ダメ姉は、ママになる(前編)
久しぶりにまたダメ姉更新。寝る暇もなく疲れているからこそ思い浮かんだネタ。
「…………はぁ……」
「―――……ま……こま……」
「…………ふぅ……」
「……コマ…………コマッ!」
「……え?」
「ああ、コマ良かった……やっとこっちを向いてくれたね」
「……マコ姉さま?……あ。ご、ごめんなさい。もしかして私を呼んでいましたか?」
「うん。さっきから何度もね」
「あー……すみません、ちょっと集中し過ぎていたみたいです。ええっと、何かご用ですか?」
「用っていうか……何だかコマ顔色良くないように見えてさ。作業中もため息吐きまくってるし、お姉ちゃんの声も全然届いてないし……お姉ちゃんちょっと心配になってね。大丈夫?何だか疲れてない?」
「あ、あはは……そう、ですね。今更姉さまの前で嘘は通用しませんし、姉さまに嘘なんてつきたくありませんから正直に言いますと……お察しの通り、ほんの少しだけ疲れているかもしれません」
「ああやっぱり……ねえコマ、無理はよくないよ。今日はもう休んだ方が良いんじゃ……」
「いえ、もう少しだけ……区切りの良いところまでやらせてください。中途半端に残したら、気になって却って休めない気がしますので」
「…………コマ」
「ご心配には及びませんよ。5分で書き上げますから」
「……むぅ」
◇ ◇ ◇
「―――なんてことがあったんですよちゆり先生!ここんところコマったらずっと忙しくしてて!そんでもってめちゃくちゃ疲れてるっぽくて!」
「あらあら……それはお姉ちゃんとしては心配よねマコちゃん」
「そーなんですよ!コマが色んな場面で活躍したり、頼りにされること自体は喜ばしい事だとは思っています。思っていますが……頑張り過ぎているコマが倒れないかものすごーく心配でして!!!」
ある休日の午後。コマの元担当医であり……今は年の離れたお友達である耳鼻咽喉科の先生―――ちゆり先生のお家に遊びに来ていたご存知ダメ姉こと私、立花マコは。ちゆり先生にちょっとした愚痴を聞いて貰っていた。
「優秀過ぎるのも考え物よね。あのコマちゃんの事だし、恋人であるマコちゃんにちょっとでも良いところ見せようとして、そういう頼まれ事されたら一切断らないって感じでしょ?」
「お察しの通りです先生……頼まれ事には二つ返事でOKして。そのくせ休んでくれって私の頼みは全然聞かずに休んでくれなくて……!」
またまた陸上部の助っ人選手として大会に出場したり、在校生代表として卒業式のスピーチを頼まれたり……とにかくいつも以上に先生や生徒に頼りにされているここ最近の我が妹にして恋人のうちのコマ。
いくら私が『仕事を引き受け過ぎると身体を壊すよ』『もう休んだ方が良いよ』と忠告しても、
『大丈夫ですよ。それよりも……私の活躍、絶対見ててくださいねマコ姉さま♡』
とか何とか喜ばしいことを言って、全くもって休んでくれないのである。……コマがかわいく凛々しく美しく活躍する場面?そりゃ恋人として、それからシスコン姉としては見たいに決まっているさ。
けれど……それよりも何よりも。私はコマがいつまでも健康で私の傍で笑っていてくれる方が1000倍は嬉しいのに……
「…………(ブツブツブツ)てか今日も、卒業式の予行演習とか何とかでお休みなのに一緒に居られないし……お休みの意味ないじゃない……今日は久しぶりに二人でゆっくりできるって思ってたのに……」
「……あらら」
ちゃんと休める時は休んで欲しい……あと、忙しいのは勿論わかっているけれど、お休みなのにコマが傍に居ないのはお姉ちゃん寂しいよコマ……
「それで……ちゆり先生に少しご相談がありまして」
「はいはい。何かしらマコちゃん。私でよければ何でも聞くわよ」
「えっと……その。多分ですけど、今晩もコマったら卒業式の祝辞を寝ずに考えると思うんです。でもここの所あまりコマは寝てなくて……」
「今日くらいはちゃんとコマちゃんに寝て欲しい?あとは恋人としてコマちゃんをどうにか癒してあげたい?」
「そ、そう!そうです!その通りです!」
流石はちゆり先生だ。まだ話半分だったのに、私の言いたい事をすぐさま察してくれたらしい。
「昨日も早く寝ようと声は掛けたんですが、結局コマ日が変わるまで祝辞を考えていたっぽくて……休まないと疲れは取れないのに私が何を言っても聞かないんです。だから……どうか先生!私に何か知恵を授けてはくれませんでしょうか!疲れた恋人を一発で癒す魔法みたいな方法はないでしょうか!?」
「ふぅむ……そうねぇ」
土下座する勢いでちゆり先生にそうお願いする私。そのお願いに対してちゆり先生は頬杖をついて何やら思案してくれる。
「……うん。我流だけど一つ知ってるわよ。どんな子でも―――そう、生真面目で融通が利かなくて意地っ張りな可愛い看護師さんでも―――素直に甘えて癒されて。そして行為の後はぐっすり眠ってくれる、そんな方法を知ってるわ私」
「ホントですか!?」
「ええ。ちょっと待っててね。口で説明してもちょっと難しいから……どうすれば良いのかメモしておいてあげる」
数秒思案したのちに、先生はそう言って綺麗な字でノートに何やら書き留めてくれる。藁にも縋る想いでお願いしたけれど、やはり頼りになるわちゆり先生……!
「……はい出来上がり。それじゃあマコちゃん。今晩ここに書かれた事をコマちゃんに実践してあげると良いわ。きっとコマちゃんも……喜んで甘えてくれると思うから」
「は、はいっ!ご指導ご鞭撻、本当にありがとうございます先生っ!」
「うふふ♪良いの良いのお礼なんて。元患者が無理をしてまた身体を壊すところなんて、元担当医としてはいい気分はしないもの」
ニカッと笑い書いた紙を私に手渡してくれるちゆり先生。……ここ最近は患者やその家族として先生の診療所の扉を叩く事はほとんどない。それなのにこんな風に、ちょっと年の離れた頼れる友人として付き合ってくれるなんて……私は本当に恵まれているよね。
よーし。それじゃあ知恵も無事に借りれた事だし……早速先生のマニュアルをじっくり読んでから。愛するコマを癒すためのオペレーション、始めちゃおっか!
「あ、そうそうマコちゃん。それはそうとここに書いた幼児プレ―――もとい、コマちゃんを癒す方法だけどさ。ちょーっとマニア向けな傾向なのよ。もしもやり方がよくわからないならね、この私が手取足取り腰を取り。じっくりねっとり教えてあげるけどどうかし―――(ゴンッ!)ら゛!?」
「…………ちゆりさん。マコさんになんてもの教えてくれちゃってるんですか。何をバカなことを口走っているんですか。…………(ボソッ)あ、あと……『生真面目で融通が利かなくて意地っ張りな可愛い看護師さん』って、誰の事を言っているんですか……!?他の人、それも親しい年下の友人に……は、恥ずかしい事暴露するとかバカなんですか……!?」
「あ、あらヤダ聞いてたの沙百合ちゃん?じょ、冗談。『手取足取り腰を取り』のところは冗談よ。だからその振り上げた手は引っ込めて頂戴。その照れ顔はそそるけど、これ以上その握り拳を私の頭部で受けちゃったら私の脳がダメになっちゃうわ」
「もうすでに先生の脳内は色々とダメですから大丈夫です。…………ああもう。マコさんごめんなさいね。先生ったらまた変な事をマコさんに教えて。―――マコさん?」
「…………(ブツブツブツ)なるほど。最初は膝枕……頭を撫でて……」
「あ、あのマコさん?聞いてます?せ、先生の戯言は本気にしたらダメですよ?そ、それをコマさんにやったらかなり危険です!……わ、私とコマさんって性格的に似てるので、下手をしたらコマさんもこのプレイの沼にハマり兼ねないですし、せめてもう少し二人が大人になってからじゃないとこのプレイは……」
「…………(ブツブツブツ)哺乳瓶、前掛け、おしゃぶりなどがあると効果的……あとは……なるほど。相手の反応を見て焦らしつつ、乗ってきたら胸を使って―――」
「マコさん、マコさん!?御願いです、聞いてください!戻って来てくださいマコさーん!?」
恐らくタイトルですでに次回の展開がモロバレな件について。
……もし筆が乗ったらRが18ばーじょんとしてこれの続きを書くかもです。時間もかかりそうですし、期待はしないで待っててくださいませ。