璃々という女
「この世界には、魔術師というものがございます。彼らは文字を使って魔術を使い、この世を混乱に陥れています。」
司教様が私たちに説明する。
「あの者達は基本的に文字を使うことでしか魔術を行使できませんが、例外的に一つだけ即座に発動できる魔術があります。それが召喚です。」
「これはこの世界にいる誰もが使える術であり、あの者達は召喚を使って様々なものを呼び出します。魔導書・武器、さらには悪魔など…。あなた方勇者様には、彼らを討伐し世界に平和をもたらしていただきたい。」
と、何度目かの高説を聞きながら私はうたた寝をしている。
ここに来たのは3ヶ月ほど前だ。急に視界が真っ白になって、気がついたらこのお城にいた。
確か一人で下校中だったはずだけど、周りには知っている顔が何人かいた。
「ようこそ、勇者たちよ。」
おそらく大広間であろう場所で、玉座に座っていた王様が私たちに声をかけてきた。
で、その後隣にいた司教様が今と同じことを仰っていた。
司教様曰く、この世界は大きく2つの勢力に分かれている。私たち教会と、魔術師たちだ。
魔術師たちは悪魔を使って暴虐の限りを尽くしていて、それを止めるのが私たち勇者(異世界人はみんなこう呼ばれるらしい)の役目だ。
私は読書が好きで、こういうファンタジーものに憧れていたから時間がたつにつれワクワクしていった。
しかもこういう転生ものでお決まりの「チート能力」も私たちは授かっているらしい。
その分、私たちには大いなる責任が伴っていて、こうしてみんなで協会で暮らしながら一緒に転移した仲間たちと司教様の話を何回も聞いている。
「それにしても相変わらず長いよね~」
と話しかけてきたのは同じクラスだった璃子ちゃんだ。
見た目がめちゃくちゃギャルでいかにもな陽キャだけど、みんなに気さくに話しかけてくれる。
「仕方ないよ、大事な話だもん。今日も何人か新しい人たちがきてたみたいだし。」
そう、どうやらこの世界にはしょっちゅう異世界人がくるらしい。どうもこの世界は異世界との境界線がかなり曖昧で、私たちみたいな召喚者以外にも迷い込んじゃう人たちがいっぱいいるみたいだ。教会はそういった人たちを保護する役目も果たしている。
「それはわかってるけどさ、ぶっちゃけ同じ話ばかり聞いてて暇じゃん?それに、せっかく能力を授かってるんだからはやく戦いに行きたいし!アリスなんかもう2回も戦ってるらしいよ。」
アリスというのは、私たちと同じタイミングで召喚されたフランス人だ。
私の知っている人は璃子含めて3人だが、一緒に召喚されたのは10人くらいいる。
どういう基準で召喚する人を選んでるんだろう?この前気になって司教様に聞いたら、「才能がある人、もしくは開花している人」とのことだった。よくわからない。
「まあ、それはちょっとわかるかも。はやく魔術師たちと戦って多くの人たちを助けたいよね。」
それに、私も授かった能力を早く使いたいし・と心の中で呟いてから教会内の自室に戻った。