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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
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獣人族の街 ヨークス

あけましておめでとうございます!2026年もよろしくお願いします!(遅いのは御愛嬌)

ロンドリスを出発し馬車に揺られて二日後。一行は獣人族の街、ヨークスへと到着した。中世ヨーロッパのような街並みの中、街を囲む要塞のような壁が聳え立つ要塞都市のような印象を受ける。


「ストラスと少し似ているね~周りぐるっと壁で囲われている感じとか。」


「ここは昔から連邦経済を護る最後の砦って言われていてね、仮に王国や他の国がロンドリスを落としても経済のかなめの鉱山を持つドワーフ族の街を護れるようにってしているんだよ。」


「そうそう、ドワーフ族の街を越えたら公国だけど、公国はドワーフ族と仲が良いから絶対に侵略しない。南は安全だから北とブルーボ平原方面を警戒しておけばいいってことよ。」


真由の言葉にユキとカグヤが解説を加えてくれる。地理的に重要なんだねと頷く傍ら、クラノスがなんとも言えない顔をしているのが印象的だ。


「まぁ連邦は先代聖女のことで王国と仲悪いからな…平原の戦闘だけしか協力していないし。」


「それは本当に申し訳なく思うよ…。王家に仕える者として耳が痛い…」


「あとご先祖様のおかげでな」


アイラの鋭いツッコミにクラノスは余計肩を縮ませた。かなり前の話とはいえおそらく獣人族の中でも語り継がれている内容だろう。街に入る検問の際にも二度見されていたほどだ。


「というか、ロンドリスを落とされたらご神木も取られるってことでしょ?国として大丈夫なの?」


「うん大丈夫!獣人族の戦士と公国の援軍と、私たち北側に住むエルフ族でタコ殴りにしてすぐ奪い返せるから!」


「…ねぇクラノス、王様本当に連邦と公国に土下座した方が良いんじゃないかな…」


ユキの満面の笑みに誠司は即座にクラノスに進言した。魔法に耐性が無い人間の王国騎士団では本当に太刀打ちできないだろう。こうしてみると王国が現存しているのはほぼ奇跡なのではと誠司は身震いした。


「今戦争していない時代で本当に良かった…つーか大戦時もよく国が残っていたよな…ガードナーの当主以外に猛者がいたのか?」


「きっと今より騎士団が精鋭ぞろいだったのかもしれないね。我が家だけではさすがに無理だよ。」


だよなぁと同意するアイラがあたりを懐かしそうに見つめている。きっと騎士団時代勤務していたストラスのことを思い出しているのだろう。真由も色々と転機となったストラスには思い入れがある。旅が落ち着いて現代へ戻る前にもう一度寄りたいものだ。


「…それにしても…瘴気が濃いね…」


真由の言葉にユキも同意した。核がある神殿が近いのだろうか、漂う空気中に瘴気が混ざっているように感じる。おまけに出歩いている獣人族の姿も少ない。彼らも瘴気を感じなるべく屋内にいるのだろうか。ここも事態を早急に解決しなければならない。瘴気への耐性が低いカグヤと誠司の体調のためにも。一行は街の中心へと足を進めた。

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「お待ちしておりました皆様。少し見ない間に立派な姿になりましたな。」


街の中心部、巨大な広場のすぐ隣に獣人族の街の市役所のような施設があった。そこには軍の駐屯地も併設されており、一行は獣人族長カイウスと再会した。


「お久しぶりです、カイウスさん。…って、腕大丈夫ですか⁉」


握手ついでにこっそり肉球を堪能しようと手を差し出した誠司がカイウスの腕に巻かれた包帯に驚く。カイウスはあぁと苦笑いをすると申し訳なさそうに肩をすくめた。


「情けないところをお見せして申し訳ない。皆様をロンドリスで見送った後、こちらに戻ってきまして…数日前に正体不明の賊に襲われましてな…」


「おじさまに怪我を負わせる族なんて…⁉」


驚くユキを落ち着かせるようにカイウスは頭を撫でる。彼女の知る限り、物理戦闘で父の次に強いのはおそらくカイウスか公主マサノブなのだろう。真由と誠司も驚いている。


「…ソーン殿の姿が見えませんが…まさか彼も…」


クラノスが小さく口を開く。ソーンに一番世話になっている誠司の顔が一瞬で青ざめる。カイウスは目を伏せると息を吐くようにつぶやいた。


「…共に賊に襲われました。一般人もいたためソーンは護衛に徹していたのですが…一撃を受けて重傷を負い、今入院しています。」


「そんな…⁉」


誠司はひどくショックを受けている。せっかく騎士の勲章をもらったので見せたいなと言っていたほど彼に懐いているのだ。何より、知り合いが重傷を負ったことに激しく動揺している。


「賊ってどんな姿でした?」


「黒いもやもやとした影…いえ霧に近いものに覆われていて断定はできませんが、骨格は人間の者でした。レイピアと魔法を用いて我々を襲撃したのです。」


アイラの問いにカイウスは冷静に答える。さすが長だ。部下のことを気にかけつつも危機に対して情報を積極的に伝えようとしている。


「その霧、瘴気に近いものでしたか?」


「いえ、瘴気とは違うものでしたね。あの瘴気特有の息苦しさが無かったので。どちらかというと姿を認識させないためのような…」


一行はうーんと首を傾げた。神殿の件もそうだが、さらに正体不明の賊まで出てきたのだ。問題がさらに増えてしまった。


「幸い負傷したのが私やソーンの5名だけです。一般人に負傷者がいないのが何よりの幸運でした。…落ち着いたらソーンを見舞ってやってください。元気が出ると思います。」


「はい、勿論お見舞いに伺います。」


「ひとまず今回の作戦に向けた打合せをしましょう。の前に誠司殿に贈り物が届いています。」


カイウスが近くの従者に指示をすると従者は木の細長い箱と小さい箱を持ってきた。誠司の座席の前に置かれた木箱は重厚感が漂い、思わず背筋が伸びた。


「まずはこちら。ガードナー家よりグローブです。」


小さい箱には新品のグローブが入っていた。騎士団の文様が左手首のあたりに刺繍されている。右ではないのは誠司が右手首に王子からもらった魔装具をつけているからだろうか。クラノスからロンドリスに届く手筈と聞いていたが、何かの手違いで先にこちらに来てしまったとのことだ。


「そしてこちらはサクラ公国公主マサノブ殿からです。」


ゆっくり蓋を開けると中には一振りの刀が収まっていた。柄には桜の花弁の装飾が施され、刀全体から神聖な力を感じる。


「あっこれうちの国宝」


「国宝ォ‼‼‼‼??」


カグヤがあっけらかんとした様子で発した言葉に真由と誠司は首がもげそうなぐらい振り向いた。そんな大事なものを授けて良いものかと手が震える誠司はふとアルベルトの言葉を思い出した。


「もしかしてアルベルトさんが言ってた先代の旅路で使っていた刀…⁉」


「えぇそうですよ。いやぁ私も久々に拝見しました。相変わらず美しい武器ですな。あ、これマサノブ公からのお手紙です。」


はっはっはと笑うカイウスとカグヤにやや引きながらも誠司は手紙を受け取る。開くと中には達筆だが豪快な筆跡が綴られている。えーっと…と誠司は音読し始める。


『拝啓 篠澤誠司殿、横山真由殿、25代目聖女ご一行の皆様

金風の候、皆様におかれましてはエルグランド大陸に生きる我々のためにご尽力いただいていることを心よりお礼申し上げます。

また当公国の忍が大変お世話になっております。かの者はまだ未熟ではありますが日々皆様を思って行動していると各地の忍から報告を受けております。国の長として誇らしく今この筆を執っております。今後も何かとよろしくお願い申し上げ賜りたく存じます。』


「…だってカグヤ。嬉しいね」


「えへへ照れるぜ~~」


「本当によくやっているぜ、お礼の手紙に活躍ぶりたくさん書こうな」


アイラも嬉しそうにカグヤの頭をぐりぐりと撫でる。本当にカグヤには戦闘面でも護衛の面でも、そして食生活の面で助けられている。真由と誠司とクラノス、そしてユキもアイラに続いてカグヤの頭を撫でた。


『さて先日旧友アルベルトから私の武器を誠司殿に譲渡するよう依頼がございました。かの者からの願い事は娘と妻の事以外では大変珍しく、驚いたと同時に誠司殿と真由殿のお人柄について書かれておりました。その手紙で心より感動し、すぐ刀身の確認と送付を指示した次第でございます。アルが人間をここまで褒めたり気に掛けること自体珍しいですが、何より私も先代聖女と共に旅をし、その生涯を見届けた一人として協力したい所存でございます。公国に到着してから、と言われましたがすぐさま必要だと思い私の一存で受け渡しの次期を速めることにいたしました。突然の贈り物で驚かれていることとは思いますが、どうぞ遠慮なくお使いください。どうか、私の愛刀とフユミ達との旅路があなた方を護りますようこの公国の地から祈るばかりでございます。』


「そっか…そんな速攻用意してくださったんだね」


「おじ様なら大丈夫だったでしょ」


ユキが笑う。貴重な品、ましてや国宝を異世界人に授けるなど前代未聞なのだろう。それでも即座に手配してくれたマサノブ公には頭が下がる。


『本来であれば私自身直接お会いしてお渡ししたかったのですが、都合がつかず手紙と品物だけとなってしまい大変申し訳ございません。公国にいらっしゃった際にお目にかかりたく存じます。

末尾ではございますが、皆様のご安全を心よりお祈り申し上げ、ご挨拶といたします。

敬具 サクラ公国公主マサノブ・キヨミヤ』


手紙を読み終え、誠司はそっと刀身へと目を向ける。鞘についている小さい傷が、先代聖女の旅路の歴史を物語っているのだろうか。この刀に恥じぬ働きをせねばならない。


「ありがとうございます、マサノブ様、アルベルトさん。ありがたく使わせていただきます。それからグローブも。ガードナー家の皆さんもわざわざ素敵なものを…本当に嬉しい、ありがとうございます。」


誠司は代表してクラノスに頭を下げるとクラノスは笑って首を横に振った。


「さ、早速装備した姿を私たちに―真由に見せておくれ。」


クラノスに促され誠司は頷くとまずグローブを履いた。こちらに来てから使っていたグローブは王都で真由に選んでもらったものだ。段々擦り切れてきたがここまで旅を共にした仲間だ。ありがとう、とそっと胸に抱く。新しいグローブは誠司の手にサイズがぴったりだ。クラノスが使用しているグローブと同じ素材なのだろうか、高級感を備えつつ使用者の手を護る最高の装備だ。そして同じように今装備している刀を腰から下ろす。これもカツヒデ教官が手配してくれた品だ。ストラスの戦闘で刃こぼれして休養中に修理してもらった。愛刀もグローブ同様胸に抱いて心の中でお礼を伝える。


「ふふ、俺本当にいろんな人に助けてもらってばっかりだ。」


「誠司だってその分みんなを助けているんだよ。大丈夫胸を張って!」


真由の微笑みに誠司も笑って頷く。そしてゆっくりマサノブの愛刀を手に取る。先代に授けられたありがたみとその思いをくみ取り、装備する。誠司の腰で輝く刀は新しい主を喜ぶかのように輝きをさらに増しているように見える。


「しかと受け取りました。授けてくださったマサノブ様に恥じぬ働きをします!」


先代から受け継いだ思いと歴史と共に、騎士となった少年は誓いを新たに決意を瞳に宿すのだった。

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「ちなみにだけど公国はあの刀なくて大丈夫なのかい?」


「あぁフユミ様亡くなる前に何本が打ってて、おっちゃん今そっち使ってるから大丈夫だぜ」


「ほぼ神聖武器だろ?量産できる公国の鍛冶技術すげぇな…」


「みんなの武器も立派に打ってもらえるんだね!今から楽しみだよ!」

実はガードナー家からのプレゼントの件すっかり忘れていました★

そんでもってソーンさんは生きてます。無事です。

公主の苗字も初登場ですが、公国の公主の血筋は○○ミヤで統一しています。

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