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3-1ひところshit

ドモク共和国の都市圏を抜け、国境に近づいた頃

廃村かと見間違うほどの寂れた農村に寄っていた。


というか見間違ってど真ん中を突っ切ろうとしたら普通に人が居たので寄った形になったというか。



村民はモヴァノ教という、新興宗教の信者だった。


教義は開拓の使命というもので、何も無い土地から村を興し続けるという行動そのものが修行であり教えなんだそうな。

自然崇拝(アニミズム)とは明確に違って、文明の利器は使って良いし極端な話、工業化を目指しても良い。

とにかく、ただひたすらに開拓をするらしい。


最終的に税収になるのでどの国もモヴァノ教を迫害したりせず、場合によっては支援しているという。


だが現実的な話、戦う力が無いのに開拓をするため、失敗の方が多いし

野盗に占拠されてしまうこともよくあるそうだ。


だから男が開拓作業をし、女子供は都市圏で支援活動をするという役割に自然となっている。


この農村…というか集落も例外では無く、男しかいないという。


まだ開墾を始めたばかりで旨味がないので、そうそう野盗も狙っては来ないらしい。


「しかし、最近物資が滞りがちなんですよ。」


と、50前後のおっさんがため息交じりに言う。


物資自体は街で確保できているのだが、運送を担ってくれる者がいないため

物資の受け取りは開墾作業を中断して全員で街に行き、荷車を引いてくるという

どう考えても効率の悪い手段しか選べないという。


しかも、頑張って運搬した物資に限って野盗に狙われるという悪循環だ。


国や領主も支援するなら武力方面でも支援したれよ…



というか、それなら俺が配送しようか?

今回限りだけど。と言ってみたが、どうせ野盗に奪われると消極的だ。


ふーむ。野盗がいなけりゃいいのかな…あ、マズい。




カーシェアの学生、聖女君が暴発させてしまった制約が発動したのが自分でもわかった。

それは野盗・盗賊、およびその類い。悪党を殲滅してくれというものだ。


これは"※"をもってしても制約を解除することが出来なかった。

"※容易に討伐が可能な場合に限る"という消極的制限で誤魔化したのだが、

今回は集落を襲う小規模な野盗のようなので条件を満たしているという扱いにされたらしい。

自分の意思とは関係なくに討伐をしようという感情が湧いてくる。



この衝動はもはやどうにもならない。

ならば解消させるためにと、一旦彼らの仲間が居る街まで行って戦闘準備をすることにした。

…といっても武具を買う金が無いので衝動が軽い内に資金調達だな。




付近に車を隠す場所が見つからなかったのでバイクごとオーカンという街に入った。

普通に馬の魔道具で通じたのが驚きだ。


街への入出に税金は取られなかったが、商売をする場合には税金が掛かると言われた。

課税方式は消費税式で、なんと税率40%。俺のような辻商売人は当日締め当日払い。

高いけど払わないと翌日から商売できないのでみんな従っているらしい。


いや、再配分がちゃんとなされていない様に見えるのに40%はおかしいだろ。

説明してくれた役人に小声で聞くと、これまた小声で本来10%のところだがお上の小遣い稼ぎで上乗せされていると教えてくれた。案の定腐敗してるなぁ。



指定された市場に入って場所を取り、板きれを買って屋台のカウンター状に加工してもらう。

先日の売り上げがこれで消えた。

ここで支払った消費税は費用と認められるため、これからの儲けから減額されるとはいえ手持ちが無くなるのは心細い。


さて、馬鹿の一つ覚えだが、付与魔法屋を始めるとしよう。

バイクのシートに横座りしてこんな事が出来ますよ的なメニューを掲げる。



生鮮食品の腐敗を消すのがウケて、4時間程で800ディバラ(約3万円※レートアプリ調べ)を売り上げた。


武具を買うのには遠いので日没まで粘り、3,000ディバラ(約11万円※同)近くを売り上げたが、消費税や市場の使用料で持ってかれて1,500ディバラちょいとなった。


うーむ。武具を買うにはほど遠いな。

もうちょっと商売方法考えよう。



2日目。そこそこの宿に泊まった俺は、今度は卸市場に向かい、場所を貸して貰うことにした。

生鮮食品を冷蔵する魔法に目を付けたのである。


「鮮度を維持したままで10日の保冷だぁ?本当に出来るのかよ。」

「バッタもんの魔法じゃないだろうな?」

「あ、コイツ昨日市民向けの市場で腐ったの戻してたヤツじゃないか。」

「へえ、じゃあ本物か。」

「そんならケディデアに輸出する俺の荷物に掛けて貰おうか。」

「おー、輸出用なら役人も怒れねえわな。」


なんて感じで一口が大きい業者に向けて商売をした。

ドモク共和国が社会主義で計画的に業者を決めるといっても、こういう細かい部分ではやはり統制が効かない様だ。

輸入出する相手国が資本主義だから余計にそうなのかもしれない。


とにかくこれで最低限、武具を購入するための資金はなんとか拵えることができた。



となれば次は武具の購入である。

昨日市場で商売する前に目を付けていたハンター用品の店で

低価格帯のマシェットを2本と、お手入れの道具を買ったら速攻金が尽きてしまった。

本当に武具というのは高い。




さて。武器を購入したことで野盗を倒そうと思えば倒せるようになったわけだけど、余裕があるとは到底思えない。

だが、制約が「いいかげん行動しろ」と言うかのように衝動が抑えられなくなってきている。

クソッ、忌々しい。



…そんなに殺りたいか。ならばそうしてやる。どうせ元の世界には帰れる見込みが無いんだ。


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