ダメ姉は、誘惑する(その1)
今日は双子の日。設定上、コマとマコの誕生日。そんなわけでちょっとした番外編更新です。
「―――突然、呼び出しちゃってごめんね。カナカナ、ヒメっち、レンちゃん」
とある日の休日。私ことダメ姉……立花マコは、一つの大きな悩み相談をすべくいつもの仲良しメンバーをお家に呼び出していた。
「それは別に構わないっていうか、マコにお呼ばれされるのはいつでも大歓迎だけれど……一体どうしたのよマコ。相当追い詰められているように見えるけど、あんた大丈夫なの……?」
「うん……あんまし大丈夫じゃないかも。ごめん、カナカナ。できれば私の相談に乗ってほしい」
「……そう。わかったわ。力になれるかわからない。でも他ならないマコの頼みだもの。命をかけて解決してあげる」
「……マコにはいつも相談に乗って貰ってるし。私も出来ることならなんでもするよ」
「あたしもです!尊敬するマコ先輩の為なら、なんだってしますっ!」
貴重な休み……それも突然の頼みだったにもかかわらず、皆は快く引き受けてくれる。ああ、持つべきものは優しい友人たちだねやっぱし!ありがたすぎて泣けてくるわ……
「それで?肝心の相談内容は一体なんなのかしらマコ?」
「あー……ええっと、ね。相談する前にちょっと3人に聞きたいんだけど……いい?」
「……いーよー」
「ちょっと変な事聞くことになるけど……それでもいい?」
「問題ありませんっ!さあ、いくらでもどうぞっ!」
くどいほどに念押しし、了承を得た私は恥ずかしさを我慢しつつ……ここ最近強く抱いていた疑問を頼れる仲間たちに問いかけてみる。
「ありがとう。それじゃあ遠慮なく聞くけどさ…………ね、ねえ皆……ひょっとしなくても私ってさ―――
魅力、ないのかな……?」
「「「……は?」」」
思い切ってそう問いかけた瞬間、
「マコに魅力がない?なにアホみたいなこと言ってんの?誰かに何か言われたの?バカじゃないの?マコほど魅力的な子はわたし知らないわよ。背が小っちゃくて可愛いとこも、モチモチした吸い付きたくなるような肌も、パッチリした宝石みたいな目も、豊満でむしゃぶりつきたくなる胸も。勿論性格も素敵すぎるわ。自分より他人を優先しちゃう底抜けに優しいところも、お日様みたいな暖かいぬくもりも、天性の眩い明るさも。そのすべてが魅力的で―――」
「マコ先輩以上に魅力ある人なんてこの世に存在しませんっ!少なくともあたしはそう思っています!包容力満点の抱き心地の良さそうな身体も、女神さまみたいな眩しい笑顔も、ずっと嗅いでいたくなっちゃう甘い香りも、どんな人にも分け隔てなく優しくしてくれるその心も、お料理上手な家庭的なところも全部が全部魅力的ですっ!勿論それだけじゃなくて―――」
一番の親友と可愛い後輩は物凄い剣幕でまくし立ててきた。……いかん。質問する相手を間違えたかもしれん。
「……別に、マコに魅力ないとは思わないけど……急にどしたの?」
「あー、えっとね。……うーん、なんて説明すれば良いんだろ……」
「……もしかして。今日この場に、コマがいないことと何か関係ある?」
「……う、うん」
暴走気味に矢継ぎ早に私の魅力を語ってくれるカナカナ&レンちゃんコンビの横で、冷静に分析したヒメっちが核心を突く一言を呟く。さ、流石ヒメっち。聡明だわ……
「……まさかあのシスコンのコマに魅力ないですって言われたの?ありえなくない?」
「いや違うそうじゃない。そうじゃないんだヒメっち。コマからそんな事言われたことは一度たりともないよ」
「……でも、マコは自分が魅力ないかもしれないって思ってるんでしょ?コマに自分の事が魅力ないと思われてるかもって考えてるんでしょ?」
「…………その通りっす」
「……なんで?なんでマコそんな事考えてるの?理由、あるんじゃない?」
そうだ……私は今、不安を抱いている。コマに魅力がないと思われているのではないかという不安を抱いているのである。何故かって?それは―――
「…………抱いてもらえなくなったんだもん……」
「……は?」
「だ、だからぁ!コマに、ここ最近、抱いてもらえなくなったんだもん……っ!!!?」
「……おぉう?」
立花マコ、魂の一言を血涙を流しながら親友にぶつける。そう、私の最近のお悩みは……最愛の人に抱いてもらえなくなったことなのである。
……念のために言っておくけど、ハグ的な意味じゃないの?えっちい意味でここ最近、一切抱いてもらえなくなりました……
「最初はね……コマも、それから私もここ一か月バタバタしててお互い疲れてたから……だから気を遣ってくれてるんだろうなって思ってた。けどね、違うのっ!明らかに付き合い始めた頃と比べておかしいのっ!!?」
「……と言うと?」
「付き合いだしてからは、どんなに忙しくても少なくとも一週間に21回はコマに抱かれてた「……そん、なに?」んだよ?でも、この一か月……そういう肉体的接触はゼロ、無!一回もないの!」
付き合い始めてからずっとコマの性欲に圧倒されていたけれど。私も人並み以上に性欲旺盛であるダメ人間。毎日のように抱かれ続けてきた反動からか、抱かれない日がこうも続けば欲求がたまりにたまってしまっている。コマと過ごす毎日が悶々とした天国で地獄な日々を過ごしているのである……
「それでも何かコマにも理由があって、私の事抱かないでいると思って……一か月は何も言わずに我慢してたさ。でも、でもぉ……!一か月間一回も、抱いて、くれないんだよ!?これはもう、私に抱かれるだけの魅力がないって思わざるを得ないじゃないのさ……っ!」
「……あー。そういう……」
「もう限界なの……無理、ツライ……コマに抱いてもらえないのつらいのぉ……」
コマに愛想尽かされた……と言う事は、決してないと思う。現に毎日キスするし、ハグだって欠かさない。言動からもコマからの無限の愛を常に全身全霊で感じているもの。
……でも、いいやだからこそわからない……!なんで急に抱いてくれなくなったのかがお姉ちゃん分からないんだよコマぁ……!
「……それはうん。確かに辛そうだ。……それで?私たちにどうしろと?」
「……うん。ここからが肝心の相談内容なんだけど。ヒメっち、それにそこで私の魅力を熱血に語りまくってくれている二人。お願いです……」
こんなこと、友人たちに聞いて良いものか随分悩んだよ。特に……私の事を本気で好きだと言ってくれたカナカナにとってはデメリット以外ない相談事だ。
けれどこうなった以上手段は選んでいられない。私だけじゃどうにもならないんだもの。だから、お願い皆……
「どうか私を……コマから襲ってもらえるような、魅力的な女性に、してくださいっ……!」
そんなわけで。今ここに立花マコのコマ誘惑大作戦が開始されたのである。
読んでいただきありがとうございました。双子の日、それも二人の誕生日なはずなのに何というしょうもない番外編が始まってしまったのでしょうね……いつもの事か。