第11幕
今日の挑戦者は朝早くからやってきてわたしに文句ばかり言っている
「散々お待ちしていたのですよ?
ご招待とあらばすぐ赴くものでありませんか? 娘にもお伝えしていましたからぼーくーが!怒られて口も聞いてくれなかったのですよ? どうしてくれるのですか! はっ!これだから人は信用ならないのですね!」
知るか!いつ行く約束はしてないだろ! でもノーヴェごめんね!お父さんは嫌ってもわたしたちは嫌わないで!
「ミャーに謝らせますから、許して下さい」
「はい…、本当に行けないでごめんなさい…」
ミャーがすごく演技派だ!・・・ものすごく悲愴感が漂っているよ
「な!ミャーさんは何も悪くありませんよ!
僕はいつでも来て下さいって、ご都合のよろしい日にでも遊びに来て頂ければ幸いですので!」
言い終わるとキッ!っとわたしを睨む、その目は何をミャーさんに言わせてるんだ!悪いのは全部お前だぞ!と物語っている、同じことを言われていて行動が一緒の人なのに片方だけ悪いってどんな理不尽だろうね? ミャーありがとう♪
「これから行く予定です」
「そうですか! ところでみぃやさんは顔色が良くないのではないでしょうか?」
本当に学習しないんじゃないか?、それ言ったら分かるでしょう
「みぃやが体調悪いみたいなので今日は一緒にいますね…、ノーヴェに伝えておいて下さい」
「僕の勘違いみたいでしたね! みぃやさんもご一緒に参りましょうか?」
「心からのお誘いありがとう御座います♪」
また睨まれた、ミャーも密かに怒ってるよ、いいの? もうここまで改めないなら一発くらいいいかも…、ミャーストップ!やっぱ無し!
「ミャーさん、いつの間に近くに? ふふふ♪嬉しいです、ご一緒に参りましょうか?」
「みぃやと一緒なので嫌です!」
・・・。
猫人の住む隠れ里、入り口少し前の草っ原を駆け回っている少女がいた
「あはははは♪まってぇー♪ あ!きた!
おねぇーちゃんまってたよ♪」
タタタっと走ってきてわたしにしがみ付いてきた
「こんにちはノーヴェ♪会いたかったよ」
「うん、みぃや♪ミャー♪ いらっしゃいませー」
ニアルトさんには見向きもしないね
「みぃや!みぃや!だいじょーぶだった?!」
「ん?何が?」
「とーさまにやられたんでしょ!たすけてーって!
たすけられないでごめんね…」
本当になんの話だ?確かにウザイと思っているけどノーヴェに助けは求めて・・・ないよね?
「みぃや、ミャーだけを誘っているってノーヴェまで貶めていた時に求めていました」
あぁ!あまりに非道かったあの時か!
ニアルトさんはそれを聞いて黙ってられなかったみたい
「心外ですよ、僕がいじめをするはず無いですよ。 そうでしょう、ノーヴェルトウェルナ?」
ノーヴェはわたしとミャーとニアルトさんを何度も見るとわたしに再びしがみ付く
「みぃやはうそつかない! とーさまきらい!」
「な!?」
「ノーヴェありがとう♪」
「えへへ♪」
頭を撫でてあげるとふにゃりと笑ってかわいい! ニアルトさんは相当ショックだったのかいつものように睨むこともせずに崩れ落ちた
もしかして、娘に嫌われた原因って来る日に来なかったことじゃなくてこの事じゃないのか? なら、自分の行いがミャーだけじゃなく娘にまで嫌われるなんて直すしかないよね…、少し歩み寄ってあげよう
「ニアルトさん、大丈夫ですよ!これからは仲良…「汚い手で触るな!・・・ガァ!」」
「ミャーすごぉぉーい♪」
「あ、ダメだ…」
わたしが手を差し伸べるとニアルトさんはすぐにペシッと払い除ける、それに限界のミャーは遂にニアルトさんを外側へと殴り吹っ飛ばした、ノーヴェは父の心配よりもミャーの動きに大歓喜した。救いようが無いかもしれない…
・・・。
ニアルトさんを放置したままに買い物に繰り出しています
「おぉ、この前の美しい人間さん!また来てくれたんだね」
「ノーヴェに会いに来ちゃいました♪」
「そうかい♪おまけしておくよ」
「ありがとうございます♪」
「みぃや!にこって!にこー」
「ん?笑えばいいのかな?(ニコッ)」
「ハハハ♪よく分かってるねさすが、いいよ特別だ」
よく分からないけど、更におまけで色々入れてくれる、2倍くらいになっちゃったよ!?
遠慮しないでと押し切られてしまう
「えへー♪みぃやきれいだから」
「ありがとう、ノーヴェもかわいいよ♪」
ギューッとするとノーヴェはミャーも手招きしてギューッてする、幸せそうな顔でわたしたちを並べて間に入り手を繋いでえへーと笑った、・・・この子欲しい
布が売っているお店に案内してもらい、体を洗うためのちょっと荒めの布をいっぱい手に持つ
「これ下さい」
「あら?あらあら!」
「これいいですか?」
「ちょっといいかしら?」
「はい?」
「ありがとう♪」
赤毛の女性店員さんが遮ってきたので話しでもあるのかと思ったら、それは違って頬を撫でてきてビクッとしてしまった
「あ、あの、何を?」
「あまりに可愛いものだから♪」
するとノーヴェが女性との間に入り両手を広げてブロックする
「だめ!みぃやはわたしとミャーの!」
「あら?ごめんなさいね♪
そうだわ、それでいいのね?」
「あ、はい、お願いします」
「2Rいただきます♪」
「え?ちょっと、聞き間違えちゃったかもしれません」
「2Rいただきます♪」
「あのー?ひとつ2レ…「2Rいただきます♪」」
「こ、これで…」
「ありがとうございます♪」
ニコニコとしている女性店員・・・これ全部いいのかなぁ…
それから温泉に来たのだけど2つの湯は両方ともぐるりと囲われていて使用中だったのでノーヴェの家にお邪魔することに
「ここだよ♪きて!きて!」
着いてそのまま中へと引っ張っていくノーヴェ、しかしすぐの所で止まると目を輝かせて1人中へと駆け出して女性へと飛び付いた
「かーさまー♪」
「ふふ♪ノーヴェいきなり飛び付かないの
戸も開・・・ん?お客様?」
かーさまと呼ばれた白毛の流麗な猫人はわたしたちの一回り大きいくらい、こちらに柔らかな視線を送る
「おじゃまします、みぃやといいます」
「ミャーです」
「ノーヴェのお友達?」
ノーヴェがかーさまから離れ再びこちらに駆けてきて袖を掴むと堂々と宣言した
「みぃやはわたしとミャーのものなの!」
「わかった! あなたたちが噂の美少女ね!」
まさかここでも聞くなんて!? でもなんかワナワナと震えて怒ってる、もしかして旦那さんをやっちゃったから!
「かーさま!みぃやはとってもきれいなの!おないの!
ミャー、すごいの!わるいとーさまとばすの!びゅーんなの!」
興奮気味にわたしたちのことを自慢げに母へと語っていくノーヴェ
するとかーさまはバッっと笑顔で顔をあげるとわたしの手を取って上下に振ってミャーに移り同じことをした
「あいつ・・・ごめんなさい
ニアルトクリヴストに制裁をしたのがあなたたちね、頭が流れるようね」
あ、頭が流れる? 旦那さんを吹っ飛ばしたのに好感的だぞ
「さっき暗いまま怪我して帰ってきてね『娘があの女に』なんて呟いていたのを聞いてね、追い出してやりました」
かーさま恐ろしい、理由くらい聞いてあげればいいのに
「あ、気にしないでいいですからね?
それにしてもみぃやさんはとても綺麗ですね・・・、ミャーさんは外から来たの?とっても素敵なお耳をしているね
あぁ!今お菓子でも出してあげる♪
そうだ、私はノーヴェルトウェルナの母です、ニアルトクリヴストの一応妻に…、それより名前ですね!私の名前はネネです、ノーヴェ連れてきてありがとう♪ あぁ、お菓子持ってきます」
・・・見た目の穏やかな印象が…、ネネさん覚えやすいな、ニアルトさんと仲が悪そうだな
「かーさまはとーさまきらい、わたしもみぃやにひどいからきらい!」
わたしのせいでニアルトさんが完全孤立してしまった!? ノーヴェはニアルトさんを好きだったはずなのに…とんでもないことをしてしまった気がする…
何か魚の匂いがしてきたと思っているとネネさんはお魚にお野菜とお新香と定番のご飯を作って持ってきて、お菓子もそこに並べられる。
「さぁ、どうぞ、あんまり自信はないけれどもまずいことはないと思いますよ、これ使ってね♪
嫌いな物があったら無理しないでいいですからね。 このお菓子はノーヴェが好きなのよ、いつも「かーさまたべましょー!」 そうね♪」
ご飯とお菓子が並ぶことは普通なのか分からないけど合わないと思う、先にご飯をいただきます♪
ネネさんはわたしたちが里に来たことや何して遊んでたかなど聞いてきて答えていたら今日のことでノーヴェからニアルトさんの話が出てきて、自分の手を使って払う場面まで再現していた
「とーさまはきらい!みぃやにごめんなさいもしなかったの!」
「それはイケナイですね、嫌いになっちゃっていいのです、|優しくて可愛くて天使みたいなみぃやさん《こんな子》にまで差別するお父様なんて無視しましょう」
「はい!」
どんどん離れていく方向に進んでいくよ!? ネネさん何でそんなに嫌っているの?
そこで家に誰か入ってくるとズゥーンと暗くなったニアルトさんが帰ってきた、湯上がりみたいに湿っているから温泉に入っていたのはニアルトさんだったんだね
「おじゃましてます?」
「な!何で家に居るんだ、汚らわしい!」
家族の前でも言える心の強さは尊敬するけどね、今ニアルトさんすごく危険なんだよ…、できるだけ穏やかにいこうよ…
「かーさま?」「ノーヴェ?」
同時にお互い確認と信じられない思いで名前を呼んだ
ノーヴェは立ち上がるとわたしの前に来て守るように立つ
「とーさま!みぃやはきたなくないです!きれいです!」
「ノーヴェルトウェルナはどうしてそんなにソ・・みぃやさんを庇うのですか?」
ネネさんもわたしの所にやってきて抱きしめられる
「みぃやがだいすきだからです!だからいじめるとーさまきらいです!」
またもやニアルトさんはショックを受けて泣いているようだった、なんとか踏ん張り立っているという感じで拳を握り締めている
「ネネさん…」
「大丈夫、あいつは昔からそうだったの」
またあいつって…
「私、恋だった人間が居たのだけどね、あいつに脅されて逃げられてしまったの」
ネネさんと付き合っていた人がいて強いニアルトさんが何らか(恐らく暴力)で離れざるを得なくなったと、今と同じじゃん!じゃあ、ミャーにアプローチしているのは本気なの?奥さんのことどう思っているの!
でもニアルトさん力はあるから拗れたこのままだと怖い…
「全部…」
ん?
「全部お前が!」
ニアルトさんが顔してあげると怒りに染まった顔でわたしに襲いかかろうとする、が一歩と踏み出す前にみぃやに固められる
「ニアルトクリヴスト?あなたにネネさんを好きな気持ちはありますか?」
「と、とう…っ…ぜん…です!!」
「ネネさんはニアルトクリヴストをどう思っていますか?」
「・・・好きですよ」
ネネさんはチラっとノーヴェを見るとミャーが用意してくれた場だと適切に当てはめた
ミャーは元に戻してくれるつもりでいるんだ
「ノーヴェ?もし、とーさまがみぃやに優しくなったら好きになりますか?」
「うん!とーさまだいすき!」
それを聞いたニアルトさんは呻いていたのが止まるとミャーはソッっと力を緩めて離す
静かに立ち上がるとわたしの前に来て頭を下げた
「みぃやさん、これまで申し訳ありませんでした
娘のためにとりあえず謝らせて下さい、人間は信用なりませんが信用してみせます」
何こいつ?ニアルトさん正気か? 後半部まるっと呑み込んで欲しかった、それでもキッチリと収めるためだ
「・・気にしてませんから大丈夫です♪
これからは仲良くしましょうね!」
「・・・・・・・はい」
即答しなさい! まぁノーヴェは言葉の意味には気づいていないからいいけど、ネネさん負担をお掛けしてスミマセン
「ミャーありがとうね♪」
「はい!」
さっき会話の中でネネさんとも繋がった気がしたし信用が嬉しいねー♪
ご飯を食べ終えてニアルトさんに洗わせると、わたしたちは温泉に向かう、ネネさんも一緒だ。ニアルトさんは絶対嫌だ!ミャーを変な目で見そうだもん。
さっきと同じようにわたしとミャーの間にノーヴェが入っていたのだけど甘えた言い方で
「私もみぃやさんと繋ぎたいなぁ」
とノーヴェに許可を取っていた、ノーヴェと繋ぎたいじゃないのか!
さっきまで重い話をしていたのが嘘のようにご機嫌だ、温泉は片方空いていた。
「はい、入りましょうか♪」
「あの、お金…」
「いいのさっきの感謝とお詫びね、それに前にノーヴェの分まで払ってくれたのでしょう」
壊れかけた原因もわたしと思うと申し訳ない
「「ありがとうございます」」
「ありがとー!」
一つ持って来ていた箱を置いて、ここに脱いだ服を入れるようにする
「わぁ!みぃやさん本当に綺麗ですね!」
「ふふーん!そーでしょー!」
ノーヴェが擦り寄ってくるのでくすぐったい
「ネネさんも綺麗ですよ」
「ふふ♪世辞はいらないですよ」
真っ白の毛が白い肌に映えて綺麗なのに
「ふわぁっとなるねー♪」
「ねー♪」
「でもミャーさんは強いのね♪
それでみぃやさんを守っているのね! 格好いいわぁ♪私も猫人として少しは動けるの、だけどね娘はもっとシュンシュンなの! あ、何か欲しい物ある?お礼をしたいのだけど! でもやっぱりここは自慢ねー、ね、みぃやさんたちもいっぱい来てね♪いつでも歓迎しますから、お野菜とか買っていたけどみぃやさんも料理作るのですか? 今度一緒にどうですか?」
ミャーは困ってる、わたしも困ってる
せめて質問の時は止まって答えを聞いてから次にいって欲しいなぁ、ノーヴェの髪を梳かしてキレイにしながらゆっくり答えていくのだった。
・・・。
「みぃやあれやって♪」
「今日はキレイだよ?」
「やってほしいの!」
今日は地面なんてに着けてない新しい布を使用しているから汚くなんてない、けれど擦られるのが気持ちよかったからやって欲しいみたい
「ノーヴェ?何をやって欲しいの?」
「あ、かーさまもやってみればいいよ!みてて!」
あんまり人様に見てもらう姿じゃないんだけど…、とりあえずノーヴェをキレイにするようにやってあげるとリラックスモードに入って幸せのため息を吐いている
「おわり♪服を着なさいね」
「ありがとー♪はい、かーさま!」
少し赤くなっていて迷っているようだ
「どうしますか?」
「せっかくノーヴェが言ってくれたからやってもらえますか?」
「はい♪」
ネネさんも全身やってあげると、途中でへにゃんと前に手をついた
「大丈夫ですか!?」
「あ、えぇ、あまりに気持ち良くて力が抜けました、何か使っているのですか?」
「いえ、何も使っていません」
癒しのパワーみたいなのが手から出てるのか?
そういえばブレイルさんに洗うのを初めてやった時と後でやった時とで少し反応が違ったかも、繋がって何かそういう効果がより強く発揮されるのかも
ネネさんの手を持ってキレイにしてあげて終了すると少し残念そうだった ミャーにも流れでお礼としてやってあげると幸せそうにしてくれたよ、帰ってからもやるけどね♪
・・・。
「みぃやさんたちは魔王領にいるのですよね?」
「はい、入り口の門で主をしています」
「どうしてそんなに悪い人の所にいるの?」
「かーさま、わるいひといるの?」
「分からない、でもね、みぃやさんたちがいるくらいだから悪い人はいないですね♪」
「うん♪」
何にも答えない内に完結してしまった、悪い人はいないとは言いませんが優しい人たちばかりですよ
そうこう話しながら歩いていると里の入り口に着いてしまう、自然にノーヴェがくっ付いて抱っこをせがまれた
「ごめんね、私じゃ力が無いんだ」
「うん…、ミャーいーい?」
「はい!」
ミャーがノーヴェを軽々と抱きあげる
「みぃやさん、ちょっといいかな?」
それを見ていたネネさんがわたしを見ながら言った、ネネさんこそ力無さそうだけど…
了承して傍に行くと背中と膝の裏に手を入れてヒョイと持ち上げられた
「え、みぃやさん軽いわね!?」
自分でも持ち上げられるとは思っていなかったのか逆に驚かれてしまった、もしかして自分はもっと小さな子並みに体重がなかったのかと自覚することになった、軽くて困ることって無いよね?戦うわけでないし。
「みぃや♪」「ノーヴェ♪」
抱かれていることで片手で手を振ってハシャイでいるノーヴェにミャーはちょっとジャンプしたり走ったりしていた、その間もわたしは抱かれたまま、なんか恥ずかしくなってきた
「腕、疲れませんか?」
「ぜーんぜん♪なんか嬉しくなってきちゃった♪
ありがとう」
「・・どういたしまして」
2人が満足するまでそうやっていた
・・・。
「またね!」
「うん、また…」
「大丈夫、お父様に頼みましょうね♪」
「うん! みぃや!ミャー! またね!」
「「うん♪」」
後ろ髪を引かれる思いで隠れ里を出る、今日はちょっとドキドキしたね…、悪いの全部が全部ニアルトさんだったけど
「一発殴りました!」
「うん、完全拒否されたね…」
「はい! あれはみぃやを殴りましたから」
ミャーはわたしの感情を感じていてのあれだっからね…、修繕されたけれど跳ね返されそう