朝の窓
隼人・ラン・アルフォードは目が覚めた。夢見は悪い。寝汗をかいている。
今日は学校のため、6時半に起きなければいけない。
ベッドの横にある、棚にスマートフォンサイズの腕時計が置いてある。それを見ると、今は5時過ぎだった。
もう一度寝る気にもなれず、体を起こす。いや、起こせなかった。
何故か、寝ている隼人の上に、妹のアラナが寝ていたからだ。
ため息を吐いて、窓から外を見ると、隼人は悲鳴を上げた。
何事かと、アラナが起きる。
「何ですかお兄様? まだ夜は続きますよ?」
その言い方と、夜はもうほとんど終わっている、というツッコミを口の奥にしまい、窓を見ろと手で合図する。
寝ぼけて半目のまま、アラナは窓を見た。
すると、やはり目を見開いて、
「ななな、何ですか気持ち悪い! お兄様! あれ何ですか!?」
「し、知るわけ無いだろう。起きたらそこに居たんだ!」
そこに、窓の外側にへばりついて居たのは、大量のネズミだった。
何故へばりついているのかも、何故居るのかも分からない。
ただ、気持ち悪い。それは間違いない。
そして、それらが一気にこちらを向いた。
「ひっ」
アラナが小さく悲鳴を上げる。その直後、窓が破られた。
隼人とアラナは反射的に、ビーストウエポンを出現させた。
ビーストウエポン。これを説明するには、まず、ネズミの方を先に説明しなければならない。
先程の大量のネズミ、こいつらはヒューマイレイサと呼ばれている。10年程前に十二支の動物が人間を襲うようになったのだ。
そして、その中から人間側に裏切った者をビーストウエポンと呼んだ。
隼人たちは、ビーストウエポンと契約した者たち--コントラクタ--で、ビーストウエポンを好きな武器として使える。
隼人は両刃の長剣を、アラナは弓矢を出現させた。
もう一つ言うと、コントラクターには特殊能力がある。人によって条件は様々だが、手に入れることが可能だ。
アラナの能力は"転移"で、隼人はまだ持っていない。
隼人は、まず横に剣を切った。
約20匹中の半分程が巻き込まれ、肉片となる。
「アラナ!」
「はい!」
アラナが答え、弓矢を構える。
「喰らってください!」
矢を放つ。正面から放った矢が、突然残りのネズミが一直線上になるように転移させた。
矢は綺麗にネズミを貫き、部屋にネズミの血と肉片を撒き散らした。