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女奴隷と冒険者  作者: ほむら
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告別【Rin side】

 ご主人様の悲鳴を聞いて、グレコさんはすぐに2階に上がられました。

 私も行ってよいものか分かりませんでしたが、ご主人様のことが心配でしたので、グレコさんの後から付いて行きました。

 2階の部屋に、ご主人様や皆さんがいらっしゃいました。

 泣きじゃくるご婦人を、沈痛な顔をした年配の男性が肩を抱いて慰めていらっしゃいました。

 聖霊師様と助手さんは、厳粛な顔で他の皆さんを見守ってらっしゃいます。

 そして、ご主人様はベッドに顔をうずめて泣き叫んでおられました。

 大きな声をあげて、子供のように。


 ベッドの上には、きれいな女性が横になって目をつぶってらっしゃいます。

 あの方がケイト様でしょうか。

 ご病気のためか随分とやつれてらっしゃいます。

 でも、その横顔はとてもきれいでした。

 私は、泣いていらっしゃるご主人様の姿を奴隷の自分が見ていてはいけない気がして、直ぐに1階に引き返しました。

 1階にいても、ご主人様の鳴き声は聞こえ、それがやむまでには長い時間がかかりました。


 ◇◆◇


 翌日、教会でケイトさんの葬儀が執り行われました。

 大勢の方が参列され、私も皆さんの後ろの方で参列させてもらいました。

 昨夜は、ご主人様はケイトさんのお家にお泊りになられ、私は一人でお家に帰りました。

 今日はまだご主人様と直接お話していませんが、グレコさんを通じて私も葬儀に出席してよいと言われましたので、皆様の迷惑にならないよう、一番後ろで皆さんと一緒にお祈りしました。


 遠目に見たご主人様は、一晩で随分とおやつれになったご様子でした。

 昨日からずっと寝ておられないのではないでしょうか。

 ただ、泣きじゃくっておられた昨日に比べれば、落ち着いたご様子です。

 ご主人様のそばにはグレコさんがついて下さいますので、大丈夫でしょう。

 葬儀には、カインさんやジョーイさんなど、地元の冒険者仲間の方も見えられていました。

 皆さんの悲しそうなお顔を拝見して、ケイトさんが生前、皆さんから愛されていらっしゃったことがよくわかりました。


 葬儀が終わると、聖霊師様の助手さんが見えられ、ご主人様は助手さんと一緒に治療院に向かわれました。

 私は、自分がどうしたらいいのか分からず戸惑っていると、グレコさんが治療院の前でご主人様の用事が済むまで待っているように言ってくださいました。

 そして、グレコさんもご主人様の様子を見に治療院の中に入っていかれました。


 私は、治療院の前にぼーっと立っていました。

 することがないので空を見上げると、どんよりとした曇り空でした。

 ますます気分が落ち込みます。

 今晩は、ご主人様はお家に帰ってこられるのでしょうか。

 昨夜はお家で独りぼっちでしたが、ずっとぼんやりしてしまって何も手に着きませんでした。

 ご主人様は、お食事はとられているのでしょうか。

 心配ですが、周りにはグレコさんや地元の仲間の人たちがいらっしゃいますから大丈夫でしょう。

 私は、今のご主人様に何もしてあげられません。

 やっぱり、役立たずな奴隷です。

 もう、ご主人様は私を必要とされないでしょう。

 やっぱり、奴隷商館に売られてしまうのかな。

 それも仕方ありません。

 でも、もしご主人様がそばに置いて下さったら、ご主人様のことを少しでも元気づけてあげられるような良い奴隷になりたいです。

 ぶっきらぼうだけど本当は優しいご主人様に、少しでも恩返しができたらいいのだけれど。 


 そして、しばらく待っていると、グレコさんが中から出てこられ、


「リンちゃん、ジュリアンが呼んでるから、中に入ってくれ」


 と言われました。

 私は、何だろうと思い、慌てて治療院の中に入っていきました。




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