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ダメな姉(わたし)は妹を愛でる  作者: 御園海音
三年生の妹も可愛い
136/269

ダメ姉は、休日を謳歌する(昼編)

ただの日常回(家事編)

「―――ところで姉さま。本日の姉さまのご予定を伺っても宜しいでしょうか?」

「ん?何?私の今日の予定?」


 ちょっと遅めの朝食を終えると共に、そんな事を聞いてきたコマ。


「はい。休日ですしどこかに遊びに行くとか、お買い物をするとか、やらなきゃならない事を済ませるとか。そういうのはありますか?もしも遠出をしたり買い物に向かわれるのでしたら、この私がお供いたしますよ」

「んー……予定、予定ねぇ……」


 予定と聞かれて即頭に浮かんだ『コマと抱き合って一日ダラダラ過ごしたい』という願望を思わず口に出しそうになったけど、何とかなけなしの理性で抑え込む私。いかんいかん……あまり自堕落な生活送っちゃうとコマに失望されかねない。

 コマの問いかけに腕を組んで真剣に考えてみる。えーっと……今日私がやらねばならない事と言えば―――


「お掃除、お洗濯、そしてお料理だね!…………って、主婦かよ!?」


 自分の発言に自分で自分にツッコミを入れる私。あ、あれあれおかしいぞ……?私、一応女子中学生……だよね?

 普通の女子中学生の休日と言えばもっとこう……友達同士で遊びに行くとか、好きな趣味に打ち込むとか……もっと華がある生活を送っているはずでは?なんで真っ先に思い浮かんだ休日の予定が専業主婦チックなスケジュールなんだよ私……?


 そもそも私にはコマという最高の恋人がいるって言うのに……何故『コマとデートに行くのが予定だね』とか、気の利いた事が言えないんだ私……!?デートの発想より先に浮かぶのがこんな地味で主婦っぽい予定って……ひょっとして私、枯れてるのだろうか……?つーかそんな発想しか出来ないって、コマに呆れられるのでは……!?


「ふふっ♪それは素敵なご予定ですね」

「え……そ、そうかな……?変じゃない?」

「はい。なんというか、とても姉さまらしいと思います」


 と、恐る恐るコマの反応を覗き見てみると、私の不安をよそに笑顔でそんな事を言ってくれるコマ。流石私の自慢のお嫁さん。引かずに寧ろ奥さんでる私を立ててくれるこのさり気ない気遣い力に惚れるわ……あ、ゴメンもうすでに惚れてた。


「なるほどです。それでは本日は家事に専念されるという事ですね姉さま?」

「う、うん……ごめんね、ホントなら恋人として、こういう休日こそコマとデートする時間を作るべきなんだろうけど……休日じゃないと細かい掃除とか出来ないから……」


 コマとのデートやイチャコラにかまけて家事を疎かにしてしまい、結果コマの体調や精神状態に悪影響を及ぼす事になるのはコマの恋人としてもコマの姉としても嫌だ。

 だってやるべきことをちゃんとやった上で恋人生活をエンジョイしたいもの。


「謝らないでください。ちゃんとわかっていますよ。姉さまはいつでも私を想って一生懸命家事を頑張ってくれているって事くらいね。いつもありがとう、姉さま」

「こ、コマ……!」


 私の手をキュッと握り笑顔で感謝してくれるコマに感動する私。しっかり気持ちを汲んでくれる理解あるお嫁さんがいる私って……とんでもなく幸せ者だよね……!


「でしたら私も今日は姉さまのお手伝いをしますね。姉さま一人に負担はかけさせません。一人よりも二人でやった方が早く終わりますし」

「え?」

「姉さま、指示をください。掃除でも、洗濯でも、料理でも。私姉さまの言う通りに動きますよ」


 なんて感動していた私だったんだけど、そのコマの一言に慌てる。愛しのコマは腕まくりをしながらどういうわけかそんな事を言い出したではないか。


「い、いや良いよ。コマこそ今日は何か予定入っているんじゃないの?私に気にせずコマはどっか遊びに行っておいでよ。掃除とかなら私一人で何とでもなるし……」


 気持ちはとてもありがたい。でも半ば家事が趣味な私はともかく、折角の妹の休日を家事なんかで潰させたくはない。そう考えて掃除機を取り出そうとするコマを止めようとした私だけれど、


「いいえ、是非ともさせてください。今日は特に予定など入れていませんでしたし。……そもそも。一人で遊びに行ってもつまらないじゃないですか。姉さまと一緒じゃないと私イヤです」

「で、でも……休日にやる事が家事手伝いとか、楽しくないんじゃ……」

「私、姉さまと一緒にやる事なら何だって楽しいと思っています。掃除も洗濯も、それから最近出来るようになったお料理も嫌いじゃないです私。だから……ね?」


 コマは上目遣い気味に『手伝わせてください、お願いします』と言ってくれる。

 む、むぅ。可愛くて健気な妹にここまで言われたら、断る方が却って申し訳ない気がする。折角の厚意を無駄にしたくは無いし……


「……わかったよ。じゃあゴメンねコマ。リビングと廊下のお掃除をお願いしても良いかな?お姉ちゃんは洗濯を済ませちゃうからさ」

「はいっ!お任せくださいませ姉さま!」


 結局根負けした私は、コマと共に家事をすることになった。



 ◇ ◇ ◇



「さて、こんなもんか。お天道様、あとはどうぞよろしくおねがいしまーす」


 溜まっていた服(と昨日散々濡らしてしまったシーツ)を洗濯機にかけ終えてから、乾燥は燦燦と照るお日様に手を合わせて託す。洗濯、日が照ってるうちに終わらせることが出来て良かったわ。

 いやはやそれにしても今日は良い天気。抜けるような青空で、雲一つ見えないまさに快晴。絶好の洗濯日和で何よりだ。


「……ふむ。この際だしお布団もついでに干しちゃおっかな」


 青空とお日様をボーっと見ているとふとそんな事を思い至る私。こんなに晴れてるわけだし、コマがお掃除をしてくれてるから時間もある。今の内にお布団も洗濯物と一緒に干してしまおう。

 干した後のお日様の匂いのするお布団で寝るのって最高に気持ちいいもんね。


「コマ、コマー!」

『あ、はーい!どうかなさいましたかマコ姉さまー?』

「良い天気だし、お布団干しちゃおうかなって思ってるんだけど……コマのお部屋のお布団も一緒に干しちゃっても良いかなー?」

『お布団ですかー?勿論構いません。よろしくお願いしまーす』

「あーい、任せてねー!」


 思い立ったら何とやら。一階で掃除中のコマに了承を得てから自分の部屋とコマの部屋のお布団をかかえてベランダへ向かう事に。


「よいしょ……っと。これで良し」


 最初に自分のお布団をベランダにかけて、それから風で飛んでいかないように布団はさみで挟む。一時間もしたら裏返して同じように干せばOKっと。


「おーし。んじゃあとはコマのお布団を―――」


 自分のお布団を干し終えて、次はコマのを干してあげよう。そう思ってコマのお布団を抱きかかえた……次の瞬間。


「…………ごふっ……!?」


 私の身体が突如として悲鳴を上げたではないか。先ほどまで何ともなかったというのに、急に動悸、息切れ、顔面紅潮。クラクラ眩暈までする。


「(……こっ……これ、は……!)」


 ガクガクと膝が笑いその場で立つのがやっと。脳みその中がドロドロと溶けて無くなってしまう、そんな感覚が私を襲う。

 こうなった原因?そんなの、説明しなくてもわかり切っている事だろう。







「ハァ……ハァ……ハァ…………コマの、コマの素敵な香り……ッ!!!」


 コマのお布団を抱きかかえた際に、そのいつもコマがお休みする時に包まれるお布団に、自分の顔を埋めてしまったからだ。


「すー……はぁ…………すぅううう……はぁあああ……」


 コマのお布団を抱きしめつつ深呼吸をすると共に、お布団に残ったコマの甘い香りが私の鼻腔を刺激する。麻薬患者のように一心不乱にお布団の残り香を嗅ぎ狂う私。


「あ、ダメ……これすごい……」


 ああ、満ちる。蕩ける。酔いしれる。胸が、お腹の下あたりがキュンとなる。そんなつもりは無かったのに、ただ真面目に布団を干そうとしていただけなのに……我慢できない、抑えられない。

 とうとうその場にペタンと座り込んだ私は、頭をお布団に更に強く押しつけ大きく息を吸い込む。吸い込みながら私は……無意識に片手をゆっくりと下半身へ向わせ―――


「…………姉さま?一体、何を……」

「ぴひゃあああああああ……!!?」


 ―――ようとしたところで、掃除を終えたのか箒と塵取りを持ったコマがベランダに現れた。一番見られたらマズい人に醜態を見せてしまい、思わず奇声を上げてしまう私。


「あ、あああ……あの!違う、違うのコマ!?こ、これはだね……」

「……何を、なさっているのですか姉さま。それ、私のお布団ですよね?」

「ホント違うの!?最初から匂いクンカクンカしようとか、そういう意図でコマのお布団を干そうとか思ってたわけじゃないの!!?お願い信じてコマ!?」


 とにかく魔が差したとしか言いようがない。布団のコマの残り香に中てられて、理性が吹き飛んでしまったのである。


「……匂いを、嗅いでいたと?私の?……そうなのですね」

「け、結果から言うとその通りだけど、でもあのホント違うくて……!?ただ純粋にお布団干そうとしてたら、偶然お布団からコマの香りが漂ってきて、それでお姉ちゃんちょっとおかしくなっちゃって……」

「むー……」


 涙目で弁解する私だけれど、コマは不機嫌そうに頬を膨らませ私を責めるようにジトっと睨みつける。それも当然の事だろう。姉が自分のお布団の匂いを嗅いで悦んでいる気持ち悪い姿を見て、怒らない妹がいるわけがない。


「……姉さま。それを置いて、こちらへ来てください。話しはその後です」

「…………ハイ」


 有無を言わせない口調で私にそう告げるコマ。やらかしてしまった私はただ神妙に頷いて従うしかない。言われた通りコマのお布団を干してから、恐る恐るベランダから部屋へ戻る。

 あ、ああ……最悪だ。なんてことをしちゃったんだ私……コマに嫌われた……キモイと思われた……おわった。私の人生、オワッタ……


「……姉さま」

「あ、あの……コマ、怒ってる……よね?あ、謝る!ホント変態でごめんなさい!?許せないかもしれないけど、土下座でも何でもするから!だから……」


そんな平謝りの私に対しての、コマの行動は予想の範疇を越えたものであった。


「…………えい」

「ふぉお!?」


 どんな罵詈雑言も暴力も全力で受け入れる覚悟はあるつもりだったけれど。このコマの行動には予想外過ぎて、ただでさえコマの匂いに酔いかけて思考がおかしい状態だった私は更におかしくなりそうに。

 そう……どういうわけかコマは、私を思い切り抱きすくめたではないか。


「あ、あああ……あの、あの!?こ、コマ……!?な、なにをして……!?」

「…………ええ、そうです。怒っています。怒っていますよ姉さま」


 コマの胸元に思い切り顔を埋められている私。布団の残り香など目じゃない。コマの匂いが鼻に、脳にダイレクトに伝わって……いや匂いだけじゃない。そのコマの体温、コマの柔らかさがダイレクトに伝わって……先ほど以上に興奮が抑えられなくなる。

 頭が沸騰しそうになりつつ、叱られるどころかどうしてコマにこんなご褒美みたいな事をされているのかわからない私がしどろもどろに問いかけると。コマは顔を真っ赤にしながらこう答えてくれた。


「匂いなら布団の残り香なんかより……私から直接嗅げばいいじゃないですか。布団を抱きしめるより……私を直接抱きしめれば良いじゃないですか」

「ぇ……?」

「布団なんかに、負けません。私は……もう姉さまのモノですから。そういう気分になったら、こそこそとこんな事しなくても直接私に言ってください……匂いを嗅ぐのも、抱きしめるのも。いつでも私の身体は姉さまの好きなように……好きにしてください……」

「…………」


 怒っていた理由は、布団に嫉妬したせいだとコマは言う。そんなコマの独占欲のような健気で大胆な発言に、ただでさえショート寸前だった私の頭はパァンっと弾けてしまった。


 …………あとついでに。私の鼻の臨界点も弾けてしまい。晴天の空を昇るように、私の鼻血が勢いよく弾け飛んでいってしまった。

読んでいただきありがとうございます。最近鼻血成分とか、マコの変態要素が減っている気がして……これはマズいと慌てて書いたお話。マコの(良い意味で)気持ちの悪い描写を書くと筆が乗るのは何故だろうか……?


そして何にでもイチャつく口実にする双子たち。爆発しろ、して。


6月がかなり忙しいので、次のお話の更新は大分遅くなるかもしれません。気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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