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82 最高に可愛い感情を見せて。(ルクト視点)



ルクト視点。




「冒険者活動の方も、リガッティーが髪色を変えているが、もうその変装をすることなく、活動して構わない」

「ホントですか!? やった! オレ、リガッティーの本来の髪色が、堪らなく好きなんですよ! 漆黒なのに、瑞々しい葡萄みたいな色で艶めいてて……触れば艶やかでいて、サラサラで……あっ、すみません。娘さんに触れる話は、流石に気まずいですよね」

「いやいや……気持ちはわかる! 我妻の髪も、そんな感じなのだ! いつまでも触っていたくなる!」

「まさかの共感!? 母子の遺伝だったのですかっ!」


 クワッと力んだ形相で、同意してきたから、ちょっとビックリ。


「とっても似てますもんね。リガッティーと義母様。昨日聞きましたけど、義父様が射止めたそうですね」

「ほう、リガッティーがそんな話をしたのか。その話をしたのは、確か……リガッティーが夢中になって魔法の練習をしていた時だったから、右から左に聞き流していたとばかり……」

「ハハッ……リガッティーの魔法の夢中ぶりは、本当に凄まじかったんですね」

「魔法の興味が強くてな。怪我をしないように総出で見張ったものだ。懐かしいな」


 義父様と一緒に懐かしいと頷くリィヨンさん達。

 実際に見たことのないオレとネテイトくんだけが、想像で補う。


「妻のリカは、菫のご令嬢と呼ばれていた。可憐な容姿のご令嬢でね。伯爵令嬢ではあったが、才色兼備で高嶺の花だった。王都学園で恋敵を退けて、射止めて婚約したのだ。だから、学園内で牽制したいルクト君の気持ちはよくわかる」

「ですよね? あんなに可愛いすぎると心配で……。指一本、触れられたくないです」


 牽制したい気持ち、理解してもらえた。

「独占欲、つよ」と小さく、小さく、リィヨンさんが呟いた。


「まぁ、でも、彼女達も彼女達で、独占欲は強いだろう? 君のことを、”()()()()()()()”だと言っていたよ?」


 にやり、と義父様は、冷やかす。

 親にもそう言ってくれたのかと思うと、照れて頬が火照る。



「ええ、まぁ……オレは、リガッティーだけのものです」



 そのまま、笑みで肯定した。


「実は……リガッティーがそこまで想ってくれているとは、予想外だったんですよねぇ」

「やっぱり、淡白な態度だったのかい?」

「そうじゃないんですけど……まだ婚約が解消してなくても、気があるって感じで、顔を赤くしてくれたり……告白すればきっと頷いてくれる自信ならあったんです。でも……思った以上に、オレを強く想ってくれていて、ずっと幸せの絶頂状態なんですよ……」


 リガッティーの想いを伝えてもらったあの瞬間を思い出すと、胸の中も顔も、熱くなってしまう。

 片手で顔を覆った。


「オレに全て差し出したくなるとか、自分だけのものとか……! なんですか!? 可愛すぎません!? もうさらに好きになりました! 愛しすぎますって……!! これ以上の幸せってあります? 想いが通じ合ったら、ずっとこの幸せな絶頂が続くんですか!?」


 強く力んで語ってしまうが、本心だ。


「いや、まぁ、ホント、障害が多いし、楽ではないんですけども……幸せすぎて、とんでもない不幸が来るんじゃないかって、逆に怖いです」

「最強冒険者も、怖いもの、あるんですか……」

「ありますよ……オレをなんだと思ってるんですか」

「”()()”……とは、聞いています」

「待って? ”人間”だと聞いてるって、どういう意味なんですか?」


 思わずと言った風に、強面の補佐官らしき男性が、気になることを言ってきたから、ツッコむ。

 どゆこと。”人間”って聞いていますって……。


「あれ……オレ、あなただけ知らないんですけど……」

「大変失礼いたしました。当主様の補佐と護衛を担っているマーカス・パトシーと申します。以後お見知り置きを。ルクト()

「様……えっと、マーカスさん、で、いいですか?」

「はい、どうぞ」


 腰の剣と肩寄りの胸に手を添えての軽いお辞儀。騎士を名乗る資格も持っている側近護衛だと、理解した。


「ルクト君も、リガティが初恋だったな?」

「はい。恋愛初心者同士ですね」

「経験者の助言からすれば……現状の幸せに甘んじないことだ」


 義父様が、そう話を戻してくれる。



「今が幸せに絶頂だろうとも、まだ努力して幸せにする意気込みで、愛することだ。これからだろう? リガティと歩む人生は」



 まだまだ努力をして、幸せにする。

 そう意気込んで、愛するべき。

 リガッティーと添い遂げる人生は、始まったばかりなのだから。


「ありがとうございます……最高の助言です」


 ポカポカする思いで笑みで、お礼を告げる。


「本当にオレの想いも認めてもらってくださり、ありがとうございます。早速、明日は学園が終わったあとに、ランチをカフェで初デートに行くつもりです」

「ほう、初デートか」

「はい。初めてデートと称した二人きりのお出掛けなんですけど……カフェデートでも、大丈夫ですかね?」

「うーむ……」


 義父様が怪訝な顔つきになるから、恐る恐るとなってしまった。


「……実は、あの子は、デートらしきデートをしていないんだ」

「……誰とも?」

「10歳には婚約者がいたんだ。他の者とデートに行けるわけがない」

「……七年間、一度も?」

「うむ。イーレイ嬢とは、もう知り合いだろう? 彼女はリガッティーに振り当てられた公務を手伝っていたのだが……交流のための王城でのお茶会はしてても、視察しに行くというお出掛けとやらしかしていないと教えてくれたよ」

「…………」


 絶句する。

 たちまち、眉間にシワを寄せてしまう。


「それじゃあ……無理もないのでは? 恋愛感情が芽生えるなんて」

「そうだ……その通りだな」

「婚約者だってのに、女の子として扱ってもいないじゃないか……」

「……そうなんだ」


 怒りが湧く。

 七年の婚約関係なのに、デートに誘ったことすらない? 全然、異性として扱ってないじゃないか。


「聞いていないということは、リガティは気にも留めていないのだろう。それで、とっくに、恋愛感情なんてものは諦めていたのかもしれないな……。そういうわけで、デートなら、なんだっていい。たくさん連れ回してくれ。カフェデートでも、冒険デートでも、買い物デートでも……なんだっていいんだ。たくさんしてやってほしい。許可は要らない」


 フリフリ、と手を振って義父様は、そう力なく笑って見せた。


「……わかりました。なんでもかんでも、デートと称します」

「極端ですね」


 キリッと、オレは言い放つ。

 リィヨンさんから、ツッコミを入れられた。

 うん、確かに、それは極端かもな……。でも、出来る限り、デートにしておこう。


「ところで……さっきから、”リガティ”と呼んでますけど……もしや、愛称でしたか?」

「ああ、そうさ。未来の王妃になる前までは、たまにそう呼んでいたよ。あと、もう一つ…………ふふふっ。それは、本人に尋ねてみるといいよ」

「えっ……?」


 リガッティーの愛称。家族間であったのか。全然、聞いてなかった。

 オレの愛称は、聞いたのに……リガッティーめ。

 いや、もしかして、リガッティー自身も呼ばれなくなって、忘れてたとか……?


 にやつく義父様は、リィヨンさんとマーカスさん、それからスゥヨンさんに目をやる。

 リィヨンさんとスゥヨンさんは、にんまりと口元を緩めた。なんか、ゆるゆる。

 強面のマーカスさんまで、表情を緩ませた。


 え? 何? なんなの?


 ネテイトくんを見てみても、知らないようで、キョトンと首を傾げている。


「めちゃくちゃ気になるのですが……」

「行って来ていい。ネテイト、案内しなさい」

「わかりました! あっ、本当にありがとうございます!」


 オレは立ち上がって、めちゃくちゃ気になるリガッティーの愛称を聞き出しに、大応接室をあとにさせてもらった。

 ネテイトくんとスゥヨンさんの案内で、リガッティーと義母様がいるサロンへ通される。

 大きなアーチ形の窓が並ぶ明るい室内には、観葉植物が置かれていて、優雅に紅茶を啜っている美女と美少女が白いテーブルを囲っていた。


「ルクトさんっ」

「リガッティー!」


 すぐに立ち上がったリガッティーは、花が綻ぶような顔をしてオレの元まで弾んだ足取りで来てくれる。

 両腕を広げれば、そのまま飛び込んでくれるから、ギュッと受け止めた。


「認めてもらったよっ。やったぜ、相棒。いや、オレの永遠の伴侶」

「ふふ、流石ですね。ルクトさん。私の伴侶」


 首に腕を回してくれたリガッティーに、ちゅっと頬に口付けをする。

 そんなオレの耳に、甘い声で囁くから、ドキッとした。


 むしろ、ゾクッとしたかも。


 ついつい、力んで、リガッティーの細すぎる腰を、グッと引き寄せる。


「コホン。わたくしに挨拶をすべきでは?」

「あっ、すみませんっ。義母様、とお呼びしても大丈夫でしょうか?」


 義母様が咳払いしてくれたから、我に返ることが出来た。


 おおっと。

 さっき、義父様に相談すべきだったかなぁ……。ファーストキスのタイミング。

 うっかり、このまましちゃうか……。


「ええ。どうぞ」


 気品な動作で、義母様はカップを置いて、向かい側へ座るように促した。

 リガッティーに手を引かれて、椅子に腰を下ろす。

 ネテイトくんも、用意してもらった椅子に座った。スゥヨンさんは、後ろに待機。


「ついさっき聞いたんですけど、リガッティーの愛称は、リガティなんですか?」

「あら、まあ……懐かしいわ。そうよ。10歳までは、たまにだけ呼んでいたわ」

「……そうでしたか? ああ、覚えがありますね」


 やっぱり、リガッティー自身は覚えていなかったようだ。


「未来の王妃だから、家族でもそんな愛称で呼び続けるのはよくなかったの。また呼べるわね。リガティ。夫に聞いたのかしら?」

「はい。途中から、リガティと呼んでいたので……。それで、もう一つ、愛称があると聞きました」

「もう一つの愛称?」


 不思議そうに義母様は小首を傾げた。

 オレは彼女から、リガッティーへ顔を向ける。

 リガッティーも、わからなそうに首を捻った。


「義父様が本人から聞けって」

「フッ! うふふっ! あらやだ、あの人ったら……ふふふっ」


 何か思い当たったらしく、扇子を広げると義母様は噴き出して、おかしそうに笑う。


「なんですの? 他にありまして?」


 頬に人差し指を当てて、首を傾げるリガッティーは、記憶を掘り返しているようだ。


 すると、目を見開いて、口をぽかりと開けた。

 珍しい。いつもなら、口元を手を当てて、隠すのに。

 そんな口をパクパクと開閉したかと思えば、じゅわりと頬を赤らめた。


「ち、違いますっ! あれはっ! あれは違います!」


 ふるふるっと顔を振ったリガッティーは、オレと義母様に否定して見せる。

「違いませんよねぇ」とスゥヨンさんがニコニコと言えば、キッとリガッティーに睨まれてしまって、ギョッとした顔で身を引く。


「あれは子どもだからっ、違いますよ!」

「何? めちゃくちゃ気になるから、教えてよ」

「いや、だって、違いますもんっ」

「わかったわかった。どんなの?」


 リガッティーが恥ずかしがっているから、超気になってきた。

 しどろもどろなリガッティーの頭を撫でて、あやしながらも促す。


「んもう……本当に、ルクト君の前では、可愛い顔して」


 くすくすと笑う義母様。さらに、リガッティーが顔を真っ赤にした。


「スゥヨン。どうせ、【記録玉】を持っているのでしょう?」

「はい。何歳のものにいたしますか?」

「そうね……最後のものにして」

「やめてくださいっ」


 リガッティーの制止も虚しく、スゥヨンさんが【収納】から取り出す。

 ……リガッティーの【記録玉】を【収納】で、当たり前に持ち歩くって……なんなの、ホント。


 そう気になったけれど、出された【記録玉】を取り上げようとしたリガッティーよりも、義母様の方が手に取るのが早かった。


 映し出されたのは、またもや可愛い可愛い幼いリガッティーだ。

 どうやら、誕生日パーティーみたいで、【記録玉】のすぐそばには、ケーキがある。

 ローソクは、六本だ。六歳の誕生日だろうか。


〔今日で何歳になったんだ? リガティ〕


 義父様の声。



()()()は、六歳になりました〕



 ちっちゃなリガッティーは、満面の笑みのまま、幼声(おさなごえ)で答えた。

 隣のリガッティーは、両手で顔を隠して「ひやあ」と小さな小さな悲鳴を零す。


「……”ティー”?」

「っ~!」

「自分のこと、”ティー”って呼んでたの?」

「~~~っ!!」


 見えるだけでも、リガッティーの耳は、もう真っ赤だ。


 幼い頃の一人称が、”ティー”?


 マジで? え? 嘘だろ?


「可愛すぎる……」


 自分の名前が、一人称。しかも、かなり短く。

 いちいち、”ティーは”と”ティーは”と、言っていたのかと想像すると、萌えすぎて悶えそうだ。

 いや、本当に、可愛すぎるって……!



 リガッティー。リガティ。ティー。



 オレの可愛すぎる伴侶。



 可愛い感情が引き出せるなら、なんだってしよう。

 他でもない、オレ自身が見たいから――――。



 




リガティという愛称を、いつ出そうかと、ずっと迷ってました。

音的には、リガッティーもリガティも、いいと自画自賛。


またしばらく更新は止まりますが、再開した暁にはぜひともよろしくお願いいたします!

楽しい学園生活から、ヒロインとの第二ラウンドまで。

二人の甘々ラブラブな雰囲気を中心に頑張りたいですね!


いいね、ブクマ、ポイントを、励みによろしくお願いいたします!



2023/08/21◎

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