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ミシェド

「さあ、ゆっくりしていってね」

「お邪魔します」

「久しぶり~」


俺ら二人は律義に挨拶する中、アリスは軽くそういって、中に入っていった。

人の信頼関係はすぐにわかるらしく。二人の仲が相当いいことが見て取れる。


「ちょっと待っててね。もうすぐできるところなの」

「客間はこっち。ついてきて」


アリスの誘導で、俺らは客間に行くことになった。

案内された部屋はとてもきれいで、自家製のような魔力コンセントや、椅子と机、さらにはコーヒーメーカーのようなものまで設置されていた。


「いいお部屋でしょ」

「ああ。これって、竜自身が作ってるのか?」

「んーん」


俺の問いに、アリスは首を横に振った。


「竜にも大工さんみたいな竜がいるんだよ。竜は魔法、物理、飛翔、万能っているの。大工やってるのは、土地いじりが上手い魔法竜の竜だよ」

「へ~」

「ちなみに、アデュレシアの家は全部の竜が白魔法の魔法竜だよ」

「え、属性なんてあるの?」


俺がそう聞くと、小首をかしげながらも誇ったような顔をして


「じゃあ逆に聞くけど、属性がなかったら基本魔法なんてものあると思う?」

「…確かに」

「魔力の変形が容易なだけで、本当は基本魔法の魔力が私にもわからないぐらい複雑な配当されてるだけだからね」


知らなかった…と言おうと横を向くと、オーディンは「え?当たり前だろ?」という顔をしていたから、俺は言葉を瞑ることにした。

そうして、俺らがまったり雑談をしていると


「あーこら!ミシェド!勝手に行っちゃダメ!」

「ミュゥ!」


と、外から慌ただしい声が聞こえた。


「なんだ?」


俺がそう呟いた時だった。押戸がドン!と押され開いた。


「…あれ?何もいない?」

「ミュウ!!!ミュウミュウ!」


ドアを開けた犯人は、俺の足元でかわいらしい声を上げた。


「…ん?」


その声に俺は目を向けた。

肩にちょうど収まるサイズのミニフォルム。あどけないその立ち振る舞いと、かわいらしい甘えの仕草。

何より、純白の鱗に小さな翼。もしかして…


「この子、赤ちゃんの竜!?」

「ミュウミュ~ウ!」

「ああ、もう…すみません、うちのミシェドが…」

「あ、いえ、大丈夫です…」


俺はミシェドのあごの下を撫でる。嬉しそうにあごの下を差し出し、喉をゴロゴロとならす。その音には竜の面影が若干残っていた。


「ミシェド…くん?」

「いえ、女の子です」

「あわわわわ…くぅ…」


この子をペットにしたいという衝動が湧き上がってくるが、さすがに竜の親の前でそんなことを言うのは気が引ける…引けるけど…


「…お前、この子使い魔にしたいんだろ」

「ギックゥ!そ、そそそそそそそそんなわけ、なななかりょう!」

「…図星じゃねぇか」


彼はそう呟いたが、俺以外には聞こえてないらしいのでそのままにしておいた。


「…えっと、もしよろしければ、ミシェドのこともらってもらえますか?」

「え!いいんですか!!!」

「いいんですかじゃないだろ!」


つい反射的にそう叫んだ俺の頭をひっぱたきながら突っ込んだ。


「あはは。いいですよ。なんせ、そろそろ独り立ちさせる時期だったのですけど、親として心配で心配で…」


よかった!過保護でよかった!


「で、でしたら!安心してください。僕が責任持って育てます!!!」

「あはは…できれば、独り立ちして欲しいんだけどなぁ」


アデュレシアはそう言って困った表情をしたが、俺はとりあえず気にしないことにした。


「ミュウ?」

「よく聞いて、ミシェド。あなたはこれから、このハイロさんと一緒に行くのよ」

「ミュミュウ!」


アデュレシアがそういうと、ミシェドは嬉しそうに俺の肩に乗ってきた。


「あ〜〜〜〜〜〜〜かわええええええええええ!」

「じゃあ早速契約しないとね」


アリスがそういい、俺はとりあえず言論統制を使おうとした。

しかし、アリスの方を向くと、サバイバルナイフのようなものを構え、俺の腕を掴んできた。


「え?」

「ちょっと切るよ、我慢してね」


おもむろに刃を当て、一寸の迷いもなく俺の腕を薄く切った。


「痛い!!ちょ、急になんだよ!」

「あれ、血紡(けつぼう)契約の方が楽だからてっきりそうだと思ったんだけど…もしかして投身契約の方が好みだった?」

「いや、俺言論統制あるからそれでいいかなって…」


俺がそういうと、オーディンはは?と言って


「お前、時折優しいのか優しくないのかわからなくなるよな」


と言ってきた。


「どういう意味だそれ」

「そもそも、お前のスキルって強制的にそうさせる物だろ?それじゃ本人…というか、本竜の意思関係なくなるだろ。当人同士の意思の疎通だったり、了解を得て契約しないとだめだろ?」


確かに…俺、この便利スキルのせいでちょっと性格やばくなったのか?

そんなことを思いながら、俺は滴る血を見ていた。すると、いきなり腕に乗ってきたミシェドは流れる血を一口なめとった。


「あ!ミシェド!そんなばっちいもの、ぺっしなさい!ぺ!」

「ミュミュウ!」


俺が綺麗な水を飲まそうとした瞬間。ミシェドの翼に光り輝く紋章のようなものが浮かび上がった。


「眩しっ!って、これ…」

「どうやら、ミシェドはお前と居たいらしいぞ。ほら、腕見てみ」


オーディン促されるまま差し出していた腕を見ると、血が流れていたところには、皮膚が再生し、紋章が浮かび上がっていた。


「これが契約印。これでハイロは、ミシェドを使い魔にできた」

「うおーーーー!よろしくな!ミシェド!」

「ミュウ!」


顔を小さい体でぺろぺろと舐めて愛情表現をするミシェドを、マジで大事にしようと思った。



“ミシェドとハイロがパートナー契約 達成”

“ミシェドが特殊役職「魔王神の背中」を獲得”

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