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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
60/61

御神木と恵みの力②

真由と誠司はエルフ族長オーロラの後に続いて御神木の近くまで歩いていた。あたりには神聖な空気が漂い、自然と背筋が伸びる。オーロラはそんな二人の様子を感じ取ると少し声を落として話し始めた。


「…真由様は水源地の集落の戦闘で自力で呪術を解いたとお聞きしました。どうやって打破したかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「えっと…あの時、家族の夢を見たんです。しっかり身なりを整えた母と、私と目を合わせて会話をする父の夢です。将来の進路はどうするんだ~とかそんな普通の…現実だったら横山家で一切起こるはずのない、思い出しても鳥肌が立つくらい気味の悪い夢でした。」


あまりにも罵詈雑言を並べる真由の言葉にオーロラは思わず彼女を振り返った。きっとアルベルトから真由の家庭環境については聞いていたのだろう。真由はえへへと笑いながら言葉を続けた。


「でも、ずっとみんなの呼ぶ声が聞こえていたんです。それで私、可笑しいって気付いて…私がいる場所は、やるべきことは別にある!って宣言して浄化魔法を使って脱出しました。」


「…ふふ、とても逞しいですわ。…やるべきこととはどんな内容ですか?」


まるで面接みたいだなと誠司は一瞬思った。だが真由は照れ臭そうに笑うとオーロラに自分の目標を伝えた。


「私は今までの聖女達がこの世界で戦って、生きた証を正しくこの世界と私たちの世界の人に伝えたいんです。それからフユミ様と約束しました。フユミ様をあるべき場所―小野田家にお連れすると。それが私のやるべき事です!」


「…えぇ、えぇ…。本当に素敵な目標ですわ…。ありがとう真由様。」


オーロラはそっと目のふちを拭うとゆっくりと顔を上げた。そこには巨大な樹木―亜種連邦の御神木が聳え立っていた。樹齢を重ねた大木で直系は目視できないほど大きい。屋久島の屋久杉もこんな感じなのだろうかと誠司がひっそり思ってしまうほど、神々しく、長くこの地にあることをその存在をもって知らしめている。


「これが亜種連邦の御神木です。ここから連邦領地や平原の半分まで恵みの力を供給しています。」


「平原まで⁉すごいな…あの、御神木が地面ではなくはるか上空にあるのは神界に通じているから、でしょうか?」


「えぇ。ただサクラ公国は違いまして…かの地に訪れた際に拝見すると良いでしょう。とても美しいですよ。」


そんな何度も見せて貰えるものなのだろうかと誠司は少し不安になった。だがきっと公主マサノブならばホイホイ見せてくれるだろう、漠然とそんな気がしてしまった。


「…なんか、あまり元気が無いように見えるのは…ハイエルフの攻撃の影響ですか?」


大樹を見つめながら真由がぽつりと声に出す。誠司がえ、と驚きよく目を凝らすが真由の言う元気のない、というのがわからなかった。きっと大樹を流れる力のことを指しているのだろうか。オーロラはゆっくり頷いた。


「聖女の能力を持っている方にはわかってしまいますわね。そう、大戦後の攻撃の影響もありますが…年々弱まってきています。…瘴気の影響か神になにかあったのか…私にわかりかねます。それでも一つ言えるのはこの世界はゆっくりと滅びに向かっている。それだけです。」


オーロラの言葉に真由と誠司は絶句した。滅びに向かう世界、なんてゲームや漫画でしか聞かない言葉だ。どうしていいのかわからず思わず硬直していると真由が声を絞り出した。


「…もしかして滅びから助けてほしいから聖女を呼んでいる…とかは無いですか?そもそも昔は発生した瘴気はこの世界の中で解決できていたことが今は出来ない、聖女召喚システムが始まったのも救いを求めたから始まった…のかな?」


「……するどい考察です。時に真由様、聖女召喚は女神の信託によって始まったということはご存知でしょうか。それならあなた方聖女を呼んだ、いえ呼んでほしいと願ったのは誰だと思いますか?」


オーロラの凛とした微笑みに真由ははっと顔を上げた。最初スクトゥムから聞いた説明を思い出す。誠司もまさか、と唾を飲み込んだ。


「女神様…⁉力を取り上げた女神様ご自身が助けを呼んだってこと…ですか?」


「正解です。ただ正確には最上位の浄化能力をはく奪したのは女神ではなく女神の父神―ハイエルフが殺害した神です。娘神であらせられる女神はこの事実に嘆き、必死にこの地に住む生命を救おうとご神託をなさったのです。」


「オーロラ様、その女神様は実はハイエルフの神婚のお相手だったのではないですか?ハイエルフがピンポイントで接触できる神は限られるでしょうし…神の一族に入れなかったことに怒りを抑えられなかったとか。」


間髪入れずに質問した誠司にオーロラは驚いたような表情を見せたあとゆっくりと首を縦に振った。やはりそうかと誠司は納得した。先ほど彼女から神婚やハイエルフの暴挙の話を聞いたとき、漠然とした予想をしていたのだ。それにもう一つ、彼女に確認したいことがある。


「それから、オーロラ様…もしかしてハイエルフの一人だったのではありませんか?神域のここを僕たちに見せる権限や禊の際の特殊な魔法、呪術への対策法をご存じでしたし。それに…スクトゥムさんから説明を受けたときには神託は気まぐれで力をはく奪したのも女神と仰っていました。そこまでの内情をご存じなのはただ長く生きているだけでは説明ができない部分もあります。」


「さすが誠司様。少しヒントを与えすぎましたかね。…ただ一つ訂正しましょう。私はハイエルフだった、ではなくハイエルフの後継者でした。かの者が神婚をして魂を天に捧げた後、私が彼の後任として最上位の浄化能力を授かる予定だったのです。」


やはりか、と誠司は拳を握った。ここまで内情を知っている人物は限られていると同時に、きっとたくさんの秘密を抱えて永い間生きてきたのだろうとふと笑顔の裏のことを想像してしまった。


「後継者…ちなみにご神託をオーロラ様も授かったのですか?」


「えぇ勿論。ハイエルフの後継者として特別に賜ったのですよ。…生き残ったハイエルフの関係者は私だけでした。女神はかの者の醜い心の内を見透かしていたのでしょう。父神にいくら神託の拒否を申し出ても理解を得られなかったと。美しいお顔が苦痛に歪んでいたのをよく覚えております。」


父を失った原因が勝手に決められたとは言え婚約者による暴動だ。いくら神でも思うところはあったのだろう。だがそれにしても神と直接対面できるなどまず現代ではありえないことだ。やはりこの世界は神の存在が色濃いことを再認識する。オーロラは静かにご神木を見つめた後ゆっくり真由と誠司を振り返り、頭を下げ始めた。


「…真由様、誠司様。改めて私達この世界に生きる者が解決しなければならないことに、貴方方を―今までの聖女達を巻き込んでしまったこと、心よりお詫び申し上げます。ですが、きっと貴方方ならばこの世界を救えると私は確信しています。どうか、お力をお貸しください。」


「お、オーロラ様!顔をお上げください…!」


真由と誠司は声を揃えてオーロラに顔を上げるように言った。一呼吸おいて二人は頷いた。もう覚悟は決まっている。


「オーロラ様、謝る必要はありません。私はこの世界に来てよかった、前向きに生きて良いんだって、私に出来ることがあるんだって自信を持てたんです。今まで出会った人達と仲間と…それに歴代聖女様のためにも、私はこの世界を終わらせはしない。絶対にすべて解決して見せます。」


「俺だって同じ気持ちです。それに事の話を全て知って生きているオーロラ様が誰よりも辛かったはずです。俺たちにお話くださってありがとうございます。このお話で色々考察が進みました。」


「えぇ…ありがとうございます。本当に…。最後に一つ、お二人に秘密を授けましょう。」


震わせた呼吸を整え、姿勢を正したオーロラに真由と誠司も姿勢を整えた。きっと重大な秘密なのだろう。彼女はにっこりと微笑み、ゆっくりを口を開いた。


「…聖女召喚の儀の術式を詳細に解析できれば確実に現代へ帰ることができます。次元の壁も召喚システムを理解できれば越えられるでしょう。ただし、すべてを知っているのは王国―王のみです。私も何度も城を突破しようと試しましたが黒い影に阻まれできませんでした。」


やはりすべてを握っているのは召喚の儀で間違いない。真由と誠司は目を見開いた。


「…イノケンティス王は狂っています。先日もドワーフ族の鉱山の一つを王国の大貴族に買い取らせようとしていたと。何か企んでいるはずです。…瘴気の核の戦闘もそうですが、王の動向にも注意を。」


「…王が最後のカギか…。一番難しいね。」


「王妃と王子がこっちの見方だけど充分気を付けよう。…色々とありがとうございました。オーロラ様。」


オーロラ様は決意を固めた二人に加護を授かるかのように美しく微笑んだ。その旅路を見守る女神のように、自身の途方もない秘密を無事に伝えられたことに安堵したかのように。ご神木は静かに見守っている。

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総統府から出るともう夕方だった。神域から降りている途中、眼下に広がる地平線と夕焼けに一同うっとりしていたのもつい先ほどの話だ。オーロラに見送られ、今日はロンドリスに泊まるため先日宿泊したホテルへとチェックインを済ませる。ロビーでユキがあ、と声を上げた。


「ごめんちょっと買いたいものあったんだ!私外行ってくるね」


「今からかい?危ないから明日ロンドリスを発つ前に寄って行こう?」


クラノスが危ないからと提案するとユキはううんと首を横に振った。


「魔法に関するお店に行きたいんだけど、この時間じゃないとお店やってないんだ。何回も行った顔見知りのお店だから大丈夫!みんな先に休んでて!」


クラノスが止める暇もなくユキは小走りで外へ出てしまった。さすがに一人で行動させるのは危ない。追いかけようとしたところをカグヤが声を掛ける。


「旦那、俺護衛してくるよ!多分旦那のガタイだと店狭くて入れないし」


「うぐ、確かに魔法道具の店は狭いと聞いたことがある…、カグヤ頼んだよ」


はぁいと笑いながらカグヤは即座に駆け出しホテルを後にする。ユキの外套が裏路地に入ったところを確認すると一気に速度を上げてカグヤも裏路地へと入っていった。

その近くに潜伏する悪意に気付かずに。

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ユキはいつもの足取りで魔法道具の店へと進んでいく。何度も訪れているちょっと珍しい品を揃えている店だ。だが裏路地にあり危ないからといつもは父と必ず一緒に行っていた。


(今はお父さんいないし仕方ないよね~悪霊相手なら色々必要だし…)


考え事をしながら歩くとふと寒気がして思わず足を止めた。いつもならもう見える店の灯が視界に入ってこない。休業日か?と思いあたりを見回すと生活の灯すら無いことに気付く。まずいと来た道を引き返すため振り向くと汚れた服装のかなり太った男がすぐ背後に立っていた。なぜ気付けなかったのか、異臭を放つ体からは瘴気の気配がする。息を止めながら即座に後方に飛ぼうとすると腕を掴まれた。


「なに…‼‼放して‼‼‼」


気持ち悪さで声が裏返る。だが男は口からよだれをたらしにやりと笑う。喉が潰されているのか声は出ていない。だがそれでも何を言おうとしているのか本能的にわかってしまった。


「…っ!」


自由な腕を振りかざし浄化魔法をぶつける。だが焦りからかなのか男の瘴気すべてを消すことは出来なかった。気持ちが悪い、怖い、ユキは一人で来たことを激しく後悔し始めた。


(お父さん助けて…‼‼)


目を強くつむり父に助けを求める。父の言いつけを破り一人で裏路地に入ってしまった、いつも守っていてくれた父の行動の意味を今真の意味で分かった気がする。男の体臭が顔面に迫ったとき、風を切り裂くような音が聞こえた。


「ユキ‼‼‼‼」


声と同時に男が勢いよく吹き飛び壁に激突する。腕が勢いよく離れた衝撃で転びそうになったユキの体をとっさに抱きしめて彼女の無事を確認したのは―


「か、カグヤ…」


「大丈夫か⁉」


カグヤだった。クラノスから指示を受けて追いかけてきてくれたのか、カグヤは男が追いかけてこないよう近くの木樽を蹴飛ばし男にぶつける。その間にユキを抱きかかえ来た道を全力で駆け抜け始める。ユキは混乱したまま必死にカグヤに抱き着いて嗚咽を漏らすのだった。

誠司の推理ガンガンぶつけようとしましたが④とかまで行きそうだしだいたい解決しそうになったので持ち越しです。そしてセリフが一言もなかったアイラさんごめん…(´;ω;`)

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