晩餐会
料理の取り合いも落ち着き、席についてゆっくり夕食を食べる。
さきほどまで緊張していた者達も徐々に周りの人に声をかけたりして食べながら自己紹介等をしている。
アレク達もようやく落ち着いたところでお互いについての話をする。
「シェイドは何か趣味とかあるの?」
自分の皿に盛りつけた肉を頬張りシェイドに話しかける。
「趣味ってほどでもないが家の影響で道具作ったりとかするのが好きだな。寮の部屋にも実家からもってきた道具とか結構あるぜ。おかげで片付けるのにだいぶ時間がかかったが」
シェイドは自分の皿の肉がなくなった事を確認すると隣にあるアレクの皿によそってある肉をそっと取ろうとする。その肉はほかの生徒にも人気で既に残りはなくなっていた。
「へぇ意外だ。雰囲気的にもっと体を動かす事とかが好きだと思ってたよ。どんな道具を作るの?」
それに気づいたアレクは視線をそのままシェイドに向け話しかけながら隣から伸びる手を払いのける。
「最近はまってるのは武器作りとかかねぇ。ちょっと面白い物ができてな。完成したら一番最初に見せてやるよ」
シェイドも払いのけられる事は予測していたようでひらりとかわして肉をかっさらっていく。
「すごいな、それは楽しみだ。ところで僕の肉返してくれないかな?」
がっしりとシェイドの腕をつかみアレクがニコニコと笑いかける。
「何言ってるんだ俺のフォークにさされた時点でこの肉は俺のだろ」
シェイドも笑いながら腕を引く。
二人とも笑ってはいるがはたからみてもわかるほど腕に力が入っていた。
「あのー、すいません」
と、そこにアレクの隣に座っていた少年が声をかけてきた。
アレクも座った時に声をかけようかと思っていたのだが、すでに席に着いていた別の人達と喋っていたためタイミングを逃していたのだ。
「はじめまして、俺ルーク・デインっていいます。せっかく隣の席に座ったんで挨拶をと思って」
どうやら先ほどまで話していた人達とはひと通り話し終えたようだった。
急に声をかけられた事でアレクの注意がそれた瞬間ひょいとシェイドが肉を口に運ぶ。
それを横目にシェイドに腹に肘鉄をお見舞いしたあと、改めてルークに挨拶する。
「あはは……変なところを見られちゃいましたね……。僕はアレク・ルナストーンっていいます。
こっちの肉泥棒はシェイド・ヴィンダー」
シェイドは肘鉄がいい感じにお腹に入ったのか恨みがましい目でアレクを睨む。
「お前っておとなしい奴かと思ってたけど実は結構遠慮ないよな……。おう、おれがシェイドだ。よろしくな!」
そんな二人の様子にルークは苦笑いする。
「二人とも随分仲がいいんだね。学園に来る前からの知り合いだったのかな?」
ルークに訪ねられると顔を見合わせ同時に口を開く。
「「いやさっき会ったばっかり」」
そんな息ぴったりの二人をみてもう一度苦笑すると、また会う事が会ったらよろしく頼むと言って元のグループに戻っていった。
「なぁ俺たちって中々に仲良くなれそうだといまふと思ったわ」
もしゃもしゃと野菜を食べながらそんなことを言うシェイドに、
「うん、僕も最初にできた友達が君でよかったと思うよ」
さっきのお返しとばかりにシェイドの皿から取った魚を食べつつアレクが返す。
お互いいい友人を初日に作る事ができてよかったと思いながら残りの夕食の刻を過ごす。
用意された料理も大体みな食べ終わり、食事より談笑に熱が入ってきたところで教師と思われる女性が生徒達に呼びかける。
「食事もだいぶ落ち着いてきたようだし、明日の連絡をする。食べながらでいいので聞いてほしいい。明日は入学式のあとに君たちの精霊を召還し、契約する大切な儀式を行う。詳しい説明は入学式の後に担当の先生によって行われる。君たちの人生のパートナーとなる存在を決める大切な儀式だ、決して遅刻したりはしないようにな」
その後も入学式の詳しい段取りや、食事が終わった後の説明等をして、教師が席に戻る。
そこで実質的に晩餐会は終了という事になり食べ終わった者から退出していき徐々に人が少なくなっていく。
アレク達もお腹がいっぱいになったところで寮へ帰る事にした。
「この後部屋によってってちょっと今作ってる物とか見せてやろうと思ったんだが思ってたより疲れが来てるし今日はやめとくか」
自分たちの部屋が見えてきたところでシェイドが言う。
「そうだね、明日も早いし初日ってこともあってもう眠くなってきちゃった」
目をこすりながらアレクも答える。
普段寝る時間に比べるとだいぶ早いが、昼間の家具の搬入作業も後押ししすでにだいぶ眠気に襲われていた。
「じゃあまた明日な!入学式行く前に声かけにいくから一緒に行こうぜ」
「うん、寝坊しないようにね?遅かったら声かけにいくからさ」
そう言って別れの挨拶をいって別れる。
部屋に入るとアレクはすぐに寝間着に着替えて布団に飛び込んだ。
(不安でいっぱいだったけどいい友人もできたしなんとかなりそうだ。明日はついに入学式だ。それに精霊との契約もやっとできるし、本当に楽しみだな)
そんな事を考えつつ、襲ってくる睡魔に身を任せてアレクは夢の世界へ落ちていった。