メインヒロインの登場
「…………」
血と肉片が撒き散らされた部屋を隼人とアラナが掃除していた。
まず肉片を取り除き、今は血を洗っているところだ。
いつもの起床時間の6時半には終わり、妹は自分の部屋に戻った。隼人は学校の制服に着替え、腕時計型のスマートフォンを手に付け、青っぽい髪の寝癖を整えて、とサッと準備をしていく。
最後にカバンを持ち、下の階に降りる。
アラナはまだ降りてきていなかった。
カバンを壁に立て掛け、キッチンに立つ。朝御飯を作るのは隼人の仕事だ。
昨日の内に炊いていた白御飯を、テーブルに運んでいるとき、金髪を肩までのツインテールにしたアラナが、リビングに入って来た。
アルフォード家の両親は今、世界中に行っており、家にはいない。だから隼人が料理を作っている。ちなみに、アラナに包丁を持たせる事を我が家では禁止している。
「お兄様~。朝ごはんまだですか~? アラナお腹空きました」
この妹は……。内心に怒りを沈めながら、隼人はサラダを運んだ。
朝食の後、隼人とアラナは家を出て、幼馴染みとの集合場所に向かう。集合場所は、学校との間にある神社だ。
数分待っていると、突如、アラナの大きな胸が揉まれた。
「きゃっ! ちょっ! この手つきは瑠璃ですね!? 離して下さい!」
すると素直に手が離れ、アラナの後ろから、小柄な少女がひょいと出てきた。
「おっはよー。今日も良い胸してるね」
朝倉瑠璃。水色の長髪でジト目の少女だ。隼人は正直、中身おっさん何じゃないかと思うが、戦闘能力は1年生ながら、学校トップだ。
「おはようー。隼人、アラナ。どうした? 二人とも顔色悪いぞ?」
「おはようございます。確かに、顔色が悪いように見えますよ?」
先に言ったのは、髪が外側に跳ねた少年、朝倉龍史だ。こいつは隼人と同年代で2年生だ。
後に言ったのは、龍史の弟で、瑠璃と双子の朝倉零だ。中性的な顔立ちで、よく女の子に間違われている。
「おはよう。実は朝、部屋の窓からネズミが侵入してな……」
龍史はなるほど、と肩をすくめ、歩き出す。
みんなもすぐに歩き始め、5分程で学校に着く。
途中で1年生組と別れ、教室に入ると、すでに半数以上の生徒がいた。
その中の一人が隼人に寄ってきて、飛び付いた。
「おっはよー! 隼人くん」
いつもの事だが、やっぱり慣れない。
隼人も挨拶をすると、黒髪の少女は離れ、こちらと一緒に歩き始めた。
この少女は櫻田音羽。何故か隼人によく寄って来る。
「そう言えば、先週末に先生が、転校生が来る言うてたよね?」
確かにそんなことを言っていた気がする。
「ああ、言っていたと思うぞ」
すると、隣の龍史が肩を叩いて、
「おいお前ら、先生もう来るぞ」
言われて3人とも、席に座る。
そのタイミングと同じくらいに、教室の扉を開け、先生が入って来た。
「おっ、はよーー! ございまーす!」
いつになく、ハイテンションだった。
「今から転校生が入って来るからねー? では! どうぞ!」
この言葉の数分前、隼人たちが話していたときの廊下では、転校生の倉田愛羽が緊張で、震えていた。
長い白髪をツインテールにした少女だ。何故緊張しているのかと言うと。
ど、どどどどうしよう!? だいたいわたし学校始めてだし! エータさん何で転校生設定にしたの!? あーこれ、自己紹介で失敗するパターンだ! エトセトラ……。
「では! どうぞ!」
やばい!
でも仕方がない。行くしかないんだ!
扉を開け、教室に入ると、みんなの視線が注目した。教壇の隣まで行き、生徒の方を向く。
「えっと……、く、倉田愛羽って言います!……えと、先生、何か他に言ったら良いことって、ありますか?」