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ダメな姉(わたし)は妹を愛でる  作者: 御園海音
三年生の妹も可愛い
134/269

ダメ姉は、親友たちと語る

気分転換にダメ姉ちょい話更新。

「―――そう言えば。いつの間にかカナカナとヒメっちって随分と仲良しさんになったよね」

「え?」

「……んー?」


 ある日の放課後。運動部の助っ人に今日も今日とて駆り出されたコマの帰還を待ちながら、親友二人と駄弁っていた私こと立花マコは……ふいに思いついたことを口に出した。


「……急にどしたのマコ?」

「いやだってさ。私が知らん間に二人ともニックネームで呼び合ってるでしょ?去年まで別クラスな上にほとんど接点無かったハズなのに、何がきっかけで二人がそんな仲良くなったのかちょっと気になってだね」


 三年生に上がるちょっと前くらいから、カナカナはヒメっちの事を『おヒメ』と呼び。そして一方のヒメっちはカナカナの事を『カナー』と呼んでいる。

 あだ名で呼び合うくらい私の得難い親友二人が仲良しになってくれるのは嬉しい事だけど……この二人、いつからこんなに仲良しになったんだろうか?


「何がきっかけって……やれやれね、本気でわからないのかしらマコ。どう思うおヒメ?」

「……全く。マコは鈍感だよねカナー」


 その私の純粋な疑問に対して、二人は顔を一瞬見合わせた後……ニヤニヤと笑いそんな事を言い出した。え?なにこの二人わかり合ってる感は……?なにこの目と目で会話出来ますよ私たちみたいな雰囲気は……?


「も、もしかして……私とコマが結ばれてイチャラブしていた舞台裏で、まさかのヒメ×カナルートが展開され―――」

「……ごめんねー、私未来永劫母さん一筋だからそれは無いよマコ。あと、あんまし笑えない冗談はしちゃダメ。……ね?」

「アッ、ハイ……」


 言い切る前に、食い気味に即座に否定される私。流石は真正マザコンの鑑だ。一切ブレないなぁ……あと、今のは半分くらい冗談だから笑顔なのに目だけ笑ってないそのお顔を私に見せるのはおやめくださいヒメっちさん……怖いっす……


「そしてこのわたしは未来永劫マコ一筋だから安心して頂戴なマコ♡確かにおヒメは可愛いけれど、タイプじゃないの。わたしの好みはマコ一択。そしてわたしは一生マコを愛し続けるわよ」

「カナカナや?それは一体何を安心しろと?」


 いかん、ヒメっちはキレるしカナカナはこうして私に急接近するし……この冗談は色んな意味で藪蛇だったわ。口は禍の元ってこういう事なのね……


「んで?結局なんでそんなに仲良しさんになったのかなお二人さん?」


 これ以上下手に藪をつついて蛇を出すわけにもいかない。慌てて私は話題を元に戻して(ついでに迫るカナカナを席に戻して)二人が仲良くなったきっかけについて尋ねる事に。


「なんでって……まだわかんないの?全然察せない?」

「いや、だからマジでわかんないんだけど……」

「他でもない、あんたとあんたの大好きな妹ちゃんのせいよ」

「へ?私と……コマのせい?」

「……うん。マコとコマのせい」


 ……私とコマのせいで、この二人が仲良くなる?……ごめん、どゆこと?


「マコは覚えてないの?12月のわたしとおヒメを巻き込んだ、マコとコマちゃんの誕生日サプライズの事を」

「……修羅場(仮)だったあの件だよマコー」

「……12月、誕生日サプライズ、カナカナ達を巻き込んだ修羅場…………あ」


 二人に言われて思い出す。あ、ああうん。そういやあったねそんな事も……コマの為にコマに内緒でカナカナと密会(?)して、そのせいでとても気まずい空気をファミレスで味わう事になった事、あったねぇ……


「……マコがコマの、ついでにコマがマコの浮気を疑って。しかもその相手が事もあろうに私とカナー……折角誕生日のサプライズに付き合ってあげたってのに、浮気相手だって誤解されたらそりゃ誤解された者同士、愚痴も言いたくなるってもの」

「それがきっかけでおヒメと話す機会が出来て、話をしているうちに何だかんだわたしたち気が合って―――そんで今ではマブダチになったってわけよ。わかった?」


 なるほどそういう経緯があったのか。……ふむ、カナカナとヒメっちか。性格はまるで違うけど、意外と気が合うのかもね。

 どっちも根は優しいし、気遣い上手だし。……あと性癖は私が言うのもなんだけど、似たようなもんだし。


「まあわたしとしてはマコと浮気関係を疑われても全然OKって言うか―――寧ろ浮気相手になりたい所存だけどね」

「だからどうしてカナカナはすぐそういう話に持って行くのかね?浮気なんてしませーん私。そも何度も言うけど、私にはコマという心に決めた人がだね……」

「むぅ。浮気はダメって……マコは誠実って言うか意外にお堅い子よねぇ。仕方ない。なら妥協して―――正々堂々本妻枠を狙うわね。マコ、いつかコマちゃんと無理やりにでも別れさせるからその時はわたしの嫁になりなさいよね」

「ねぇ、それホントに妥協してるのカナカナ?正々堂々ってなんだっけ……?」


 なんてとんでもない話をしながら先ほどのように私に迫り、いつものように顎クイしようとするカナカナ―――


「…………ふ、ふふふ……かなえさま?浮気はダメです。あとマコ姉さまを惑わすのはもっとダメです。人として最低です。かなえさまは是非とも新しい恋をお見つけくださいませ。そして姉さまの事はさっさと諦めてくださいませ。私、かなえさまの新しい恋なら全力で応援しますので」

「うぉ!?び、ビックリした……!?こ、コマいつの間に……!?」

「…………チッ。もう戻って来たか」

「……おー。コマおかえりー」

「姉さま。それにヒメさまお待たせしました。ささ、こんな危険な泥棒猫は置いてとっとと帰りましょうねー♡」


 ―――を、全力でインターセプトし。更に私を抱きしめつつカナカナを引き剥がしたのは、双子で生涯のパートナーで天使な妹のコマだった。


「コマちゃん安心してよ。このわたしが一度決めた道を諦めるハズないじゃないの。わたしは何としても願いを叶えて見せるわ。マコをわたしの嫁にするという願いはね……!」

「その決めた道は根本から間違っているんですよかなえさま。悪い事は言いません、今ならまだ間に合います。姉さま以外の人ならいくらでも紹介して差し上げます故、姉さまの事はきっぱりすっぱり諦めると吉ですよ」


 二人にこやかな笑みを浮かべながら、私を挟んでバチバチと火花を散らすコマ&カナカナ。……何度も断って来たけれど、三年生になってからも以前と同じように。いや、以前以上に私に好意を向けてアプローチをかけ続けてくれるカナカナ。お陰でコマとは毎日のようにこのように私を挟んで言い争う犬猿の仲になっている。

 誰かに愛されるのはとてもありがたい事だけど……い、胃が痛い……助けてヒメっち……


「……そう言えば。コマとカナーも知らない間に()()()()()()()()よね。仲良しさんになったよね」

「えっ?」

「「はぁ?」」


 我関せずといった顔でぽけーっとしていたヒメっちにアイコンタクトを送り助け舟を求めた私。するとその想いが通じたのか、ヒメっちは突然そんな話題を持ち出したでは無いか。

 この二人が、仲良く……?


「ふ、ふふ……ヒメさま?流石に悪い冗談ですよね?かなえさまと、私が仲良しですって?」

「は、はは……おヒメ大丈夫?眼科行く?今のわたしたちのやり取り見て、どこが仲良しだって?」


 コマとカナカナは一旦私の取り合いをストップして引きつった笑みを浮かべながら、そのヒメっちの一言を全力否定する。うーむ。仲良しねぇ……?ゴメンヒメっち、言っちゃ悪いけど私も二人と同意見なんだけど……


「えーっと……ヒメっち?ヒメっちはどうしてこの二人が仲良しだって思うのかな?会えばすぐ喧嘩する仲に見えるんだけど……」

「……だってホラ。他者と壁を作るコマがここまで地を出して、しかも『かなえさま』なんて下の名前で呼んでるんだよ?それってつまり、コマはカナーの事を信頼しているって証拠じゃない」

「……ッ!?」

「……へ?」

「……カナーもカナーでマコが居ない時はコマと楽しそうに話をしてるし。この前なんかコマに封筒みたいなのを手渡して滅茶苦茶喜んでたよね。二人ともホントは仲いいでしょー?」

「んな……!?」

「…………え?」


 ヒメっちの指摘にコマもカナカナも、それから私も戦慄する。え、え……っ?ちょ、ちょっと待て。ナニソレ知らない……どういう事?

 た、確かに言われてみれば……実は人見知りで本当に信頼できる人とだけしか仲良くならないハズのコマがカナカナを『かなえさま』っていつの間にかフレンドリーに名前呼びしてる。カナカナもそういやこの前コマと何やら密談していたのを遠目で見た事あるような……?ま、ままま……まさか……!?


「まさかの……コマ×カナルート、だと……!?」

「「それだけはない(です)っ!!」」


 さっきのヒメっちと同じく、二人に食い気味に全力否定される私。


「違う、違うんです姉さま。私が想い、恋焦がれ、生涯愛し続けるのはマコ姉さまただ一人なんです。どうあろうともかなえさまに惚れるなどあり得ません」

「同意だわ。わたしもマコ以外の人と恋愛するとかごめんよ。例え何かの間違いがあったとしても、コマちゃんと好き合うとかあり得なさ過ぎて笑えないわ」

「でも……知らんうちに仲良しになってるっぽいし……」

「「だから、仲良しなんかじゃない(です)ッ!!」」


 ……ハモってるあたり怪しんだけど……


「ち、違うなら……コマはいつから、何がきっかけでカナカナを名前呼びしているの?あとカナカナは私に隠れてコマと何をコソコソ密談していたの……?お願い、答えて二人とも」

「「ぅ……」」


 返答次第では、私は嫁と親友を一気に失う事になり兼ねない。ちょっぴり涙目になりながらも問いかける私に対して、二人は気まずそうに顔を見合わせてから……ハァとため息一つ付いてこう返答する。


「……きっかけはあれです。以前、マコ姉さまが私に成り替わった事があったじゃないですか」

「成り替わり……?あ、ああうん。あの日か。私がコマの代役でスピーチコンテストに出たあの……」

「そうそうその日。んで、そのマコの入れ替わりをわたしだけが見抜いたせいでマコが先生たちに怒られたって話をしたら、コマちゃんがね―――」



 ~コマ&カナカナ回想中~



『……聞きましたよ叶井さま。叶井さまが余計な事を言ったせいで、マコ姉さまが怒られる事になったとか。折角姉さまが頑張ってくれたのに、何てことしてくれたんですか』

『あー……いやうん。悪かったってば。けどまさかマコがコマちゃんと入れ替わってるなんて意味不明な事してるとか思わないじゃない?てっきり先生たちも入れ替わりを見抜いているとばかり思っててつい……つーか、何で他の人が二人の入れ替わりを見抜けないのか不思議よね。中身はともかく外見はよく見たら似てないのにね』

『…………(ピクッ)似てない、ですか?私と姉さまが?』

『ん?うん、似てないわね。胸とか身長とか髪型は上手く誤魔化せたみたいだけど―――マコの方がコマちゃんよりまつ毛が長くて愛らしいでしょ』

『……ほほう。中々に良い観察眼ですね。ですがそれだけではありませんよ。マコ姉さまの方が私よりも唇がしっとりぷっくりとしてとってもエッチで可愛いです』

『それくらい見りゃ分かるわよ。あと付け加えるならマコの方がほっぺたがプニプニしてる』

『『……』』

『マコ姉さまの瞳の方が私のそれよりもキラキラと輝いていて素敵です』

『コマちゃんも白いけど……マコの歯ってビックリするくらい真っ白で、歯並びもすっごい綺麗よね』

『『……』』

『私は姉さまに褒められる為にケアを欠かしませんが、姉さまの場合一切ケアしないで良い天然のお肌なんですよね。最高ですね』

『ふーん……流石に双子なだけあってよく観察しているじゃない。でもわたしは最低あと15個はマコとコマちゃんの違いを言えるわよ』

『その程度ですか?私ならあと20個はマコ姉さまの素敵なところを言えますよ』

『『…………』』

『……良い度胸しているじゃない。なら順にマコの良いところについて言い合ってみようじゃないのコマちゃん』

『望むところです、()()()()()



~コマ&カナカナ回想終了~



「―――と、そうやって言い争っている内にわたしたち、なんとなく意気投合してね……」

「気づけば私、かなえさまを名前で呼んでいて……」

「……当人の居ないところで褒め合い合戦するの止めて。恥ずかしいから止めて……いや、勿論居るところで褒め合い合戦されても困るけどさ……」


 というか、やっぱ君たち超仲良しじゃないの。


「じゃ、じゃあカナカナ?カナカナとコマが私に隠れて密談したり、何かの封筒のやり取りしてたのって……つまりそれは……」

「あー……うん。お察しの通り……その。マコの良いところを言い合ったり、マコの(盗撮)写真を見せ合ったり交換し合ったりしていただけなのよ。だ、だからコマちゃんと仲が良いとか全然違うし、間違っても恋人同士になるとかあり得ないから!言うなれば利害の一致したビジネスパートナー的な存在なだけだから!」


 そう言って懐からゴッソリと私の撮られた覚えのない写真を取り出して弁明する親友。な、なるほどそういう事ね。それなら安心し―――いやちょっと待て。さっきと違う意味でちょっと待て。


「……ねえ二人とも?何なのこの写真……?」

「んー?どうかしらマコ。結構綺麗に撮れてるでしょ?わたしの自信作よ。こうやって日常のマコの可愛いところを撮り合って、そんでコマちゃんと二人で鑑賞会するのが最近のトレンドなのよ」

「……悔しいですけど、かなえさまって写真撮るのとても上手なんですよね。特に姉さまを撮った写真ってどれも素敵で……」

「そういうコマちゃんのマコの写真こそ、愛を感じて羨ましいわ。これとか至高の一枚だし」


 そんな事を言いながら、嫁と親友はワイワイキャッキャと私の写真を見せ合いっこしながら楽しそうに談笑しだす。

 ハハハ……いやぁ、二人が楽しそうで何よりだ。


「うん、とりあえず二人とも。この写真全部没収。もしネガがあるなら渡しなさい。デジカメだったらカードを寄こしなさい」

「「そんな!?」」


 でも出来れば私をネタにして盛り上がるのはやめて頂けないだろうか。つーか何をさり気なく盗撮してるのこのコンビ。

 …………え?お前もコマの事を盗撮しているだろうって?わ、私は良いの。妹の成長記録をアルバムに残しているだけだから……


「も、もう!かなえさまが余計な事まで言っちゃうから折角撮った写真ダメになっちゃったじゃないですか……!」

「何言ってんのよ!元はと言えば、コマちゃんがわたしの事を『かなえさま』なんて呼び始めるから、この事がバレたんでしょうが!?」


 私から写真を没収された事で、再び二人は私を挟んで口喧嘩を始める。私は頭をちょっと抱えつつ、面白そうに私たちのやり取りを見ていたヒメっちにこう告げた。


「……ヒメっちの言う通りかも。この二人、根っこは仲良しなのかもね……」

「……でしょー?某世界一有名な猫とネズミと一緒。喧嘩するほど仲が良い」

「「だから仲良し違う(違います)ッ!!」」

元々アレな双子たちと親友ですし、性格は真逆だけど意外と仲良しになれるカナカナとヒメコンビ。


そしてお互いに警戒しつつもマコを愛で合うというよくわからない恋敵関係なコマとカナカナコンビ。両手に華だぞ、喜べマコ。

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