大好きな彼が異世界転生という宗教にハマってしまいました!
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恋の悩み
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大好きな彼が宗教に
ハマってしまいました。
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相談者
hime0103187さん
私はどこにでもいる平凡な女子高生です。
今回は相談したい事がありまして、是非その話を聞いて欲しいのです。
私、弟橘姫は自室でスマホに向かって、相談掲示板に書き込みをしていた。
私はとても面倒な悩みを抱えていました。
同じクラスの大好きな彼が、どうやら宗教にハマっている様なのです。
それは今日の朝の事……、
私は登校途中の電車の中で、大好きな彼、大和建人君を見つけて声をかけようとしました。
「大和君おはよ〜」
「…………」
彼は挨拶にも気付かずに、スマホの画面を一生懸命見つめている。
ちょっと気になった私が、コソッと画面をのぞくと【異世界転生】という文字が目にはいりました。
「異世界転生って何……?」
「えっ?」
考えをうっかり口に出してしまい、彼に聞かれてしまった。
「あっ、姫おはよっ!」
「おはよ……勝手に画面のぞいてごめんね」
彼はあまり気にしていないのか、普通に挨拶してくれた。爽やかな笑顔にクラッとする。やっぱりカッコイイ。
私を姫って名前で呼んでくれるのは嬉しいけど、クラスの人は皆、私を姫って呼んでいて、彼と特別に親しい訳でもない。彼と話した事も数える位しかなくて、大好きっていうのも私の片思いなのです。
「姫も異世界転生に興味あるの?」
「興味というより、聞いた事ない言葉だなぁと思って」
「そっか、異世界転生っていうのは、死ぬと楽しい世界に行けるんだよ」
「えっ!?」
それってもしかして……。
「俺もいつか異世界に行くためにいっぱい勉強してるんだ、姫も一緒に来てくれるか?」
いやいやいやいや!死ぬとか嫌だから!異世界転生って怪しい宗教だったの?私は宗教に勧誘されている!?
宗教で死ぬと天国に行けますよってあるけど絶対そんな事ないからね!それより生きている今が大事でしょ!?彼は私と死ぬ気なの!?
「えっと……、私はあまりそういうのはダメな方なの、ごめんなさい!」
「そっか……姫と一緒に行けたらいいなと思ってたから残念だなぁ……」
一緒に逝くとか怖い!私と心中する気だったの?親に反対されて駆け落ちとかロマンチックだと思ってたけど、死んじゃったら終わりだよ!?
「でも、私と一緒にって言ってくれるのは嬉しい……」
「えっ?一緒に行ってくれるの?行こう!行こうよ!今すぐ行って一緒に魔王を倒そう!」
彼は手を振り、私をサタンに見立ててズシャッと切り裂く真似をした。
ヤバイヤバい!彼に刃物で刺されて無理心中させられる!悪魔って何?怪しいすぎる!
電車が駅に着いたので私は全力で逃げた!逃げないと大好きな彼に殺されちゃう!
「……もう!何で逃げたんだよ!追いかけて汗ベットリだよ……」
逃げても同じクラスなので、教室で追いつかれてしまった。
「ごめんなさい……」
その時は謝って、何とか難を逃れました。
そして授業が始まって授業中、彼を斜め後ろから眺めながら考え事をしていました。
何とか無理心中は回避できたけど、このままだと彼が死んでしまう、何とか説得して怪しい宗教をやめさせないと。
授業前に【ヤバイ宗教】でネット検索したら、ヤバイ話が沢山出るわ出るわ……。
信者に修行だと言って、睡眠や水分補給をさせないで死なせたり、中には悪魔を呼ぶために若い信者を生贄にして、あんな事やこんな事したりして最後には殺してしまう物まであって、
さらには、【宗教なんて中二病を患わした人が俺は神だ俺TUEEEと言いながら教祖になって、悩んでる人々をダマして若い女の子でハーレムして金を貢がせて、しかも税金は免除】
という記事まである。
女の子でハーレムって書いてあるけど、教祖が女性だったら、彼もハーレムに入れられちゃうかもしれない!
彼は男の子だけど、結構可愛い顔立ちだから男の教祖でも……。
私は悶々としながら妄想していたら下校の時間になってしまった。
「姫!一緒に帰ろうよ〜」
昨日までは会話もあまりした事がなかった彼が、誘ってきた。
昨日までなら、学校で1番のイケメンと噂される彼から誘われたら、それはもう天にも舞う気持ちだけど、今一緒に帰ったら、きっと怪しい祭壇に連れて行かれて宗教に入信させられてしまう。
「ごめんなさい!夕方のアニメ観たいから急いで帰るね!」
私は、アニメなんて滅多に観ないのにそう言って、走って家に帰りました。
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自分の部屋のベッドに飛び込むと、スマホに充電器をさして、相談掲示板に今日1日の事を書き込んだ。
……気付いたら寝ていたみたいで、外は真っ暗になっていた。今日は親の帰りが遅いので、スーパーのお弁当が冷蔵庫に入っている。
私はお弁当とお茶を自分の部屋に持ち込んで、食べながら掲示板をチェックした。
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回答
yagami88378さん
アタシの彼氏も気付いた時には宗教にハマってしまっていました。しかも洗脳されてしまっていたみたいで、アタシや彼の家族の猛反対も効果がなくて、ある日とつぜん姿を消してしまい、今は捜索願を出して宗教団体を告訴する準備をしています。himeさんも、彼を家に閉じ込めて縛ってでも辞めさせないと後悔しますよ……。
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私は回答の内容があまりにショックで、手が震えた
私の彼も、すでに洗脳されてしまっているのだろうか?そうだったらクラスメイトでしか無い私の説得なんて意味がないのではないだろうか?
でも彼が行方不明になってしまったらと考えたら、とても耐えられない辛い気持ちになって涙があふれた。
説得できなくて本当にどうしようも無くなったら、嫌だけど彼を縛って監禁しないといけないのかな……?
にじむ目を擦りながら次の回答を読んだ。
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回答
yama45さん
彼の気持ちは良く分かります。
僕も異世界転生に憧れていて、いつかトラックにひかれて異世界に行って、女神様から授かった能力で暴れ回って、最後には世界を裏で操る邪神を倒したりして大活躍したいと思います。
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彼と同じ宗教にハマっている人がいるのね、やはり死んで天国に行く危ない宗教なんだわ。この人にも危ないって教えてあげなきゃ。
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相談者からのお礼
hime0103187さん
回答ありがとうございます。
yamaさん、自暴自棄になってませんか?
生きて行くのはとても辛いけど、楽しい事も沢山あると思います。
宗教なんかに頼って現実逃避しないで、何か1つ打ち込める事を始めましょう。応援してます!
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私は、画面をポチポチ押して回答者に返事を書いた。
そうだ、きっと彼も現実が嫌になって宗教なんかに手をだしてしまったに違いない。何か彼が生きがいになる様な物を私が探してあげられたら、きっと彼も分かってくれるハズ!
そんな事を考えてるいると、ふと脳裏に回答者さんの言葉が浮かんだ。
【いつか、トラックにひかれて異世界に行って……】
トラック!?
昼間、教室での彼の表情を思い出す。何だかとても思い詰めた感じでいつ死んでもおかしくない雰囲気だった!
私は居ても立ってもいられず家を飛び出した。
彼の家は確か終着駅の港町。
学校と反対路線の電車に乗って彼の元へ。
駅に着くと地図アプリを起動して、コンテナを積むためにトラックが多く集まる船着場を目指した。
海岸沿いの道を走る、汗が吹き出し息が上がって喉やお腹が痛い。でも歩を緩めない、今この間にも彼は、走るトラックに飛び込もうとしているのかもしれない。
下り坂のカーブの先に黒いダウンジャケットを着た人影が見えた、彼だ!
彼は何かに気付いたのか、急にこちらに向かって走り出した。
プァンッ!
後ろを振り返ると、電飾の龍が怪しく光りボディーに大きく海神龍と書かれた、大きなデコレーショントラックが走って来ていた。
まさか彼はこのトラックに飛び込む気なの!?
私は全力で坂道を駆け下り、彼の元へ!
しかし、トラックは全速力で走る私を横切って追い越し彼の元に……!
「大和君!私、貴方の事が好きだから!死んじゃダメ!」
「えっ!?」
私は必死に叫んだ。
うっかり告白しちゃった……。いや!今はそれどころじゃない!
彼の方をみた、突然の告白にビックリして固まって、横をトラックが通り過ぎて行った。
よかった……。
私は駆け下りる勢いのままガードレールに激突した。
痛い……、でも彼が助かって本当によかった……あれっ?
ぶつかったガードレールが外れて、私は海に投げ出されていた。海面に向かって真っ逆さまに落ちていく。
え?何で、私……やだ、死にたくない!!
海面にぶつかるとともに、私の意識は途切れた。
あっ……、私死んだのね……。
目の前に走馬灯がよぎる……。
小さな村に生まれてスクスク育って、大和君を初めて見た時に恋に落ちて……親の反対を押し切って彼と駆け落ちをして、魔帝を倒して……、あれ?
大和君と結婚して、彼は王様、私は王女様に?
あれ?これ、私の過去じゃない。でも私と大和がでてくる……。
世界を牛耳る女神を倒した私達、彼はダンジョンに住む邪神を倒すと言って出かけて行って死んでしまった。
悲しくてかなしくて、ずっと泣いていたけど、お腹にいる彼の子を産んで1人で育てて、おばあちゃんになって孫に囲まれて幸せだったけど、彼が居ないこの世界にいるこの私は、とても寂しかった……。
ブクブクブクッ
誰かが私の手を引っ張っている。
「姫!起きろ!おい!」
彼の声に意識を取り戻した。
気付くと、彼と私が顔を海面から出して浮いていた。
大和君が、海の中に飛び込んで助けてくれたの?
「大和君……」
あれ……?さっきまで何処か別の世界に居た様な気がするけど、思い出せない……。
長い夢をみていた様な気がしてボーッとしていると、何故か、私の頬から涙が伝っていた。
「姫が死ぬなんて絶対嫌だ!俺は異世界より、お前がいるこの現実世界で生きる。好きだ……大好きだ…………」
彼が涙を流しながら告白してくれた。
嬉しい……。
海から顔だけを出したまま2人見つめ合う。私達は服に海水が入ってしまっているけど全然気にならない。
彼が涙で、ぐしゃぐしゃになった顔でキスをしてくれた。
私達、付き合ってもいないのに、全く抵抗がなくて、ずっと昔からそうしてたかの様にいつまでも、ずっといつまでも…………。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
こちらの物語は、今日完結した連載小説【異世界の住人がチート過ぎて〜(略】の最終回【米原死す】と繋がっています。
(着ている服やセリフが変わってますが、演出ですので平行世界という事でご容赦ください)
新連載【ダンジョンを作ろう!】も姫さんの異世界での娘がヒロインの話で繋がっています。
宜しかったら作者ページから作品一覧を開いて読んで頂けたらとても嬉しいです。
では、また別の小説でお逢いしましょう。