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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
王国編
9/47

休養 シーノルにて

初めて聖女の務めを果たした次の日。

休養日ということで一行は各々の自由行動をしていた。

クラノスは兄と婚約者への手紙を出しに、アイラは一旦村へ戻って挨拶を、

そして誠司と真由は町の散策を行うことにした。


「花の町っていうだけあって花だらけだね」


広場のベンチに座り露店で買った飲み物を飲みながら休憩していた。

二人共昨日までの移動や戦闘で実は筋肉痛なのである。

誠司は足をさすりながらサロンパスが欲しいとボヤいていた。


「今はお祭りの時期じゃないけど、お祭りの時は幻想的できれいなんだって~」


アイラが昨日言ってたと真由は付け加えた。

誠司はすっかりアイラと打ち解けた様子の真由を微笑ましく見ながらうなづいた。


「お祭りは3か月後だって。せっかくなら見てみたいなぁ」


真由は飲み物を飲み干しながら広場の景色を眺めている。


「…そうだね、異世界のお祭りなんて見れないからね…」


誠司は少し言葉を選びながら答えた。正直、旅をしていれば3カ月はあっという間だろう。歴代の聖女の行動記録を読んでも数年はかかっている。だが何年もかけると元の世界に戻ったとき、果たしてどうなっているだろうか。確実に高校は留年もしくは退学になっているだろうし、もしかしたら死亡したと思われているかもしれない。友人や大切な家族はどう思うだろうか。誠司は色々考えているが決して目の前の少女には言わなかった。きっと同じことを心配しているだろう。そして自分を巻き込んだことを今でも申し訳なく思っている優しい彼女を傷つけたくは無いのだ。


「大丈夫?やっぱ体痛い?」


考え事をしていると真由が覗き込んできた。あぁ大丈夫だよと返し飲み物を一気に煽る。


「宿に戻ったら治癒魔法かけてほしいな…」


一気に動かした腕が痛かった。真由は笑いながら了承したのだった。


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その後露店やお店を回りながら旅支度をしていった。

食料品は保存食を中心にそろえ、他にも手帳やペンを購入した。


「真由ちゃん結構こっち来てからノート使ったんじゃない?」


「魔法のこととか書かないと覚えられなくて…でも学校の勉強もしてる誠司君の方が消費量すごいんじゃないかな?」


真由が笑いながら聞くと誠司はまぁねぇと笑った。シーノルに来る前、一晩野宿をしたのだが、誠司が見張りをしているとき同時に勉強もしていたのだ。数学だよと次の日見せてもらったノートには真由には一切理解できなった数式が並び、クラノスは学者の様だと感心していたのだ。

なんと城にいる間から宿題も着実にこなしているらしい、どこにそんな体力があるのだ。


「あ、あとこれもください」


誠司が店主に渡したのは魔法の初期入門書だった。お金を支払い店を後にする。


「身体強化はいい感じにできてると思うけど…」


「それだけだと戦闘の幅が狭いでしょ?アイラが来てくれて前衛に余裕出来たからさ、少し俺にできる範囲の魔法使ってみたくて」


神官曰く誠司も異世界人なので魔力量はこちらの一般人よりはあるらしい。

ただ真由のように膨大ではないので使いどころに気を付けなければならない。


「属性は火属性が向いてるってベルメールさんから教えてもらったから練習するんだ」


いつの間に聞いたのだろう、相変わらずの容量の良さに真由は何度も感心していた。

出立する際魔法書も持ち出していいものを数冊もらってきたが、ほとんど浄化や治癒に関するものなので誠司は適性がなかったのである。


「魔法剣士か~~~かっこいいね!」


真由が覗き込むように笑うかけると誠司は少し照れていた。


「い、いやぁ…憧れるよね魔法…それに姉ちゃんが絶対同人誌のネタに聞きたがるだろうし」


「確かにお姉さんこっちのこと根掘り葉掘り聞きたいんじゃないかな?」


「ほんとそれだよ、イケメン騎士兄弟とか姉ちゃんの性癖だからね‼‼‼」


思わぬ性癖暴露に真由はさらに笑った。誠司の姉には直接会ったことは無いが、だんだんと人となりをわかるようになってしまっていた。一人っ子であり、家族仲が良くない真由にとっては話を聞くだけでも楽しいのである。


「…いいなぁ、姉弟で一緒に本を作ったり衣装作ったり、すごい楽しそうだよね…」


「…まぁね……あのさ、話しにくかったらいいんだけどさ、もしかして真由ちゃんの家って…」


と誠司が続けようとしたとき、前方の角からクラノスとアイラが呼びかけてきた。


「ここにいたんだね二人共、買い物は済んだかい?」


「はい!バッチリだよ!」


真由が明るく答える。会話の途中になってしまったが仕方ない、誠司も真由に続いてこちらの兄姉のもとへと駆け寄った。これから長い間一緒にいるのだ。聞けるタイミングはいつでもある。


---------------------------------------------------------------------------

「そういえばシーノルのお祭りって何かを祀ったりとか記念日だったりするの?」


4人そろっての酒場での食事中、ふと誠司がアイラに尋ねた。

アイラは分厚いお肉を咀嚼してから口を開いた。


「昔はシーノルの創立記念祭だったらしいぜ。今は23代目聖女の偉業をたたえる祭りになってるけどな。ちょうど魔王との戦いの前にこの町に寄って祭りに参加したらしいぜ。」


「23代目様の…」


真由は思わず食事の手を止めた。アイラは少し真由の様子を見たがそのまま続けた。


「決戦の地に行く前にどうしても祭りを見たいって言ってきたんだってさ。植物が好きなお方だったらしいから大層喜んでいらっしゃったって大人たちが言ってたなぁ」


「へぇ植物好きかぁ~」


「確か、こっちで結婚されてから亜種連邦で農園やってたって噂を聞いたぞ」


結婚後の話も人となりも城の記録には書いていなかったことだ。二人は驚いてさらに聞きたいとアイラに詰め寄った。


「いやいやアタシも噂しか知らないぞ!なぁそこのじいさんなんか知ってる?」


困ったアイラは近くにいた町の住人に声をかけた。席は隣なので会話は聞こえているはずである。


「そうさのぉ…わしも遠目でお姿は拝見しただけだったが、とても美しいお方だったぞ。戦闘後の話もエルフと結婚して農園をやっていたしか知らんなぁ…」


誠司は急に話を振られても答えてくれた住人にお礼を言った。

帰還の手がかりや神隠し事件との関連性を探りたかったが、情報が噂ぐらいしかないようだ。

それでも記録が残っていなかった城に比べると充分である。


「おぬしたちも旅人か?近頃瘴気の影響で魔物が活発化していての…道中気をつけてな」


「えぇ、ありがとうございます。おじいさん。」


クラノスが礼を言うと先に食べ終えた老人は手を振って帰っていった。

さて、とクラノスも面々に向かう。


「今日はしっかり食べてぐっすり眠って、明日からまた歩くよ!」


クラノスの号令に三人はは~~~いと答えて楽しい食事の時間を過ごした。

明日からまた徒歩数日をかけて次の町、ヴァランスへと向かう。

本当はもう少しシーノルを散策したかったが仕方がない、また来ることが叶うよう真由と誠司は英気を養うのであった。

今回は短めになりました。次回はついにあのお方が登場です。

そして知らぬうちに弟によって性癖をばらされる誠司姉。

サブキャラの中で一番濃いかもしれない誠司姉…。

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