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ダメな姉(わたし)は妹を愛でる  作者: 御園海音
三年生の妹も可愛い
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ダメ姉は、卒業する(レン編)

ダメ姉卒業式編。二話目は後輩キャラなあの子のターン。

「さーてと。とりあえず式が始まるまでは教室待機らしいし……のんびり教室に戻るとしますかねー」


 先生たちとの挨拶も終え、一旦教室に戻ることを決めた私。とはいえ時間もある事だし、すぐ教室に戻るのもなんだか勿体ない。折角だしちょっと遠回りをしながら戻ってみようかな。


 まず職員室から出発して、校長室、生物室、視聴覚室、体育館、体育倉庫、グラウンド、部室棟、食堂、図書館―――三年間通い続けた校舎を名残惜しみながらぐるりと回る。

 あー……なんかこれから卒業するって思うと、普段何気なく使ってた教室でさえ懐かしく思えてしまうわ。


「この学校で、色々なことをやったよなぁ……」


 色んな場所に足を運ぶ度に思い返す、3年間の楽しかった思い出。例えばそこの空き教室。


『ごめんなさい姉さま、ムラムラしたのでちょっとヤらせてください』


 放課後コマに押し倒された。


 例えばそこの音楽室。


『姉さまという素敵な楽器をこの私に奏でさせてくださいませ』


 ピアノの上に寝そべられ、コマにいっぱい身体を弄られた。


 例えばそこの体育倉庫。


『今声を出したら、誰かに聞かれちゃいますね♡』


 運動部の皆々様が部活に励んでいる音をBGMに、コマにヤられながら声我慢をさせられ―――


「…………何故だろう。色々なことっていうか……コマに()()()()()()されたことしか思い出せねぇ……」


 いかがわしくていやらしい、我ながらなんとも爛れた中学時代を送ったもんだな私。……いやまあ、最高だったけどね……これが若さか。


「さて。そんじゃ次は一年生の教室を―――」

「せん、ぱぁい……!」

「んぁ?」


 そんな事を思い返しつつ一年生の教室の前までやってきた私。するとそこから一人の女生徒が突然飛び出してきたではないか。おや、この子は……


「ああ、レンちゃんじゃないの。おはよー」

「先輩、せんぱい……マコせんぱぁい……!」

「って……れ、レンちゃん!?どしたの!?なんで泣いてるの!?」

「いたい、いたいんです……」

「い、いたい……!?ど、どっか痛いの!?大丈夫!?」


 なぜかダメダメなこの私を全力で慕ってくれる可愛い後輩の柊レンちゃん。そのレンちゃんが何故か泣きじゃくり私の名前を呼びながら「いたい、いたい」と言って私に抱きついてくる。

 怪我か……?それともなんらかの病気か……?


「と、とにかくレンちゃん!私と一緒に保健室へ……」

「いたい―――マコ先輩と、()()()()()()()()()()()()……!」

「へ?」

「行かないで……卒業しないでください先輩……!いっちゃ、やだぁ……」


 あ、ああ……『いたい』ってそっちの事ね。ひとまずほっとしながらも、わんわんと泣く彼女をなだめることに。


「先輩と離れ離れになるなんてやだです……マコ先輩のいない学校生活とか、考えられないです……あたし、4月から何を生きがいにこの学校で過ごしていけばいいのでしょうか……」

「あはは。大丈夫だよレンちゃん。別にこの先ずっと会えなくなるわけでもないでしょう?卒業してもお休みの日とかはまた一緒に遊ぼうよ。約束するから。ね?」

「やだぁ……卒業、しないで……ずっと一緒にいてください……留年してください……」

「そ、卒業式当日に留年のお願いされちゃ、流石の私も困っちゃうなぁ……」

「だったらあたしも今日卒業します!卒業して4月からマコ先輩と同じ学校に行きます!」

「それもっと無理だってば!?」


 普段はとても従順で私ごときを慕ってくれるカワイイ後輩だけど、今日は聞き分けがあまり宜しくない様子。ど、どうしたものか……


「え、えーっと……留年とかはちょいと無理だけど……それ以外のお願いなら極力聞いてあげるよ私。何かないかなレンちゃん」

「……留年以外の、お願い……ですか……?」

「うむす。先輩として。去り行く者として。やっぱ後輩に何かしら託したいじゃない?だから……最後にレンちゃんのおねだりを、なんでも聞いてあげる」

「…………」


 私のそんな提案に泣きべそかいていたレンちゃんはピタリと泣き止み、真剣に思案しだす。

 やがて彼女は何か決心した表情で、私を見つめ……そして頭を下げてこんなお願いをしだしたではないか。


「マコ、先輩……なんでも、何でもいいんですね……!?」

「はいはい。私に出来ることならなんでもいーよ」

「で、では……お願いします……!せ、先輩の……マコ先輩の……!」

「私の?」

「せ……制服の、ボタンを……ください……ッ!」

「…………?」


 ボタン?何故にボタン?え、ちょっとレンちゃんのおねだりの意図がよくわかんない……


「だ、ダメでしょうか……!?……ハッ!?も、ももも……もしやすでにどなたかに譲渡される予定がお有りでしたか……!?」

「いや、別にダメじゃないし……そんな予定も全然ないけど」


 でもどうしてレンちゃんがそんな事をおねだりしてるのかが私にはよくわからない。ボタンを無くして困ってるとかか?それともおまじないとかそういうアレか?


「う、うぅ……」

「……ふむ」


 顔を真っ赤にしてもじもじと私の返答を待つレンちゃん。んー……ま、いっか。どうせこれから先この制服を着ることなんてそう滅多にないだろうし。


「おーけー、良いよ。レンちゃんにあげる。ちなみにボタンって、どこのボタン?」

「あ……で、出来れば第二ボタンを……!」

「おっ、それはありがたい。無くてもそこまで目立たない場所だもんね。そんじゃ―――そぉい!」

「ちょ、先輩!?」


 指定されたボタンを勢いよく引きちぎる私。この行動はレンちゃんの予想の範囲外だった模様。


「はいレンちゃん。ボタンをどうぞ」

「せ、先輩……何も今渡さなくても……そ、卒業式が終わってからで良かったのに……」

「あはは。式が終わった後じゃレンちゃんの約束忘れちゃうかもしれないからね。それに……どうしても欲しかったんでしょ?」

「は、はい……それはもう、欲しくてたまりませんでした…………(ボソッ)なにせ競合相手、多いですし……」


 こんなもんでレンちゃんの気が済むならボタンの一つや二つ、好きなだけ持って行ってくれればいいさ。

 そう言って笑って私はレンちゃんにボタンを差し出す。レンちゃんはそのボタンを大事そうにキュッと握りしめ……


「あ……ありがとう、ございます……大事にします……!」

「そっかそっか。そりゃ良かったよ」

「ええ……大事にします……家宝にします……他の何を失ったとしても……このボタンだけは、命に代えても守りますから……」

「いや。そんなもんと命を代えられちゃ、プレゼントした私も困るよレンちゃん……」


 ボタン一つで大げさに喜ぶレンちゃん。今日のレンちゃんの思考は、頭の悪い私にはちょっと理解が追い付かないけれど……とにかくこんなにカワイイ後輩と出会えて慕ってもらえたことには感謝しなきゃね。

読んでいただきありがとうございます。この三年生編で突如誕生したキャラですが、マコの貴重な先輩ムーヴが出来るシチュを書けるし何より動かしやすいキャラだったのでレンちゃんは結構気に入ってる子です。高校編とか始まっても時々出してあげたい。

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