試験勉強と開き直りと
拝啓
お手紙ありがたく拝見しました。
魔王さまは不健康かつ不健全な毎日を過ごされているのですね。
魔王さまが森から昆虫を採集して、「これが新魔王軍だ!」などと言っているうちはまだまだ人間界は安泰です。
それから、昆虫にトマトを噛らせても人の血の味は覚えませんよ。たぶん。
私は日々カリカリ勉強しております。
この間お手紙を頂いてから時間が開いてしまったのは学業に邁進せんがためです。
決して私とて魔王さまと同じように遊び呆けているわけではないのです。
そんな風に魔法大学入試を念頭に考えていた私ですが、何と突如として我が魔法高校に卒業試験なるものがあることが発覚しました。
3年になれば自然と卒業できるものだと高をくくっていたため、内心非常に困惑しました。
学校というのは勉強を教える場所であるはずです。
それが、最後の最後で生徒を試すようなことをするのは自らの教育に対する自信の無さの表れではなかろうか。
試験というのは努力せずに今まで普通にやってきたならば簡単に通る、そういうものであるべきではなかろうか。
だから私は卒業試験の勉強なんぞしてやるものかと開き直っております。
私の友人にグルーシャというやつがいます。彼は熊のような体躯をしながらも中身は大変穏やかな好漢です。
ただ、休日などは広場に行ってじっと小さな女の子を凝視しているところをよく見るので、そういうのはよしたほうが良いと助言したところ、
「俺は小さな女の子が好きなんだ。生きがいなんだ」
と豪語しました。
こういうふうに開き直りたくはないものです。
ところで、『とてつもなく大きな屁が出る魔法』ですが、妹に使ったところ、大変大きな音が出て満足です。
今度は来客中などに影から母に使ってみようと思います。
また有意義な術を教えてくれると助かります。
それでは。
アレス・ヤーブラカ
かつて世界を滅ぼしかけた貴方様へ