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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
王国編
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突然の旅立ち

祝100PV達成しました‼‼‼ありがとうございます‼‼‼

ぜひ今度も二人の旅を見守ってください‼‼‼


「真由様こちらです。お足元お気を付けください。」


王城で訓練を始めて2週間が経過した。初日は何もかもできなかったが今はある程度魔法を使えるようになった。とは言ってもまだまだ正確なコントロールはできない。神官曰く、魔法は魔力を体の中にある魔力炉から全身へ巡らせ使用するというのだ。さっぱりわからん‼‼と悩んでいたが、こちらに来てから体の中に何か温かいものがある気がする。それを認識すると何とかわかるようになってきた。


そして今現在、実践ということで王都近くにある瘴気が停滞している場へ浄化に来ている。地面に開いたクレーターから黒いおどろおどろしい霧が出ている。近づけば息がしにくくなっていく。瘴気は大地から裂けた部分から出ていることが多いようだ。真由は深呼吸して杖を祈るように持ち集中した。


(杖の先に魔力を流して魔法を発動…浄化は祈りと一緒…)


神官から教えてもらった内容を心の中で復唱する。魔法はイメージですよ、と言われて自分なりに考えた結果、浄化はどうか安らかに、という祈りではという結論を出した。

足元から光の輪が広がる。クレーターまで達すると黒い霧は少しずつ消えていく。

後ろで神官たちがおぉっと感嘆の声を上げる。すっと呼吸が通るようになり瞼を開けると、辺りにあった瘴気はきれいさっぱりなくなっていた。成功の様だ。真由はほっと一息ついた。


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「お疲れ様でございました。今回はクレーターに瘴気の核がありましたが、動く魔物にある場合もあります。その時は動けなくしてから浄化してください。」


真由はうっかり核があるのを忘れていた。もう一回勉強だ…と反省しながら動く場合の対処法を考えていた。


「…ちなみに攻撃魔法に浄化の魔法を合わせて撃っても浄化できますか?」


「できますよ。ですが二つを合わせるのは慣れた魔術師ではないと難しいですね。」


うーむ練習あるのみだ、真由は馬車の背もたれに寄り掛かった。

今回のように事前に騎士団が周りの調査をして魔物を倒してくれる訳ではない。自分の身と仲間を守りながら浄化を行う必要がある。神官に他にも教えてもらっていると城へ到着した。


「本日はお疲れでしょう、ごゆっくりお休みください。」


神官と護衛の騎士団にお礼を言って部屋へ戻る。さすがに疲れた、夕飯まで眠らせてもらおうと真由はふらふら歩いて行った。

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次の日。普段は誠司と朝と夜の食事を共にしていたが、昨日誠司も実戦に行っており帰りが遅かった。朝食時も少しウトウトしている。誠司は持ち前の学習能力の高さを存分に発揮し、身体強化の魔法と剣技をあっという間に覚え三日ほど前から実戦に行っていた。


「だ、大丈夫…?」


「さすがに疲れたよ…まるでこれはコミケ一か月前に同人誌作業とコスプレ製作を手伝ってた時みたい…姉ちゃん今から同人誌一冊は無理だって…冬コミにしようよ…」


誠司は半分寝ぼけているようだ。こちらでも姉の影響が強く出ている誠司を見て真由は笑ってしまった。お姉さん同人誌まで作ってるんだ、すごいなぁと真由は感心していた。とそこへ


「お食事中失礼いたします。…誠司様大丈夫ですか…?」


「あっ大丈夫です‼‼‼ごめんなさい何かありましたか?」


入ってきた衛兵に声をかけられて誠司は飛び起きた。反応がとても速い。


「ベルメール神官長より言伝を預かっております。…えー本日は突然ではありますが休養日といたします。よろしければ城下町の様子をご覧になってはいかがでしょうか?夕食前にはお戻りください。とのことです。こちら王室より支給されます散策資金です。」


と金貨が入った袋と地図を渡された。突然の休みで二人は顔を見合わせた。


「何かあったのかな…?」


「うーん…休みならゆっくり本読みたいけど…俺たち、ずっとお城にいて街見たことなかったね」


「確かに…来週訓練終わって旅に出る前に一度は観光したいよね」


そうだねと誠司は言い、衛兵にお言葉に甘えて街へ行きますと返した。

衛兵は敬礼をして部屋を後にする。きっと警備の連絡も兼ねるのだろう。

真由は初めての散策で内心とても喜んでいた。支度の間はずっと鼻歌を歌うほどに。

ただその裏でとんでもない話が進んでいることをその時は予想していなかった。

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「こんなにきれいな髪飾り、本当に貰っていいの?」


あれから二人は街へ降りて色々露店を見ていた。その中で綺麗な緑色の石を使った髪留めがあったのだ。誠司が真由に似合いそうだと即決して購入したのである。


「いいんだよ、そろそろ髪ゴム切れそうでしょ?それにせっかく資金もらったし使わないと」


確かにずっと使っていた髪ゴムが切れそうではあった。予備をポーチに入れてなかったのでゴムが切れたら紐でくくるか切ってしまおうなんて思っていたところである。自身の両親からまともにプレゼントを貰ったことがない真由は心の底から喜んだ。早速髪留めを使用する。ゴムと違い髪の束を挟めるタイプの様だ。毛量が増えると大変そうだがいい感じに留めることができた。


「えへへ、ありがとう誠司君!すごいうれしい~」


「どういたしまして、まっ俺のお金じゃないけどね」


誠司も真由の笑顔を見て嬉しそうに笑った。その後、二人は露店を見て回り、お返しにと真由は誠司に剣士用のグローブを購入した。結局お互いの買い物だけしてるねと笑いあい、楽しい時間が過ぎていった。


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夕飯の時間が近づき二人は城へ戻った。だが食事室には通されず、応接室へと案内された。そこには今にも青白い顔で倒れそうなベルメール神官長と頭を抱えたスクトゥムがいた。


「あ、あの…お休みいただいてありがとうございました、お金余ったのお返しします」


誠司が気を使いながら二人に声をかける。あぁと二人は顔を上げると苦しそうに口を開いた。


「お帰りなさいませお二人共…お金はそのまま旅の資金としてお持ちください。勿論追加も致します……その、突然の王命になりますが………旅への出発が明日になりました…」


ベルメールのまさかの発言に真由は驚きの声を上げた。予定ではあと一週間訓練があるのだ。それを早めに切り上げ出発しろ、というあまりにも酷い内容だった。


「なぜそんな急に…同行していただく騎士団の方へのご挨拶もまだですよね?」


「王にお二人の訓練の状況をご報告申し上げておりまして、王がそんなに早く実戦に出ているのならもう出発させろ、騎士団も何人もつけられない予算の無駄だと申されまして…」


「予算の無駄って召喚したのそっちですよね‼‼‼⁇誠司君の貴重な時間を奪っておいて何を!!?」


スクトゥムの報告に思わず真由は声を荒げた。スクトゥムに怒っても意味がないのは分かっている、目の前の副騎士団長と神官長だって王に振り回される被害者なのだ。誠司は真由の肩に手を置いて落ち着くよう宥めた。


「誠に申し訳ございません…何度お詫びしてもお詫びしきれないことは重々承知しております。せめて王妃様がいてくだされば王妃命令で撤回できたのですが…王は…人の心はもう残っていないのですね…」


ベルメールは今にも死にそうな声で土下座するように頭を下げ続けた。この二週間で色々聞いた話だが、今この国はイノケンティス王の暴君ぶりに悩まされているようだ。王妃と王子はまともでどちらかがいれば権限でどうにかしてくれるようである。しかし、二人が召喚される前から王妃と王子は隣の国へ親善会議に行っているという。


「逆らえばここまで助けてくれたスクトゥムさんとベルメール神官長の身が危ないよ、それにきっと良くしてくれた教官達にも被害が行くかもしれない。真由ちゃん、辛いけど命令に従おう。」


誠司の諭すような、それでいて悔しい感情を含んだ声掛けに真由も頷くしかなかった。


「そうだね…スクトゥムさん、ベルメール神官長…怒ってごめんなさい。色々助けていただいてありがとうございました。」


頭を下げた真由に思わずベルメールはとんでもございませんと泣きそうな声で返した。


「同行する予定だった騎士と神官は王命により任務として同行は出来なくなりました。ですが私の一番信頼でき、腕が立つ者を護衛としてつけさせます。またこちらで旅に必要な荷物も揃えておきました。お納めください。」


スクトゥムは二人に現代で言えばウエストバッグに似たポーチを渡した。


「マジックバッグです。見た目は小さいですが空間魔法により中身は大量に収納可能になっています。武器でも食料品でも薬でも、色々入れれますし、自由に取り出せます。旅の者は全員持っているアイテムです。」


四次元ポケットかと誠司は蓋を開けてみた。暗くて見えないが取り敢えず薬を…と思って手を入れると本当に薬が出てきた。思わずテレテテッテテーと某効果音を言いたくなる。


「これにお二人が召喚時に持っていらっしゃった荷物やお召し物を入れてください。」


確かに今の城に制服や教科書を置きっぱなしにしたくはない。あの王の言うことだ、処分しろなどと言い始めるかもしれない。


「ありがとうございます。ぜひ入れさせていただきます。」


「突然のことで大変申し訳ございません…明日は朝食後支度が整い次第南門から出発になります。我々一同お見送りさせていただきます…」


何度も頭を下げるスクトゥムとベルメールに二人はいえいえと声をかけ、重苦しい空気の中真由は明日からの不安を抱いていた。


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次の日。王に簡単に挨拶をし王都の南門へ向けて移動をした。見送りにはスクトゥム、ベルメールを始め二人の教官や神官、そして二週間で仲良くなった騎士団やメイド達も来てくれた。みんなから温かい激励の言葉と保存食や役立つ旅の品を次々と貰った。バッグがパンパンになりそうだ。

門へ近づくとスクトゥムに似た背格好の大柄な男性と、美しいドレスを身にまとった令嬢が話をしていた。男性はこちらに気付くと女性を伴い優雅に一礼をした。


「お初にお目にかかります真由様、誠司様。私はこの度護衛を仰せつかりましたクラノス・ガードナーと申します。戦闘や野営などなんでもお申し付けください。」


「クラノスは私の弟です。お二人と年齢が近いですし、地理も大変詳しいです。腕前も勿論問題ございませんのでご安心いただければと思います。…クラノス、急にすまないな、フローレンスも」


スクトゥムは弟を紹介するとフローレンスと横に控えていた令嬢に声をかけた。


「いえ、スクトゥム様。これも大切な騎士のお勤めですもの。…聖女様、従者様、ベルメールの孫のフローレンスと申します。以後お見知りおきを。どうか道中のご安全とご無事にお戻りになることを心よりお祈り申し上げますわ。」


フローレンスも優雅に一礼した。ありがとうございますと二人も返す。


「あれ、クラノスさんも騎士…王様が外したのでは?」


誠司が尋ねるとその場の全員がいたずらがばれた子供のように笑った。


「王には秘密にしてくださいね、実はクラノスは長期休暇の個人旅行中にお二人と出会い意気投合した、という設定で同行させることにしました。また各町に滞在する際には騎士団の詰め所を積極的にご使用ください。彼らにもたまたま、協力したと報告するよう伝達してあります。」


スクトゥムが教えるとクラノスと顔を見合わせ、兄弟そろってそっくりな笑顔を見せた。


「これぐらいしかできませんが、我々はお二人をいじめたいわけではないのです。」


「いえ、お気持ちは充分伝わってます。本当にありがとうございます。」


真由と誠司はぺこりと頭を下げた後、クラノスに向き直った。


「巻き込んでしまって申し訳ないですが…とても心強いです。よろしくお願いします。」


「とんでもございません。さぁ、そろそろ出発しましょう。王が駄々をこね始める前に」


クラノスがウインクをしながらお茶目に言うとその場全員が思わず笑ってしまった。

二人も思い切り笑うと改めて見送りに来た温かい人たちへ向き直る。


「それでは行ってきます‼‼‼‼短い間でしたがお世話になりました‼‼‼‼」


元気よく挨拶をすると大声援に送られ、三人は街の外へ歩いて行った。

その声は三人の姿が地平線に隠れて見えなくなるまでずっと響いていた。



-これが世界の本当の命運をかけた旅路の始まりであることを、この時は全員知らなかった。

とんでもねぇ王様だ‼‼‼‼‼

ちなみに誠司のお姉ちゃんが書いてる同人誌は薔薇系です。

弟に何手伝わせているんだお姉ちゃん‼‼‼‼

しれっと書いた真由の親との関係は小話でどこかで書きます。


登場人物補足

〇クラノス・ガードナー

ブルーボ王国騎士団員。スクトゥムの弟。23歳でガードナー家の次男。兄に似て爽やかで気遣いに長けている。趣味は卓上旅行。兄が優秀だし兄の子供がいるので自身は偉い立場になることは無いと思っている。それでも国のため、そしてガードナー家の一員として日々任務を頑張っている。婚約者はフローレンス。元々聖女護衛のため旅に同行するメンバーに選ばれていた。兄から急な知らせを受け驚いたが用意がいいので荷物はもう纏めてあったできる男。最近婚約者が鍛錬と称して素手で薪割をしている姿を目撃した。やだ俺の婚約者かっこよすぎ…⁉


〇フローレンス

ベルメール神官長の孫娘。21歳。クラノスの婚約者。貴族令嬢。神官の家系なので浄化魔法と治癒魔法の適性がある。ガードナー家に嫁ぐことが生まれたときに決まったが、クラノスが大好きなので今すぐ嫁いでもいいと思っている。旦那が任務で不在にする間、家を守れる女になると決心して鍛えている。日課は素手で薪割をすること。一人である程度の魔物も倒せるすごいご令嬢。恋愛小説が大好き。

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