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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
連邦編
39/52

亜種連邦首都 ロンドリス

ブルーボ王国ストラスを出発した聖女一行は戦闘の形跡が残る広大なブルーボ平原を越えついに亜種連邦の国境の街であり首都を兼ねるロンドリスへ到着した。平原を越えるのに3日もかかった。一行はさすがにヘロヘロになりながら街の入り口の門で入国審査を受けていた。


「はい王国から5名ですね、旅券を」


「お願いします」


代表してクラノスが全員の旅券を渡す。騎士団員の身分証も同時に渡すと連邦の女性入国審査員はおぉと驚きの声を発していた。


「現役騎士の…え、ガードナー⁉もしかしてあのガードナー家ですか‼‼?」


「え、えぇ…。アーマルド・ガードナー騎士団長の次男のクラノスと申します。」


目を輝かせ興奮気味の職員にやや引きながらクラノスは笑顔で挨拶をする。クラノスの言葉を聞いた職員は黄色い声を発しさらに興奮している。


「私、救国の王子と騎士が昔からすごい好きで…‼‼いつかお金貯めて旅行してブルーボ王国王都のガードナー特別駐在所を見に行くのが夢だったんです‼まさかガードナー家の方にお会いできるなんて、この仕事やっててよかった…‼‼‼‼あのあの、やはり今のガードナー家の方々も怪力なんですか?岩を素手で破壊できますか??」


まるでオックスを見ているようだとアイラはどこか既視感を覚えている。その後ろで真由、誠司、カグヤもたじたじになっているクラノスを珍しそうに眺めて頑張れと応援してる。クラノスは一呼吸おいて冷静さを取り戻すといつものイケメン騎士スマイルで職員へと声を掛けた。


「我が家をこんなにも愛してくれるお方と出会えたのは私も初めてです。麗しいレディ、貴方の応援があればこのクラノス、どんな岩でもご先祖様に負けず砕けることでしょう。この出会いに感謝を」


とどめのウィンクで女性職員は歓喜の悲鳴を上げた。その眼には涙まで浮かんでいる。別の職員から仕事しろ!と声を掛けられているが彼女は今目の前のクラノスに夢中だ。


「すっご…やっぱ騎士って最高だよね~今の言い回しいつかセリフに使おう」


「いやどんな本書くつもりだお前、怪力騎士なんてわんさかいてたまるか?」


同人誌のネタが増えると喜ぶ誠司にアイラがツッコミを入れた。横でカグヤも静かに頷いている。


「クラノスかっこいいなぁ…真正面であの言葉言われたら気絶しちゃうよ」


「ですよねそこのお嬢さん!わかります‼‼?私走馬灯まで見えましたからね‼‼‼」


真由の言葉に職員は身を乗り出して同意していた。落ちないようにそっと支えるクラノスがさすがスマートだとさらに興奮の叫びをあげる中、ついに別の職員からフォルダで頭を叩かる音が元気よく響いた。

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「無事入国出来てよかったね!あのお姉さんすごく面白い人だったし私仲良くなれそう!」


「きっとフローレンスも割って入ってくるぞ…永遠に止まらないお茶会になりそうだな」


あれから泣きながら入国審査をしてくれた職員に通され一行は無事亜種連邦へと足を踏み入れることができた。いきなりガードナー家のファンが出てきて驚いたが何はともあれ到着だ。


「とりあえず今日の宿を取ろう。さすがに歩き疲れたね。明日は街の散策と連邦軍の駐在所に行こうか。カイウス殿に会いに行こう。」


「ねぇねぇ宿泊料って王家持ちだよね?俺ちょっといいホテル知ってるんだけど」


そわそわしながらカグヤがクラノスを覗き込む。クラノスはあぁそうだよと笑うとカグヤはやった!と飛び跳ねた。忍者で情報収集を頻繁に行っているカグヤは色々と詳しいのだろう。真由と誠司は首都の街並みに見回して珍しそうにしているが、カグヤは見慣れているようだ。


「超高級なホテルはだめだからな、手ごろな値段で頼むよ」


「もちろんわかってるってば!大丈夫大丈夫!」


「おいカグヤ前!」


後ろ向きで歩くカグヤを慌ててアイラが止める。だがカグヤが反応する前に通行人にぶつかってしまった。通行人は女性でカグヤとぶつかった拍子に転んでしまった。急いでクラノスが駆け寄り膝をついて女性と目を合わせる。


「大変申し訳ありません、私の仲間が失礼しました。お怪我は?」


「だ、大丈夫です。私もよく前を見ていなかったので…」


クラノスに手を取られゆっくり立ち上がった女性は一行に微笑んだ。女性はフードを被っているので完全に顔が見えるわけではないのだが、少し見える顔立ちは美しく整っている。


「本当すみません…」


「構いませんよ、お互いさまにしましょ!それより観光の方ですか?今南の街道の森に凶暴な魔物が住み着いてるので近づかない方が良いですよ。」


「お気遣い感謝しますレディ。」


鈴のようなかわいらしい声で話す彼女に真由はどこかで見覚えがあるような感覚を覚えた。どうしてなのかは記憶を漁っても出てこなかったのだが。必死に思い出そうとしているうちに女性は手を振って離れていった。誠司に呼ばれて我に返る。


「疲れた?大丈夫?」


「ううん大丈夫だよ。それよりカグヤ、周りはちゃんと見ようね」


「仰る通りですほんと…」


反省するカグヤの背中をアイラがポンポンと叩く。浮かれすぎたカグヤは反省したあと気持ちを切り替え一行を目的のホテルまで案内してくれたのだった。




「ふぅん…あれが聖女様ねぇ…魔力はあるけど魔法は成長途中って感じかな。ま、仕方のない話だけどね。それより騎士様かっこよかったなぁ…」


聖女一行から離れた後彼女は一人聖女の魔力を分析していた。噂で聞いた通りの平凡な少女、といった感じだろうか。よくあの凡庸さで王国内の核を浄化できたと感心しながら騎士の微笑みが忘れられずしばらくうっとりと満喫していた。

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「おぉぉすごい豪華だ‼‼‼見てカグヤ、ベッドがふかふかだよ‼‼」


「そうだろそうだろ‼‼?ほら風呂場見てみろ‼‼‼この花びら入浴剤になるんだって‼‼‼」


「こらこら二人共、他のお客さんに迷惑だからはしゃぎすぎないように」


ホテルに到着した一行はチェックインを済ませ男女で別れて部屋に通された。王国内では基本的に騎士団の詰め所に泊まることが多かった。勿論詰め所も元貴族の屋敷だったりで豪華な部分はあったのだが、どちらかというとシンプルなビジネスホテル、というような室内だった。だが今回カグヤが連れてきてくれたホテルはとにかく調度品の装飾一つ一つが上品でまるで上流階級の屋敷のようなつくりをしている。


「このランプ、光源を花びらで囲ってておしゃれだな~~~ってこれ火使っていない?」


「あぁ、これは魔晶石を使っているんだね。さすが亜種連邦。魔法道具をふんだんに用いているね。」


覗き込んだクラノスが感心したように頷く。誠司は間近で見る魔法道具をじっくりと観察し始めた。


「魔晶石って電気みたいに光源にできるんだね。王子から貰ったこの魔装具の石も魔晶石だよね?」


「そうだよ。連邦ではエルフ族を中心に魔法が一番発展している国、というのは前々から知っていると思うけど、こうして魔力を固めて魔晶石を作って売っているんだ。その魔晶石は特殊な加工が施され魔法を使う際のサポートや人々の生活を支えているんだ。」


「まぁこんな贅沢に使えるのは連邦だけだけどね。あとは王家とか貴族ぐらいかな?」


確かに王国内ではまだ光源は火を用いた灯が多かった。マンモルの図書館や王城は火を使っている様子があまり見受けなれなかったが、そこは資金の差なのだろうと誠司はひしひしと感じている。


「学院長が魔晶石を作れるのは魔力炉が大きい一握りの優秀な魔法使いって言ってた。そうだよなぁ、魔力をこんな形に具現化するなんて俺できる気しないよ。」


「とてつもない集中力と鍛錬が必要だそうだ、きっと長寿で魔法の扱いに長けたエルフ族が多いからできた名産品であるんだろうね。あとは時折鉱山から発掘されることもあるそうだよ。」


「鉱山から?…恵みの力が大地に固まってできるってことかな、自然の神秘かぁ…」


「一瞬で理解するの相変わらず凄いな誠司…」


男性陣が話をしているとノックの音が聞こえた。おーいと聞こえる声はアイラの声だ。


「よ、部屋じっくり見たか?飯食いに行こうぜ。」


「もうそんな時間だったか、食べ損ねる前に行こうか。」


ドアを開けたクラノスが女性陣の姿を確認すると誠司とカグヤに声を掛けた。窓の外は綺麗な夕暮れが広がっている。レストランが混む前に連邦の食事を満喫しなければ。誠司は仲間と共に街へと繰り出した。

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「あぁ~飯は美味いし風呂は豪華だしロンドリス最高…」


夕食後、部屋に戻った一行はそれぞれ夜の時間を過ごしていた。カグヤは意気揚々とゆっくり風呂を堪能し、リンゴジュースを片手に夜の街を見つめている。


「サクラ公国も独自の食文化や温泉があるんだろ?連邦とは違った豪華さではないのかい?」


クラノスが優しく笑いながらカグヤに問いかける。カグヤはいやいやと首を横に振って否定した。


「確かに温泉はすごい良いよ、特に冬の露天風呂が最高なんだけどさ…飯はどうしても質素になるぜ」


「そうか…確かに真由が作ってくれる日本食、もとい公国の食事は庶民的なものが多いね」


クラノスはカグヤが加入後、真由がよく作ってくれるようになった食事を思い出していた。みそ汁、豚汁、おにぎり、そして石狩鍋。魚は干物だがよく魚を用いた食事が出てくる。そして何より米に合うのだ。基本的にパンを食べる王国出身のクラノスとアイラは初めて触れる食文化に感動しているのだ。


「公国に行ったらもっといろいろ食べたいものだね」


「旦那すっかりご飯気に入ったんだな~もう少し公国に近い街だと豆腐とかも手に入るからもっと楽しめると思うよ…って誠司風呂遅くない?」


カグヤはずっと風呂から出てこない誠司に気付いた。何気1時間近く入っているように思える。クラノスが水をもって風呂場へと走っていく。もしかして瘴気の影響で具合が悪くなっているのでは。


「誠司、入るぞ」


後ろからカグヤも瘴気を排出しやすくする薬をもって追いかける。突然扉を開けられた誠司は驚いていたが特に顔色は問題ないようだ。…入りすぎて顔が赤くなっている以外は。


「え、二人ともどうしたの?なんかあった?」


「いや中々誠司が出てこないから具合を悪くしたのかと思ったのだが…ふふ、よほど気に入ったのかい?」


倒れてなかったことに安心したようにクラノスが笑う。


「そんな時間経ってたんだ…なんかすごい豪華で薔薇風呂みたいだ!って堪能してて…あぁごめんクラノス入る時間遅くなっちゃった。」


「いやいいんだよ。たくさん歩いて疲れも溜まっていたんだろう。しっかり水分取って、湯冷めには気を付けるんだよ。」


クラノスから水を受け取り飲み終わった誠司ははぁいと答えるとバスタオルで体を拭き始めた。クラノスはお湯の温度を確かめ少しお湯を足すと入るために服を脱ぎ始めた。


「あぁ誠司、カグヤ。先に寝てていいからね。私もおそらく長風呂になりそうだ。」


「りょーかい、いやぁやっぱ最高だよねこの風呂~」


「真由とアイラも長風呂してそうだね。明日聞いてみよっと」


誠司は素早く服を着ると髪を乾かし歯を磨いて就寝する用意をした。風呂場にいるクラノスに声を掛け、寝室へ戻りカグヤとベッドに入りながら寝る前のおしゃべりを楽しむのだった。

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「すごいね花びらが入浴剤になるなんて素敵~~!まさかこの世界でもあるなんて思ってなかった!」


「だな、いやぁ貴族みたいな豪華さで最高だわ…いいなぁこれベイルにも堪能してほしいなぁ」


一方真由とアイラは一緒に入浴していた。浴槽は意外と広く、また真由の護衛の観点からもアイラも一緒に入っているのだ。小柄な真由なので一緒に入れるが、男性陣は一人ずつしか入れないだろう。


「お土産屋さんとかで売ってないかな…あ、でもそうか、普通は公衆浴場を使うんだっけ」


「そうそう、平民の家に風呂なんてないからな。詰め所も今まで泊ってた部屋は上官用とか貴賓用だから風呂ついてたけど一般兵士は大浴場使ってたぞ。」


大勢が一緒に入る浴槽に個人で楽しむ入浴剤は入れられない。当たり前のことだがやはり風呂は贅沢の象徴なのだと真由は改めて納得した。


「ま、女性騎士少ないから女性用の大浴場なくてアタシら女性は普通に貴賓室の開いてる風呂使ってたけどな!」


がっはっはと笑いながらお湯をすくって香りを嗅ぐアイラ。真由も何度も香りをかいでいるが上品な女性が良くつけている香水のように華やかで上品な香りにうっとりしていた。歩き疲れた足によく効く。


「さ、そろそろ上がるか、アタシのぼせそうだわ」


「結構長風呂しちゃったね」


二人は上がってバスタオルで体を拭き就寝の用意をする。真由は髪の毛が短くなったおかげで手入れが楽になった髪にそっと香油を塗る。これもマンモルで休養中に買ったものだ。


「明日はカイウス殿のところ行って連邦国内の瘴気の被害の話聞いてどこから回るか決めないとな」


「そうだね、あとアルベルトさんが紹介してくれた魔法使いさんとも会うんだよね、緊張するなぁ」


備え付けの化粧水で保湿をしながら真由は緊張している。あの最強の戦士が推薦する腕のいい魔法使いとなればおそらく国内でも有名な人なのだろう。失礼のないように協力をお願いしなければと顔を叩いて化粧水を浸透させるついでに気合を入れなおす。


「ま、そんな緊張しなくてもいつもの真由でいいんだよ。ほらジュース飲もうぜ」


アイラが笑いかけ真由も確かにそうだと頷いた。今は優雅な時間を楽しもうと寝室へ向かい女子トークに勤しむのだった。

やっと入国!熱烈なガードナー家ファンを添えて‼‼‼

次回新キャラ登場です!

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