表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
45/52

水源地の浄化作戦

数時間後。用意ができた一行は水源地近くの結界へと到着した。ここから1kmほど離れたところに核がある。真由は装備を整え仲間達に呪術を防御する魔法をかけた。これで少し安心して作戦に当たれるはずだ。


「ごめん!遅くなった!」


そこへカグヤが戻ってくる。隣にはカグヤと同じ衣装を身に纏った男性が立っていた。


「お帰りカグヤ。そちらの首尾はどうだい?」


「バッチリ!話したら速攻動いてくれたよ。ただ不審な人物は見ていないらしいから多分核に呪術が憑いているだろうって。」


カグヤの返事にクラノスを始め全員気合を入れなおした。術者がいないということは核を浄化してどうにかするしかない。ストラスよりも難易度が違いすぎる作戦に真由は杖を固く握りしめる。


「で、こちら俺の兄ちゃん。たまたまこの辺りで任務にあたってた。」


「お初にお目にかかります皆様。カグヤの兄のウズキと申します。いつもうちの弟が大変お世話になっております…。」


こちら粗品ですとウズキは笹のような葉で包んだ品をそっと誠司に渡した。お礼を言って受け取った誠司は中身を開けると団子と粉末の茶葉が入っていた。


「これは公国でよく食べられている薬草団子です。味は死ぬほど苦く悶絶しますが、瘴気に対する薬として重宝されているんです。…カグヤから誠司様のご体調について聞いておりました。作戦後に熱いお茶と一緒にお食べください。」


「わざわざありがとございます。…死ぬほど苦くて悶絶????」


繰り返した誠司にウメミヤ兄弟は目を逸らした。どのくらい苦いのか思わず真由も気になってしまったが誠司の体調を気遣って用意してくれたのだろう、兄弟そろって優しいとクラノスが感慨深く頷いていた。


「あーお父さんがストラスから帰ってきて食べてたお団子だ~。誠司、これお茶大量に用意すると良いよ。お父さん床を転がって泣き叫んでたから。」


「なんかすごい想像つくなぁ…。大きめのやかん借りるか、茶葉も調達して…付け合わせに甘いものも用意するか。頑張れ誠司‼‼‼」


「あ、ありがとうアイラ…俺頑張る…」


恐ろしい情報に誠司は子犬のように肩を震わせてそっとバッグへ団子をしまう。アルベルトが悶絶する姿は不思議と想像ができるが誠司はどのような反応を見せるのだろうか、少しだけ真由は想像して笑ってしまった。いい感じに肩の力が抜けた気がする。これも見越していたのだろうか、ウメミヤ兄弟の有能さに真由は感謝した。


「ひとまず我々忍者は術者の捜索と可能であれば撃退に当たります。数人を核の近くに残しておりますので戦闘の際には陰ながら援護いたします。」


「助かります。どうかご無理だけはなさらずに。」


「えぇ。お互い武運を祈りましょう。…カグヤ、お前も気をつけろよ」


ウズキは一同に礼をするとカグヤの頭をガシガシと撫でて森へと飛んでいった。カグヤは乱れた髪の毛を整えマスクを装備する。


「ウズキさんかっこいいよね、カグヤも数年後そっくりになるのかな?」


「でしょ~~~ウズキ兄ちゃんは3番目の兄ちゃんでウメミヤ兄弟の中で一番モテるんだ。へへへ、俺も兄ちゃんみたいになれるかな!」


真由の言葉にカグヤはにっこりと笑った。4人兄弟で一番年が近くて優しいお兄ちゃんがいると以前カグヤは言っていた。まさに話していた通りのお兄さんだったねと誠司とクラノスは顔を合わせて話している。その横でユキが少し羨ましそうに見つめていた。…きっと母が生きていれば多くの兄弟に囲まれていたのだろう。真由はそっとユキに寄り添った。


「うし、そろそろ作戦開始と行こうぜ。全員気入れろよ!」


アイラの一喝に全員武器を構えなおす。真由とユキも顔を合わせて頷くと核へと足を進めた。

---------------------------------------------------------------------------

「前方核を確認!瘴気の霧が濃いため視界不良」


先頭を歩いている兵士からの伝令が聞こえる。視界は黒い霧に包まれすぐ隣にいるユキの姿もぼやけるぐらいだ。真由はとっさにユキと手を繋いではぐれないようにする。


「くっそ瘴気が濃いな、団子全員分用意してもらうか」


「あぁ戦闘後のデザートに頂こうか。ユキ、我々と空間に浄化を掛けれるかい?」


アイラとクラノスの軽口に身震いしていたユキがはい!とすぐに魔法を展開する。父親が泣き叫んで食べていたあの団子を食べたくは無いのだろう、甘党のユキは首をぶんぶんと横に振っている。


「それにしても一番瘴気が濃いね…水源地だから霧が発生しやすいのもあるのかな、足元も湿っているし…」


「時間は掛けれない、魔法の射程圏内に入ったらすぐ浄化にかかろう。カグヤ信号弾の用意を」


少し咳き込む誠司の背をアイラが前方を警戒しながら摩る。その姿を視界の端に捉えたクラノスが即座に指示を出してくれる。真由とユキは頷いて魔法の用意を始めた。


「…!ユキ‼‼‼」


浄化魔法の範囲内に核をとらえたその時、核が震えた、いや輪郭がぼやけたように見えた。真由は直感で呪術が来ると判断し即座に魔法書を開いて防御魔法を展開する。真由の声にユキも反応して同様に防御魔法を展開した。アイラが誠司を抱え即座に二人の元へ飛ぶ。カグヤも近くの兵士を引き寄せて距離を取った。


「うわ‼‼‼‼‼」


展開した防御魔法を貫くように黒紫の風が吹きつける。瘴気と何か禍々しい気配に震えが止まらない。これが呪術かと真由は確信した。


「真由よく気付いた!全員無事か⁉」


「連邦軍全員無事です‼‼‼ご加護に感謝を‼‼‼」


「何回も防げません!すぐ浄化します‼‼‼」


兵士の声に真由は大声で返した。ユキがやるよ!と声を掛けてくる。真由は大きく頷くとすぐ浄化魔法に切り替えた。周辺の木々から魔物の気配もする。


「属性攻撃は忍者がやるからユキは浄化と防御に専念して!」


「了解!いきますよ‼‼‼‼‼‼」


信号弾を撃ったカグヤがクナイを構え真由とユキを護るように戦闘態勢に入る。誠司とアイラもすでに戦闘を開始している。二人は力を合わせて一気に浄化魔法を核へとぶつけた。聖女の血を引いているユキは神官やエルフ族の浄化魔法よりも威力も効果も桁違いのように思える。今までよりも核への浄化がよく届いている。


「ユキやっぱりすごい…‼‼」


「でしょ…‼‼ってまた呪術来る‼‼私防ぐから真由はそのまま浄化を!」


再び核が震えるのを確認したユキは即座に防御魔法に切り替える。真由はそのまま浄化を続けた。誠司たちも出現した魔物や時折核から飛んでくる攻撃を躱したり弾いたりしている。木々の間から飛んでくる火遁や雷遁も前衛達をよく助けている。


(うまくはいっているけど、時間はかけられない…!)


真由は一呼吸置くと魔力を込めて一気に浄化を進める。浄化魔法に切り替えたユキも協力してくれる。二人の願いが届いたのか核の中心に浄化の光が届く。


「もう少しだ!踏ん張れ!」


アイラの声が聞こえる。飛んでくる攻撃を何度もクラノスが防いでくれる。誠司も時折咳き込みながらも魔物を切り捨て二人を護る。カグヤも魔物達を攪乱しながら兵士たちをフォローする。少ない人数で効率的に作戦を進めている。


「いっけえええええええ‼‼」


真由の渾身の叫びが響くと同時に瘴気の核はひと際大きく震えたかと思うと一気に砕け散った。黒い霧が光に包まれ木々の間から空に帰っていく。浄化成功だ。


「や、やった‼‼‼」


ユキが杖をおろしてガッツポーズをとる。兵士たちも勝鬨を上げ全員が武器を下ろした。今回は特に瘴気が濃かった。先ほどアイラの言った通り、全員団子を食べるべきだろうか。真由はカグヤに声を掛けようとしたその時、背筋が凍った。視界の先で、黒い塊―先ほど浄化したはずの瘴気の核と似たものがこちらを見ている。いや、見ているのは―


「……ユキッ‼‼‼‼‼‼‼」


狙いはユキだ、そう確信した真由は思いっきりユキを突き飛ばす。真由の声にクラノスが即座に塊と真由とユキの間に入り盾を構えるが、塊から放たれた黒い閃光は盾をすり抜け確実に真由に当たってしまった。


「真由‼‼?うそでしょ、やだ、真由、真由‼‼‼」


「真由‼‼‼起きて‼‼‼‼」


ユキの悲鳴が聞こえる。誠司に抱き上げられ頬をつねられるのを感じる。だが視界が歪んできた。下半身の感覚があるし血も出ていない。おそらく体は真っ二つにはなっていないだろう。そうだとしたらこれは呪術か、真由はそんなことをおぼろげに考えながら意識を手放した。

---------------------------------------------------------------------------

「真由、そろそろ起きないと遅刻するわよ~~」


久々に母の声を聴いた気がする。男に媚びていない、お酒を飲んでいないときの普通の母の声を。真由は思わず飛び起きる。


「え…」


鈍い光が差し込むここは自分の部屋だった。必要最低限の物しかない、ひたすら閉じこもって朝を待つしかない狭い部屋が確かに目の前に広がっている。


「真由!って起きてたの?早くご飯食べちゃいなさい。」


母の声に振り向くとそこにはエプロンをして身なりを整えた母が立っていた。いつも真由が起きるころには居間でボロボロの寝巻で転がっている母なのに。


「お、お母さんが料理…?」


「何失礼なこと言ってるのよ、まだ寝ぼけているの?…それとも具合悪い?」


母から心配されるなんて何かが可笑しい、だいたい朝居間に行けば水をくれ~しか言わない母がちゃんと言葉を発している。真由は余計混乱する中、なんとかベッドから出る。


(…あれ、そもそも私なんでこんなに混乱しているの…?)


ふと真由は自分が困惑していることに疑問を持った。どうして?なぜお母さんが今の姿と真逆だと思ったの?悪い夢でも見ていたの?遠くから聞こえるような声はなんだろう?


真由は後ろ髪をひかれるような思いをしながら母に続いて居間へと向かう。食卓には白米、みそ汁、焼鮭、サラダといつものご飯が用意されている。そして向かいの席で新聞を読んでいるのは―


「やっと起きたか、今日は随分とねぼすけだな。あまり夜更かしするんじゃないぞ。」


―お父さんがいる。そんな、当たり前の朝が真由を待っていた。

めっちゃ遅くなりました‼‼‼

今回は浄化はサクッと終わらせ覚悟ガンギマリ聖女の成長をお見せしていこうと思います★

しれっと真由母ぼろくそに書いてて自分でも笑いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ