大学試験と海水と
拝啓
お返事ありがとうございます。
あの手紙は返事が来ないものとして諦めておりました。
ところが、手紙を送ってから7日ほどして、お返事が来たので非常に驚かされました。
母と貴方がやりとりをしたあの書簡から、宛先を調べたところ、魔王城としか記されていなかったのでその通りの宛先を記載して投函したときにはまさか本当に魔王さまからお返事が頂けるとは思ってもいませんでした。
しかし魔王さま、あれはどうなのでしょう。前の便りで僕は確かに偽名などで送るようにと書きました。
でもだからと言って、可愛らしい丸文字で、「貴方のファンの美少女、マリー」と手紙に書くのはいかがだろうか。
私はこめかみから出血するくらい舞い上がり、母や妹の訝しがる目を尻目に部屋へと飛び込んで開封したところ、貴方からの手紙であることがわかり、落ち込みました。
それはもう落ち込みました。
さぞやお喜びでしょうね。
それはそうとお手紙拝読しました。
思いの外長いので驚きました。一生懸命読んでみると愚にもつかないことばかりなので、魔王さまが暇なのが私には手に取るようにわかってしまった。
いいですか、いくら魔王城の池を大きくしたところで、ニシンは海の魚なので養殖できませんよ。
だからと言って池に塩を入れてもダメですよ。海水は塩辛いですが、塩辛い水が海水になるわけではありません。
あと、母のパンツは売ってませんので、この金貨は受け取れません。送り返します。
私はもうすぐ魔法大学の試験が控えているのですが、日々そのための勉強に追われています。
幼き頃はごく単純に大きくなれば魔法大学に入るのだろうと思っておりましたが、それは間違いでした。
魔法大学には大きい人しかいないけれど、大きくなれば魔法大学に入れるとは限らないのですね。
現実というのは海水のように塩辛いものです。
世の中を良くするためお力添えをして頂けるというので、大変嬉しく思っています。
まずは手始めに魔王様が手紙にて記述してくださったこの、『とてつもなく大きな屁が出る魔法』を妹にて試して見ようと思います。
アレス・ヤーブラカ
かつて世界を滅ぼしかけた貴方様へ