表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
63/66

狂乱の亡者

「総員配置完了しました。いつでも突入できます。」


厳重装備をした獣人族の戦士が聖女一行に告げる。真由は知らせを受けて顔を上げた。作戦を前に連邦軍と聖女一行は神殿手前の開けた場所に天幕を設置し待機場所としている。幸い神殿に憑いている亡霊は建物の外に出てこない。瘴気が濃いがマスクと定期的に浄化魔法をかければ問題なく行動できる。


「よしみんな用意はいいね。相手は先代の獣人族長だ。絶対気を抜かないように。」


「了解!」


誠司は薬を一気に飲むと力強く頷く。今回は獣人族を中心とした連邦軍20名程と共闘する。神殿内部は大きいが大人数で突入しても逆に身動きが取れなくなる。外にも部隊を待機させ怪我人を交代しながら対処する作戦だ。


「今回もよろしくお願いします。私は戦えませんので指揮に専念します。ご武運を。」


敬礼するカイウスに真由ははい!と返事をすると杖を構えた。まずは戦闘前に突入部隊に浄化と強化の魔法をかけるためだ。聖女の能力で通常の魔法使いが使用する場合より強化されるらしい。連邦軍の戦士達から感激の声が聞こえる。


「突入します!」


「真由、ユキ、二人は私より前に絶対出ないこと。カグヤと誠司は隙を見ながら攻撃、アイラは存分に暴れてくれ」


「了解、久々に大暴れしてやるぜ」


「頼りにしてるねみんな!」


斧を構えマスクの下でにやりと笑うアイラに真由は鼓舞の言葉を掛ける。誠司は鞘から神聖武器―サクラ公国公主マサノブから譲り受けた刀を抜刀する。瘴気を察知したのか刀身の輝きが強くなったように見える。軽く息を吐いて突入の合図を待つ。


「よし、全員絶対に生還しろ‼‼…突入‼‼‼‼」


カイウスの声が響き渡る。勢いよく破られる扉と共に連邦軍と聖女一行は瘴気に満ちた神殿へと突入した。

---------------------------------------------------------------------------

「正面防御‼‼」


クラノスの声に真由とユキは即座に防御魔法を展開した。直後黒い大きな影が魔法陣へと突撃する。攻撃が弾かれたとわかると影は身を翻して距離を取った。


「あれが先代獣人族長…!」


「武器は斧か!攻撃範囲に注意しろ!」


誠司とアイラがほぼ同時に声を出す。先代の亡霊は黒い瘴気を纏っているが輪郭はおぼろげにわかる程度だ。その体は4、5メートルはあるのだろうか、カイウスも2メートルほど身長があり大きいと会うたびに思うが、先代はそれ以上の大きさだ。またオーロラから聞いた通り、身体の輪郭は左半分は確認できない。魔王にえぐり取られた証だろう。


『許さん…』


どすの利いた低い声が神殿に響く。獣のような息を吐きながら巨体は咆哮を上げた。


『どいつもこいつも許さねぇぞ‼‼‼‼殺す‼‼‼‼』


空気が揺れるほどの音圧を響かせる巨体は怒りだけで動いているのか、斧を構えるとまっすぐ突撃してきた。


「させない!」


音圧に負けず魔法を詠唱していたユキが巨体の下から光の杭を出現させ動きを止める。巨体の動きがひるむと同時に連邦軍の戦士とアイラが懐に飛び込んだ。巨体は視界に入ったアイラたちを振り払うかのように斧を振り回す。巨大な体から放たれる攻撃に飛び込んでいた戦士達が全員吹き飛ばれされた。


「アイラ‼‼‼」


「無事だ‼‼それより魔法で隙作れ‼‼‼攻撃できない‼‼‼」


真由の呼びかけにアイラは大声で返す。さすが戦闘経験が長いアイラだ。今の攻撃をすべて躱したようだ。真由とユキ、連邦軍のエルフ族が攻撃魔法を展開し巨体へと攻撃する。


『俺は‼‼‼俺が‼‼‼‼戦神だ‼‼‼‼』


巨体が斧を叩きつけながらがれきを魔法使いへと投げてくる。クラノスが真由とユキの目の前に盾を構え二人に破片が当たらないよう弾いてくれる。その隙にカグヤと誠司は横から巨体に飛びかかり傷を与える。アイラも巨大な斧を交わしながら巨体の右肩の部分に自身の斧を叩きつけた。


『貴様ら‼‼‼この俺を誰だと思ってやがる‼‼‼』


「―はっ、うるせぇな?」


一歩下がったアイラが笑いながら斧を低い姿勢で構える。絶え間ないユキの攻撃魔法とカグヤの忍術、それに誠司の炎属性の攻撃魔法でアイラへの反応が遅れている。アイラは息を整えると走り出し飛び上がった。


「さっさと成仏しやがれ‼‼‼‼」


真由からの強化魔法がかかったアイラの重たい一撃が巨体の脳天を貫く。神殿内に獣の絶叫が響く。聖なる神殿に似つかわしくない音だ。


「真由!浄化!」


「はい!」


クラノスの指示にずっと温存していた浄化魔法を展開する真由。浄化の光は瘴気にまみれた巨体を包み込み、その外殻をゆっくりと光の粒へと変えていく。だが―


「まずい、瘴気の量が多すぎて核までたどり着けない!」


今までの中で一番纏っている瘴気の量が多すぎる。ユキは攻撃魔法に徹しているため、エルフ族の神官と協力して浄化をしているのだが、まるで歯が立たない。


「落ち着いて、核はどこにある?」


「えっと、心臓と同じ場所にある!」


「そうしたら核の場所だけ狙うんだ、最近覚えた攻撃魔法に浄化を載せるんだ。できるね?」


クラノスが背中越しに真由にアドバイスを送る。真由はうん!と頷くと一度魔法の手を止める。意図を察した前衛陣が再び巨体に攻撃を始め真由に仕返しが行かないよう食い止めてくれている。


「喰らえ、ルークス親子秘伝、めっちゃ強いビーーーーーム‼‼‼‼‼」


「命名どうにかならんかったんかい‼‼‼」


カグヤのツッコミをよそに真由は光線を心臓めがけて発射した。シーノルの時、浄化魔法単体を光線に変化させて打ち込んだことがある。だが今回の新技は光属性の光線攻撃魔法に浄化魔法を混ぜた進化版だ。ルークス邸に滞在中、アルベルトに稽古をつけてもらい完成させたのだ。


「できてる!できてるよ真由!」


「誠司一度下がって!ユキ、誠司に浄化魔法!」


咳き込みながら巨体と距離を取った誠司が真由に向かって叫ぶ。その姿が見えたクラノスが即座に指示を飛ばす。二人はクラノスの指示通り動いた。巨体は心臓に光線を喰らってもなお、周りの邪魔者を消そうと斧をかざし反撃をしようと咆哮する。


「させるか!」


カグヤが一気に懐に飛び込んだ。果敢な黒い忍者に巨体は一瞥すると腕を振り回す。戦闘のカンは時を重ねても衰えていないのか、カグヤは躱しきれず壁まで吹き飛ばされる。


「カグヤ‼‼」


『まずは一匹…‼‼』


気絶したのか動かないカグヤに巨体は不敵な笑みを浮かべて標準を当てる。ユキが即座に攻撃魔法を打ち込むがそれを物ともせずカグヤに向かって歩み始める。


「連邦軍突撃‼‼‼」


そこにカイウスの声が響く。族長の声に連邦軍の戦士達が巨体に向かって特攻を仕掛け始めた。巨体は舌打ちをしながら戦士達をいなしていく。


「カグヤ、カグヤ!」


「大丈夫息はあります、自分が抱えて後方へと運びます」


「…っ、よろしくお願いします!」


戦士達が作ってくれた隙で誠司はカグヤに駆け寄った。頭を打ったかもしれないため肩を強くたたき呼びかけるがぐったりしている。カグヤが激突した壁には血の跡がいくつも付いていた。一緒に駆け寄ってくれた獣人族の戦士にカグヤを託し、誠司は巨体へと向き直った。


「よくも…!」


「落ち着け誠司、やみくもに刀振り回してもだめだ。息を吸って相手の動きをよく見ろ」


怒りで我を忘れそうになる誠司にアイラが一喝した。誠司はハッとなって一度呼吸を整える。相手は聖女の攻撃を喰らっても倒れないまるで不死のような存在だ。


(確かに真由の攻撃は効いていた。心臓の位置に核があるのは間違いない。でも装甲でもあるのか肝心の核まで届かないんだ。体を覆う瘴気は多すぎてそっちを対処してたら真由の魔力が尽きる、それなら核を狙うしかない。俺がやるべきことは装甲の破壊だ…!)


「アイラ、あの幽霊の装甲の…胸当ての留め具ってどこかわかる?背中か肩かな?」


「え、あいつ胸当てなんてしてるか?…いや陰に隠れておぼろげに見えるな…」


攻撃を躱しながらアイラが巨体を凝視する。濃い瘴気のせいで輪郭程度しか見えないのだが、近くで見ると誠司の言う通り何か装備品を身に着けている。旧式の装備だが、カイウス達現代の獣人族同様、機動性を落とさず急所を護る簡易な鎧であることは間違いない。


「背中だ、右肩の後ろに留め具があるタイプだな、狙うぞ」


「うん‼‼」


戦士のカンが働いたのか誠司の思惑をくみ取ったアイラが斧を構える。連邦軍の戦士達も次々と負傷し下がっている。中には地面に伏して動かないものもいる。速く対処しないと取り返しのつかないことになる。


「ユキ!クラノス!正面は頼んだ!」


アイラが叫ぶと二人は頷いてそれぞれ攻撃を仕掛ける。真由は巨体の攻撃範囲外から離れて獣人族の戦士に守ってもらいながら浄化魔法に向けて魔力を温存している。チャンスは一度きりだ、次は無いと杖を固く握りしめた。


(倒れている人達の治療もしたい、あの出血量、素人目に見ても危ない!カグヤも…!)


離れた状態で治癒魔法をかけたが遠目に見た状態で掛けているので効果は低いだろう。治癒は基本すぐそばでけがの状態を見ながら行うものだ。カグヤは即座に後方へ運ばれエルフ族の戦士から治療を受けている。最初のビームで浄化出来れば戦士達も怪我をしなかったのにと悔しさで唇を強くかむ。


「聖女様、クラノス殿が合図を送っています!」


「ありがとう、前へ出ます!」


「御守りします」


守ってくれている戦士に礼を伝えて一緒にそのまま前へと出る。巨体は斧と瘴気にまみれた腕を振り回し相変わらず暴れている。誠司とアイラに策があるようだが成功するように祈るしかない。


『忌まわしき人間め!俺様の邪魔をするな‼‼』


真由に向かって飛んできたがれきをクラノスが盾で弾く。続けて飛んできた瓦礫も同じように弾き聖女を護る。


「レディに向かって‼失礼な男だ…な‼‼‼」


何度か飛ばしてきた瓦礫に埒が明かないのか、珍しく声を荒げたクラノスはついに己の拳で瓦礫を殴り飛ばし―相手に打ち返した。


「うっそおおおおお‼‼‼‼?」


思わずユキが驚きの声を出す。真由も周りの連邦軍の戦士達も同様だった。…打ち返した瓦礫はクラノスが愛用している盾ほどの大きさのものだ。そう、元々長身な彼の身長に匹敵するような大きさの。


『ぬう‼‼‼?』


これには巨体も驚き姿勢が崩れる。打ち返した瓦礫は巨体の顔面に直撃した。この隙を逃さず後ろに回っていた誠司が一気に飛び込み刀を抜刀する。


「―抜刀!」


居合切りが狙い通り装甲の留め具を切り裂いた。使い手の心が伝わったのか、最初攻撃していた時よりも深く相手の瘴気に攻撃が通った気がする。巨体から剥がれ落ちた影―装甲が見えた瞬間、真由はもう一度魔法を展開した。


「今度こそ成仏しなさい!秘伝ビーーーーーム‼‼‼‼‼」


相手はオーロラやエルフ族達を手ごまにしようとしていた男だ。戦士として偉大な功績を上げていたとしても許せることは無い。何より、大切な仲間を傷つけた。絶対に許さない。真由渾身の光線攻撃に乗せた浄化魔法は確実に瘴気の核に直撃した。


『ぐあああああああああああ、俺様が、俺様は…‼‼』


「もうお前の時代は終わった!大人しく舞台から降りろ‼‼‼‼‼」


真由の荒々しい声と巨体の絶叫が神殿に響く。巨体が光線から逃れようと身をよじるもユキの拘束魔法により動けなくなっている。核が砕けていく感覚が伝わってくる。


『俺様が…!世界を…‼‼‼ぐぁあああああああ‼‼‼‼』


獣の断末魔がより一層響いた直後、核が破壊された。巨体が膝をつき、その体は光の粒となって少しずつ天へ還っていく。浄化成功だ。勝鬨を待たず連邦軍の戦士達がガッツポーズをする。


『お、俺の体が…!まだ…!終わらねぇ…‼‼‼』


「私たちは貴方のことは悪い面しか知らない。昔どんな功績をあげていたって、周りのことを大切にしないから誰も貴方を助けようとしなかったのよ。」


「真由…」


真由はそんな言葉を発しながら倒れている獣人族の戦士に駆け寄り治癒魔法をかけ始めた。先日オーロラから話を聞いたとき、その傲慢な性格がどこか父と似ていると真由は思っていた。自分勝手で相手のことなど何も考えない、威張り散らしているだけの男。思わず冷徹な声で話しかけている真由を護るように誠司が間に割り込む。巨体はそんな二人の様子を一瞥するとゆっくりと腕を伸ばしてくる。


『俺様は…強くなって…偉大な王として…故郷に帰りたかった……』


先代獣人族長は消えゆく体と声を絞り出し最後の言葉を発しそのまま動きが止まった。故郷に帰りたい、ただそれだけの願いだったのに、どこで彼は間違えてしまったのだろうか。誠司は息を吸って声を掛けようとしたとき、背後が騒がしいことに気付いた。アイラとクラノスが即座に背後を護る。


「賊だ‼‼‼‼‼‼‼真由を護れ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


カグヤの絶叫が聞こえる、と同時に黒い影が真由目掛けて飛び込んでくる。

―戦闘はまだ終わっていなかった。

激戦は続きますぜ!続きすぐ出します!多分!

真由の名前がダサいビームは単純に名称が思いつきませんでした(笑)

ネーミングセンス皆無なパーティーになっちゃったごめん(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ