4-1ケディデアに入国しよう
ケディデアへ入国するついでに郵便物の配送を引き受けた。
しかし、引き受けた郵便物なのだが…重い。
中身が何かを聞いてみると、鉱物サンプルだという。
「質を見るんだとさ。」
ふーむ。研究か、仕入れ先の選定とかかな。
というか、麻袋だと破れるからって木箱に入れたらもう郵便物を越えてるよね。
「国家間の取引だ、言うなら行政に言ってくれ。もっとも、どっちの国に言うべきかは知らんがな。」
狭い一般道によくある制限速度の40km/hで国境の街イージェ・ミオーへと向かう。
速度に意味は無い。拓けた街道で急なカーブも無いから本当は100km/hでも大丈夫なくらいな道なのだが
法定速度の60km/hでも、いわゆる駅馬車より5~10倍速いのでゆっくり目に抑えているのだ。
それでも4~7倍は速いため、同方向に進んでいる馬が興奮して停止してしまうのを申し訳なく思いながら追い越していく。
対向側?同じだよ。バイクの音うるさいからね。
宿場町で休憩を取りながらイージェ・ミオーについて検索する。
…なんじゃこりゃ。
この世界にはイージェ・ミオーという街は無数にあるため、web辞典(※ハーカンク対応)に曖昧さ回避ページが出来ていた。
セクションに命名規則というのがあったので読んでみると、何故無数の同名街があるのかがわかった。
原因はモヴァノ教の街の命名法にあったのだ。
モヴァノ教の興した街は宗派または宗派+指導者名で付けられるのである。
イージェ・ミオーという街はイージェ派の指導者ミオーが興したからイージェ・ミオーと名が付いたというわけだ。
そして同指導者が街を興すたびイージェ・ミオーが増えるというわけである。
しかもこのイージェ派、好んで国境いに街を作るからどこもかしこも国境の街イージェ・ミオーなのだ。
ハメハメハ大王かっつーの。
どうやって目的地のイージェ・ミオーを探すかと郵便物の宛先を見ると、街の名前の後ろに"B18-844"と書いてあった。
"イージェ・ミオーB18-844"、どうやらコレが目的地のフル名称らしい。
検索したらweb辞典に載ってたよ。
ご丁寧にイージェ・ミオーへの一覧へのリンクが貼ってあるし。
誰かは知らないけど編集ご苦労様だ。
街を探すだけで疲れたが、検索したかったのはそこまでの道のりと時間だ。
さっき地図アプリで縮小表示したとき、高速で走ってれば今日中に着くような距離だと感じたが、
今の速度のままで何処まで行けるのかを調べたい。
えーっと。
夕方前に着くのはオーカンB1-21332…ってちょっと待て。オーカンもモヴァノ教命名ルールかよッ!
面倒くさッ。
め ん ど く さ !
もうツッコむ気力も失せたよパトラッシュ…
ともかく目的地は決まったので今日はそこを目指して進もっと。ハァ。
何する気力も無いので宿に泊まってメシも食わずにフテ寝する。
そしてそのまま何事もなく翌朝を迎えてしまった。
気力も元に戻ったが、不味いメシでまた落ちるのはわかってるので先にツッコんどこう。めんどくさッ!
まったく。モヴァノ教命名ルールから外れた地名ってのは無いのかね。
何処行っても不味いメシを食わされてイライラが募る。
身柄の保護を求める国の条件にメシの美味いとこも付け加えとこう。
このままだと味覚から死んでいきそうだ。冗談抜きで。
無限収納がバレるとヤバそうなので、休憩中に配送物をメットインから取り出してバイクにくくりつける。
ちょっとバランスが悪いが自律走行に問題はないのでそのまま走り、昼前にイージェ・ミオーに到着した。
さて少しはメシが美味いと良いのだが…社会主義の国家だし期待は出来ないかなぁ。
…あれ?美味いとは言えないものの、今までのよりマシだぞ。
荷下ろしの前に腹を満たそうと、期待せずに食堂で定食を頼んだのだが、そんなに不味くない。
大麦のプチプチした食感を楽しめる程度には美味い。
穀倉地帯って訳でもないのにメシが美味いっていうことは、国境が影響してるってことだろう。
ってことは国境の向こうはもっと美味いものがあるんじゃなかろうか。
少し希望が出てきたぞ。
国境の街はひねくれている。
あっちの名前もこっちの名前もイージェ・ミオー。なのに別の街なのだ。
今居るドモク共和国側が"イージェ・ミオーB19-843"、ケディデア側が"イージェ・ミオーB18-844"という正式な名称があるのだが、ほぼ使われない。
おかげで市民側もこんがらがるらしく、ドモク側のイージェ・ミオー、ケディデア側のイージェ・ミオーといちいち呼び分けているらしい。
実に長ったらしい。
配送についても同様だ。
B19-843とB18-844とで似たような番号なので取り違えが頻繁に起きる。
メシの質が横並びのはずの社会主義なのに、ここだけ質が違うのはそんな理由があると
配送物のチェックを待っている間に入管の係員が教えてくれた。
入管手続きと配送物のチェックが完了し、出国・入国税を払ってケディデア側のイージェ・ミオーに入る。
荷物には既に課税されているとはいえ人間一人通るのにめっちゃ掛かった。
特にバイク。魔道具扱いでぼったくりかって言うくらい無茶苦茶な額取られたぞ。
すっからかんになった財布を仕舞いながら入管の建物を出た。
なるほど。道一本だというのに別の街と感じるな。…いや、別の街だったか。
あっちは建物が画一的な形なのに対してこっちは個性的だ。
「ああ、資本主義国家に入ったのだな」という気分にさせてくれる。
さあ、あとは配送ベースまでの道のりだけだ。頑張ろう。
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