29-2
そんなわけで翌日。
あと9日ほど暇になったわけだが。
正直なーんもすることがない。
どーすっかなーとスマホを手に取るといろんなアプリから通知がズラリ。
そういやここんとこ開いてなかったな。
Saezuriの履歴は多感な年代特有の独り言が書いてあっただけなので無視する。
賢者君が面白がって再掲示しまくっているが
見れるのは召喚組の俺たちだけだから、からかっても通じないぞ。
SENのほうは大学生の子たちがドモクにまで回ってきた手配書を見て助けが必要かを聞いてきていた。
結構前からこっちに連絡取ろうとしてた様子だ。
常時マナーモードで通知もオフにしてたから気が付かなかった。
SENの通知はオンにして、彼らに事情を話すことにしよう。
『…つまり政争に巻き込まれたってわけか。災難だなー。』
「他人事のように言うが、君等もバングランドの庇護下じゃなかったら狙われてるんだぞ。」
『アッハハ、それがわかってるから皇帝の言うことに従ってんじゃん。』
「そのわりには忠誠心の欠片もないって口調だな。」
『そりゃあ対等のつもりだもんよ。』
「ハァ。そのうち軋轢が起きそうな…」
『大丈夫、もう起きてるから。』
「…」
『なーに。ヨネツキさんの抱えてる問題よりは遥かにマシだから心配ねーって。
誰が俺たちのことを疎んじているのかも鑑定でパツイチだからな。
何に対して問題と考えているかわかりゃハナシアイで解決すりゃいいし。』
「なんか今話し合いのセリフのニュアンスがおかしかった気がするんだが?」
『ハハ、気の所為。じゃねーッ。』
ニャロウ、切りやがった。
どう切り取っても不安を感じさせる状態だが俺も自分のことで手一杯でどーすることもできん。
それにしても暇である。
しかも昨日買い込んだせいで金もない。
この街を出るのはまだ先。
酒場での度数上げも限度ってものがある。
「なんか商売になることないかなー。」
そんな独り言を言いつつタルソリューの街をweb百科事典で調べてみる。
web百科事典と動画共有サイトは暇つぶしにはもってこいだからだ。
が、面白いことは何一つ書かれていない。
気候が一定だの寒冷地だのという情報でどうせえっちゅうんじゃ。
こんなことなら大学で経営を学ぶんだった。
いや、株買って株主になってればすこしは経営について考えていたのかもしれない。
色々と悔やまれるな。
ブラウジングも動画見るのも飽きたので外に出てみる。
相変わらず広場では人だったものが宙を浮いている。
そのすぐ近くで闇市が開かれている。
改めてこの世界で生きていくためにはそういう図太さが必要なのだと痛感させられる。
腹も鳴ったし、なんか食ってくか。
闇市の出入りは自由だったので、正面から堂々入る。
食い物はあまり売ってなく、服飾中心なのだが…これがまあボロい。
古着の限度を超えているのが売られているのだ。
道行く人々はそんなにひどい服装じゃないのに売れるのか?
…と思ってたら取引現場を目撃できた。
服装を売って金にしているのだ。
つまりそこは質屋だったというわけだ。
たしかに戦争が起きると食い物が真っ先になくなるというしな。
文字通りの身銭を切っているってわけだ。
あっちでは怖いお兄さんが団体で店を囲っている。
ショバ代払わなかったとかで脅しに来たんだろうか。
これ系の闇市って主催者は大抵がヤのつく職業だから
大人しく支払っといたほうがいいよと心のなかでつぶやきながら別の方向を見る。
「見世物じゃねえぞ!」って怒られそうだったからだ。
本職は相手にしたくないものな。
捕まった。
さっきのヤのつく方々の一人に目をつけられたのだ。
目を合わせるだけで因縁つけられるとか、たまったもんじゃない。
逃げるとさらにややこしくなりそうなんで逃げずにいたら兄貴分らしい人が止めてくれた。
「お前な。無駄に諍い起こしてこの市を潰す気か?
親分の顔に泥を塗るってんならこの俺が相手になってやるぞ?」
「へぃ。スンマセンしたッ!」
ゲンコを脳天に落とされて下がる下っ端。
これもポーズのひとつなんだろうなと思いつつ他の一般客と同様に目を合わさないようそそくさと逃げようとする。
やっぱり捕まった。
今度は逃げなかったのが悪かったらしい。
「お前さん、こいつに絡まれて逃げなかったってことはちっとは腕に覚えがあるって事かな?
その度胸気に入った。ちっと顔貸してくれや。」
「五体満足で帰してくれるなら考えるよ。」
「ハッ、そりゃあお前さんの返答ってやつだ。付いて来な。」
来た。見た。勝った。
兄貴分の連れがたむろってる場所に来て、
フクロにされそうになったところで普段使ってない靴の機能"※多段ジャンプ可能"で空中に留まり、
最初に因縁つけた奴とただ殴りたいやつを見極めて、相手の得物を"※非常に脆い"状態にして武器ごと粉砕。
戦意をなくさせたところで兄貴分が止めた。
「やっぱり強かったな。どうだ、ウチに入らないか?」
「やめとくよ。俺は商人なんだ。自衛ができるだけの武力があればいいのさ。」
「フゥン自衛ね…そんなレベルじゃない気がするが、俺の手に負えなさそうだからな。見逃してやるよ。」
「ありがとうというべきなのかな、ここは。」
「おう、俺の面目丸つぶれのところをあえて見逃すって言ってんだ。礼の一つでも貰わにゃ割に合わねえ。」
ネタが思いついたら書くので、また数ヶ月先の投稿になるかも