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悪魔、かんしゃくを起こす

 



 遠巻きにこちらを指さしひそひそと話し込むのは、紳士淑女の卵としてどうなのだろう。

 あたしは汗ばむ背中にいらだちを覚えつつ、ひたすらに目の前に生い茂る青々とした雑草たちに集中した。

 時刻は朝七時半、少し早いが、ちらほらと生徒が姿を現す時間帯だ。そろそろあの場所に移ることにしよう。

 あたしに課せられた校内清掃は、朝の始業前と放課後、どちらかを選んで行うことになっている。家のこまごまとしたうるさい事情があること前提の措置だ。さらに言えば、どこを掃除するかも自由となっている。これは人前で恥をさらしたくないプライドの高い生徒への配慮。厳しいくせにお優しいことだ。まあ、万が一にも美月様が草むしりするなんてことになったら、誰もいない時間の誰もいない場所を選ぶに決まっているが。

 しかし、それはあたしに必要なことではない。むしろその逆だ。

 

「なんであたしが……朝っぱらからこんな……!!」

 ぶつぶつと不満をもらし、力任せに雑草を引き抜く。最初は演技のつもりだったが、いつしか本音へと変わっていた。

 校門をくぐり車止めのロータリーを抜けた先の白い石畳を進むと、校舎との間に噴水がある。石畳の脇には広々とした花壇があり、季節の花を咲かせていた。あたしはその、登校すれば誰もが目に入る場所で草むしりをしている。

 このもっとも人目に付く場所は普段から優秀な用務員たちにより手入れが施されていたが、あえてあたしはここを選んだ。

 わざとらしく軍手を土で汚し、花壇のレンガ下から伸びるわずかな雑草を探す。まだ日は登り切っていないが、太陽は夏の熱を帯びてさらされた首を焼いている。

 まったく、お役目だと思わなければやっていられない。

 ああ、もう、早く来てくれないかなぁ!

 しゃがんでるだけでも結構疲れるのになー!

 いい加減我慢の限界を迎えそうだったその時、生徒たちのざわめきが大きくなったことで、あたしはようやくほっと息ができた。


「いやだわ……。本当にペナルティの草むしりをやっていただなんて」


 嫌悪感たっぷりに言い放ち、あたしのそばに立ったのは黒いストッキングに包まれたすらりと長い美しいおみ足。

 生徒会副会長の雨宮祥子。

 彼女の生活は規則正しく、毎朝この時間に登校することはわかっていた。今回の役者に雨宮は必要不可欠だった。なおかつ、やっかいな鷹津や池ノ内の登校まで予測ではあと二十分はある。

 彼女なら、きっといい反応をしてくれることだろう。

「生徒会にかかわる人間として恥ずかしいと思わないの。風紀の検査になんてひっかかって、みっともない。品位が落ちるわ」

 あたしは顔をあげることなくもくもくと手を動かしていた。

「まだ見習いのくせにこんなことで生徒会の仕事もできなくなるなんて、馬鹿にしているの」

 我慢我慢。

 あともう少し。

「何か言ったらどうなの。それとも情けなくて何も言えない?」


「あ、あ、ああ雨宮様っ!」

 黙り込んでいるあたしのかわりに飛び込んできてくれたのは、少々舌がまわっていない生活委員会部長、一戸由果だ。おおこれはこれは! カモがネギしょってとはこのことだ。あたしはうつむくことで浮かびそうになる笑みをなんとか隠そうとした。

「あら。あなたは確か……」

「学生生活安全部部長、一戸由果と申します! こ、この生徒はですね、このように殊勝に奉仕活動をしているように見せかけて、その実は、ハレンチ極まる行為をしておりますのですよ!」

「なんですって? 詳しく聞かせてちょうだい」

 キンキンと叫ぶ一戸の声はよく響き、他の生徒たちの耳にも充分届く。

「わ、わたくし、偶然見てしまったのです! 昨日は実験棟の裏で草むしりをしていたかと思えば、あの東条彰彦と連れ立って掃除用具を捨てさり、物置へと二人で入り込んでいたのです!!」

「まぁ……!」

「いったいどうしたのかと思って、思わず写真もとってしまいました!」

 ほら! と一戸は雨宮に写真を渡す。その数は一枚二枚ではない。

 なーにが思わずだ、ばっちり狙っていたくせに。なんて、写真をとられることがわかっていて東条にしがみついていたあたしが言うセリフでもないだろう。


「何やら親しげに話していたかと思うと、このようにべったりと二人くっついて密室に閉じこもり、小一時間は出てきませんでした……。わたくし、もう気が動転してしまって」

 話盛るなあ、とあたしは内心一戸の努力に感嘆する。

 生活委員会があたしの行動を監視しているのは、城澤に見せてもらった告発文からわかっていたことだ。東条との会話を聞かれてはまずい、と思っての行動だったが、やはり一戸はあたしのもう一つの狙いをきっちりこなしてくれた。

「な、なんてことなの……。神聖なる学園内で、しかも罰則を受ける身にありながら、なんてことを! 信じられないわ」

 怒りか軽蔑か、雨宮はぶるぶると震えながら言った。それは他の生徒たちも同じようで、もはやひそひそ話ではなく立ち止まってこちらを見て騒ぎ立てている。


「いやだわ、本当なの!?」

「少しはまともになったって聞いていたのに」

「とんでもない女だ」

「やっぱり悪魔は悪魔なんだ」

「天使の妹だっていうのに」


 場は十分に温まった。

 さぁ、あたし。

 女優になりきるんだ。


「あなたは本当に美月さんとは全然違うのね。こんな恥ずべきことってないわ。今すぐにでも生徒会補佐の補佐の役を降りてもらうわ。このことはすぐに鷹津くんにも報告を……」

「………何よ」

「え?」

 ようやく口をあけたあたしは、下から雨宮を睨みつけた。その目の鋭さは、雨宮をして動揺させるほど。

「あたしが今、何やってるか見えないの?」

「な、何をって」

「今、あんたの目の前であたしが何やってるかわかるかって言ってるの!!」

 あたしは汚れた軍手と雑草を雨宮の眼前にたたきつけた。

 大きく息を吸い、その場にいるすべての生徒に聞かせるようにあたしは声をはりあげた。


「あたしは草むしりなんてしたくない! でも罰則だっていうからおとなしくやってやってるんでしょ!? そうでないと余計にあんたら生徒会や姉さんに迷惑がかかるからと思ってやってんの! それなのに何!? 罰則に従っててなんで怒られなくちゃいけないんだ!」

「そ、それは罰則受けること自体が悪いと言ってるのであって……」

「うるさい! だから反省してるのがわかんないの!? これがパフォーマンスだっていうのならやってみてよ、朝六時から、校内の草むしり、ごみ袋いっぱいになるまで!」

 あたしはパンパンになったごみ袋を指さした。あたしは何もここだけを清掃してまわったのではない。他の場所から雑草をかき集め、最後に仕上げとしてこの場所を選んだのだ。


「掃除のことだけじゃないわ。東条彰彦との不純異性交遊は……」

「これが何!?」

 あたしは最後まで言わせず、一戸から写真を奪い取った。

「少し知り合いと話しただけで不純異性交遊!? 馬鹿じゃないの、どれだけ潔癖だ! 共学なんだから異性の友人くらいいるでしょーが!」

「だって密室で」

「密室だぁ!? あっついんだからどこか屋内に入りたいって思うのは自然でしょーが! そうやって薄汚い妄想膨らませるほうがよっぽど不潔だ!」

「腕組んでるし」

「腕組んだら恋人か! じゃあパーティ会場は婚約者どうしだらけか! 入れ代わり立ち代わり恋人か!」

 今までは何を言われてもすねるかいじけるかだったあたしの反抗に、雨宮はすっかりたじろいでいる。そのぽかんとした顔には少しばかり溜飲が下がった。


「本質見えてないくせにがーがー文句ばっかり言って、ほんっとサイテー! 東条と話すのがなにさ、姉さんのときは『天使の慈愛は不良も照らす』とかだったのに、なんであたしはそんなひどいこと言われなくちゃいけないの!?」

「み、美月さんとあなたが一緒だと思っているほうが間違っているわ!」

「そうよ、白河さんが学園の悪魔と同じ扱いされるほうがおかしいのよ! 姉を利用して生徒会に出入りしてるのもね!」

「あたし、ちゃんと仕事したもん」

「そういうことじゃなくて、そもそもあなたは白河美月さんと違って生徒会にふさわしくないのよ!!」

 言った。

 言ってくれた。

 一戸には折詰もって感謝したいくらいだ。

 あたしはぐっと唇をかみしめ、うつむいた。


「何よ。あたしが姉さんとは違うって、最初から知ってるもん……」

 ここで涙でも流せたら、アカデミー賞ものなんだけどな。しかし、声を震わせ顔をゆがめてみせるあたり、あたしはかなりいい演者だと思う。

「お望み通り辞めてやる」

「え」

「もう生徒会補佐の補佐なんか辞めてやるっ!! こんなにがんばってるのに誰も認めてくれない、ほめるどころか怒られてばっかり! 生徒会のカッコイイ先輩たちとお近づきになれるかもって思ったのに、全然かまってくれないし! もうやだ!! 草むしりだってやらない! 生徒会より東条のほうがよっぽどいいよ、それなりに優しいし、顔もワイルド系で実はけっこうカッコイイし! 雨宮副会長の陰険鬼婆!」

「おにばば?」

 低俗な罵声に頭の処理が追いついていないのだろう。雨宮は思考停止状態に陥っている。

「そっちの生活委員だってそれで満足でしょっ。絶対生徒会になんか近寄るもんかっ」

 あたしの剣幕に気圧されたように、一戸も目をぱちくりとさせている。この混乱に乗じ、あたしはすべて放り出して校舎にむかって走り出そうとして――――――。


「アキラくん」

 ぽすん、と誰かの胸に受け止められた。


「大丈夫だ。俺はちゃんと見ていたから」

「……城澤?」

 そこにいたのは城澤だった。いつも固い表情ですべての不正を正そうとする彼の目は、今日は悲痛なものを抱えていた。

 どうしてここに?

 飛び込みの役者が何をしようというのか。

「風紀委員長!?」

「どうして風紀委員長の城澤様が!?」

 大物二人目の登場に真っ赤になった一戸に向かい、城澤はあたしを受け止めた格好のまま言った。

「一戸先輩、偶然聞いてしまい、大変失礼なのですが、あなたのお話には説明不足な点があります」

「えっ」

 鋼の男からの指摘に、一戸はわかりやすくうろたえる。

「白河アキラくんは、確かに昨日放課後、草むしりを一時放棄して東条彰彦くんと物置に入りました。しかし時間は十五分ほど、本当に日差しをよけてただ話をしていただけのようでした」

「え、ちょっと、城澤?」

「さらに、アキラくんと東条くんはその後二人で草むしりをはじめ、定刻まできっちりと清掃をこなしました。その証拠のごみ袋を他の風紀委員も見ています」

「と、東条彰彦が草むしりを!?」


 これには観衆も驚きを隠せない。それはあたしも一緒だが、理由は別だった。

 確かに昨日はあれから東条を草むしりにつきあわせた。しかし風紀委員が確認におとずれたことに気づいて東条はさっさと逃げ出し、残ったあたしだけが膨れたごみ袋を提出した。

 つまり東条のことを風紀が知るはずがない。さらに言えば、昨日は会ってすらいない城澤が、それを見ていたはずはないのだが。

 あたしは城澤の腕から逃れようと身をよじるが、がっちりとつかまれた肩は動かせない。目だけであたりを伺うと、戸惑う生徒たちにまぎれて両手を合わせて頭を下げている松島が見えた。

 あの野郎!

 しっかり手綱にぎってろよ、あたしの努力が水の泡になるじゃないか!! せっかく巻き込まないであげようと思ったのにィ!!


「アキラくんはまじめにペナルティをこなそうとしています。それをみっともないと批判するのはおかしいのではないでしょうか」

 さすが鋼の男、副会長で先輩である雨宮に対してもこの態度だ。しかし、雨宮も理屈の通じるまともな人間が相手であれば負けていない。

「なにも、私は奉仕活動を行っていることを批判しているのではないわ。それによる生徒会への仕事の中断、疑われても仕方ないほど悪辣な日頃の態度を問題視しているのよ」

「更生への道が見え始めている彼女に対し、適切な発言であったとは思えません。あれはただのいじわるというものです」

「い、いじわる!?」

 メガネがずれる勢いでおののいた雨宮に、城澤は容赦なく追撃する。

「ええ、そうです。欠点ばかりをあげつらい、物事の極端な面しか見ずに叱り飛ばす。幼子のかんしゃくのようでしたが、一部アキラくんの主張には同情すべきところがある」

 そんなふうに擁護されると恥ずかしいやら困ったやらで、あたしは頬が熱くなるのを感じた。

 ええい、こんな展開は望んでいない!


「城澤、もういいよ! ちょっと黙って」

「いいから、おとなしくしていなさい」

「よくないよ!」

「いい子にしてろ」

 うるさい、とばかりに城澤はあたしの頭を自分の胸におしつけ、強制的に黙らせた。

「ですが、副会長や一戸先輩の言うことももっともです。風紀の検査もパスできないような生徒が、模範たるべき生徒会役員にはふさわしいとは言えないでしょう」

「え、あ、そう、ですよね。ええ」

 まだショックから立ち直れていない雨宮にかわり、一戸はたどたどしくも相槌をうった。

「なので、生徒会補佐の補佐の任は解いたほうがよろしいかと。アキラくん自身そう望んでいます」

「ええ! そうです、その通りです!」

 ここにきてようやくわが意を得たり、と一戸は目を輝かせ、成行きを見守っていたらしい他の生活委員会の女生徒たちが歓声をあげる。

「生徒会補佐である白河美月くんも、すでに役目を十二分にこなしていると聞きます。補佐の補佐を見事全うしたということで、アキラくんの解任の手続きを進めていただけますでしょうか、副会長」


 白い肌を真っ青にそめた雨宮は、美しい相貌を人形のように固めたまま動かない。それをいいことに、勝手に了承と受け取った城澤は話を続けた。

「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」

 城澤はことさら声を張り、あたしを抱いたままぺこりと頭を下げた。おかげであたしの背はのけぞってしまう。

 間抜けな体勢ではあったが、あたしは結果的にうまくいったことに安堵していた。

 まったくもって城澤の介入は予期せぬものだったが、これであたしの生徒会補佐の補佐解任は決定されたも同然だ。なにしろ証人は副会長の雨宮、学生生活安全部部長の一戸、風紀委員長の城澤というそうそうたるメンバーにくわえ、偶然にもそれを見ていた多数の一般生徒。


「では、失礼します」

 城澤は体を起こすと、あたしをひきずって校舎へと歩き出した。

「や、ちょ、やだ! 離して!」

「話すことがあるだろう?」

「まぁそうだけど! わかったってば、風紀室行けばいいんでしょ、なんで毎回毎回あたしのことひっぱるの!」

 城澤はあたしの肩をしっかり抱えたまま離さない。それに文句をいうと、さらに肩への圧迫感が強まった。

「腕を組むのは友人に対するスキンシップの一環なのだろう。なら、俺がこうしても問題はないはずだ」

「えぇ~!?」


 何に対抗心を燃やしているのか、城澤はかたくなだった。そして風紀室にたどりつくと、三人掛けソファにあたしと並んで座ってしまう。

「ごめんね、白河さん。止めようとしたんだけど、隆俊さんぜんっぜん聞いてくれなくて」

 後ろから近寄ってきたのは松島だ。調子よく頭を下げてくる彼を、あたしは恨みがましく睨みつけた。

「これって前言ってた白河アキラ更生計画じゃんっ。あたしはあたしでちゃんと始末つけようと思ってたのに!」

「まあまあ」

 草むしりお疲れ様、と冷たいお茶のペットボトルを渡され、あたしは喉の渇きを思い出した。

「生徒会からの脱出には成功したんだからいいじゃない」

「よくないっ」

 ぐっとお茶をあおると、あたしは少し冷静になって聞きたかったことを思い出した。

「そうだ。なんで城澤が昨日のこと知ってるの。昨日は二年の女性風紀委員としか会ってないけど」

 城澤のことだから、自分自身で罰則の言い渡しを行うかと思っていただけに拍子抜けだった。

「あー、それなんだけど」

 松島は言いにくそうにあいまいな笑みをうかべ、城澤へ視線をそらした。

 城澤は唇を真一文字に結んだままだ。

「しーろーさーわー?」

 あたしは隣の城澤の腕をぎゅっとつかみ、そっぽをむく仏頂面をのぞきこんだ。

「………先輩、とつけなさい」

 小声の注意も、さきほど雨宮に見せた迫力はない。

「まさか……。見張ってたの」

「そうじゃないっ!」

 かっと目を見開いた城澤だが、すぐに勢いをなくした。


「本当は見回りのついでに、アキラくんの今後の進退を相談しようと思ったんだ。だが、偶然一戸先輩の姿を見つけ、さらに東条彰彦くんと連れ立って歩くアキラくんを見てしまったもので……」

「で、ついついそのまま動向を見守り続けてしまったというワケで。もー、あの時の隆俊さんのあわてっぷりったら見てられなかったよ! 物置に突入しようとしたのを止めた僕を褒めてほしいよ。すぐ出てきてくれて助かった」

「伊知郎!」

「本当のことでしょう」

 城澤も女房役の松島には勝てないらしい。

 しかし気に入らない。

「なに。あたしが掃除ほっぽりだして東条と変なことするとでも思った?」

「そんなこと許すはずないだろうっ」

「許す許さないじゃなくて」

「俺は君がそういうことをする生徒だとは思わない。だが、男女間では何が起こるかわからないのも事実だ。そうなったとき傷つくのはアキラくんだ」

 その返答に、あたしはお茶といっしょにため息も飲み込んだ。

 まったく、優等生なんだから。恐ろしいのは城澤が本気でそう思っていることだろう。

 疑われたとひがんでまた痛い目にあうのはごめんだ。今回は素直に信じてやることにする。

 そんなことより大きな問題が目の前に転がっているからだ。


「さて、これであたしはもう堂々と生徒会に近寄らなくなるワケだけど、風紀にとっては面倒なことになったよ」

 あたしは傲岸に腕を組んで足を投げ出した。

「たしかに大勢の証人のもと、あたしの補佐の補佐解任を認めさせることはできた。……でも、もしかしたら。鷹津が邪魔をしてくるかもしれない」

 そうなれば、矛先はあたしの解任をうながした風紀にも及ぶだろう。だからあたし一人で事を進めようと思ったのに。

 鷹津がそうする理由については言う必要はない。

 言及されたらどうかわすか、と考えているところ、なんと松島も城澤もわかっている、とうなずいた。

「覚悟の上だ」

「怖いけど、がんばるよ」

「え。なんで? そこは鷹津があたしのこと引き留めるワケない、とか思わない?」

 あまりにも素直な反応に、ついいらないことまで聞いてしまう。

 すると松島はハハッと笑い声をあげた。

「いやいや、見てればわかるでしょー」

「一筋縄ではいかない相手だが、俺は引く気はない」

 何やら決意を固める城澤に、あたしはきょとんと首をかしげるばかりだった。



 

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