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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
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魂の入れ替え

次の日。一行はソーンが入院している病院を訪れた。カグヤは負傷しているためホテルで休んでいる。病室へ入るとソーンは上半身を起こした状態で書類に目を通していた。


「おぉ皆様!昨日作戦が成功したと聞きました。ご無事で何よりでございます」


「お久しぶりですソーンさん、けがの具合はどうですか?」


一番親交のある誠司が話しかける。ソーンは左腹部分をそっと撫でると自嘲するように笑った。


「いやぁ実は思いのほか傷が深くて…もう近接戦闘は出来ないと診断されました。これを機に一線を退こうかと思っております」


「そ、そんなに…!」


花瓶に花を挿しながら真由が驚く。同じく腹を負傷し退団した経験があるアイラも苦虫を嚙み潰したような顔をしている。ソーンはそんな二人を落ち着かせるようににっこりと笑った。


「そんな悲しい顔をなさらないで、元々私結構な歳でして。そろそろ教官になろうかと族長と話していたところなんですよ」


「え、と、歳…⁉」


真由、誠司、ユキは即座に近づいてソーンの顔をまじまじと見つめる。今まで獣人族の老人とは出会ったことが無いためなんとも言えないが、それでも彼の顔立ちは穏やかな青年、という感じにしか見えないのだ。


「カイウス族長の10歳以上ですよ私。もう定年間近でして」


「う、嘘おおおおおおおお‼‼‼‼?」


「病院ではお静かに‼‼」


驚きの年齢に思わず大声を発した一行は看護師に怒られてしまったのだった。

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「は、定年間近‼‼‼?嘘だろ‼‼‼‼?」


ホテルへ戻ってきた一行は部屋で休んでいたカグヤにソーンの年齢を伝えていた。驚くカグヤに全員がだよねぇと頷いている。


「ひとまず命はあって良かったよ本当に。獣人族は頑丈なんだね」


「そんでもって年齢もな…すごいな…確かに杖付いてる獣人族いないと思っていたが…」


クラノスとアイラが顔を見合わせ頷いている。オーロラといいソーンと言い、年齢の割に顔のしわが全くないのだから年齢を当てられるわけがない。それならよ、とカグヤは口を開いた。


「先代獣人族長のことも知ってたってことか?」


「うん。いい思いではないって言ってたよ。奥様の友人が無理やり妾にされて、とかね。正直亡くなったときホッとしたって」


年齢を聞いた後尋ねたところ、目を伏せ声を落とし静かに語っていた彼の顔を思い出す。やはり予想通りだったと真由は思っていた。父と似ている、自己中心的で独裁的な男。他者を見下すあの態度。今精神面で成長した真由にとっては鼻で笑う程度の存在になりつつあるがそれでも腹立たしいのは変わりない。


(正直性格が悪い人なんていくらでもいる。それでもやっぱり身近にいたから余計嫌いなんだろうなぁ)


今まで奇跡的に友人や教師には恵まれた。だが真由の家庭環境を揶揄してくる人の方が多かったのだ。この世界の人々が優しすぎるぐらいに。もしも自分と誠司の立場が逆だったとしたら。きっと一人放り出され一人虚しく命を落としていたことだろう。考えるだけでもぞっとする。聖女して価値があって良かったと一人ため息をついていた。


「…真由?」


そんな真由の姿に気付いたユキ。静かに声を掛けようとするが真由は聞こえていないのかぱっと顔を上げるとそのまま誠司とカグヤの会話を聞いている。


(色々考え込んでいるのかな…一人でどこまで抱え込むんだろうな…)


出会ってからひと月近く経った。色々と親交を深めたが、一番深いところまで話せたことは無い。そう、なぜ真由が聖女に選ばれたのか、そして、聖女の血を引くユキが聖女ではないのか―きっとこの世界の人全員が疑問に思っているだろう。血統で能力や立場が確実に決まるこの世界だ。そんな中聖女の血を引いている唯一のユキが最上位の浄化能力を持っていないことがある意味矛盾になっているのだ。


(…きっといつか、全部話せる仲になるよね…?)


ユキはそっと心の中で願った。集落以外で初めてできた友人。両親の思いを継いでくれる大切な仲間。いつかすべてがわかる日が来たとしても、自分たちは笑って乗り越えていけるだろう。そう願って―

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「ところでさ、昔の術に魂を別の体に移し替える魔法なんてあるか?」


昼食を取りながら一行は体を休めている。カグヤがそういえばという風に口を開いた。ひそかにタイミングを伺っていたがうまく言い出せなかった誠司とクラノスが心の中で称賛を送った。


「え、うーーーーーん……実在したかは言えないけど…おとぎ話で神様が優秀な人間や妖精族を世界の存続のために新しい体に移した…っていう話はあるよ。エルフ族に伝わるお話だね。でも急にどうしたの?」


「いや、ハイエルフがまだ生きているとしても寿命より先に体がボロボロになりそうじゃん?あの賊の身のこなし老人な訳ないし…」


「まぁ確かに、オーロラ様より年上って考えてもあそこまで体動けないからね」


ユキは納得したように紅茶を飲んだ。誠司はなるほどね…と今の会話を記憶する。おとぎ話と言えどこの長く続く神が近い世界だ。実際にあったのかもしれない。


(おそらく魂を入れ替えたのはあっている、ただそれで真由の目元に似ている肉体はどこから用意したんだ…?10年…何かがあるはずだ、10年の間に…)


「誠司、また考え事か?ソースがこぼれてるぞ」


アイラに声を掛けられハッと意識が戻る。慌ててサンドイッチの端から零れ落ちてしまったソースを拭きとる。せっかく落ち着いて食事がとれているのにもったいない。


「ハイエルフならその魔法使って肉体変えてる可能性が大だよね…でもそうしたら先代の魔王がフユミ様達に倒された後に出てきたのかな、それまではどうしていたんだろう?」


「どこかで隠れていたんじゃないのか?長い年月を…それこそ別大陸とかで」


クラノスの予想にそれもあると真由は頷いた。別大陸まで逃げていたとしたら永い間放浪しても誰も見つからないだろう。だが自尊心が高いハイエルフがこの大陸を投げだすだろうか?


「うーんひとまず賊はハイエルフ、そんでもって魔王確定ってことで良いよね。色々時系列とか推理が残っているけど…」


「そうだな。今後も妨害してくるだろう。注意しておこう。それから各国にも報告だな」


連邦内にはすでにカイウスを通してオーロラやドンなど各部族長に伝達してある。勿論アルベルトにもだ。王国と公国への報告はこれからだ。


「だね。…ただ王様の目には触れないようにしよう。いまいちあの王様、何もかも信用できない」


誠司の言葉にクラノスがなんとも言えない顔をするがそうだねと息を吐いた。


(先代聖女への振舞もそうだけど…10年前から治世が可笑しくなった。偶然かもしれないけどきっとハイエルフや魔王側との接触があったのかもしれない。ほかにも信用できない点が多すぎる)


王家に忠誠を誓っているクラノスに対して申し訳ないが誠司は今の王を信用できない。うかつに報告して何かを仕向けられたら自分たちは王国へ戻れなくなる。つまり帰還のための情報が得られなくなるというわけだ。ここ数日で色々と情報は得られた。後は精査しながら推理を進めるだけだ。誠司はお茶を一気飲みすると気持ちを入れ替えた。


残る瘴気の核は4つ。すべてを浄化した後、何が待っているのだろうか。

ソーンさんまさかのご年齢です。

今回作者インフルエンザ療養中のため短めです!すみません(;´・ω・)

誤字とかありそう

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