……そうですか。でしたらここで、尿瓶を私に当てられて。おしっこしているところを見られるしかありませんね♡」
やばい、本気で我慢の限界が近い。つーかコマさん?尿瓶をベッドに用意してたって事は……は、はじめからそのつもりだったって事ぉ!?怒ってないとは言ってたけど、やっぱめちゃくちゃ私が捻挫した事を怒っていたよねこれ!?
やばい、泣きそう……コマがこわい、色んな意味でこわい……
この日私は、生まれて初めて妹のコマを本気で拒絶する事になる。
「だ、ダメ……来ないでコマ……だ、ダメだよそんな……」
痛む足を、手を。必死にばたつかせ。じりじりと迫るコマから懸命に逃れようとする私。
「かかか……勘弁して……わ、私……こういう事は……コマには望んでない……大好きなコマに、させたくない……」
「何を今更。私たちは家族であり、生涯のパートナーです。愛し合っているならばこそ。寄り添い生きる二人ならばこそ。何を恥ずかしがる必要がありましょうか」
涙を流し、懇願する私に対してコマは情け容赦なく切り捨てる。
「観念してくださいマコ姉さま。さあ……さあ!」
「嫌、やだぁ……ダメ……許してこないで…………いやぁああああああああああ!!?」
そのままコマは私を押し倒し、スカートと下着に手にかけて……そして―――
「う、うぐぅ……ぁああ……」
「ほら、姉さま。ここですよ。こーこ。大丈夫、私がついていますから。安心して」
限界ギリギリの私の下の方を完全に露出させ、優しい言葉をかけ尿瓶を当てながら……お腹の下をゆっくりと弧を描くように撫でるコマ。尿意はさらに加速する。
膀胱のしびれが下半身どころか全身までいきわたるような感覚。痛みにも近い疼きが激しさを増し、目の前がクラクラと気が遠くなりそう。固定されていない方の足は自分の意思とは関係なしにガクガクと地団太を踏み、奥歯がカタカタと鳴り響く。
「そんなにお身体を震わせて……もう我慢できないのですよね?姉さま、我慢は身体に毒ですよ。女性は特に言える事ですが。尿は我慢し過ぎると膀胱炎なども引き起こしかねません。ですから……ね?」
だったら普通に、トイレに連れて行ってくださいお願いします。そう訴えたかったけど……もはや声を出す事さえもままならない。
もしかしたら尿意が引っ込んでくれるかもしれない。そんな淡い期待を寄せながら。歯を食いしばり、太腿に力を入れ。どうにか時間を稼ごうとする私。
けれど、尿意はつまるところ生理的欲求。引っ込むどころか時間が経つにつれ増していく。もぅ、ほんと……だ、め……
「こ、こまぁ……も、ゆるして……」
限界はとっくに越えていた。それでも愛しい人に醜態を見られたくない、その思いでどうにか耐えていただけに。この懇願が最後の一線を越えるきっかけになるのは無理もない事だと自分では思う。
ぷしゃぁあああああ……!
その一言を漏らすと同時に。私のダムは決壊した。
「~~~~~~~ッ!!!!?」
「あ……♡姉さまの羞恥と解放感がごちゃ混ぜになった涙目なそのお顔……かわい……♡」
……この日私は。下手に怒られるよりも辛い事がある事を、身をもって知った。
読んでいただきありがとうございました。……生理的欲求の話だからセーフ、恥ずかしい事じゃないからセーフなハズ……!




