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明かされる過去

フィオナの発言は衝撃的だった。

しかし、もしその少年がアレク本人だったとするならば、学園長の精霊が言っていた事も説明がつく。

「あなたの記憶がない以上あくまで推測でしかないし、確証は持てないわ。でも、魂を壊され一部とはいえ食べられた影響として記憶がなくなっているというのは十分あり得る」

フィオナは既に昼食を食べ終え、ゆっくりと紅茶を飲みながら話す。

「でも、もしそれが僕だったとしたらなんで僕は今生きてるんだ?普通一部でも魂を食われたりしたら死んじゃうと思うけど」

「それについては私もわからない。あの時は私は全て見届ける前に逃げる今年かできなかったから……。恐らくは先生、水の次期当主が何かをしたんだと思う。欠けた魂を、先生と精霊の魂をつかって補ったとかね」

これもあくまで推測だけど、とフィオナはつけたす。

「水は魂を扱う術に関する研究をしていたらしいしあり得ない話じゃねーな」

シェイドの言葉にフィオナも頷く。

「えぇ、だからもしその考えが正しいのだとしたらアレクはその魂の中に精霊を、それも水の五大家の次期当主と契約していたような大物を取り込んでいる可能性があるわ」

ようやく学園長が言っていた言葉の意味が分かってきた。

たしかにそれなら精霊の力を契約せずに使う事も可能かもしれない。

「いまのアレクは半人半精霊ってわけか。なるほど、それなら儀式が失敗した理由も納得がいくな」

「そうね、精霊同士が契約する事はできないはずだから普通にやったら儀式は成功しないでしょうね。でも自然に既に存在する野良の精霊とか、ある程度成長した精霊ならば契約することもできると思うわ。アレク本来の人間の魂も確かに存在してるわけだからね」

フィオナのおかげで自分の身に起きている事がわかったおかげで先ほどまでの不安もだいぶ払拭されてきた。

「ありがとうフィオナ。君のおかげでだいぶ気持ちが楽になったよ。本当に君に出会っててよかった」

思わずフィオナの手を握り感謝を述べる。

「とっ……友達として当たり前の事しただけよ……」

少し顔を赤くしてフィオナが目を逸らすと、じと目でこちらを見ているシェイドと目が合った。

「まぁなんつーかすごい偶然だよな。たまたま7年前の事件の被害者二人が入学式前日にばったり会うなんてよ」

たしかに、とアレクも頷く。

「そうね、私もこんな早く会うとは思ってなかった。同い年なのは知ってたから多分この学園の新入生にいるだろうと思って探すつもりでいたんだけどね」

それなら遅かれ早かれそのうち再会していたのだろう。

もっともアレクは過去の記憶がないので、あまり再会の実感がわかないが。

「さて、二人とも食べ終わったみたいだし人も増えてきて邪魔だろうからここらでいったん解散にしましょうか」

席もほとんど埋まってきたためフィオナの提案に賛成し、一度解散することにして学園長達の話を聞いてからもう一度集まる約束をする。

「それじゃあまた後でね、いい報告が聞ける事を祈ってるわ」

そういってアレク達に手をふり女子寮に戻って行く。

「本当に助かったよ、また後でね」

「またな」

二人もフィオナに手をふりかえして寮に戻る。



「全員集まりました」

クレアが学園長室から出て行ってしばらくした後、室内にはクレアを含めた今年の新入生を担当する教師8名、学生会会長と副会長が集められていた。

「皆入学式の忙しい中集まってもらって申し訳ない。実は今年の契約の儀で契約に失敗する者が現れた」

教師達はお互いに顔を見合わせる。

そんな事があるのかと信じられないようだった。

「幸い、魔法を使うことは現時点で可能だろうと私の精霊が判断した。どうやらその子はその魂の内部に精霊の魂を取り込んでいるようなのでな」

その発言に副会長が眉をひそめて口を開く。

「お言葉ですが学園長、そんなことがあり得るのですか?確かに学園長の精霊の人の魂を見通す力が確かなのは存じております。ですが、魂を扱う事に長けた水の次期当主である私ですらそんな話は聞いた事がありません」

副会長はかなりの巨躯をしており威厳にみちた声で話す言葉は、まだ学生の放つものとは思えない重みを持っていた。

そんな発言をうけ周りの教師達も頷く。

「そうです学園長、そんなことができるとしたらかつて禁忌にふれたあの死神だけでは……」

一人の教師がそう提言するが、その後副会長の前で禁忌について述べたのは失敗だったと思い直す。

死神の少女と彼には、複雑な関係があったためだ。

「その通り、そんな事ができるのはあの少女とかつての水の次期当主ミリア・レインフォールだけだろう」

学園長の言わんとしてる事を理解し副会長以外の者は押し黙る。

「それはつまり、その者の魂に細工をしたのは私の姉だということですか?」

副会長の問いにグランは頷いた。

「そうだ、おそらく彼は7年前のミリア・レインフォールが殺されたあの事件に巻き込まれている。そして彼女が命を賭して救ったのがその子なのだと私は考えている」

一度間を置いてグランは再び口を開く。

「召喚に失敗した者、アレク・ルナストーンはその魂の中にミリア・レインフォールと契約していた水の大精霊、ウィンディを取り込んでいる。おそらくミリアの魂を媒介としてな」

そして告げられた言葉はアレクが7年前の事件に関わっている事を確実とする内容だった

「……それで」

誰も何も言い出せない中、それまで黙っていた学生会会長、アリスが口を開く。

「学園長は私たちに何をさせたいのですか?その子と7年前の関係はわかりましたがそれはもう終わった事件です。死神ももう現れませんし、過去を暴くような事をする必要はないでしょう」

アリスに暗にさっさと用件を言えと言われてグランは苦笑いをする。

「そうだな、過去の話は過去の話だ。ここに集まってもらったのは他でもない、その子の事を少しきにかけてほしい。精霊が使えないとなれば学園での生活に苦労がかさむのは必須。教師の方達には彼の特異な状況を理解しておいてほしかった」

教師達は皆頷いてその事を了承した。

確かに精霊が使えない事を先に知っておけば授業で何かあった時にも対処する事ができる。

その様子を確認してからグランはアリス達の方を向く。

「君たち学生会には、彼の手助けをしてあげてほしい。学生同士でしかわからない苦労もあるだろう、ぜひお願いしたい」

「少々過保護すぎる気もしますが可愛い後輩のためです。私たち学生会は全力で彼のサポートをしましょう」

アリスの言葉につられて副会長も賛同する。

「私もできうる限りの事はしましょう。彼がもし7年前の事件の被害者なのだとしたら私はその責任を負わなければならない。あの事件は私たち水の最大の汚点ですから」

「そうか、そう言ってもらえると助かる。そして早速の願いで悪いのだが君にはアレク君の臨時講師をしてもらいたい。彼の内にあるのはレインフォール家の精霊だ。その扱い方はここにいる誰よりも君がよくわかっているだろう。やってくれるか?」

グランの頼みに快く頷く副会長。

「わかりました。私、ルドルフ・レインフォールは責任をもってアレク・ルナストーンの精霊使いとしての師を努めましょう」

その後も、アレクの今後の扱いについて細かい話し合いをしルドルフとアリス、クレアとグランを残して臨時会議は解散となった。


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