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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
61/61

正しく世界を救うために

トキメキ★ハンターと最強の父親が何かを受信しています。

黒い影が勢いよく裏路地から飛び出し街灯が照らす大通りへと着地する。人通りがまばらな時間のため通行人が少なく、近くを散歩していた老人が驚く程度だった。カグヤは息を軽く吐いて整えるとゆっくりユキを下ろした。ユキはよほど怖かったのか泣きながらカグヤの袖をつかんでいる。


「…何もされなかったか?」


「う゛ん゛」


開いた手でユキの外套のフードを被せ直し、カグヤはそのままユキを抱き寄せた。アルベルトが見たら真っ先に殺しに来るような行為だが、今の彼女を安心させるための行動だ。許してくださいと心の中で必死に懇願した。


「すぐ追いつけなくてごめんな、怖かったよな、ごめんな」


カグヤの言葉にユキは顔をカグヤの胸元に押し付けながら首を横に振った。いつも最強の父親がそばにいるから彼女はトラブルに巻き込まれてこなかったのだろう。きっと初めての、戦闘とは違う気味が悪い恐怖を味わったようだ。カグヤはユキを落ち着かせるように裏路地に続く道からそっと離れホテルへ続く通りへと彼女を連れていく。大きい通りでは街灯がくっきりと道を照らし建物からも灯が煌々と漏れている。先ほどの光景は何だったのか、カグヤはユキをベンチに座らせ自分はそっと膝をついた。


「…カグヤ、ありがとう…」


「ん、気にすんな、もう少ししたらホテルに戻ろうな。一緒に姐さんに報告しよう。」


コクコクと頷くユキにカグヤはにっこりと笑った。カグヤはさっとユキの怪我を確認するが幸運なことに怪我は無いようだ。


「ちょっと顔と腕見せてな…あ、目瞑って」


念のため掴まれた右腕と至近距離にあった顔を確認する。腕には痛々しい跡がついているが朝には消えるだろう。顔は擦り傷一つ無いようだ。カグヤはそのままバッグから布を取り出すと跡を隠すように腕に巻き始めた。これで跡が見えて思い出すことも無いだろう。いいぞと声を掛けユキはゆっくりと目を開けた。


「これ…」


「あぁ、ちょっと右ひじあたり邪魔かもだけど跡隠すのに使って。あ、治癒で消えるのか?」


うーんと首を捻るカグヤにユキは目頭を下げてそっと左手で布をなぞった。カグヤは気遣いに長けているとクラノスが評価していたが、実際に気遣ってくれるとこんなに安心するものなのかとユキは心が軽くなった。


「ふふ、ありがとうカグヤ。ちょっとの間借りるね。」


「おう、そろそろホテル戻ろうか。買い物は…俺代わりに行くから買うもの教えて」


「うん…来てくれた時すごいほっとした、ありがとうカグヤ。」


満面の笑みで返すカグヤにユキも思わずにっこりと笑う。そのまま手を引かれてホテルへの道を一緒に歩いた。何となく手を離すのが嫌でそのまま繋いで歩いたが、カグヤは気にすることなくユキから買うものリストを見せて貰い俺分かるかなぁと首を捻っている。店主に言えば大丈夫とユキは返しながら少しドキドキしている自分に驚くのだった。

---------------------------------------------------------------------------

「ユキ、本当に無事でよかった…!私も一緒に行けばよかった本当ごめん‼‼」


ホテルに戻りカグヤはユキを女性陣の部屋まで送り届けた。ちょうどクラノスと誠司も女性陣の部屋で打合せしていたので事の顛末をそのまま報告したのだった。


「ううん、女二人でもどうにか出来なかったと思うし…真由まで危ない目に合わなくて良かったから…あの…アイラまで斧担ぐのやめて…」


「真由、アイラ、天誅は私が行くから武器を下ろしなさい。…すまないユキ、店が狭いからとついていかなかった私の判断ミスだ。アルベルト殿にも顔向けできない…」


「あの…クラノスと誠司まで武器装備しなくても…カグヤ来てくれたから大丈夫だったよ」


「とりあえず俺買い出し行ってくるよ。俺一人なら身軽だし」


臨戦態勢にはいった面々に笑いながらカグヤは部屋を出ようとする。そこにクラノスが待ったと声を掛けた。


「いや私も行こう。大柄な男相手は私が最適だ。アイラ、子供達を頼んだぞ」


「おう、いっぺん川にぶち込んで来い!」


「いやあの川生活用水だからね⁉」


ユキのツッコミをよそにカグヤとクラノスは部屋を出ていった。ユキは真由の横にそっと腰を下ろした。真由はユキが無事でよかったとやっと杖を下ろした。今度近接武器も用意しておこうと心に誓いながら。


「明日出る前にオーロラ様にも報告しような。きっと見送りに来てくださると思うし。」


「そうだね、オーロラ様も激怒して相手木端微塵かなぁ…」


仲間達は知らないのだがあれでもオーロラの得意魔法は爆発魔法だ。相手は骨まで残らないだろう。段々可哀そうに思えてきたがここでふとユキはあれと声を上げた。


「あの時…なんか色々変だったな…」


「…ユキ、いやかもしれないけどその時の様子教えてもらえる?」


「おい誠司、怖い思いしたばっかりの子に追い打ち掛けんな」


アイラに大丈夫だよと声を掛けユキはえーっとと首を捻った。


「正直買い物メモ見ながら歩いてたから気付いた時には…って感じだったんだけど。裏路地が急に別の場所に迷い込んだような…灯が一切なくてお店にもたどり着けなくて、そんなでもってあの男、瘴気を纏ってて体臭も酷かったのに私気付かなかったの。カグヤが助けに来てくれた時も他誰も出てこなかったし…魔法の類かな…」


「ユキなら確実に気付けたものが気付けなかった…ユキほどの術者すら惑わせる…」


「男は声も出てなかった…というより喉をつぶされた感じ?」


うへぇとアイラと真由は顔をしかめた。怖い思いをしたユキですら思考に入っている。切り替えがすごすぎると感心してしまった。


「この世界というか連邦では罪人の喉を潰す法律とかあるの?」


「よほどの事じゃない限り滅多にないぞ。嘘で民を誘導しようとした…とかだったら喉を焼くけどな」


さらっと答えるアイラ。騎士団時代見たことがあるのだろうか。少し顔をしかめているのを真由は見逃さなかった。


「もしかしてだけど…ハイエルフやっぱり生きてるんじゃ…」


「正直俺もその可能性はあると思う。ユキはまだ若いし経験不足があるとしても魔法の天才だ、その状況になったとしても真っ先に異変に気付けるはずだ。でも出来なかったということはユキより能力が高い術者がいる。」


「現時点でユキより能力が高い魔術師って言ったら…アルベルト殿とオーロラ様…それにハイエルフか?」


うんと首を縦に振るユキ。経験だけで言えば連邦軍の兵士よりも低い。だがユキにはそれを簡単に超越できるだけの能力や才能があるのだ。やはり、ハイエルフは今も生きているのだろうか?


「今日のオーロラ様の話を聞いて思ったんだけど…ストラスの蛇の時からハイエルフは俺たちを監視して妨害しているんじゃないのかな。そんでもって…魔王として復活したんじゃないかって。」


「…お父さんたち先代パーティーが倒した後にハイエルフが魔王になったってことかな…」


「時系列的にそうとしか言えないよね…よく生きてるというか…ハイエルフってとっくにエルフ族の寿命越えてると思うんだけど…」


重苦しい空気になった室内を静寂が包む。ここまでくるとハイエルフ=現魔王はほぼ確定としていいだろう。この先どんな妨害をしてくるのか、街の中でも注意しないといけない。


(…ユキが狙われたのはこれで二回目。やっぱりフユミ様に似ているし魔術師として対策されるのを恐れてか…先に私を狙えばいいのに…!)


大切な仲間であり友人を狙われるのは腹が立つ。真由は拳を握りしめた。狙うならば自分を狙え、いくらでも受けて立ってやると闘志を燃やしているとカグヤとクラノスが戻ってきた。


「ただいま…っておい空気すごいな…大丈夫か?」


「えっとね…」


誠司がハイエルフが現魔王として妨害をしてきているのではという推察を二人へと話した。二人は確かにと頷いた。


「みんなの予想通りハイエルフが我々の旅路を妨害しているのは事実だろう。だがなぜ妨害しているのか、その心理をもっと理解する必要があるだろうね。」


「え、なんでだ?邪魔するならぶちのめせはいいだろ?」


闘志満々のアイラに落ち着きなさいと苦笑いをしクラノスは言葉を続けた。


「これは戦争じゃないんだ。ただ相手を倒せばいいという話ではない。どうして妨害をするのか、そこまでの心理を知らないとこちらも対策を立てられないだろう?オーロラ様がなぜ我々に過去のお話をしてくださったのかも含めて、我々は過去の歴史を、出来事を知って正しく事態に当たらねばならない。」


「確かに…」


クラノスの言葉に真由は深く納得した。オーロラの辛そうな顔を思い出す。世界を救うというのはただ武力で解決するだけではない。事象を正しく知って、理解して、思いをくみ取って行かないと世界を救うとは言えない。真由の目標のためにも必要なことだ。


「ひとまずこれからは一人で行動しない方が良い。なるべく固まって動くんだ。特に真由とユキは一番狙われやすいからアイラから離れないこと。」


「おうよ‼‼絶対守るからな」


「うん‼‼‼」


真由とユキは同時に返事をしてアイラに抱き着いた。アイラは二人を受け止め慈愛に満ちたまなざしで微笑む。そんな様子を見てカグヤも肩の力が抜けたように軽く息を吐いた。


「とりあえず忍者の仲間達にも街の中で俺たちの護衛についてもらえるようお願いしてきたぜ。快く引き受けてくれたから安心して夜寝て大丈夫だ。そんでもってユキ、これ中身確認してくれ」


「はーい!……うん、大丈夫、全部そろってる!ありがとう二人共。」


「さて、用事も済んだことだし、そろそろ寝ようか。誠司、夜更かしするんじゃないぞ。」


クラノスからにっこりと微笑まれ誠司は勿論★と首を全力で縦に振った。この後に控える戦闘はかなりきつい戦いになる。色々思考を進めたいところだが、まずは体を休めることが最優先だ。男性陣はお休みと挨拶をして女性陣の部屋から出ていった。


扉が閉まったところで真由はユキに振り返った。ユキは少し頬を赤らめ扉の方を見つめている。


「…アイラ、もしかしてこれトキメキの予感…?」


「ば、やめろ真由、オックス二世みたいなこと言わないでくれ…!あいつ空飛んでくるぞ…!」


小声でアイラに言うとアイラは顔を青ざめ首を横に振った。そんな二人の様子に気付かずユキはぱたぱたと手で顔を仰ぎ熱を冷ますのだった。右ひじにある温もりのおかげで、今日はよく眠れそうだ。

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「カグヤ、よくユキを守ってくれた。本当にありがとう。」


廊下でクラノスは改めてカグヤに礼を伝えた。カグヤはえへへと笑って返した。


「しっかし…俺と旦那であそこ行った時は普通だったな…。俺が蹴り飛ばした木樽も、ユキを襲った男もいなかったし…つーか風景も全然違ってて驚いたぜ…」


「………やっぱり魔法の類か…空間転移か幻影か…どこまでがそうなんだろう…」


どこまでが魔法による幻影か空間転移だったのか判別は出来ない。ひとまず二人が生きて脱出できたことは何よりの幸運だった。


「ひとまずこの件は明日オーロラ様に報告しよう。それからアルベルト殿にも。私から手紙を書いておくよ。」


「そうだな!……俺ユキ抱きしめてたんだけど怒られないかな…」


「大丈夫だよ!そもそも救助のためなんだしさぁ!アルベルトさんだってわかってくれるよ流石に。」


だよなぁと笑いあうカグヤと誠司をクラノスは穏やかな微笑みで見つめている。ストラスの時といい、今回も自分の判断ミスで危ない目に合わせてしまったことが本当に申し訳なかった。アルベルト殿に謝罪を入れておかねばと心に決め、部屋で休むのだった。

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次の日。ホテルをチェックアウトした一行はロンドリス南門へと向かった。途中総統府によるとオーロラが見送りにちょうど出てきたところだった。早速クラノスが昨日のことを報告すると、オーロラはすぐユキを抱きしめた。


「もう、裏路地に一人で行ってはだめと何度も言ったのに…!良かったわ…、もう二度と一人で行ってはだめだからね、ユキ。」


「はぁいオーロラ様。さすがに反省してます…」


もう、ともう一度強くユキを抱きしめゆっくり立ち上がるとカグヤへ深々と頭を下げた。


「カグヤ様、ユキを助けていただいてありがとうございました。今後も一人でふらふらどこか行かないよう見張っていてください。」


「り、了解です!それに仲間なんだから助けるの当たり前ですよ!」


驚きながらカグヤは手を振った。美人に礼を言われるのはとても気恥ずかしいという風に。頭を上げたオーロラは微笑んで一行に言葉を掛けた。


「皆様、昨日お話した通り、今後も何かしらの妨害はあると思います。本当に、本当にお気をつけて。それから裏路地の件に関してこちらでも調査してみます。魔力の残滓が残っていれば解析できますので。」


「はいオーロラ様。…オーロラ様もお気をつけて…」


ユキがそう返事をするとオーロラはもう一度ユキを抱きしめた。本当に大切に彼女を想っているのだろう。絶対に無事に帰すと真由は心の中で固く誓った。


天気は快晴。移動にはもってこいの天気だ。だが今後どのような妨害を受けるのかわからない。一行は気を引き締めオーロラに、そしてロンドリスの街に旅立ちを告げた。

ロンドリスからやっと出発しました。色々不穏ですが旅路は続きます。

そんでもってトキメキの予感…‼‼‼オックスがアップを始めました。アイラさんの苦悩は続く…。

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