第4幕
まだまだ明るい内に魔王領に帰ってこれました
「大丈夫?みぃやさん」
「うん、ありがとう…」
比較的登りばかりの帰り道は辛かった、山は下りが辛いっていうけど帰りの方が疲れたよ…
「それでも休まないでは凄い!」
「そうだね」
疲労を理由にミャーに寄りかかっていますよ・・・幸せ。 余裕が出てくると色んなことを思い出したり思い付いたり・・・
「荷車を買って運べばよかった」
2人とも借りることしかない物だからその発想は無かったみたい。次回は家具屋で購入した物を運ばないといけないから事前に買っておこう!高くはないだろう、あ!
「お土産!!お菓子!!」
「みぃや!?」
隣で急に叫ぶものだからミャーが驚いてしまった…頭を撫でてあげる。 ・・・みんなへのお土産忘れてたよ、お菓子買ってこようと、ケーキも買ってくると思ってたのに…
すると、隣が軽くなる、ミャーが立ち上がったのだ
「みぃや、お金貸して下さい!」
「ミャー?」
「買ってきます!」
「えっ!」
「ついでに2人も送ります!」
「「えっ?」」
ミャーはもう決めたようだった、ジッと見てくる。戸惑うわたしたちだけど、アルトが同意する
「そうだね、ミャーさん、お店は教えてあげる」
「ありがとうございます」
アルトに見られて任せてあげてと言われているような気がした
「ミャー・・・お願いします」
またねとお礼を言うとみんな行ってしまった
・・・。
みんないなくって寂しく料理中、主食となる物が無いからちょっと寂しいけど。今日分だけ買った痛みやすそうな食材もあるので予定は決まっていた
野菜を炒める、調味料が無いことに気付いて嘆く、更にお皿が無いことに気付き狼狽える、肉を焼いて移して野菜を入れ直し炒め直した。食べる道具が無いことに気付いた、更に洗うものが無いことに気付いてしまった。
「足りないものばかりだった!」
泣きたくなった、みんな呼ぶつもりだったけどやめることとなった
料理は30分くらいしていた、暇なので服の組み合わせを試して時間を潰していた
「フードの無い…」
約2時間後
「みぃや、ただいま♪」
「ミャー!? おかえり♪」
バッと立ち上がりミャーを迎えると、箱を持っていて街に行ったことがわかる、帰ってくるのが速いね!? 買い物あるから片道1時間・・?
「みぃやが困っていた調味料とお皿と食べる道具も買いました!」
「なんで知ってるの!?」
「みぃやのことだから♪」
「ミャー!!!」
嬉しくなって後ろからミャーに抱き付いた、ミャーにアレに近い何かあるのだろうか。 因みに食べる道具は箸を探したが無く一般的なフォークスプーン(ここではレスピアと名前らしい)を買ってきた。
・・・。
「いつも、ミミュルさんはすぐに会えるけど魔王様やレイルブライトにもここの門の……?「ポーポー門ですよ」そうポーポー門・・・えっ?」
「みぃやどうしました?」
「ミャー!門って動物?」
「いいえ」
「だよねー」
何か繋がった気がした、相手は門でないかもしれないが周りに誰もいないし他の名前は呼んでいない
「・・・ポーポー門さん?」
・・・・・。当たり前のように返事はない。恥ずかしくなってミャーにくっ付く
「ミャーありがとね♪、みんな呼んで食べようか、たまには出向いた方がいいのかな?」
「挑戦者が来ている日にいってみましょう」
「うん」
今日は来てもらいましょうか、魔王様、ミミュルさん、レイルブライト来て!ちょっとダメもとで願ってみる、今まで伝わっていたみたいだから試しにね
ミャーと一緒に外に出てみるとミミュルさんが来てくれた、いつもの流れがあってやっぱり呼ばれた気がすると。
「レイルブライトならもうすぐ来るよね?」
ちょっと間を置いて、そろそろ前に来てくれたくらいの時間になる
「そうね…って赤竜ちゃんの名前は違うわよ?」
「みぃや、レイルブライルです」
「え?」
間違えた?忙しいのかもしれないけど、それで伝わってないかもしれない! 慌てて願い直す。 すると、数分後にレイルブライルが飛んでやってきてくれたよ
「レイルブライル、ただいま、お土産…ミャーが買ってきてくれたよ」
軽く撫でながら言うと嬉しそうにして、小さくなり近くにきた
「そうか、ありがとう。大丈夫だったか?」
「うん、いい宿屋に泊まれたしね」
「ウム、それはよかった、それに2人のその格好もとても良いな」
おぉ、紳士だよ。他人の服を褒めるなんてなかったからなぁ
・・・魔王様はこなかった
「魔王様は忙しいのでしょうか?」
「・・・ねぇ、みぃやちゃん? 私に『ミミュル』が来て欲しいって思ってくれたのよね?」
「そうだよ」
「ちゃんと名前でなくてもいい、不思議と伝わっている・・・、だけど名前を間違えたら伝わらなかった・・・。お互い呼び決めた名前とかかしら?
それなら、魔王様は役職では伝わらないのではないのかしら?」
「そ、そうかもしれない!」
魔王様じゃなくて名前!!
…何だっけ?「森本です」みたいな名前だったはずだ
最後は最初と同じような音で伸ばすだったから「森本モーリ」!
似ている気がする!。・・・。ん?呆れた様子でみんながみている
「みぃや、声に出てます」
「ウム、もりもとです から もりもともーり とやらになったのは尊敬するぞ」
「・・・てへっ♡、名前何でしたっけ?」
「みぃやちゃんカワイイワネ、モルモンモール様よ」
ミミュルさんに呆れられるなんて!? モルモンモール様か! さすがに自分たちの主の名前は忘れないようにしないとやばいね
・・・。
結果として呼び出すことが出来た、お偉いさんを一番の下っ端が気軽に呼びつけていいのかって思うけれどね、魔王様は仲間に入れてくれたことが嬉しいみたいだから呼ばない方が悲しみそうだ
料理は今回は敢えてそのまま出してみたら意外と喜ばれた、普段は食べないからあれでも十分においしいと言ってくれた
「スケルトンさんとカッパさんは食べられるのですか?」
食べられるならレイルブライルに帰り道渡してもらいたい
「あぁ、トヒタヨツヘは食べられないな
カッパは誰だ! トナタのことか?」
魔王様はここにない残りの者で判断した
「そうです!」
何で外国人の名前って忘れちゃうのだろうか…、トヒタ・・ヨツヘ、トナタ、・・・、頭の中で繰り返しておく
「トナタもな土や葉は食べられるがそれら以外は無理だった・・な?」
「その通りです」
魔王様が当たったことでドヤ顔している、可愛いな!、ミミュルさんがいったよ!、……、魔王様ご説明ありがとうございます!
2人は食べられないのか、トヒタ・・ヨツ・へさんもトナタさんも
「好きなの選んでください!、みぃやはこれ♪」
「ミャーありがとう♪、でもこういう時は魔王様を優先しようね」
「いいえ!」
「ミャー!?」
ケーキ、一応7個用意してあって種類は全部違う、2つ明らかに緑色なだけで他は中身が違うショートケーキだ。前に出すとミャーは真っ先にわたしにひとつ取ってくれた、いつでもわたし最優先。
「我は気にしない、ミャーありがとう」
「はい!」
あ、この入っている白いの酸味が無いやつだ!前みたいに苦く無い果物でとても甘い!、そのかわりに周りがそんなに甘くなくてすごくおいしい!、わたし好み、ミャーおそるべし!
残りの2つはチラチラ見ている魔王様と食事が必要なレイルブライルに渡したのだった。
・・・。
みんなが帰って洗い物を…、と思ったんだけど、これだけはミャー伝わらなかったんだっけ
『パララーン』
「新しい音だ?」
「とりあえず下にいます!
みぃやは動かないで下さい」
「わかった! 気を付けてね!」
「はい!」
ミャーが心配だけど、水はあるので頑張って手で洗い物をしないと。お肉で油になったお皿を手で一撫でする・・!?!?
「汚れが…」
スイーっと指が通るとその道がキレイになっていく、不思議に思って今度は手の平全体を使ってやってみると見事に汚れが消えた
「スポンジも洗剤も要らない!?、もしかして掃除も出来る?」
変なことを考えたが出来そうな気がした。あっという間にお皿を洗い終えるとまたあの音がなる
『パララーン』
ミャーの所に行こうとすると下から開けられてミャーが上がってきた
「どうしたの!?」
「みぃや、多分あと1回鳴ります」
「どうして分かるの?」
「1回目と2日目の間がミミュルとレイルブライルの間でした」
「もしかして魔王領の人たちが無事に帰りましたの音か?」
「そうだと思いますよ」
そこに結びつけられたミャーはやっぱりすごいな、感謝を込めて撫でてあげる
「みぃや~♪」
蕩けた顔のミャーも可愛い!もっと、もっと・・・『パララーン』、あ…
それ以降は鳴らなかったからミャーの推測通りだろうね、いいタイミングで残念と思って……るよ
それにしても門の成長がすごい、やっぱり意思があると思うな
次の日
『ピーーーポーン』と鳴って、降りて挑戦者を待っていると階段をソロソロと上がってきた人に警戒してしまう
「よぉー、お久しぶりだな!」
単身でやってきてわたしを求めミャーに振られた男だった。うん、意味がわからないね。
1週間すら経っていないのに久しぶりって、また来るって言ったけどどうして来たの?
「お久しぶりです、先に進みたいですのですね? 次の試練に案内しましょう! 1階に行ってみて下さい!」
イベントスキップで進行することにしました、ミャーも構えていなかったし戦う気がなかったと思う。
しかし、その者は予想を裏切らなかった、もちろん悪い意味で
「邪険にしないでほしいな、やっと勝ち取った権利なんだ、相手をしてくれ…なくていい、お願いがあるんだ」
はい!嫌です!変なことを頼まれる気しかしないよ…、でも主としては聞かないわけにはいかない
「はぁ…、なんでしょうか?」
「ありがとう、まず1つ目はな・・・」
「待って!幾つかあるの?」
自分が承諾したんだから、1つとは言ってないだろ?と言われても反論出来ない。その者はニカリと笑う
「大丈夫だ!2つだけだ、どっちも・・と言うか、1つは素通りを許して欲しい」
体力を温存して進みたいのかな、始めに通そうとしてたからこれは無いようなものだね
「うん、いいよ
それでもう一つは?」
「あぁ!2人で、こう!!。、、抱き合ってくれ」
かなり予想外のお願いだ!?予想の斜め上をいった! こう!で二役でお互い少し斜に構えて抱き合うポーズを指定してきた
「な、何で?」
「もちろん見たいからだ!」
正直で潔いい奴だな!? この仕事を引き受けてこんなお願いをされるだなんて思いもしてなかった
「みゃ、ミャア?」
「みぃや♪」
「ミャ、ミャー!?」
「あぁ、いいな・・・」
ミャーにどうしようかと後ろを向くとミャーが抱き締めてきた! ミャー可愛い!?
ミャーは1回離れる、すると指定通りの姿勢をとる
「ミャー♪」
「みぃや♪♪」
もう迷わなかった、自然に自分も合わせてミャーにくっ付いた
「・・・・・!。ありがとう、本当にありがとう! これはお礼だ!」
夢中になりすぎていたので戻ると気まずい、小硬貨を10枚を指で挟んでいるので両手を器にして受け取った
「・・・ごほん! では次の地への道を教えましょう」
顔を真っ赤にしながら、まず1番下へ行きなさいと続けようとしたらわたしたちは門を降りた入り口反対のメルミルの地にいた
「・・え、ん…」「ここは!?、、、ありがとうございます!」
一瞬で状況を把握したミャーからの突然の口にちょこんと触れたキスに移動した驚きが消えていた。
一瞬で驚き中の出来事だったはずの男は流石と言うべきかそれ見逃さなかった、追加で5枚を差し出している。
「・・・・ありがとうございます
ここから先が・・「メルミル」・・の地だ!」
言い終えた瞬間にまた消えてしまったのだった。
・・・。
今度は部屋にいた、落ち着いていたけどミャーとくっ付く
「どっちもいいタイミングだったね?」
「はい!」
「ミャーありがとう♪」
「はい♪」
すごくよかったし楽だったよ、これは多分ね
「ポーポー門さんがやってくれたの?」
「・・・・」
返事は当然なかったけれど、わたしたちに合わせて成長しているんだと思う
「ありがとう」「ありがとうございます」
「・・・・・・・っ」
(ピクピクとミャーの耳が動く)
ぁー…またお金受け取っちゃったなぁ、貯めておいた方がいいかな?人間領に行くなら必要だよね
そう考えていても、このお仕事を任せてもらえている内はずっとここにいてもいいと思っている。もちろん危険だろうけれど、全部ひっくるめた全体の雰囲気が好きだ
「ねぇ、ミャー? ミャーからみてこっちで信頼出来る人って誰かな?」
教会の話について思い返すと少し不安になってしまったのでミャーはどうなんだろうかと聞いてみた
「はい、トナタとあの男達の一人以外は大丈夫だと思います」
「え?」
トナタさん・・・、あと男達は初めて来た人のメンバーだよね?、その一人を尋ねてみたら初めて来た内の槍を持っていた人だった
「みぃやは守ります!」
「ミャーお願いね、ありがとう♪」
「はい!!」
考えてもわからないから何かあったらミャーに頼る! 普段はミャーを愛でる!!! 。これが方針でいいだろう、というわけで今日もミャーと遊びまくろう♪
『チーン』
・・・ミャー、後でね。ニャーがガッカリしたようにこっち見てる、今からしようとしたのがわかったのかな?残念だよ。OKの返事を返す、さっきの男の事だろうか
・・・・・・。
やって来たのはトヨタヒチさん、膝を曲げた正座で座っている
「ドゥドゥドゥドゥドゥ」
*「今日来た挑戦者に言われたけど」
「ドゥドゥドゥ」
*「話しておこうと判断したんだ」
ミャーが翻訳者のように訳して続いている
*「挑戦者だけど、人間・貴女が主をしている理由を聞いてきた」
なんでスケルトンに!?、ミミュルさんかトナタさんはスルーして尋ねたのか?
*「ワァはわからないと答えた、実際知らないからね」
「そうだったんですか?」
*「みやさんとミャーさんのことはどこからともなくあの地に現れたとしか聞いてないから」
じゃあ何も知らないで急に退かされた人じゃないか…
「そうだったんですね、トヨタヒチさん」
名前を呼ぶと顎が離れてしまった、その後、カラカラ笑い出してから落ち込む
*「トヒタヨツヘです、人間には覚えにくいのでしょうか…、はい、トーとでも呼んで下さい」
「ご、ごめんなさい!
トヒ・タ・ヨ・ツヘさん! あ!」
あの感覚だ!、初めて呼んだっけ?
「「はい」無理しないでトーでいいですからね」
ミャーが気づいてくれたのか始めだけ確認してやめてくれた、トヒタヨツヘさんはミャーが翻訳しなくなったことに指を頭にあてていた
「はい、トーさん」
なんというか気さくな人だ、とっても話しやすい。骨なのでわかりにくいが言葉が伝わるとわかったらちょっと上気した気がする
「で、挑戦者は勝負をしてきたわけだけど強いね、互角で殺されるかと思ったよ、まぁ再生出来るのだけどね。 結局、すんでで止めて帰っていったんだ」
今、すごいこと言ったね!?、それは置いておくとして目的がわからないね、何がしたかったんだろうね?
「間の二人はどうしたのでしょうか?」
「あぁ、今日は魔王様の場所に呼ばれているから、ワァがメルミルの地の主をしていたんだ」
不在だったんだ、じゃあ洞窟と草原には代理が…いないか?わたし不在だった時の門に誰もいなかっただろうしね、本当の強者が現れた時に魔王領は大丈夫だろうか…
「強いと言ってもあれくらいならば、魔王城へ行く実力が全く足りないから通しても大丈夫」
「わかりました!」「はい!」
ミャーの強さはその実力の上だって確信しているだね、敵対するかもしれないのに怖くないのかな
「ありがとうございます、トーさん」
「いえいえ、あんな相手してたって方が驚きですよ、実力者はあまり来ませんでしたから」
トーさんが門を守ってた時は強い人は滅多に来なかったっていう、魔王領に魔王様を討伐しに行くくらいだから一角の人が許可を取るものだと思ってたけど違うのか、・・・一部わたしが呼び寄せた気がしないでもないけど
・・・。
「もう1週間くらいだよね?」
「・・・はい」
ミャーにしては珍しく歯切れが悪い、日付についてはあまりわからなかったのかな
「お風呂に入りたいねー?」
「はい!」
お風呂大好きなわたしたち、体は汚れなくても湯船に浸かりたかった。ミャーを軽く洗うと肩にぶらんと抱いて毎日一緒に入っていたからね~恋しいかも
宿屋に泊まった時も体拭くくらいでお風呂は無いらしいんだよね…
都合良く浴槽の代わりになる物なんて無いからなぁ…(今は)諦めるしかないっか…
「みぃや、雨が降っていますが上に上がりますか?」
「え?雨降っているの?突然なんだね」
ちょっと前まで降っていなかったはず、そこで気になってきたことがあり不安が押し寄せた
「下の窓や上の出口から水が入ってくる…?」
窓らしい窓が無い門では強い雨が降ったら避難や対策が必要なのではないだろうか
「大丈夫でした、不可視系の何かで水の侵入は無いみたいです」
なにそれ!?、普段からその何かが張ってあるとしたら出ることも入ってくることも出来ないよね?決まった対象だけに効果があるのか?
「どんな感じなのか見てみたいな」
外に出る階段の上から外を見てるとまるで台風のようで雨粒で景色が見えない、何故か明るさはそのままだけど豪雨だよ。たしかにガラスが張られているみたいになっている、ソッと手を伸ばしてみると通り抜けて指先が濡れた
「何これ、こっちから水をかけたらどうなるの!」
「やってみますか?」
ミャーは水を手で掬って器用に全く零さずそのまま持ってくると外に向かって振るった
「・・・すり抜けたね」
「はい、わかりません」
どうやら一方から防ぐらしい、この辺は法則なんて気にせず不思議な世界だからと納得しないといけない
思っていた以上に強い雨だったが水侵入の心配はないようでよかったと思う。体を洗うには少し強すぎたね、それにちょっと冷たかったよ
その日の真夜中、不思議な音が門の外壁にだけ響いたことは誰も気付かなかった
「・・・・・ふ・・・ゅ」
次の日
今日は挑戦者は来ないなと思っていた日の暗くなるちょっと前に挑戦者を知らせる音がなり立ち上がるとわたしたちを(門が)移動してくれる
「「ありがとうございます」」
「・・・」
初めての区間だけどもう驚きは無い、返事は無いけどお礼はしっかり伝えないと
「みぃや! 下がっていて下さい!」
「え、はい!」
まだ時間も5分と経っていないがミャーが臨戦態勢をとって待ち構えている。不意打ちはダメだよ!
「来ました!!」
誰かがミャーにすごい勢いでそのまま手に持った包丁のようなもので切りつけてきた
「ミャー!?」
「くっ、そ!」
不意打ちをしてきた奴はミャーに刃先を摘ままれたナイフ?を引き抜こうとしたが無理だと1回の行動ですぐに切り替え、握る手を離すと回し蹴りを仕掛ける。瞬時の判断に反応したミャーは相手の横に立つともう一方の支えている片足の方を払い転ばした
「がぁっ!!」
転ばされた奴は顔から落ちて痛ましげに顔半分を押さえて立ち上がろうとしているがミャーが足で相手の足を抑えていて寝かせている
「はぁあ!」
「みぃやどうしますか?」
おぉ…、ちょっと怖かった。力が入らないはずなのに一気に腹筋に力を入れて両手で掴みかかったよ、・・ミャーが両手でそれを掴んで相手の人はすごい辛そうな態勢だけど。
・・・困ったね、かなり強そうだから通すのは危険かな、しかも女性なんだよね、なんだか可哀想
「ぐぅぅぅ」
「うーん、ねぇ? このまま大人しく帰ってくれる?」
「何で来ないのよ!」
『ピーーーポーン』
「あれ?再び?」
「みぃや、仲間だと思います! 奥に!」
「わ、わかった」
何が起こるか不安だ、ミャーは様子を見るつもりなのか動く気は無い、1分ほどでミャーがやっと女性を離すとそのまま横に倒れ荒い息をし続ける、やっと力抜けたんだ、ミャーが階段の方に荷物のように一瞬でどかす、傍目には瞬間移動したみたい
10分くらいで2人の女性がやってきた
「「レェーリエ!?」」
「ごめん!振り落とされたの!」
倒れている女性の前に1人立ち、ミャーと対峙するようにもう1人が立つ
「あなたたちがやったの!」
「いきなり襲われました」
「正当防衛って言いたいのね! 仲間の恨みは果たさせてもらう!! ヘイスアレリア!連れて行きなさい!」
ミャーが淡々と告げたのが少し可笑しかった。多分なんて答えても無意味だったよ、わたしたち主だしね。 また名前が長くて聞き取れないよ!
フルリーエは仲間にレェーリエを任せてミャーに持っている長い鉄みたいな棒を振りながら突っ込む、動きはさほど速く無いが相手の動きを観察しながらどんな動きにも対応して倒す構えのよう。
ミャーを速さを活かした戦い方と読んでいたフルリーエは一切避ける動作もしないミャーに恐怖を感じ、瞬時に棒を引き少し長く持って近づかないで攻撃する突きに切り替えた。しかしミャーは棒を事も無げに棒を片手で掴むと一気に横振りする、瞬間の力を入れたため前方に吹っ飛び階段近くに倒れるのだった。
…うわぁ、死にそうだよ。そう思っちゃうけれどあれくらいなら全くなんだよね…、すぐに立ち上がろうと力を入れて立ったよ
「強過ぎる…」
「勝ちました、帰ってください」
「・・・殺さないのか?」
「はい!」
棒の人すごく警戒している、こっちを見てからミャーへと質問する
「その子は?」
「この門の主です」
「捕らえられた子供とかじゃないんだね」
たしかに見方によってはそう見えるか、ミャーと一緒だから考えもしなかったよ
「初めまして、みやです
ポーポー門さんの主を2人でしています、私に戦いは出来ませんが」
「・・・何故…、退いていいのか?」
警戒心が弱まった気がする、それよりか疑問で塗り固められたようになった
「どうぞ♪ ありがとうございました」
「・・・・・今度は負けないから!」
「はい!」
棒の人がお帰りになると帰った音がする、下でさっきの人たちも待っていたのかな、始めのすごく速い人大丈夫かな?
殺気に触れたのが久しぶりで、体が震えてくるとミャーが手を繋いで肩に寄り掛かってくる
「ミャーありがとう♪」
「はい!ありがとうございます♪」
気持ち良さそうなミャーに頬が緩んでいく、何も怖くないなと安心する、深ぁく深呼吸をすると存分にミャーとじゃれ合っていたのだった。
・・・。
その夜、再び門の内部に届かない音が鳴り響き、揺れが起こった
「・・きた、・・・みぃ・・・」
今日もミャーにウキウキとご飯を作る
「お待たせ♪」
「みぃやありがとう♪」
なんか普段ゆるゆるだらだらしているとこういった普通の生活だった行為をしていると落ち着くよね、でも材料が無くなっちゃう。保存がきかないから買い溜め出来ないのがね、冷蔵庫が欲しい!
『ピーーーポーン』
ご飯途中なのに…立ち上がり準備すると移動した
挑戦者はお馴染みリーダーの4人組、今日の編成はなんとテリテロさんと・・・が入っていた、何だっけ…、するとコッソリとミャーが2人の名前を教えてくれる、テリテロさん合ってた♪
「何で、あなたたちまで!?」
何か知らないけれどその2人まで信仰の気が見える行動をとった
「貴女様に出逢って意識を変えたみたいです」
えー…こんなことあるの? 助けられたとか何度も手助けされたとかなら分かるけど、1回出逢って話もしないでって…
「そ、そうなのですね。そろそろ名前で呼んでくれると嬉しいです」
「良いのですか!?」
驚くことかな?いつまでも貴女様は嫌だよ
「様もいらないですよ」
「わかりました! これからはみぃや様と呼ばせていただきます」
「わかってなかった!?」
そもそもなんで未だに崇められているかも分からない、もしかしてこれも能力の内なのか? と思ったけれどミャーにあっさりと否定された、繋がるのこそ貰ったものならたしかに違うよね…、動物…例えばこの間のグレーウルフとか仲良くなれないのかなぁ
ハッっと現実に戻ると皆様キラキラとした目で見ていたよ、・・退屈してないようでなによりです
「・・・失礼、した」
唐突にメーラさんが謝ってくるので何かと思う
「・・街、無視した」
あれ、無視だったのか
「大丈夫です、気にしてませんよ」
メーラさんはすごい安心した顔になった、そんな心残りだったのか
「あはは♪そこまで落ち込んでいたんですね、無口な方と思っていたので気軽に接して下さい」
「みや様、メーラのやつが落ち込んでいたと…?」
・・・弓の人は可笑しなことを言うね、思わず笑ってしまって恥ずかしがらせてしまったよ…
「はい、メーラさん・・!沈んだ顔をしてましたよね?」
あ、え、何で!?、メーラさん、人間…だよね?
「メーラ、そうだったのですか?」
リーダーさんも気付いてなかった!?、あ、テリテロさんも心配そうに見てる。メーラさんは居心地悪そうに頷いた
「みぃやが感じて初めて気付きました」
「ミャーも?」
「はい」
あれ、そうなんだ、なんか『顔は怖いけれど優しい人』の典型みたいで不器用な笑顔を見るとすごく好感持てたけどね
「みぃや様ありがとうございます!」
「私は見たまま伝えただけですから・・・」
「・・・ありがとうございました」
「・はい、どういたしまして」
リーダーさんたちやメーラさんにも言われて恐縮してしまうよ
皆さん帰るようでリーダーさんはやたらにでかい箱型の包みを出して捧げてきた、それだけでないようで後ろで3人持って待機している
「これ何ですか?」
「お納め下さい」
うん、お金だ、間違いない!
「受け取りません! どうしてもなら小さい方でって言いましたよね?」
「はい! なので小貨幣です」
「もしかして、2000枚ですか?」
リーダーさんは頭を縦に振ってしまった!
「違うよ!、その小貨幣?を2枚でいいってことですよ!?」
「はい、存じております!」
確信犯だった!!、このやり取りなんなの! わざと困らせたいの?ならすごく困ってるよ!!
「大貨幣…が高価だと知りました! 私はそれを受け取ってしまいました!
なので、あまりに多い額は受け取りません!」
この人のお金なのか、仲間全体のお金なのか分からないけれど用意出来るのは何でなんだと思う
「みぃや様、ならこれで最後に致しますので、どうか受け取って下さい!」
「・・・・なら、その1袋で…」
「ありがとうございます!」
「お礼を言うのはこちらですよ!?」
なんとか4分の1で話しがついた、疲れた…。
移動してくれる門さんに感謝して包みを開けると大量の小貨幣、小硬貨でなく小貨幣が、ミャーがすぐに確認して数えてくれた
「1000Rです」
「え?」
「1000枚でした」
「・・・・(良い方にだけど)騙された!?」
「いいえ、中身は小貨幣以外は話していません」
自分の思い込みだったのはわかってます…、ミャー面倒な作業をありがとうね・・・。
『チーン』『キンコォーン』
挑戦者の件が終わって落ち着くまで待ってくれてたのか2つの音が鳴った
返事をする方はいいがお客様はあの2人だろう、帰っちゃったのではないか、と思っていたけど少年2人がこの部屋に移動されてきて、とても戸惑っていた
「みぃや?・・さん、 ・・・お部屋ですか?」
大変混乱してますね、入口付近で待ってたのかな?突然移動されたらこうなりますよ
「はい、そうですよ。いらっしゃいませ」
「あぁ…おじゃまします?」
2人が落ち着いた頃に小さくなったレイルブライルがやってきた
「アルトとノールも居たのか」
「2人も今来たばかりですよ」
「フム、そうか」
やっぱり、会話出来ないんだね。そうなると魔王様たちは人間と同じ言語かそれに近しいんだね
「みぃやは竜の言葉が分かるのか?」
「ううん、繋がった人としか分からないよ」
「「「繋がった?」」」
ハモった、繋がったとか言っても分からないかな
「仲良くなって名前を呼ぶと心が重なって一緒になったような感覚が起こるんだよね」
「アァ、何となく分かるぞ、みぃやの思いが伝わるようなあの感覚がそうなのだな」
「「・・・?」」
アルトとノールには分からないようだけど、やっぱりレイルブライルには分かるんだね思いを向けて呼んだり困ったりすると来てくれたからね。
「多分種族の差だと思います、人間にはどうしても疑いや打算といった余計な感情が入ります」
ミャーの言葉は的を射ている気がする、多分正解だ!、その仮説を信じるならばメーラさんは全面的な信頼を寄せてくれたのかな、嬉しいね。
この主をしている立ち位置的にも人間からの疑いない信頼は難しいかもしれない
「・・・そうだね、ぼくにそんな感覚を受けたことが無いよ、・・・ごめんなさい」
「俺も無いけど、みぃやたちを信じているから!
・・・これからも来ていいか…?」
2人ともとっても不安そう、繋がっていないから敵対しているわけでないから安心してね、逆にそんな付き合い方をしている人を見る方が超レアだ
「疑っていないから安心して、いつでも来てくれていいからね」
最高の笑顔になるように心掛けてニコリとするとミャーが寄り添ってきた、2人で来ていいアピールすれば安心しやすいね、さすがミャー♪
「ウム、いいものだ」
パタパタとレイルブライルも寄ってきて2人に向けて手招き、すると、部屋のギリギリまで大きくなってわたしたち4人をまとめて包み込んだ。 身を委ねるわたしとミャーに対し驚きと少しの恐怖、それと羞恥を浮かべて手を出さないよう棒立ちするアルトとノール
「みぃやさんごめんね!」「ちょ!レイルブライルさん!」
「あははは♪」「みぃや♪」「ホッホ♪」
くっ付いちゃうけどわたしたちは平気だよ♪2人共、恥ずかしいのは分かるけどね!
・・・。
グッタリと少し小さくなったレイルブライルに寄り掛かっているアルトたちだがその顔はなんかスッキリしている
「「つ、疲れた…」」
あのどんなに歩いても疲れなかった2人が声に出したよ
「オオ、そうだ。みぃや、ミャー、聞きたいことがある」
「なに?」
「門上に造られた物は何だ? どうやった?」
来る時に空から箱状の物が見えたそうだ
「え?」
ミャーを見るが首を横に振る
「何だろう?」
「フゥム?」
「見てみよう」
みんなで立ち上がると移動してくれた
「何があった?」
レイルブライルはさすがと落ち着いている、2人も2回目ということで慌ててはいない
「ポーポー門さんのおかげです、感謝しています」
「ム?」
何か考えているが気にせずに周りを見ると、移動された場所は外側半分の位置で中心の所にあったのは石で出来た箱状の物、中は空洞で上が開いている
「お風呂だ! お湯張れば入れるよミャー!」
「はい!」
ポーポー門さんがつくってくれたに間違いない!ありがとう!
2人盛り上がるわたしたちに不思議そうな3人
「みぃやさん、おふろってなんですか?」
「お風呂はね!、!?、……お湯・・・。、、、40℃…適温の水を溜めた湯に浸かれる場所?かな…。 お湯か…難しいなぁ…」
一気に沈んでしまったみやにどうしていいか分からない3人は対応に困ってしまう
「・・・・みぃや」
「はい?」
ハッキリ呼ばれた声に顔をあげればそのお風呂の前に笑顔でわたしを見ている少女がいる
・・・わたしだ
「どうした?」
呆然としていたわたしにノールが心配してくれる、目の前の白いワンピース姿の少女には誰も目を向けないことから他の人には見えていないのだろう
「まかせて♪」
少女はクルリとヒラヒラを躍らすとお風呂に右手を触れる、すると凹みに湯気が出ているお湯が湧き出て満たしていった
突然起こった出来事に3人が何事かと警戒した
「どうぞ♪」
最後にそう言って少女は振り返り消えていった。
「ありがとう♪ポーポー門さん」
何でわたしの姿なのかは分からないけれど、あれはわたしのためにやってくれていつも手助けしてくれている門の意思だと確信していた
「「え!?」」「これはポーポー門による仕業なのか?」
「はい!」
みんなとても信じられなそうだった
なにはともあれお風呂に入れるよ! ね!ミャー♪
・・・。
ミャーがお風呂について詳しく説明してくれるとどんな物なのかを理解してくれた
「体をキレイにしたり、心を落ち着かせたりと水浴びのような感じだと」
こっちからすると納得出来ない説明だけど間違っては無いのだろうね、言葉で表せられるものじゃないから
「広いしみんなで入れるけど、どうかな?」
「服を脱ぐのだよね!? そそそそれはちょっと!!」
「む、無理だろ!」
「ウム、少し怖いが試してみたい」
なんというかアルトは可哀想なくらいに真っ赤になってしまったよ。
前世の時から異性の肌に大した興味を持てなかったからなぁとしみじみと思ってしまう
というわけでアルトとノールはゆっくり出来たから帰ると言って帰ってしまいました。
服を脱いでいく、周りから見られそう?広いので空からでも来られない限り大丈夫でしょう、見られても気にしないし襲われてもミャーがいる。と今になって気付いてしまった、少し広い?
「この門の上ってこんなに広かった?」
「イヤ、門上一回りは広くなっている。しかし外から見た時はいつも通りだったぞ」
これもまたあり得ない現象!不思議だ。細かい現象考えるよりお風呂に入ろう、洗い場が無いからどうしよう、わたしたちはいいけどレイルブライルはね。・・・ミャー綺麗で可愛い!
「ミャー、一緒にレイルブライルを洗おうか」
「はい!手で擦ればいいんですね」
「うん♪」
レイルブライルをお風呂の脇に人サイズまでになってもらって待機させると、湯で手を濡らしながら体を擦っていった、顔や腹部はこそばゆそうにしていたのがかわいかったね。まぁ、わたしたちなら濡らす必要は無かったのだけど気分だよね、布と桶は必要と脳にメモしておく。・・・さすがに、これをあの2人にやるのはやばかったかもね…
再びレイルブライルには小さくなってもらってお風呂に入る
「丁度いい温度、気持ちいい♪」
「はい♪」
「これがおふろなのか、なんとも・・・」
お湯は全く溢れなかった、その量の位置をピタッと維持して上下しない。今思えば、さっき使った時に地面に流れただろうかと思う、覗いてみたけど一切濡れていなかった。
「レイルブライル寝てる?」
「はい」
「あはは♪気に入ったんだね
ミャー、また入ろうね」
「はい!」
・・・。
のぼせそうなくらい長く入ってから出ると髪や全身に滴っている水が弾ける
「おぉ!ミャーすごいね!」
「みぃや、かわいいです!」
自分の身に起こったことに少し興奮してしまったよ、何から何まで至れり尽くせりだね
レイルブライルもポーポー門さんにお礼を言ってそのまま帰って行った
・・・。
部屋に戻りたいと思うと移動してくれる、ポーポー門さんは繋がった人たちよりもミャーとの繋がりに近いのだと思う。
「(もう1回姿を見せてくれる?)」
そう願うと目の前に立体映像のように少女が現れて実体化するようにハッキリしてくる、いつもニコニコ自分の姿ながらに可愛いね
「ミャーにも見えないの?」
コクコクと首を縦に振る
「そうなんだね
あなたはこの門って認識で大丈夫?」
再び首を縦に振る
「いつもありがとうね♪、おかげ様でとても良い生活が出来てますよ」
少女は笑顔をより一層輝かせている
「嬉しい♪」
役に立てて嬉しい、希望に添えて嬉しいと、そんな感じだよ。
「お風呂もつくってくれてありがと、あなたのことをポーポー門さんって呼ぶのも変におもっちゃうんだ、違う呼び方でもいいかな?」
「うんっ♪」
うわ!素晴らしい笑顔、可愛い! ・・・これって自画自賛になるか?
「ポーポー門だからポポちゃん、いいかな?」
「ありがとうっ♪」
「よかった、ポポちゃんよろしくね♪」
「うんっ♪」
傍からは奇妙な光景だろうね、一人で会話しているからね、ポポちゃんが見えていたとしても同じ人が2人いる状態だ。
「よろしくお願いします」
ミャーもわたしの感覚から理解してくれて、ポポちゃんと挨拶しあうとポポちゃんは地面に溶け混むように消えていった。
『パララーン』