表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界伝承記  作者: メロンソーダ
王国編
11/52

王妃と王子との訓練

仕事と某ソシャゲの周回のため投稿遅くなりました(;´・ω・)

朝になった。少し目を腫らした真由は部屋の窓を開けた。

カモメが元気よく鳴きながら飛びまわり、海から風が吹いている。

ただほのかに瘴気の気配を感じる。


「…ヴァランスは瘴気の核出ていないって聞いてたけど…」


窓から身を乗り出し周りを見る。しかし瘴気の黒い霧は見られず、眼下には朝早い漁から戻ってきた漁師たちと市場の人が活発に動いている姿しか見えない。気のせいだろうか?


「おーい危ないからそんなに身を乗り出すなよ~~」


後ろから身支度をしているアイラの声が聞こえる。

おっとっとと体制を戻すと真由は窓を閉めた。


「なんだ、市場でも気になるか?この町は貿易が盛んだからほかの町で見ないものがあるぞ」


「市場も気になるけど…なんか瘴気の気配を感じて…」


真由の言葉にアイラはうーむと首をひねる。


「まぁ瘴気はいつどこで発生してもおかしくないからな、後で騎士団に聞いてみようぜ」


ほら朝飯いくぞと肩をたたかれ、真由はうなづくとアイラ共に部屋を出た。


---------------------------------------------------------------------------

「ほう、瘴気の気配を感じましたか。」


朝食の席でも王妃と王子と共に囲んだ。王子は昨晩遅くまで誠司と話をしていたのか、少し眠たそうだ。真由は王妃に念のため瘴気のことを確認したのだった。


「ヴァランスでは瘴気の核は確認されておりません。まぁ、魔物はここ数年活発化しているのでどこまでが瘴気の影響かわかりませんが…」


アーマルドが返答する。真由は気のせいかな…と首をひねった。


「ここは風がよく吹いていますから、風に乗ってきたのかもしれませんね」


「確かに核から出ているものは霧みたいに空中に漂っているから…それと勘違いしたのかな」


王妃は真由の様子を見て感心したようにうなづいた。


「まだ訓練を開始してから日が浅いと聞いていますが、わずかでも感じ取れたのは成長している証ですね。とても素晴らしいことです。」


急に王妃から褒められ真由は照れてしまった。どうにもこの世界の人はすぐ褒めてくれる。


「現在確認されている瘴気の核は国内で三つ、亜種連邦で二つ、サクラ公国で三つですね。おそらく風向き的に今ヴァランスで感じた気配は海の向こうのサクラ公国でしょう。」


朝食を食べ終えたアーマルドが地図を見せてくれる。ヴァランスの向こうにはサクラ公国があり、陸を歩いても亜種連邦を超えればサクラ公国につくのだ。


「旅のルートは今後どうする予定でしたか?」


「国境沿いに亜種連邦に向かう予定です。その道中で2か所の核を浄化する手筈でした。」


王妃の問いかけにクラノスが答える。真由と誠司は地図を覗き込み場所を確認する。


「王国内の最後の1か所は?」


誠司が尋ねるとクラノスが地図を指をさす。そこは王都より北にある場所だった。


「最後の場所はかなり用意が必要な場所でね…アンヴァル遺跡群だ。」


聞き覚えのある場所に顔を上げる誠司。記録で見た23代目が魔王を倒した地である。


「因縁の地って感じか…王都に近いけど大丈夫なの?」


「あぁ。遺跡群は山に囲まれている場所で高低差がかなりあるんだ。中々瘴気も上がってこれないし、まず我々の用意が大変だからね。魔物も多いし、亜種連邦やサクラ公国を回って協力者を得たいところさ。」


「えぇ、それがよいでしょう。何よりもまず、亜種連邦を目指してください。」


そこで王妃が会話に加わる。一同は王妃を見た。


「亜種連邦に多くいるエルフ族は基本的に魔法が得意な種族です。浄化魔法の適正持ちが多いのも特徴ですし、何より23代目様が過ごされた国ですから。きっと聖女一行の旅に協力してくれるでしょう。」


「確かに今のメンバーだと魔法使えるの真由だけだもんな…」


アイラが順番に顔を見ながら呟く。アイラとクラノスは魔法の適性がない、誠司は二人よりあるが修行中。となれば真由しかいない。


「私も浄化と治癒の適性が大きいから…できれば攻撃魔法が得意な人がいてくれると助かるね」


うんうんと頷く一同。瘴気関連に関しては真由の負担が大きいのも事実だ。


「とりあえず、予定通り国境沿いに行って亜種連邦に入ろう。あちらに入って最初の町が連邦の首都だから、きっと腕のいい冒険者のエルフ族もいるだろう。」


はーいと答え紅茶を一気に飲む誠司。もちろん新しい仲間も欲しいが、何より元の世界に帰還するための情報も欲しい。亜種連邦にいるという23代目の家族に会えればきっと何かあるだろう。


「話もまとまりましたし、午前中はせっかくですから訓練といたしましょう。お二人共、魔法の練習中でしょう。私とウィリアムが魔法に関しては得意ですからお教えしますよ」


「ぜひよろしくお願いします‼‼‼」


真由と誠司は思わず重なって返事をしてしまった。顔を合わせ吹き出すとつられてみんな笑いだすのであった。

---------------------------------------------------------------------------

「さて訓練の内容ですが…。まず真由様は攻撃魔法の手段を増やしましょう。今は浄化魔法メインですが攻撃魔法も使えるようにしていきましょう、誠司様は火属性の魔法の練習ですね。」


動きやすい服装に着替えた王妃と王子と二人は向き合っていた。


「ちょうどウィリアムも火属性が得意です。剣技とも合わせてやってみましょう。」


「よろしくお願いします!」


二人の声に嬉しそうに頷く王妃。横にいる王子も気合十分の様だ。


「あの私浄化と治癒特化であまり属性攻撃に適していないみたいなんですが…」


「問題ありませんよ、攻撃魔法は属性だけがすべてではありませんから。」


真由の不安そうな言葉に微笑みながら杖を構え的に向ける王妃。

即座に魔法陣が展開した瞬間、光線が的確に的を撃ちぬいた。


「ね、大丈夫でしょう?」


美しく微笑みを向ける王妃に真由は口をパクパクとさせた。

以前神官を目指していた、というのでてっきり浄化特化だと思っていたのだ。


「浄化魔法に適性がある者の多くは他に合う属性がないことがほとんどです。…エルフ族はもちろん例外ですが。ただそれだけでは戦闘の際困ってしまうでしょう、自分の身を守るためにこうして光線や弾丸と言った無属性の攻撃魔法を覚えるのが良しとされています。」


「た、確かに…そういえば私もシーノルの核を浄化するとき、最後浄化魔法をとっさにビームにして撃ってました…貫く、ってイメージがそれだったので…」


話す間にもお手本として弾丸のように圧縮した攻撃魔法を見せる王妃。

精度も威力も一級だ。


「魔法はイメージ力が大事ですから、多様に変化させて浄化を行うことはいいことですよ。それに光線の浄化に変化できたということは無属性攻撃魔法の光線もすぐ習得できるでしょう。」


極めるとホーミングもできますし浄化魔法を重ねて撃って浄化とセットでできますよ、と王妃は付け加えた。真由はメモを取りながらイメージを膨らませていた。


「まだ魔法を重ねるのは難しいでしょうから、まずは単体の精度を上げましょう。」


「はい!頑張ります!」


真由は元気よく返しノートをしまって杖を構えた。吸収できるものは何でもやって強くならねば。

気合いを入れなおす真由を王妃が我が子を慈しむように微笑みかけていた。



一方の誠司と王子。誠司は魔法の理論も魔法陣も合っているのに上手く発動できないことを相談していた。


「ふむ…見せてもらった魔法陣も間違いありませんね。きっと攻撃魔法を使い始めたのがつい先日ということですから、まだ感覚が慣れていないだけだと思いますよ。」


自分もそうでした、と王子は続ける。誠司はまるでライターのような小さい火を消しながら納得した。


「身体強化はすぐできたんですけどね…やっぱり感覚が違うのか…」


ふむと王子は少し考える。それにしても王子は自分より5つも下なのにとてもしっかりしている。

言語化して上手く伝えるなんてその歳の時はできただろうかと誠司は感心していた。


「身体強化は体内に魔力を巡らせてます。一方攻撃魔法は外に放出しますから…そこの違いでしょうか。」


「そっか放出か…うーん放出放出…王子は攻撃魔法を出すときどんな感じでやっていますか?」


そうですね…と王子は剣を構え王妃たちとは違う方向にある的に向ける。

剣の先に魔力を集め野球の球ぐらいの火球を作った。


「僕はこのように集めた後、剣から衝撃波を撃つようにして使用しています。」


と王子は剣を振って火球を的に向けて放出した。

思わずおぉと声を出す誠司。王子は少し照れていた。


「私は専門の教官がついて教えてもらってますし、真由様は聖女の能力のおかげで魔法が上達しやすいのでしょう。誠司さんは攻撃魔法については完全に独学ですからね…逆にすごいですけど」


「まぁ環境や能力の違いもありますよねぇ…」


やはり魔法に特化した仲間が欲しいなと思いつつ誠司は自分ならどう撃つかを考えた。剣の先に集めて斬撃派やビーム、という手もあるが今は剣も修行中だし今までも上手くできなかった。それならば、と誠司は剣ではなく手のひらに魔力を集めた。


「やっぱり体に近い方が集めやすいな…」


そのまま手を的の方に向けるが、ここで一つ思いついた。そっと手を銃の形に変える。

魔法陣もしっかり構築すると剣の先に集めるより大きい火球が出来上がった。

誠司はそのまま銃を撃つイメージで火球を放出してみる。


「か、かっこいい‼‼」


横で王子が飛び跳ねる。思いつきでやってみたがなんと成功したのだ。…威力はまだ弱いが。


「で、できた…‼‼‼これだ‼‼‼‼」


銃のイメージはふと姉がコスプレや同人誌を書いていたゲームを参考にしてみた。

その中の登場人物が手を銃の形にして魔弾を撃っていたのだ。

まさかここで生きてくるとは…誠司は心の中で姉とゲームに感謝をした。


「すごいです誠司さん‼‼よくこの数分でできましたね‼‼‼」


「いやいや王子がお手本見せてくれたからですよ‼‼‼」


想像以上に喜んでくれる王子に誠司は嬉しくなった。二人はそのままハイタッチをした。


「あとはこれを戦闘の時に上手く使えるようにしないとな…王子、少し剣の打ち合いもしてくれませんか?実際の戦闘でどう使うかも把握したくて…」


「もちろんです!アーマルドから教わってる騎士団流剣術でお相手しますよ!」


ハイテンションのまま剣を構える王子。誠司も頷くと剣を構えた。

後ろから王子にけがをさせるなよと視線を感じるが、それでも強くなるため集中しなおすのだった。

---------------------------------------------------------------------------

その後各々訓練に熱が入りすぎ、午前中だけの予定が夕方まで伸びてしまった。

王妃と王子は午後から王都に向けて移動をする予定であったが、数時間押してしまっていた。


「仕方ないですよ王妃様、あれだけ熱心な子達ですから教える側も楽しいでしょう」


がっはっはと笑い飛ばすアーマルドに王妃達は申し訳なさそうな顔をしていた。


「本当に私たちが王都に戻ってから召喚していただければみっちりお教えできたのに…」


しゅんとする王妃を横の王子が慰める。王とは違い本当にいい人達だと真由は感じた。


「僕も誠司さんと真由様ともっとお話したかったです…そうだ、お二人共僕と文通しましょう!」


王子は手をポンと叩いて提案をした。キラキラと美しい碧眼を輝かせる。


「もちろんです‼‼剣と魔法のコツとか、王子のこと色々教えてくださいね!」


誠司も嬉しそうに返す。二日しか交流していないがここまで自分を慕ってくれる子は初めてだし、誠司もこちらの世界で友好関係を広げられて純粋に嬉しいのだ。


「あとこれ、お守りとして持って行ってください」


王子は手首につけていた装飾品を外すと誠司に差し出した。

ルビーのような宝石をあしらった高級そうな品だ。


「これは魔力の循環をサポートするための魔装具です。僕は他にも持っていますし、そろそろ外して訓練しようと思っていました。ぜひ誠司さんが使ってください。」


「王子…ありがとうございます、大切にします!」


誠司は丁寧に受け取ると早速右手首につけてみる。王子の心意気がとても嬉しい。


「それでしたら私も。真由様と皆様に益々のご加護がありますように」


王妃は外套のブローチをそっと外すと祈りを込めて真由に差し出す。


「こ、こんなに高価なもの申し訳ないですよ…!」


「いいのですよ、私もこの世界に生きる者として貴方様をお守りしたいのです。」


王妃の優しくも決意の籠った瞳がまっすぐ真由を見つめる。


「真由、いただいていいんだよ、師匠からの品物だ、これからもずっと守ってくれるよ」


アイラがそっと真由の肩に手を置き促す。真由はうなづくとそっと王妃からブローチを受け取った。


「ありがとうございます、一生大切にしますし必ず務めを果たします!」


「ふふ、どうかそこまで気負わないで、仲間たちや私達を頼ってくださいね」


王妃の美しい笑みに真由ははい!と返事をする。

こちらに来てからいい人たちに恵まれた。家族よりも自分のことを大切にしてくれる優しい人達に真由は感謝の気持ちでいっぱいだった。


「さて惜しいですがそろそろ参りましょう。クラノス、怪我には気をつけろよ。アイラもな。お前はすぐ魔物に突撃するし酒は大量に飲むし…」


「あーーわかったわかった!気を付けますよ団長殿!」


「大丈夫ですよ父上。私がちゃんと見てますから!あと手紙もしっかり出しますね」


アーマルドに促され王妃達と握手を交わす。名残惜しそうに馬車に乗る二人を前に真由は少し泣きそうになった。


「真由様、誠司さん、クラノス、アイラ、どうか気を付けて!」


王子が窓から身を乗り出し声をかける。王妃も息子を支えながら顔をのぞかせる。


「お二人もどうかお体にはお気をつけて!ありがとうございました‼‼また王都で‼‼」


ゆっくり走り出した馬車を追いかけ手を振る真由と誠司。

元気よく振り返す王子の目には涙が浮かんでいた。

真由と誠司は一行の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

すみません間隔空きました…(;´・ω・)

今回の特訓で少しだけ強くなった二人でした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ