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悪魔と鋼の男




 日を追うごとに日差しは強くなり、空調のきいた教室に入ると思わずほっと息をついてしまう。そこであたしは違和感に気づき眉を吊り上げた。


 あたしの机は教室内の廊下側最後尾だ。今日もその位置に変わりはない。だが、ちょっと不自然すぎるだろう。なんだってあたしの机だけポツンと離れて置いてあるんだ。椅子を引くのがやっとなくらい壁に寄っている。

 机の上には『天使から捨てられた恥知らずの悪魔、これ以上天使を汚す前に出ていけ』と印刷された紙がラミネート加工した上できっちりと張り付けられている。育ちがいいのか悪いのか悩みどころだ。

「はっ」

 あたしが鼻で笑うと、あからさまにこちらを盗み見ていた連中がビクリと震える。

「やぁ~ん、こんな脅しめいたことされてあたしこわぁい! 分をわきまえて生徒会も辞めておとなしくしてるってのにィ」

 あたしは椅子に座りながら誰にともなしに言った。

「あんまり怖いからぁ……。報復しとくか」

 がんっと勢いよく音をたて、机の上に足を乗り上げる。顔色を一気に悪くする数名の生徒が目に入り、それだけで犯人の特定はできた。わかりやすいったらない。やりなれないことをするからそうなるのだ。


 この程度の嫌がらせ屁でもない。

 それに、これ以上被害が広がることはない、とあたしはすでに見切りをつけていた。


 さぁて、何してやろうかなぁ。あたしは最近たまったストレスの解消の矛先を見つけ、暗く気分が高揚してくる。

 特に実行犯らしいのは、真っ青になっているあいつとあいつとあいつと………。

 あれ。

 たったこれだけのことにしては、犯人多すぎないか?


「おい、気味悪い顔してんじゃねぇ」

「いたっ」


 ぺんっと後頭部を叩かれて振り返ると、そこにはつまらなそうな顔をした東条がいた。

「びっくりしたぁ。何してんの」

「ちょっとな。なんだ辛気臭いクラスだな。葬式みてぇじゃねーか」

 ピタリと静まり返っている生徒たちは、恐ろしいものでも見たかのように挙動不審に震えていた。

「そりゃセンパイのせいでしょ」

「あぁ?」

 クラス全員によるいじめかと思いきや、クラスメートたちが青ざめている原因は何も言わずにズカズカと入り込んだ東条にあるようだった。

「ま、それはどーでもいいから。何、あたしが恋しかったぁ?」

 あたしは甘い声を出して見上げる。

「恋しがってんのは俺じゃねーよ。あの堅物野郎だ」

「いたっ。……カタブツって、城澤?」

 今度はデコピンしてきた東条に、あたしは額を抑えて問い返す。

「他にいねーだろ」

「ふぅん」

「とにかく、放課後来い」

 城澤とはうまくいったらしいな、とあたしがほくそ笑むと、東条は気に入らないとばかりに顔をしかめた。

 不満そうだけど、心底嫌がってはいないという複雑な表情。

 不良というレッテルで立ち位置が定まっていなかった東条だが、前と違って彼の足もとが落ち着いたように見える。

 悪くない。

 あたしは仄暗さを伴わない晴れやかな気持ちになった。


 だが、それとこれとは話が別だ。

「行くの面倒だなァ」

「お前が来なきゃ、俺のほうがめんどいことになるんだよ。ふんじばってでも連れてくからな」

「でもさ、本当に今イヤなんだよね。特別棟最上階はあたしにとって鬼門だから」

 あの男に会いたくない。

 はあ、とため息をついた口に、ぐいっと棒付飴が突っ込まれる。

「聞いてなかったのかよ」

「んぐ?」

「だから、俺が連れてってやるって言ってんの」




 ずかずかと歩いていく東条の後ろを、あたしは小走りに追った。学園の不良と悪魔が連れだって歩く姿はさぞ恐ろしいものなのだろう。道行く生徒は目を伏せ息を殺している。なんだか悪いことでもしている気分だ。

 東条はためらうことなく特別棟に足を踏み入れた。このまま誰にも会わなければいいのだが……。

「あれーっ、どうしたの?」

 これこそ偽りない甘い声。あたしはぱっと後ろを振り返る。

「姉さん!」

「何か用事? あ、アレのことなら朝渡したよ。バッチリだったよ! 心配しないで」

「あ、ありがとう、姉さん!」

 美月様はあたしたちの後を追うように階段を上ってきていた。

 あー、やっぱり! ホームルーム終了の時間がかち合ってたんだよね、こうなると思ってたよ!

 あたしは引きつりそうになる口元をなんとか抑え、美月様に向き合った。

「来るの早いねぇ」

「うん、やることいっぱいあるからね、がんばらなきゃ! あっ、東条先輩まで! いつもアキラによくしていただいてありがとうございます」

「おー」

 無礼なことに、美月様に一瞥もくれずに東条は階段を上り続けた。ついでにあたしの襟首をつかんで引っ張り上げることも忘れない。

「おい、東条! 苦しい!」

 ついつい口から出てきた言葉に、美月様はむっと眦をわずかに吊り上げた。

「アキラ! また先輩にそういう口きいて! この前怒ったばっかりでしょう! こら、アキラっ!」

「ごめんなさいっ。だから今はちょっと名前呼ぶのやめて……」

 美月様の澄み切った天使のソプラノはよく響く。これではせっかくコソコソ来ているのに意味がない。

 美月様はあたしのあせりにも気づかずぷくっと頬をふくらませた。

「アキラってば! もー、反省したと思ったのに!」

「反省してるってばァ」


「それで俺に会いに来てくれたのか」


 一気に跳ね上がるあたしの心臓。意味はないとわかっていてもあたしは東条の背中に隠れ、恐る恐る階段上を見上げた。

「……御機嫌よう、かいちょー」

「ああ。いつになく気分がいい」

 後光でもさしそうなほど美しい笑みを浮かべた鷹津に、あたしは冷や汗しか出てこない。

「篤仁先輩! 今来たところですか」

 美月様は小鳥のように軽やかに階段を駆け上がり、鷹津の隣に寄り添った。

「美月さんの声が聞こえたので、生徒会室から顔を出してみたんだ」

「えっ……! わざわざ、来てくれたんですか」

 ぽっと美月様のまろい頬が赤く染まる。

「アキラ。久しぶりに生徒会室に寄っていかないか」

 その美月様の視線の熱さと、鷹津の態度がかみあわない。

 あたしは、誰しも美月様に恋心を抱かずにはいられないという前提でしか鷹津を見ていなかった。こうして身内の欲目なしに観察してみれば、歪さは明らか。雨宮が鷹津を敵認定してもおかしくない。

 だが、以前からこうだっただろうか。あたしの目はそこまで曇っていたか? 美月様の態度がおかしくなるにつれ、鷹津の態度も変わっていったのではないか?


「あーすんません、会長。用があるんスわ」

「君は二年の東条くんだね」

「よく御存知で。じゃ、失礼します」

 東条にしては恐ろしく丁寧に頭を下げると、あたしをひきずったまま鷹津の横を通り過ぎようとした。だが、相手はそんなに甘くない。

「君はどの委員会にも部活にも所属していないと思ったが。ここへは何をしに?」

「俺じゃなくてこいつに用があるんス」

「どこの誰に」


「風紀の俺にです、会長」


 首の圧迫がなくなったかと思うと、今度は別の方向からがっちりと肩を掴まれた。

 真打登場、鋼の男城澤隆俊だ。

「城澤……!」

「東条君、ありがとう」

「いーや」

 もう俺は関係ない、とばかりに一歩引いた東条は素直に首をふった。そして興味のなさそうな素振りで美月様、鷹津、城澤、あたしを順番に見ると、ちいさく

「お前も苦労するな」

と同情的な響きをもってつぶやいた。

「生き残れたらまた飴やるよ」

「えっ、まさかこの状況で置いてく気じゃないでしょーね」

 東条はそのまさかだ、とあたしの頬をぶにっとつまんでから背を向けてしまった。

「置いてかないでーっ。卑怯者ォ!」


 乙女の悲痛な叫びを忍び笑いで無視した東条に怨念をとばしていると、城澤により力をこめて引き寄せられる。

「風紀委員長、アキラを何の用で呼んだ」

 静かに覇気をくすぶらせる鷹津に対し、城澤は鋼の強さでまっすぐ見据えた。

「一目瞭然かと。彼女の生活態度は一時改善したものの、今やこの通りです。その指導にあたります」

 たしかにあたしの制服は『この通り』といえるほど乱れている。

 しかし鷹津は認めない。

「前回の経験から、俺は君に適切な指導ができるとは判断しかねる。なんなら生徒会室を貸そう、そこで行うといい」

「いえ、お断りします」

 きっぱりと断る城澤に迷いもブレもない。

「その他にも話すべきことはありますので」

「何をだ」

「それは、雨宮副会長がよく御存知かと」

「雨宮……?」

「では失礼します」

 鷹津の思考がブレた一瞬のすきに城澤は深く頭を下げ、あたしの背中を押すように風紀室に入り込んだ。

 ぱたん、と閉まる扉の音。

 小さくはあったが、それは間違いなく城澤が鷹津に白星を挙げた音だった。




「やるじゃん、城澤!」

 あたしは興奮気味に城澤の胸をたたいた。

「鷹津に一歩も引かず。いやー、鋼の男はダテじゃないね! ……あれ」

 せっかくあたしがご機嫌だというのに、城澤は仏頂面でソファに座ったあたしを見下ろしている。

「そんなに東条君のほうがいいのか」

「は?」

「なんだ、さっきのは。俺より彼のほうが頼もしいか。俺だって鍛えていないわけではない、腕力だって負けない。弁だってたつほうだと思う」

「えーと?」

 何? 自慢大会?

「最初は助けてと俺のところに走ってきたくせに、今ではすっかり仲良くなったようだな。飴までもらったのか。飴なら俺も買ってやる、タンキリアメにベッコウ、京飴、それくらいならもう用意済みだ」

「……えーと。あの、今日松島いないの?」

 話が通じない、とあたしは通訳を求めたが、語気鋭く「今日は不在だ」と切り捨てられた。


「あ、そういえば、あたしはなんで呼ばれたの?」

 しかたなく話題の方向転換をはかると、なんとかこれにはのってくれた。

「雨宮副会長から話は聞いた。雑巾とバケツを落とされたそうだな」

「ああ。雨宮先輩から聞いたってソレ?」

「そしてコレもだ」

 ぺろ、と突き出したのはラミネート加工されたあたしへの悪口。

「あれ、どこいったかと思ったら」

「東条君が報告してくれた」

「探したんだよ。うちわにしようと思ってたのに」

「アキラくん」

 城澤は肺の奥底から吐き出しました、というくらい大きなため息をついた。


「どうして俺に一番に言ってくれないんだ。そんなに頼りない男に見えるだろうか」

「え?」

 ローテーブルをどけてソファの前にひざまずいた城澤は、あたしの手をとってこちらを覗き込んでくる。城澤が触れているのはちょうど前にあざを作られた場所だ。

「君にはひどいことをしてしまった。それがいまだに俺を信用できない理由になっているなら改めて謝罪する」

「ちょ、ちょっと」

「東条君のお父上のことを教えてくれたことも感謝している。あの高額な寄付金の出所は我々も気になっていたところだったんだ。だが本人に秘匿の意思がある以上探るのもはばかられて……。それなのに、俺は君になにもできないのか」


 さきほどの男ぶりはどこへやら、城澤は塩をまかれた青菜のようにしおしおとへこんでしまった。

「どうしたの、さっき褒めたばっかりでしょ」

「だが、俺は肝心なところで君を守れない」

「はァ?」

「東条くんのほうがいいのか。それとも雨宮副会長か。俺じゃだめなのか?」

「なんでそんなこと」

 守る守らないって、東条のほうがいいとかって、いきなり何を言うのか。

 必死な城澤についていけず、あたしはつい苦笑いしてしまう。しかし、それがまた城澤を傷つけてしまったようだ。

「なぜ笑うんだっ」

「えー?」

「ぞうきんなんて落とされて、バケツの水をかけられて、こんないわれのないひどい暴言を吐かれて」

「こんなことでイチイチ傷つくわけないでしょう。今更だって」

 あたしが呆れながら言い返すが、城澤はいいやと首を振る。

「今更だと思ってしまうのは、もう心がマヒしているからだ。傷ついていないはずがない」

 まっすぐな目に射抜かれるともう笑っていられなかった。

 なんだかその言いぐさが鷹津と重なる。

「なんで、城澤までそんなこと言うの。勝手に決めつけないでよ。むかつく」

「なら決めつけたりしない、全部俺に言ってほしい」

 また、鷹津と同じこと。

「言うのも言わないのもあたしが決める!」

「だから頼んでいるんだ!」


 ひるんで身を引きそうになるところを、城澤の力強い腕が引き留める。

「これは俺のわがままだ。ちゃんと理解したい、わかりたい。だから言ってほしい。君が泣くところを見たくない」

「泣かないってば」

 強く言うと、だだっこに言い聞かせるような調子で城澤は言葉を重ねた。

「泣くのを我慢しているのは、アキラくんがその我慢に足る志を持っているからだろう。だがな、心のうちのお前は絶対に泣いている。教えてくれ。何のためにそうしている。俺はお前を支えたい、何をしようとしているのか教えてくれ!」

 城澤の固い掌は腕をすべり、いつの間にかあたしの手をやわらかく握っていた。

 辰巳とは違う感触に、今更ながら気恥ずかしさを覚えた。なんでこんなに必死になってくれるんだろう。


 城澤はひどく悲しそうにあたしを見つめ、泣きそうな顔をしている。

 そこでようやく鷹津との違いを見つけ、あたしの心の波が落ち着いてきた。

「……城澤ァ」

「なんだ? なんでも言ってくれ」

 城澤はずずっとさらに身を寄せてきた。

「なんでそんなこと言ってくれるの?」

「アキラくんを守りたい」

 あたしは美月様じゃないのに。だからあえて意地悪な質問をする。

「バカみたい。あたしを何から守るっていうの?」

「アキラくんが心血を注いでいるものから」

 あまりに素早く返ってきた答えにどういう意味か、と首をかしげると、城澤はきゅっと手にわずかに力を込めた。


「俺は最初からお前のことが気になっていた。不真面目な格好をしていても、一本通った志、誇りのようなものを感じたからだ。その矛盾がもどかしかった。なぜか不思議だったが、最近ようやくわかってきたんだ。誹謗中傷など気にならない、いや、気にしてはいられない理由があるのだろう。なら、せめて俺は請け負う必要のない悪意からお前を守ってやりたい」

 裏があるのでは、なんて勘ぐることのできないほど直情的な城澤の告白に、あたしは身のうちが震えた。

 今まで美月様に同じ言葉を告げてきた連中に見せてやりたい。雨宮のヒロイックシンドロームとも違う。もしこんな告白をしてくる男がいたら、当主様に話を通してやってもよかったのに。あたし相手に言うなんて、本当にバカでもったいない男だな、城澤。

 頭は冷静にそう言っているのだが、あたしの心臓はさきほど鷹津と対峙したのとはまた別の意味で跳ね回っていた。顔が赤くなっていないといいのだが。


「はは、なにそれ……。買い被りすぎ」

「買い被りならそれでもいい。お前が背負う荷物が少ないのだと、俺が安心するだけだ」

 ああ、困ったな。

 城澤はどこまで知っているんだろう。白河や鷹津といった世の動きとはまた別の流れをいく大学教授を父にもつ彼の性格上、何もわかっていないはず。

 それなのに、どうして。

「どうして守ってくれようとするの」

「どうして……」

 そこで城澤は初めて言葉に詰まった。

「だってそうでしょ。城澤は赤の他人でしょ。あたしは同郷の仲間でもない、学園にくるまで会ったことも関わりもなかった一生徒だよ。なんでそんなに気に掛けてくれるの」

 呆けたように黙り込む城澤。

 あたしはここぞと反撃することにした。

 あたしを動揺させた意趣返しだ。


「もしかしてあたしのこと好きなの?」




 城澤の変化は劇的だった。

「えええええええっ!?」

 滑稽なほどのオーバーリアクションであたしから手を離した城澤は、すっとんきょうな声をあげてのけぞった。

 トレードマークの眉間のしわも伸びきって、顔は真っ赤に染まっている。

「な、なにを、なにが!! そんな、そんなのは!! ぐっ」

 のけぞるだけでは飽き足らないのか、ずりずりと尻餅をついたまま後ずさってはローテーブルにぶつかって呻いている。

「何やってんの、城澤……」

 ちょっと先ほどのときめきを返してくれないか。

「だって、これは、き、きみが、なんだか、そんなの……!」

 言葉になっていないが、とにかくあたしの発言が不満だってことはよォ~くわかった。


「はいはいはい、悪かった。あたしの思い上がりでした。城澤風紀委員長がまさか学園の悪魔に惚れるなんてないですよねぇ、すみませーん」

「いや、そうは言ってない」

「なんでそこは滑らかなの」

 以前あたしのことを素直だなんだとバカにしていたが、こいつこそ素直そのものではないか。

 あたしはふふっと笑った。

「あたし、守ってやりたい、なんて辰巳以外に言われたの初めて」

「その辰巳というのはどこの男だ。学園の生徒ではないな」

 とたんに復活する眉間のしわ。ああ、なんというおちょくりがいのある男だ。

「だからなんで滑らかになるの。あたしのこと好きなの?」

「やっ、だから、なんだ、そういうのは、もっと、なんだ、あれだ!!」

「あれってなんだよ」

 あっははは、と声高く笑うと城澤は余計真っ赤になった。それがおもしろくて仕方ない。


 そうでもしないとあたしはバクバク言う心臓を抑えられそうになかった。

 恥ずかしい。むずむずが爆発する。

 池ノ内と会話したときも同じ衝動にかられた。

 それがなんなのかようやくわかった。好意を寄せられるってこんな気分なんだ。


「あー、おかしい! ふふっ……。あたしも少しは真面目になろうかな。過保護な優しい先輩もいることだしね」

 涙をぬぐいながら息も切れ切れにそういうと、城澤はこれを機とばかりにまたラミネート用紙をパンパンと叩いた。

「できるのならそれがおススメだ。噂では姉妹ケンカの真っ最中だそうじゃないか。まずはそれを解決するのが手だと思うが」

「ぬかりないよ。解決済み」

「む?」


 あたしがこんなつまらない嫌がらせを受けているのも、あたしが美月様の庇護を受けていないと思われているからだ。

 あたしは迅速に行動した。すでに美月様の納得する形で姉妹ケンカに決着をつけているのだ。

「姉さんが怒ったのは、鷹津会長に対するあたしの無礼な言動。だからちゃーんと謝罪した。もう姉さんはあたしに怒っていない。また明日から仲良し登校して、お弁当も一緒に食べる姿を見せつければ完璧」

「何? 君は会長に会うことすら嫌がっていると聞いていたが」

 だから東条をよこしたのに、と言いたげな城澤に、あたしはふふんと顎をそらした。

「謝罪の方法は面と向かって頭下げることだけじゃないんだから」

「ではいったい何を?」

「心のこもったお手紙を書きました」

「は?」





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