縛りプレイ解除
「ハイロ、おめでとう。まずは労いの言葉を送るよ」
「ハプニング等もありましたが、よく頑張りましたね」
俺は声を聞いて、大きく深呼吸する。
「…一個、いいですか?」
「どうした?」
「今度は、なんですか?」
いつぞやのように、俺は急にこの場所に呼ばれ、目の前にはルシファーとラファエルがいた。
見たことがある景色。たしかここは、俺があの世界に送り出されたときに来た場所だ。
「用を話す前に、一つ聞きたいことがある」
「はあ…」
「お前が行ったお前が主人公の世界。『HP1という縛りを設けられた俺、文字通りの「言論統制」で危なっかしく地位を取っていた』。つまり、お前はあの世界で地位を取ったはずなんだ」
「その地位とは、一体何かを教えてください。ということです」
俺は、その質問には核心を突く答えを持っていた。
「…俺は…俺は、あの世界でいろんな地位を取りました。救世主、魔王、神、仲裁人。でも、俺の中で一番なのは…」
俺は、頭の中すべてを遡る。色々な記憶がフラッシュバックする。辛いことが多すぎる気もするけど、でも、楽しかったりする記憶は、それ以上に彩られて飾られていた。
「…俺は、あの世界で『歴史』になれました。悪い歴史にも、いい歴史にも」
「……」
彼は、黙り込んだ。
うつむいて、数十秒間思考をめぐらした。
「…やっぱ、流石ハイロだな」
「ええ。そうですね」
彼らはそう言うと、俺に何か光を降らした。
「…?今のは?」
「まあ、あっちに行けばわかるさ。それよりも、ストーリークリアおめでとう」
「これからの世界は、きっとあなたにとって素敵なものになります。どうぞ、楽しんでください」
「どういうこと?」という問いは、遠のく意識にかき消されてしまった。
「……?ハイロ〜。お〜い、起きろ!」
「ん?あれ…」
一瞬、記憶のまとまりが止まって、徐々に記憶の整理が終わったあたりで、俺は思い出した。
「そういえば、なんか変わった事…」
見た感じ、俺にはなんの変化も起きていない。オーディンにもアリスにも何も変化は起きていない。
「ん〜…“ステータス開示”」
おもむろに、ステータスを開いたとき。俺は気がついた。
「…あれ?」
“HP 200万”
俺の人生の縛りが、その日解かれた。