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悪魔の『家族』

 



 学園内では年子の同学年の姉妹、と思われているが、調べれば誰でもわかる、意外に知られていないこと。


 白河姉妹は、実は本当の姉妹ではない。


 白河家とは、古くからある公家の一族だ。歴史に名を残す派手さはないが、細々と長くその尊い血を守りぬき、明治維新や戦後改革の波をのらりくらりと乗り越えてきた。

 正直なところ、現在の白河家に大きな力はない。持ち前の人の良さとちょっとした資産、それらをうまく使ってなんとか生活している。(しかしそれは上流階級の中では、の話であって、一般庶民からしたらはるか雲の上の「普通の生活」だ。)


 ではなぜ一見無力な白河家が未だに優雅な暮らしを楽しんでいるかというと、答えは簡単。守り抜いてきた血こそが白河の唯一にして最大の強みだ。いつの時代でも尊い血筋を奉りたがる権力者、というのは多い。名家・白河という後ろ盾欲しさに、どこぞの会社の役員だの全国なんとか委員会の特別委員だの、そういった役職を与えたがる輩が実質白河家の生活を支えている。当主様の名刺の裏側には書ききれないほどの肩書が印刷されており、その人脈の広さは計り知れない。

 そしてその人脈目当てに、もしくは血を取り入れて本物の上流階級に加わりたいがために、白河家をもてはやすのだ。


 そして白河アキラことあたしは、もとは白河家を頂点とした一族の、山の裾野の端の端の分家の娘だ。つまりは雲の下にいる一般庶民。

 あたしが白河家に籍を移したのは、十三年前の実の両親の離婚やら何やらのトラブルが起こした偶然だった。愛娘と同じ三歳で身寄りを失いかけたあたしを、美月様の父である白河家当主、泰明やすあき様が不憫に思い引き取ってくださったのだ。


 さらに詳しく言うと、あたしが居座っているのは白河本邸だが、籍を置くのは分家のひとつの、本家とはまったく別の白河家だ。

 つまり、血のつながりも戸籍上も美月様とあたしは姉妹ではない。これは後々のことを考えた上での措置。あくまで本家の娘は美月様お一人、というわけだ。


 美月様は遊び相手として引き取られたあたしをいたく気に入り、妹と呼んではばからなかった。当主様もそれを止めようとしない。

 真実を知っている者からすれば、それは白河家の美談である。いくら環境がよくても生まれ持った血のせいか、温情空しく出来が悪く育った娘を抱えることになった白河家に同情を寄せる声もある。




 当然、そんな言葉を気にするあたしではない。だってそれは、すべて計算されたことなのだから。




「たっだいまー」

 一仕事終えたあたしは、背の高い門扉をくぐり、一人ふらふらと白河邸に帰宅した。石畳を歩いた先には、コンクリートの階段と重々しい玄関扉。西洋ランプを模した玄関灯がかわいらしい。

 しかしあたしは玄関を通ることなく脇にそれ、お邸をぐるりと周って広い庭の一角にポツリと立つ離れに向かった。

 西洋かぶれだった先代が築いた母屋が小さなお城のようなたたずまいなのに反し、この離れだけは日本式のまま残されていた。


 二間のこじんまりとした造りだが、あたしが寝泊まりするようになってから手が加えられ、バストイレ、ミニキッチン付きに改装されている。もったいないほどいい部屋だ。軒先から遠慮なく靴を脱いで上がりこむ。

 寝間にしている部屋に入り障子を閉め、そこでようやく息をついた。


「あー、疲れた」

 すっかり飴色になった年代物の鏡台の前に座り込み、腕を枕に倒れこむ。が、あわてて体を起こした。

「まずい、化粧が崩れる」

 鏡にうつる顔は見慣れたものだ。アイラインのしっかり入った釣り気味の目、マスカラを何度も塗った長いまつげ、ちょっとつけすぎな頬紅。リップは少し剥げている。たっぷりしたゆるくウェーブする髪は地毛で、それとあいまって頭が軽いイマドキの女子高生らしくなっている。


 高校入学から始めた化粧だが、この一月でなんとか手慣れてきていた。きっと高校デビューを果たそうとする子たちと似たようなレベルだろう。

 顔に何か張り付いているような感覚はまだ慣れないものの、あたしはそのまま渋々立ち上がる。


 母屋と離れをつなぐのは、長くて細い廊下のみ。それはまるで白河本家とあたしのつながりを示すもののようで、なんともいえない愛着がある。そこを渡るのは、あまり好きではないのだが。




 母屋に入ると、ちょうど通りかかった使用人がすっと頭を下げてくる。

「お帰りなさいませ、アキラ様」

「はい、戻りました。美月様は?」

「お友達に送られて、今お戻りになりました」

「わかりました、ありがとう」

 きっとあの取り巻き共だ。一応探りを入れておくか、と思った矢先に、探していた相手は自分からやってきた。

「あっ、お帰り、アキラ!」

「ただ今戻りました、姉さん」

「教室まで迎えに行ったのにアキラいないんだもん。どこ行ってたの?」

「えへ、ちょっとね」

「またどこかお出かけ?」

「まァね」

 あたしが笑ってごまかすと、美月様はぱあっと目を輝かせた。

「もしかして、広場の大道芸!?」

「は?」

 思いがけない問いかけに気の抜けた返事をしてしまったが、美月様は幸い疑問に思わなかったようだ。

「違うの? 今、商店街の広場で大道芸やってるんだって。外国の有名なチームも来ているって、一緒に帰った綾乃ちゃんが言ってたの! 週末はもっと大勢でやるらしいから、今度見に行こうって!」

「へェー、そうなんだ」

 それはそれは興味深い。が、当然あたしと美月様は興味の方向が違う。

「姉さん」

「なぁに?」

「それ、誰と行くの? 二人っきり? どこのオトコ?」

 あたしがにんまりと笑って言うと、とたんに美月様は頬をふくらませた。

「もォ、違うってば! お友達! 変な想像はやめて」

「えェ~? それ本当? つまんな~い」

「アキラってば。またお父様からつまらないこと言われたんでしょ」

「つまらないこと?」

「わたしのお婿さん探し!」

 あたしはそれに苦笑いで応えた。


 白河家には娘しかいない。そうなると気になるのが跡取りの問題だ。当主様は当然婿養子を考えているが、美月様を溺愛するあまり誰を相手にするかで頭を悩ませている。ぜひとも白河家とお近づきになりたい家々も、当主様の動向をひどく気にかけている様子だ。

 だが、美月様はそういった周りの思惑を快く思っていない。


「運命の人には自分から出会いに行きたいの。アキラだってそう思うでしょ!?」

 あたしは何も言わず、口角をほんのちょこっとだけ上げて見せる。これで美月様は『自分の意見への同意』と見なすだろう。

「それなのに最近のお父様ときたら、変な男にひっかかってないだろうな、とか、お前に合う男は私が見つける、とかうるさいんだもの。わたしは友達だって、好きな人だって自分で決めるの」

 そう言って美月様は澄んだ目をまっすぐに向けてくる。

 自分で決める、か。

 あたしは美月様の言葉を心の内で反芻し、また小さく笑みを作る。


 誰と出会い、交流し、親密になっていくか。


 さきほど大道芸を見に行く約束をした方を含めた美月様の御友人は、すべて白河家に並ぶにふさわしい子息子女たちだ。

 美月様に近づきたい輩は吐いて捨てるほどいるが、本当に近くにいていい人間はきれいにきちんと整理されている。

 何を隠そう、白河の指示を受けたあたしの手配だ。

 とはいえ、当然あたし一人でそんなことできるワケがない。

 あたしと、つまり白河家と目的を同じくする者が、他家にもたくさんいるというだけの話だ。


 不純なものには目を向けさせない、触れさせない。すべてが上流階級と言われる家同士のつながりで仕組まれていることに、なぜ気づかないのか。ここまで露骨だというのに。


 いや、違う。

 あたしはこっそり首を振る。

 気づかないように純粋培養されているのが美月様なのだ。気を回してハラハラするのが自分の役目。

 あたしはそう思うことでこみ上げるため息をおさえつけた。

 高校生になって年頃を迎えた美月様には、既に縁談の話がこっそり持ち込まれている。相手はたいていが鳳雛学園の生徒、もしくは卒業生だ。

 もともと当主様から、美月様に近づく不埒な男の排除を命ぜられていた。しかし最近では「これは!」という男がいたら報告するようにと追加命令も受けているので、正直あたしはてんてこまい。

 とにかく、美月様の結婚が決まるまであたしの心労は絶えそうにない。


「大道芸、アキラも行こうね」

「うーん、そうだねェ」

 あたしが言葉を濁すと、美月様はもじもじとためらいつつも口を開いた。

「……その時は、あの、辰巳さんも呼んだらどうかな」

「辰巳?」

「あっ、ほら、辰巳さんってあんまり遊んだりできないじゃない!? だから、いい機会だなって!」

 眼をきょろきょろと動かして落ち着かない様子の美月様に、あたしはどう誤魔化そうか内心考える。

 そこへ、使用人の一人が明るく声をかけてきた。

「美月お嬢様、旦那様がお帰りになりましたよ」

「えっ! お父様!?」

 美月様はぱっと駆けだして玄関口へと向かった。あたしもあわてて後を追う。


 そこには靴をぬいでいる最中の当主様がいた。なでつけている髪には白いものが混じり始めているが、四十代半ばでも未だ若々しさを保ち、のびた背筋は平均ほどの身長をより大きくみせている。いつでも浮かべている朗らかな笑みは人をひきつけてやまない。

 対照的なのは当主様の背後に立つ岩土敬吾いわど けいごさんだ。幼少から当主様に仕え今ではその片腕となっている男で、細い目は眼鏡越しでも冷たい光を放っている。三十代半ばほどの若さに細身で整った顔立ちながら、放つ威圧感は当主様さえも圧倒する。誰からも愛されるがゆえに人に対する警戒心や恐怖心が薄い美月様だが、彼女さえ怖がるのだから恐れ入る。この屋敷の内で一番厳しく怖い人間である、というのが共通の理解だった。

 しかし今は当主様を自宅に送り届け仕事もひと段落ついたとあり、静かに後ろにひかえるだけだ。


「お帰りなさい!」

「ただいま、我が家のお姫様。おみやげだよ」

 そう言って白い箱を掲げて見せた当主様に美月様はとびついた。

「あっ、カメノ屋のチョコレートケーキ!?」

「正解。鼻がきくね」

 ケーキの入った箱を受け取って嬉しそうに覗き込んでいる美月様の後ろで、あたしは頭を下げる。

「お帰りなさいませ」

「ああ、ただいま」

 当主様は美月様とよく似た目に心の揺れをほんのすこし映して答える。

「……アキラ、よかったら君も一緒にそれを」

 ためらいつつも言葉を紡ごうとしたそのとき、

「あなた、おかえりなさい!」

 鈴の音のような高い声が当主様をさえぎった。


「ただいま、水音みずね

「今日は早かったのね。嬉しいわ」

 小柄でほっそりとしたその女性は、吹き抜けの階段をゆっくりと降りながら夫と娘に向かって微笑んだ。やわらかい笑顔が美月様と似ていて、少女じみた美しさがあった。

「お母様、ほら、お父様がチョコレートケーキを買ってきてくれたわ!」

「あら、美月の大好物ね。でもお夕食前よ」

「いいの、これは別腹~」

 調子よく舌を出して笑う美月様に苦笑しながらも、当主様はお茶の準備をするよう命じている。これから居間へと移動しようとする両親の後を追おうとした美月様は、あたしを振りむいて言った。


「アキラも食べよう!」

 

 その瞬間にぱっと当主様があたしに奇妙な視線をむけた。

 ああ、またか。でも、大丈夫ですよ。

 あたしは当主様を安心させるように穏やかな笑みを浮かべた。それだけで当主様は目をそらす。

「いいえ、所用があるのでこれで失礼します」

「えェ!? あとでいいじゃない、一緒にたべようよ~」

「美月。わがまま言ってはダメよ」

 あたしへと伸ばした美月様の腕は、母親の水音様によってとめられた。

「行きましょう」

「う~……。じゃあ、次は絶対だからね!」

 しぶしぶと引きさがる美月様にも同じ笑みを返して、あたしは遠ざかる3人の背中を見送った。

「あなたもいつもこれくらいに帰ってくださればいいのに。そうすればこうして家族みんなでお茶ができるわ」

「はは、そういうわけにもいかない。会合というのは手間暇がかかるものなのさ」

「お酒の席もお仕事の一つって言いたいんでしょ」

「美月、痛いところをつくなぁ!」


 家族団欒。

 親子で笑いあう声というのは、常に自分からは遠いところにあるものだ。

 わかっていながら目で追ってしまうあたしの心を見透かすように、敬吾さんは鋭く声をかけた。

「アキラさん。美月様に何か言われる前にお戻りください」

「はい、すぐに」

 声も言葉も情がない敬吾さんに、あたしは素直にうなずいた。本日の美月様に関する報告書がわりの派手な手帳を敬吾さんに渡し、その場を後にする。


 あの声にあたしは誓わされた。自分の役目をまっとうすることを。それに逆らう気は毛頭ない。

 自分はあの輪の中に入っていい存在ではない。

 そんなことは百も承知なのだ。

 だから当主様のもの言いたげな目にはあえて気付かないフリをした。




 あたしは再び母屋を抜けて自室である離れへと戻った。

 やれやれ。

 人目につかない自分の居場所に戻った油断からか、あたしはまた小さく息をつく。ふと顔をあげると、廊下を渡った先に若い男が一人たたずんでいた。白いシャツにスラックスという地味な姿だ。実直な性格をそのまま形にしたような、華やかさに欠ける、しかしバランス良く整った顔つき。

 彼はあたしの姿をみとめると、すぐさま声をかけてきた。

「アキラ様、お帰りなさいませ」

「ただいま、辰巳たつみ

 あたしは自分付の唯一の使用人に頷く。先ほど美月様が名前を挙げた男だ。


「当主様がお帰りになった。向こうはこれから家族そろってティーパーティ」

「……さようですか」

 辰巳はわずかに顔を曇らせた。しかし素早く切り替えたのか、パッと顔をあげて言った。

「アキラ様。お茶を淹れましょう。アキラ様のお好きな鶴の子があります。さきほど買ってまいりました。とってもおいしいですよ」

 外では無口な男が懸命に話す姿がおかしくて、あたしの口元は知らずに緩む。

「うん。辰巳も、いっしょに食べよう」

「はい」

「うん」

 確認するようにうなずいたあたしに、辰巳はようやく目元を和らげてみせた。周りの人間は、辰巳は真面目すぎてお役目以外何を考えているかわからないというが、あたしにとってはまったく逆だ。すぐ感情が顔に出てわかりやすい。他者にはわからない濃密な時間を二人で過ごしてきたおかげだ。


「母屋は最近なにかと賑やかですね」

 座卓を囲み、温かいお茶を淹れる辰巳の横で、あたしはメイク落としのコットンを目元に押しつけていた。

「美月様の高校入学から当主様の周囲がうるさい。いよいよ婿を決めるのかな」

 日差しは全く変わらないのに、玄関前の騒ぎがうそのように離れは静かだった。遠くから聞こえてくる甲高いはしゃいだ声はどこかの子どものものか、それとも年の割に幼さのある美月様のものか。

「さっさと決まってしまえばいいのに」

 辰巳は興味も関心もない、といった調子で言い捨てた。

「そういうワケにもいかない。白河家の未来がかかっている」

「こんな騒ぎ、アキラ様の負担になるばかりです」

 辰巳はどこまでも冷めていた。

「それがあたしの役目だ」

 そう言うあたしに、辰巳は小さく小さく顔をこわばらせる。

「心配しなくても大丈夫。うまくやるよ。ギャル系っていうのもあたしに合ってるみたいだし」

 茶化してみても、辰巳の表情は晴れなかった。


「……俺はあなたのお役目は理解しているものの、納得はしていないのです。なぜアキラ様がそこまで犠牲になる必要があるのか……」

「辰巳がそう思ってることは知ってるけど」

「お若いアキラ様は素顔が一番かわいいのに。お化粧するにしても俺がもっとかわいくして差し上げるのに。お顔立ちだって振舞いだってお勉強だって、俺のアキラ様は絶対に負けていないのに」

「はいはい、ストップストップ」

 ハッキリとは言わないが、誰に対抗意識を飛ばしているのかは明白。この辺で止めなければ辰巳は怨霊の如くどこまでも恨み言を続けるし、不敬にあたる。

「まったく、なーにが理解してる、だ。いい? あたしの役目は、美月様のお側にいて、気づかれないように支えとなり、守りとなり、盛り立て役となることなの」


 そう、それが約束。

 美月様に寄り添い、彼女をすべての害悪から守る。

 そのために引き取られてきたのだ。


「ですが、アキラ様」

 ぐっと身を乗り出してくる辰巳に、あたしは小さく笑った。

「辰巳もしつこいな。知ってるでしょ、あたしはチョコレートケーキより、鶴の子のほうが好き。向こうの家庭に参加したいなんて思ったことない」

 淡いピンク色の鶴の子をつまんでおどけて言ってから、硬く握っている辰巳の拳の上に己の小さな手を乗せる。それだけで辰巳は怒気を散らされておとなしくなった。

「大丈夫。あたしには辰巳がいるから」

 辰巳は切れ長の目をぎゅっと閉じ、あたしの手を熱い両手で握り直した。

「必ず、お側におります」

 その実直さにあたしはまた笑ってしまう。

「……アキラ様」

「ごめん、わかっている」

 自分は本気で言っているのだ、と目で語る辰巳。

 ごめんね。

 心の中でもう一度謝る。

 辰巳は優しいから、あたしの代りに辛い思いをしてくれる。それが嬉しい自分がちょっと悲しい。でも、この手を離すことなんて絶対にできなかった。


 辰巳はあたしの手を握り締めたまま、ふと思い出したかのように言った。

「そうだ、アキラ様。一つ朗報が」

「ん?」

「美月様の御縁談、案外すぐにまとまるやもしれません」

「どういうこと?」

 美月様に、自分が人生を捧ぐべき白河家に関わることとして、あたしはきりりと気持ちをひきしめた。

「まだ正式な報告はありませんが、鷹津たかつ家の御子息が留学から帰ってこられるそうです」

「鷹津家の……!」

 鷹津といえば、戦前から海外貿易によって財をなし、今なお名を轟かす天下の大財閥。実質的な力がある以上、格は白河よりも上だ。

「あそこは数年前に長男が家を継いでいたはず。留学していたのは放蕩息子って噂の次男坊」

「ええ、なんでも向こうの学校で一区切りついたので、かなり強引に帰国させたそうです。このまま落ち着かせようとしているらしい、との噂を聞きました」

「鷹津か……! これは、こっちから売り込みにかかるようかな」

 当主様が美月様を釣るエサ付で早く帰ってきたことと関係がありそうだ。

 唇についた粉をぺろりとなめたちょうどその時、

「ええええ―――――ッ!!?」

 邸宅内をまっぷたつに切り裂くような悲鳴が響き渡った。





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