用語解説: エミの日常(2章投降後に更新)
エミの日常:検出閾値とコーヒーブレイク
金曜の午後、私はAI監査ログを見ながら、
Slackの #content-check チャンネルに上がった画像投稿をぼんやり眺めていた。
投稿されたのは、社内報のレイアウト案──まだ草稿版のスクリーンショットだ。
ちょっと気になる文言があった。
「“成功とは、パラメータを超える勇気である”──って、社長のコメント本当にこれで?」
Slackでは、広報のミナが反応していた。
「意識高すぎて笑ったw パラメータって何の話?」
そのやりとりに私は小さく笑いながら、
AIが自動分類した感情分析を見てみた。ラベルは「冗談」、拡散予測「低」。
でも──何か違和感があった。
私はAI監査ログの該当ポストの検出閾値を確認。
「ユーモア」として判定された理由は、“感情強度スコア”が40未満だったからだ。
が、実際は──そこまで軽いニュアンスではない。
“笑い”に見せかけて、本質的には“疑問”だ。
つまり、統計的推定のズレだ。
私はモニタを切り替え、パラメータ介入ログを開いた。
案の定、その投稿の前後で、
社長コメント欄の生成に使われたvisibility_filterが書き換えられていた。
param override: tone_filter → [‘formal’] → modified to [‘visionary’]
「ビジョナリー」か……そりゃ浮くよ。
つまり誰かが、コメント生成の際に“フォーマル”から“意識高め”のテンプレに手動で変えていた。
ちょっとした遊び心か、承認欲求か。
私は非公式クローンのAI監査ログに、その痕跡を一応記録する。
が、拡モニ案件にする必要はない。これはあくまで、日常の調整範囲だ。
午後3時過ぎ、私はSlackのDMで広報のミナに軽く投げた。
「ちなみに社長コメント、昨日誰かがテンプレ変えてます。“visionary”に」
「正式リリース前に、草稿戻してもいいかも」
すぐに返ってきた。
「やっぱりw ありがとう、エミ。あのまま出したら“自動生成ポエム”ってバレてたかも」
私はコーヒーを飲みながら、AI監査ログのトレースウィンドウを閉じた。
今日も、ログはすべてを記録していた。
でも、判断していたのはAIじゃない。行動したのは、私だ。
ふと、Slackのbot “honneAI”がつぶやいた。
倫理とは、検出される前に戻すことができるか、である。
──ほんと、それな。
私は、誰も気づかないように、草稿をregion=west(限定公開)に戻し、保存した。
✅ 用語説明(2章投降後に更新)
param override
AIなどのシステムに設定された「パラメータ(条件値)」を、意図的に手動で変更する行為や記録。例:通常は特定の地域だけを対象にしていた集計を、全体に拡張するように変更。
visibility_filter表示フィルター。どの情報を見せ、どれを隠すかを決定する設定。region=westなら「西日本だけを対象に表示」していたという意味。
modified to [‘region=all’]
上記のフィルターを“全地域”に変更したこと。つまりデータの範囲が変わった。
Slackのチャット
社内のビジネスチャットツールSlackを使ったリアルタイムのやり取り。チャンネルごとに分かれており、個別チャットも可能。
AI監査ログ
AIが下した判断やシステム内での操作、パラメータ変更などを記録・追跡するためのログ(履歴)。後から原因や責任の所在を追える。
パラメータ介入
本来AIに任せるべき判断基準に、人間が裏から意図的に手を加えること。介入が露骨だと「倫理的な改ざん」ともみなされる。
検出閾値
AIが「これは問題」と判断するためのしきい値。例えば、怒りレベルが70%以上なら「炎上」と判断する、などの基準。
草稿版のスクリーンショット
公開前のドラフト状態の文書・資料の画像。本来は社外に出してはいけないもの。
VPN経由のIP
社内ネットワークにリモートで接続する際に使われる仮想回線(VPN)を通したIPアドレス。セキュリティ上の懸念がある場合、重要な手がかりになる。
拡モニ(拡散モニタリングチーム)
SNSやネット上での情報拡散を監視・分析する社内チーム。炎上やリスク拡大の予兆を追う役割。
統計的推定感情や倫理のような曖昧なものを、数値・パターンとして処理し、AIが判断できる形に変換する技術。あくまで「推定」であり、感情の真意は見えないことも多い。
今回はブラックユーモアは登場しませんでした・・・
しかし書いてる本人がわかってない用語をAIに頼んで、正しく使ってる“ふり”をした・・・
そのことに途中で気づいて、ちょっと怖くなりました。
でも逆に、「それって現実そのものじゃない?」と思った瞬間、
なんだかこの物語全体がブラックユーモアに見えてきました。
わからないことを、わかってるふりをして進める――
それが許されてしまう世の中って、すごく変で、でもちょっと笑える。
……そして、その“ちょっと笑える”のが、いちばん怖いのかもしれません。
そのブラックユーモア回避のためにエミの日常を今回入れます・・・
ただ、なんとなくわかったけど、わからないことが多すぎる語句が増えていきます・・・
この物語も、変化していきます・・・