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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
王国編
27/52

激闘 第三の瘴気核②

期間空きました(;´・ω・)ひぇえええ

前方の視界が開けた。そこには真ん中のクレーター部分にどす黒い霧を発している瘴気の核が見える。カグヤから聞いた情報をもとに、真由とクラノスと神官は核本体の浄化を行う。その間周りの魔物と核の奥の洞窟に潜んでいる大蛇はアルベルトを筆頭にアイラ、誠司、カグヤ達残りのメンバーが対処を行う。森の外側では騎士団と連邦軍が協力して魔物の大群と戦闘を行っている。今回も時間はかけられない。真由は杖を握りなおし、深呼吸をして集中しなおす。ここが正念場だ。


「作戦開始!」


獣人族長にして本隊のリーダーであるカイウスの声と共に戦闘部隊が一斉に駆け出した。先陣を走るのはアイラ。アルベルトにかけてもらった強化魔法のおかげでいつもより身軽に動けている。核が鎮座している開けた場所から離れた所で魔物を引き付ける薬を一気に煽った。魔物達がアイラに向かって移動するのが見える。


「よっしゃあかかってこい‼‼」


アイラは気合を入れまず飛びかかってきた飛行型の魔物を一刀両断する。そのままゴブリンたちを薙ぎ払い次々と魔物の屍を築いていく。飛行型はカグヤの手裏剣やクナイで体勢を崩し、誠司が素早く剣で切り捨てる。ほかの獣人族の戦士達も見事な連携で次々と魔物を仕留めていく。


「さ、我々も役目を果たそう。」


木の陰に隠れていた浄化部隊にクラノスが盾を構えながら声をかける。だいぶ魔物が少なくなってきた。大蛇はまだ出てきていないが、薬の影響は確実に受けているので出てきても戦闘しているアイラたちの元へ向かうだろう。真由は素早く浄化魔法の用意をしてクラノスに続いて核の元へと駆け寄る。


「いきます!」


杖を掲げ浄化魔法を発動する。今回はシーノルやマンモルの時よりサイズが大きい。同行してくれた神官と共に協力して浄化に当たる。クラノスと数名のカイウス達獣人族が周りを警戒してくれるのでただひたすら浄化に専念する。


「なんだろ、これ…なんか変…」


浄化を始めてすぐ真由は異変に気付いた。真由のつぶやきにクラノスが警戒しながら様子を見てくれているのがわかる。


「真由、どうしたんだい?」


「えっと、なんて言ったらいいんだろう…この核、中身が詰まってない…ような気がする…」


真由の発言に一緒に浄化していた神官も同意する。


「中身が詰まってない?」


「うん、シーノルとマンモルの時は中心に塊がはっきりとあったんだけど、これにはあまり無いの。でも核の気配はここにあるんだけど…」


確かに瘴気の発生源はこの核なのだ。だが中身が全然ないような感触に真由は首を傾げた。何かがおかしい。そしてここで真由は一つ気付いた。


「クラノス、カグヤが言ってた大蛇は出てきた?」


「いや出てきていないようだ…まさか」


マンモルの時のように魔物に憑いているのか、真由は血の気が引いた。実際に目にしていないのでどのぐらいの大きさの蛇なのかは不明だが、今分断している状況で出てくるのはまずい。ひとまずこの核を浄化してすぐ誠司たちに伝えなければいけない。


「真由殿、すぐここを浄化してあちらと合流しましょう」


「はい!」


カイウスの提案に真由は頷いてすぐ浄化に再度集中した。この目の前の核の欠片にはシーノルの時のような壁は無い。神官と協力するとあっという間に中心まで届いた。


「聖女様!」


神官の声に真由は魔力を流し込んだ。この森は長い年月を経て立派に成長した木々が多い。平原に豊かな土壌をもたらしているのもこの森だろう。真由はどうか厳かで神秘的な森に戻るよう願いを込めた。核の欠片がひと際輝いた瞬間、黒い霧は綺麗な光の粒となって空へ消えていった。成功だ。


「よしよくやった!さすがだ!」


「ありがとう!でもまだ終わってない!」


真由はクラノスと獣人族にお礼を言うとすぐさま戦闘している仲間たちの元へと駆け出した。先ほどまで真由を背負っていた獣人族の戦士、ブルドーが先陣を走ってくれる。木々の間に揺れ動く金の髪が見える。アルベルトだ。


「アルベルトさん!」


真由は叫ぶとアルベルトはこちらを視認してすぐ木々の間から飛び出してきた。


「もう浄化できたのですか!?」


「埋まっていた分は出来ました。でも全部じゃない!あそこにあったのは一部です!残りはどこかに…大蛇は出てきましたか?」


真由の緊張した声にアルベルトは緊急事態だと察するとすぐ槍を構えた。


「いえ、出てきていません。今カグヤ殿がもう一度洞窟を見に行っています。」


「もし仮に大蛇に憑いていたとしたら、最初に見に行った時から短時間で核が移動した…なんてことに?」


追いついてきたクラノスが盾を構え真由を守ってくれる。真由はありがたく隠れながらいつでも攻撃魔法を展開できるよう構えた。


「…いえ、そんな早く核が取り憑くなんて聞いたこともありません、ですが嫌な予感はしますね。ひとまずアイラ殿を休憩させましょう、彼女が一番戦っている。」


アルベルトは横目でカイウスを見るとカイウスは頷いてすぐ木々の間を駆けて行った。


「アイラ殿のおかげで大半の魔物をおびき寄せて倒すことができました。ゴブリンの一部は奥へと逃げていきましたが今回の目的は魔物をせん滅することではありません。戦果は上々です。」


「さすがアイラだ。彼女はストラスで勤務していたからね、第二の故郷をこれ以上汚されたくないのだろう。」


クラノスの言葉に一同感心していると誠司とアイラが戻ってきた。後ろには一緒に戦っていた獣人族の戦士達とカイウスも見える。


「ひとまず魔物はあらかた片付いたぜ。カグヤ帰ってくるまで休ませてもらうわ。」


「お疲れ様アイラ!治癒かけとくね」


アイラは真由にありがとうな!と戦士の顔から満面の笑みと変えて笑いかけた。水を飲みながら息を整えている。細かい枝で擦れたような跡が見えるが大きい怪我はしていないようだ。さすが戦闘経験が豊富なアイラだ。


「そうか核は一部分しかなかったのか…ふむ…」


神官から状況を聞いた誠司は汗を拭いながら考え事をしていた。何度か転んだようで服が所々汚れてるが彼も大きい怪我はしていないようだ。真由は安心した。


「…カグヤ遅いね…何かあったんじゃ…」


「……誰か動ける者すぐ様子を」


カイウスが言いかけたところで木々の間から黒い影が勢いよく降りてきた。カグヤだ。


「大変だ‼‼‼大蛇が洞窟の中にいないし洞窟の中に逃げ込んだゴブリンが次々と溶けてる‼‼‼」


顔を上げたカグヤは青ざめていて一同が緊急事態だと察する。


「洞窟の中にいないって…短時間で移動したっていうの⁉」


「カグヤ、溶けてるってどんな感じだった?あと洞窟の中は広い?」


驚く真由の横で誠司がカグヤに尋ねる。


「ゴブリンの体に黒い霧…普段の瘴気より薄いものがまとわりついたかと思ったら皮膚が一気に溶けて焼けただれたみたいになったんだ。そのまま骨まで溶けて消えていったよ。あと洞窟は奥にまっすぐ伸びている感じだった。暗くて全体は見えないけど…」


「焼け爛れて…匂いはした?」


「酸っぱい感じだったよ」


誠司の問いにカグヤは即答する。その答えに誠司はすぐ状況が整理できたのかこれはまずいと呟いた。


「多分溶けて酸っぱい匂いがしたのは酸性だ。とても濃い酸性だろうね。魔物が一気に溶けるぐらいだし。瘴気が洞窟に溜まっているのも空気の循環が滞っているってことか。」


「その酸性の液体は瘴気由来のものか大蛇が出したものか…消えたのが恐ろしいですな」


カイウスが続けて発した言葉に真由は余計恐ろしくなった。残りの核も浄化しないといけないが大蛇も放置するわけにはいかない。だがいつまでもここにいるわけにもいかない。今こうしている間にも平原で奮闘している騎士団と連邦軍がいるのだ。


「大蛇が気がかりですが魔物を減らせればまた森への調査もできます。今は平原に戻って加勢しましょう。」


クラノスの提案に一同同意するとすぐ平原に向けて移動を始めた。真由と誠司、それから体力を回復するためアイラは獣人族に背負ってもらう。


「うぅごめん俺が最初もっと様子を見ていれば…」


「いーやうかつに洞窟に入らなくて正解だったよ。危険と判断して戻ってきて情報伝えたことが正しいさ。な?」


少し落ち込むカグヤにアイラが声をかける。クラノスもそうだぞと何度も頷いている。


「しかし大蛇は一体どこへ消えたのでしょうね…以前この森で浄化した際にはいない魔物でしたね」


「瘴気も纏っていないって思わせるのに大きい体をどこに隠しているのだろうか…今出てこなくて命拾いしたが…」


アルベルトとクラノスが考え込んでいる。確かに前回の時にいたとしたら確実にアルベルトが倒していただろう。真由も冷や汗が止まらない。なんだかずっと嫌な予感がする。やけに森が静かだ。それが余計嫌な予感を加速させるのだった。

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平原までは行きよりも早く出ることができた。待機していた馬にまたがり戦闘の中心へと走る。誘導装置に集まる魔物の数はとても多いが騎士団と連邦軍が奮戦しているおかげで森に入る時より確実に減っている。


「撃ち落とします」


アルベルトが馬に乗ったまま魔法陣を展開して上空に光の矢を放つ。飛んでいた魔物を次々と撃ち落としていった。


「皆様‼‼‼ご無事で‼‼」


アルベルトの魔法に気付いたロイが声をかけてきた。右頬から出血しているがまだまだ動けるようだ。


「浄化は成功したということですね⁉」


「いえ、おおよそ成功しました。」


クラノスが手短に状況を報告してくれる。ロイはふむと少し考えたがすぐ顔を上げた。


「大蛇と残りの瘴気の核は気になりますが、ここの魔物が減れば対処もしやすくなりますね。ご協力に感謝申し上げます。恐れ入りますがここの戦闘もお願いします!」


「もちろんです!」


真由と誠司は力強く頷く。ロイは再度感謝を述べるとすぐ指示を出した。


「聖女様は負傷兵の救護をお願いします。アルベルト殿とカイウス殿達はここで迎撃を。」


「承知した。誠司殿達は真由殿と共に救護へ行ってください。また後程会いましょう!」


「わかりました!アルベルトさん、カイウスさん、ソーンさん皆さん、またあとで!」


誠司は声をかけると仲間達に行こうと促した。おそらく負傷兵がいる周りにも侵入してくる魔物はいるだろう。森の中では転んでばかりでほぼアイラとソーン達が魔物を片付けたようなものだ。誠司は恥ずかしい思いをしながらも気持ちを切り替え自身の役目を果たすのだった。


ただこの時真由たちは気づいていなかった。姿を消した大蛇がずっとこちらを狙っていることを。




前回アイラさん活躍と言いましたが視点外ですごい頑張ってました。この後も見せ場あります本当に(;´・ω・)

真由に焦点当てたら戦闘描写薄くなるなぁと反省してます…いや別行動しているから仕方ないんだけど…

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