ダメ姉は、安心する
ちょっとバタバタしそうなので更新できるときに更新するスタイル。来週、つーか来月はあんまし更新できないかもです。ごめんなさいね…
次のお話前のちょっとした閑話休題的な意味でのしょーもない小話です。
~SIDE:マコ~
「―――ねえねえヒメっちさんや」
「……はいはい何かなマコさんや」
「唐突だけどね。私、まだ入学して日は浅いけど……この学校に来て良かったって思う事があるの」
とある日の移動教室。隣で並んで歩くヒメっちに雑談ついでにふと思いついたことを告げてみる私。
「……ほう。来て良かったことと言うと?」
「そうだねぇ。例えば……コマは勿論、カナカナもヒメっちとも一緒に過ごせるし」
「……それは光栄。私も、マコたちと一緒で良かったよ。毎日が楽しい」
嬉しい事言ってくれるじゃないか親友。愛してんぞ―――コマの次くらいに。
「自分が本当に学びたい勉強に一年の時から力を入れられるし。先生たちの支援も凄いし」
「……だね。将来を見据えた勉強ができるのは強いよね」
中学で学べる知識や経験とは比べられない超専門的なところまで勉強できるし。上手くいけばちょっとした資格も取れるからねこの学校。
将来成りたいものを明確に見えてる私やヒメっちにとってはかなり良い環境だって言えるのである。
「そして……そして何よりも!」
「……何よりも?」
「愛しいコマが!男共に言い寄られずに済むから!」
「……あー」
私のその力強い一言に、ヒメっちはすべてを理解した顔を見せる。
「なにせここ女子校だからね。……まあ、ごく数名コマに近づく女の子はいるけれども、それでもコマに言い寄るヤロウなんてぜーんぜんいないんだもの。対処がマジで楽でいい!」
中学の時はそれはそれは大変だった。思い返すのはあの日あの時……コマを欲するがあまり不用意に近づいてきたり、時にはコマを力づくで自分のものにしようとしたり。あまつさえ矛先が私に向けられて、邪魔な私に脅迫状送ってきたり武力行使してきたり亡き者にしようと闇討ちして来たりとetc.
……今更だけど、うちの母校の中学ヤバかったよね……世紀末かよ。どうなってんの倫理?
「その点!この学校だとコマに惚れる子は中学に比べると大幅に減ったし!それでもコマに近づく女の子たちには『実はコマは私のお嫁さんなの』って宣言するだけで納得してくれる!ああ……ホント、この学校に来て良かったわー♪」
「……まあ誰かさんと真逆で。コマはどっちかというと男にモテる方だもんね。そういう意味じゃ確かにマコにとってはラッキーだっただろうねー」
「まあねー!…………ん?誰かさんと、真逆で……?あの、ヒメっち?それって一体どういう意味?」
「……さあねー」
「???」
何やら苦笑い気味に、最後にヒメっちが呟いた言葉が何故か少しだけ気になった。真逆?
~SIDE:コマ~
「―――唐突ですがかなえさま。私……この学校に入学した事、早速後悔し始めました……」
「ホント唐突ね……しかもまだ入学してから数日も経ってないわよコマちゃん」
次の授業のある教室へと向かう最中。隣で歩いていたかなえさまに、ちょっとした愚痴を言ってみる私。
「それで?一体何に後悔してるのよ?」
「そうですね……例えば。姉さまとは確かに一緒ですが……選択授業が多く、姉さまと被っていない科目が結構あるせいで一緒に居られる時間が中学の時より減ってますし……」
「それ、減ってるって言っても4,5時間程度よね?」
……私にとってはめちゃくちゃ減ってるんですよぉ……ああ、姉さま……次の授業もバラバラだなんて……私、コマは寂しいですよぉ……
「強力なうえに手段を択ばない危険なライバルが一緒に入学してきたお陰で気が抜けませんし……」
「……おほほ、一体誰の事かしら?」
全力で目を逸らす誰かさん。……高校生になって、ますますこの人マコ姉さまに肉体的にも精神的にも積極的にアプローチしてきて目が離せないんですよね……
姉さまがかなえさまに靡くことはあり得ないと断言できますが、手段を択ばず姉さまを本気で堕とそうとしてくるので油断大敵です。
「それに何よりも……」
「何よりも?」
「愛しのマコ姉さまが!女生徒たちに言い寄られるから嫌なんです……っ!」
「……あー。確かにそれは思った……」
私の慟哭に、心当たりがある様子のかなえさまは苦虫を噛み潰したようなお顔に。分かっていただけたようで何よりです……
「マコ姉さまって……女性に異様にモテるんですよね……女性にモテちゃうタイプなんですよね」
「同性だから距離が近くてスキンシップ過激だし、愛らしい容姿していて親しみやすく誰にでも明るく接してくれるし、困った時は親身になって接してくれるからカッコいい……下手な男子よりモテるわよね。わたしもそんなマコにコロッと心奪われたクチだからわかるわー」
「姉さま本人はまるで無自覚ですけどね」
今までにも姉さまを陰で慕ったり、軽口を言いながら実は惚れている―――そんな女子たちは確かにいました
ただまあ、小学校や中学校は共学だったお陰か本気でアプローチをかけてきたのはかなえさまとレンさまくらいでしたけど……
「けれども……ここは乙女の園、華の女子校です。……割と女性同士の恋に偏見がありませんし、姉さまは……いろいろと目立ちますからね」
「さっきも言ったけど……可愛いし、活発だし、親しみやすいからね。……あ。そういや昨日、先輩たちにお持ち帰りされかけてたのを慌ててわたしが回収したんだったわね……」
「今日のお昼はお弁当忘れた同級生に自分のお弁当を分け与えて……それで相手の心を掴んじゃってましたよ……」
「「…………ハァ」」
お互いに盛大にため息を吐く私とかなえさま。姉さまを慕うレンさまという強力なライバルが一時的に姉さま争奪戦から離脱をして、気が楽になるかと思っていましたが……まさかこんなところにトラップがあるとは……
共学、選んでおくべきだったのでしょうかねー……
……まあ、大好きな人が大勢から好意を向けられること自体は……悪い気分ではありませんけど、ね。
『―――ねえ、そこの貴女。その大量のプリント、どこまで持って行くの?』
『え……?あ、えと……調理室まで……』
『おー。それなら良かった。ちょうど私もそこに用があるからさー。一緒に持って行くよー』
『えっ!?で、でもこれ……重いよ?私が先生から頼まれたものだし……立花さんに悪いし……』
『いーからいーから。ほら、半分貸してー』
などと思った矢先に。廊下の先で誰よりもお優しいマコ姉さまが一人の女生徒を手伝うお姿が。
『あっ…………えと。あの。……ご、ごめんね手伝わせちゃって……』
『気にしなーい気にしない。これから3年間一緒に頑張っていくわけだし、困った時はお互いさまって事で♪』
『……う、うん!ありがと立花さんっ!』
「「…………ああ、また……」」
……手伝うついでにハートまで射抜いちゃってるのは流石私の姉さまです……私も、かなえさまもため息が止まりませんよまったく……
…………すみませんやっぱり嘘です見栄張りました。前言を撤回いたしましょう。姉さまの良さは私だけが知っていればいいと思っています。姉さまを好きになるのも好きと思われるのも私だけでいいと思っています。
読んでいただきありがとうございました。
コマは……中学編からさんざん描写していました通り男女ともにモテますが、特に男性にかなりモテます。男子には恋愛的な意味でモテていて女子には憧れとか尊敬とかアイドル的な意味でモテてました。本人はマコ一筋ですが。あ、これ言うまでもない?
一方のマコは……うん。ご存じの通り授業中奇声あげたり跳び蹴りしてきたり自分の事は無関心でおしゃれっ気のない子なので男子には全くモテませんでした。女子には……今回カナカナたちが言ってた通りの子なので実は隠れファンとかいたりしました。中には淡い恋心を持った子もいたりいなかったり。女にモテる女なのです。ちなみにコマ一筋。あ、これも言うまでもない?




